第159話　巨人たちが襲ってくる！　作：ター坊

~柚子サイド~

遊月さんと美羽の体調も戻り、私達は遊矢の最後の記憶の場所であるジェットコースター『昇･龍･嵐･舞』へと向かっている。それにしても
「ユイ…大丈夫なの？」
「ユイ様、あまり無理をなされては…」
「ありがとうな。でも、いつまでもゆっくりするわけにはいかないから…」
さっきのユイさん…大胆というか、なんというか…。
「ん？柚子どうかしたか？」
「え？あ、いいえ…」
ユイさんに訊かれ思わず目を逸らしたがその先には
「ダーリン♪」
「ミエル、あんまり引っ付くなよ~！」
「もう、ダーリンってば照れちゃって~」
なんだろう、なんか…私もたまには…

ｷﾞｭｯ…

「柚子？」
「…」
思わず遊矢の腕を取って組んだ。
「ちょっ！柚子！なに、ダーリンと腕組んでるのよ！」
「わ、私だっていいでしょ！！」
「ミエル、柚子！二人とも」ｵﾛｵﾛ
「なんだ。遊矢もモテるな」
「ユイさん、助けt」
「ちゃんと応えてあげなきゃな。まぁ…頑張れ」
困った遊矢にそれを面白おかしく笑うユイさん。それにつられてみんなも笑う。


そうこうしてるうちに問題のジェットコースターの所に来た。全体が中国的なデザインで看板として昇り龍の像もある。
「遊矢。どう？」
「えっと…ごめん。もう少し近づいたら…」
「あ…。その…私こそ急かしてるみたいでごめん…」
「いや、柚子が謝ることは…」
そんな会話をしている時だった。






ガキャンッ！ガゴンッ！キーコキーッコ！

ジェットコースターから何か騒々しい金属音が響き渡る。黒板を爪で引っ掻くようなあの不快な高い音が大音量で私達の耳を刺激する。

「なんだろう。すごく嫌な予感がする」
「乗り場の方からだな」

グワァアアッコ！！ガシャン！

ジェットコースターの乗り場の所から何やら巨大な塊が飛んできた。
「柚子！危ない！！」
遊矢はそう言って私の腕を引っ張って道端の生け垣に駆け込む。一瞬のことだから分からなかったけど、他のみんなも散り散りになって木の影や近くの建物に隠れたりしたようだ。私と遊矢とミエルが隠れた直後、

ドゴォォォン！

激しく叩きつけるような爆音が空気を震わせる。
「一体…何が？」
遊矢が生け垣から出たので私とミエルもそれに続いた。



~柳生サイド~

拙者と姫、それとユイ殿と美羽殿は近くの建物まで退避し、無事であった。他の者も無事であろう。
「取りあいず…出てみよう」
ユイ殿の提案に拙者らは頷く。
建物から出ると遊戯殿や遊矢殿達も姿を現す。
「これは…」
ユイ殿を始め、その場にいる全員が絶句した。
「これは…龍でも降ってきたのか…」
「いや、柳生さん。これは…ジェットコースターの龍だ」
ユイ殿が目を細めながら言う。その龍の作り物は横たわっており、衝撃のためか地面はひび割れていた。
「なんと…」
「確か…雑誌の写真のジェットコースターってこんな感じのデザインだったよね？」
「ああ…。こんなのが投げ飛ばされたのか？」
「とんでもない馬鹿力だな」
「馬鹿！こんなのどうやって投げ飛ばすっていうのよ！！」
口々に騒ぐ中であった。

ガツーン、ガツーン

龍の作り物が投げ出された所から鉄の上を強く踏む音が大きく響く。
「なんでしょうか…」
「入り口から…誰か来る」
拙者らの前に姿を現したのは…





「見つけたぞ…！」

その面影、確かにあったが別のモノへと変容しておった。
「徳川遊月…！覚悟ぉ！」
「なっ！あいつは確か…」
「はい…。あの顔、鬼柴田こと柴田秀長様ですね…」
姫の仰る通り、顔は鬼柴田そのものであったが姿がまるで違う。体はふたまわりは大きくなり、筋骨隆々の肉体を誇示せんが如く甲冑はなく半裸である。
「あの時の信重を討った時にはいなかったが、マスターDの手下になっていたか！」
「でもあの体って…」
「うむ。明らかにおかしい」
まるでもののけの如き風貌になった鬼柴田の腕には姫と美羽殿を陥れた、あの忌々しき決闘籠手が装着されていた。
「サイコ･デュエルディスクか…」
「さぁ果たし合いをせいぃ！」
決闘籠手を展開する鬼柴田。あの化け物には拙者が…
「八兵衛。お待ちなさい」
「姫！」
「ユイ様、どうか私に」
「ユイ。私も」
「二人とも…」
「皆様にご迷惑を掛けた汚名、ここで是非！」
「私も！何よりも、ユイの役に立ちたいの！お願い！」
真剣な眼差しでユイ殿を見つめる姫と美羽殿。しかし今のあの鬼柴田は危険…！
「…分かった。けど相手はサイコ･デュエルディスク持ちだし、見た目は化け物だ。気を付けろよ」
「はい！」
「うん！」
ユイ殿の激励と共に二人が鬼柴田と対峙する。

拙者はユイ殿に急いで問う。
「ユイ殿！何故、恋仲の姫と美羽殿を危険に晒す必要がありましょう！？」
「…そうだな。けど、それがあいつらの願いだからさ」
「？」
「遊月と美羽は守りたい大切な存在だ。だけど、危ないからって二人の想いを抑えるようなことはしたくなかった。もし止めたら皆のために戦いたいというあいつらの想いを否定することになるから任せたんだ」
「し、しかし今の鬼柴田は」
「確かに普通じゃないな。けど、それでも遊月と美羽は勝つと信じてる。…というか、恋人として信じてあげなきゃダメだろ？」
ユイ殿は少し笑ったような明るい表情でそう語るのであった。





~遊馬サイド~

チキショー、マスターＤめ！小鳥の人形なんか使って騙しやがって！…でも、ちょっと安心したな。
「そういや、もう池を廻って半周したな」
「せやな。同じペースやったら、ユイっち達もそろそろ来てるハズやけど…」
「でも、いませんね」
クロウの言う通り俺たちはお化け屋敷の病院や観覧車、恐竜が出るところとか廻ってきた。そこでバクラと鬼柳って奴も仲間になった。待ってろよ、マスターＤ！そう思った時だ。
「む！みんな！上から何か来る！気を付けろ！！」
アストラルが叫んだ直後だった。

ズシーン！ズシーン！ズシーン！ズシーン！ズシーン！ズシーン！ズシーン！


「な、なんだ！？」
俺達の周りにモクモク砂埃が舞い上がる。みんな身構えていると砂埃が晴れた。
「なんだ、コイツら…」
「で、でっけぇ…」
俺の倍の身長くらいか、とにかくデカイ連中がたくさんいた。
「全員…サイコ･デュエルディスクを付けているわ…」
「このデカブツ共は一体…」
周りはすっかり囲まれていて、そのデカイ奴らは一斉にサイコ･デュエルディスクを構えると…
「ウオオォォ！」

ヒュン、カシャン

「何！？」
「なんだと！」
「シャーク！ゴーシュ！」
サイコ･デュエルディスクから鎖みたいなのが飛び出してシャークとゴーシュの手首に繋がれちまった。
「どうやら俺達を逃がさねぇ気でいるみたいだな」
「へっ。上等だぜ！」