第160話　悪鬼再び　作：ター坊

~遊月サイド~

柴田秀長様…。信重公の重臣が今やマスターＤの配下に成り下がり、もののけのようなおぞましい姿になるとは…。
「柴田殿。貴方にまだ武士の魂があるならば」
「グオオォォ！」
「遊月さん、ダメ！通じてないみたい！」
せめてまだ理性があれば…そう思いましたが、身だけなく心も堕ちたようでした。
「…分かりました。ならば徳川の姫として、友と共に織田軍最後の将である貴方を討ちます！」

「「デュエル！」」


【順番は美羽→遊月→柴田　ドロー･攻撃は柴田から可能】


「私のターン！私は魔法カード『秘術演目-ワンダーボックス』を発動！」
美羽様の場に、珍妙な箱が現れました。
「これで私は手札から『幻想麗団エムシー・サキュバス』と『幻想麗団-カード・ウィッチ』をエクストラデッキに加えて２枚ドローする！そして『幻想麗団－ジェイド・ワイバーン』を召喚し、カードを２枚セットしてターンエンド」
手札と場を整えて美羽様の番は終わりました。私も続かなくては。
「私の番！私は『水鏡の女中ツララ』を召喚し、山札より『水鏡の池』を手札に加えます！そしてそのまま『水鏡の池』を発動し、札を二枚伏せて終えます」
私もここは守りを固めましょう。…果たして鬼柴田の戦術は一体…？
「我の番！！」
札を引く勢いで空気が震える…。やはり、武将の頃の柴田殿はいないのですね…。
「我は手札より仲宇那阿『腐蝕の足軽』を召喚！」
体の所々が腐った兵が現れる。…確か鬼を象った札を使用していたはずですが…。
「こやつは相手の場にのみ式霊が存在するときに限り、特殊召喚できるのだ。さらに『腐蝕の忍』を召喚する！『腐蝕の忍』の効果により、手札から札を一枚墓地に送ることで場の我の式霊の星を全て一つ上げる」
朽ちた忍から怪しい煙が噴出すると鬼柴田の場の式霊は不気味な雄叫びをあげる。
「確か今、仲宇那阿と…」
「チューナー…と言うことは」
「我は星五となった『腐蝕の忍』に星三となった『腐蝕の足軽』を仲宇仁愚！闇の底に眠りし魔龍よ、今こそ目覚め光を喰らえ！秦苦露召喚！星八『腐蝕呪龍ヤマタノオロチ』！！」
「この龍は…！？」
そう、その姿はまさにあの時の決戦で私達を苦しめた、八つ首で血の乾いたような色の眼を持つ呪われた龍でした。
「ヤマタノオロチの効果発動！墓地から腐蝕の式霊を三体まで蘇生させる。これで忍、足軽、軍馬を特殊召喚！ただし、効果は無効になり、星は全て一つ下がるがな」
場には呪われた龍と朽ちた兵たち…。不気味な空気が立ち込める。
「まだ…何か…」
「左様。魔法札『混沌たる奈落』を発動し、場の三体の式霊を融合する」
「そんな！」
「シンクロの次は…融合…」
「三体の式霊を融合！星霜に積もりし怨念よ。今こそ不死なる鳥の形となれ！融合召喚！『腐蝕死鳥ヤタガラス』！！」
三つの黒い魂が混ざりあい、生まれでたのは所々腐り落ち、骨を覗かせる不気味な怪鳥。その咆哮は嘲笑うが如く甲高く響き渡る。
「さぁ覚悟せよ。ヤマタノオロチで全式霊に攻撃！」
柴田殿の攻撃宣言と共にヤマタノオロチの頭が襲い掛かってくる。
「させません！罠札『水鏡の静寂』を発動します！これで全ての式霊を守備表示にすれば…」
「甘い！ヤタガラスの効果発動！これで相手の魔法・罠札の発動を無効にし除外する！」
「そんな！」

腐蝕呪龍ヤマタノオロチ ATK 3000 VS 水鏡の女中ツララ ATK 0

「きゃっ！」
強い衝撃が全身を突き抜け、思わず膝を着きそうになる。
「遊月さん！」
「次は小娘、貴様だ！」
「私は速攻魔法『秘術演目-チェンジ』を発動してフィールドのジェイド･ワイバーンとエクストラデッキに表側表示で存在するエムシー･サキュバスを入れ替えるよ！そしてエムシー･サキュバスの効果でデッキから『秘術演目-ペンデュラムブランコ』を手札に加える！」
「ふん！守備表示で出したところで、ヤマタノオロチには貫通がある！」

腐蝕呪龍ヤマタノオロチ ATK 3000 VS 幻想麗団-エムシー･サキュバス DEF 500

「…っ！まだまだ！エムシー･サキュバスが破壊されたことで罠カード『秘術演目-フラワーシャワー』を発動！このターンのバトルフェイズを強制終了させる！」
「小賢しい真似を。ならば我は二枚伏せて番を終えよう」

美羽：LP 5500
遊月：LP 5000
柴田：LP 8000

二対一なのにこちらが圧倒されている。もののけと化しただけでなく元来の強さもあるでしょう。
「遊月さん」
「美羽様…？」
「私たちがやるって言ったから、やらないとダメだよね」
「…はい！」
自然と勇気づけられる。共に肩を並べる安心感。それだけで戦えるような気がします。
「私のターン、ドロー！私は墓地のワンダーボックスを除外して効果発動！これでエクストラデッキからジェイド･ワイバーンを特殊召喚する！」
先程の奇妙な箱が壊れると中から翡翠の翼竜が飛び出てくる。
「ヤタガラスはあくまでも魔法・罠カードの発動を無効にする効果…カードの発動じゃなくて効果の発動なら…！」
「おのれ小癪なっ！」
「ジェイド･ワイバーンをエクストラデッキから特殊召喚したことで、ヤタガラスを手札に戻す！さらに魔法カード『秘術演目-ペンデュラムブランコ』を発動！これで私はデッキの上から５枚をめくり、その中にペンデュラムカードの幻想麗団がいればペンデュラムゾーンにセットできる効果よ！」
「しかしそう都合良く！」
「お願い、来て…」
美羽様は目を閉じて山札の上から五枚をめくりあげる。


１枚目『幻想麗団-フレイム･キマイラ』
２枚目『秘術演目-ファイヤーリング』
３枚目『幻想麗団-ハングリー･ケルベロス』
４枚目『秘術演目-アンコールショー』
５枚目『幻想麗団-チェーンソー･ヴァンパイア』

「よし！これで私はスケール5のチェーンソー･ヴァンパイアとスケール1のフレイム･キマイラでペンデュラムスケールをセッティング！浮かび上がれ奇跡の道標！舞台を彩れ！ペンデュラム召喚！」
大きく弧を描き、現れた光の輪から二つの流れ星が落ちて弾ける。
「『幻想麗団-エムシー･サキュバス』、『幻想麗団-カード･ウィッチ』！！２体ともエクストラデッキからの特殊召喚に成功したことによってそれぞれの効果発動！エムシー･サキュバスの効果でデッキから『秘術演目-ミラーミラクル』を、カード･ウィッチの効果で『幻想麗団-ハングリー･ケルベロス』を手札に。そしてペンデュラム･ブランコの効果。この効果でセッティングしたペンデュラムカードでペンデュラム召喚を行った場合、破壊される」
光の柱はパリンと音を立てて割れてしまいました。
「そして私はレベル2のエムシー･サキュバスとレベル3のジェイド･ワイバーンにレベル2のカード･ウィッチをチューニング！かつては血に染まりし刃よ。今は舞台を彩る華となれ！シンクロ召喚！レベル7『幻想麗団-ジル･ザ･リッパー』！
流転する場、式霊が入れ替わり立ち替わりで変化する。
「ジル･ザ･リッパーのシンクロ召喚に成功したことでエクストラデッキからフレイム･キマイラを特殊召喚してフレイム･キマイラの効果でヤマタノオロチを破壊！さらにハングリーケルベロスを召喚してバトルフェイズ！まずはハングリー･ケルベロスでダイレクトアタック！」
「罠札『亡者の怨念』を発動！これにより墓地から『腐蝕の忍』を特殊召喚」
ぼうっと紫の念を纏った忍が立ち塞がる。
「そのままバトル」

幻想麗団-ハングリー･ケルベロス ATK 1600 VS 腐蝕の忍 DEF 0

「ふっふっふ…。この瞬間『亡者の怨念』で甦った式霊の効果発動！」
「えっ？」
朽ちたはずの忍の怨念が紫の光となって集まり、美羽様の式霊へと向かっていき…
「『亡者の怨念』で甦った式霊が戦闘によって破壊された時、相手の場の中で最高の攻撃力を持つ式霊が破壊される」
「そんな…、ジル･ザ･リッパーが…。ううん、まだよ！続いてフレイム･キマイラでダイレクトアタック！！」

幻想麗団-フレイム･キマイラ ATK 1600　直接攻撃

「ぬおっ！」
美羽様の果敢な一撃が柴田殿を捉える。
「フレイム･キマイラが相手に戦闘ダメージを与えたことでエクストラデッキに戻り、次はチェーンソー･ヴァンパイアに交替！再びダイレクトアタック！」

幻想麗団-チェーンソー･ヴァンパイア ATK 1400　直接攻撃

「ぐぬっ！」
「私はカードを１枚セットしてターンエンド」

美羽：LP 5500
遊月：LP 5000
柴田：LP 5000

「私も続きましょう、私の番！私は仲宇那阿式霊『水鏡の踊り子シズク』を召喚し、星三のツララに星二のシズクを仲宇仁愚！聖域を守る亀よ。私に力をお貸しください。秦苦露召喚！星五『水鏡の守護獣キュウカイ』！さらに手札から魔法札『水鏡の荒波』で水鏡式霊の攻守を逆転させます！行きなさい、キュウカイ！」

水鏡の守護獣キュウカイ ATK 2400　　直接攻撃

「ぐお！罠札『来世よりの絶望』を発動！我が二千以上の損傷を負ったことで絵苦素斗羅よりヤタガラスを召喚条件を無視して特殊召喚する！ただし効果は無効となる！」
キュウカイが退いた後、地面からヤタガラスが這い出てくる。
「…私は札を一枚伏せて終わりにします」
何故でしょうか…。こちらが明らかな優勢のハズ。なのに…

美羽：LP 5500
遊月：LP 5000
柴田：LP 2600



~ユイサイド~

美羽の、ヤタガラスの無効効果の盲点を突いたことで場を抉じ開け、そこに追撃を喰らわした遊月と言う展開のデュエル。柴田のフィールドには効果を無効にした状態で特殊召喚されたヤタガラスのみで手札は０。
普通ならば勝利の確信、少なくとも勝てる！と言う自信が湧いてもおかしくはないが、このデュエルにおいては違う。
「ユイ殿…」
「ああ。この拭いきれない不安感…。底知れぬ不気味さ。柴田と対峙してる遊月と美羽が一番強く感じているだろうな…」
鬼柴田…。次は何を仕掛ける気だ…？