第152話　勝利と改める闘志　作：ター坊

~メアリーサイド~

ウチが引いたこれは…！








「俺はこいつを発動！受け取れ！」
あの人とデュエルした時や。デュエル中カードを渡されたんや。
「ん？なんやこれ？装備魔法カード『ラブ･ダイヤ･リング』？」
「そう。これはその…このデュエルに勝ったら俺の妻になれ！」
「はぁ！？なんやそれ？」






ま、今思い返せばアホっぽいプロポーズやったけど…ウチはそれに惚れたんやな。…使わせてもらうで。



~鬼柳サイド~

俺の場には５体のモンスター、さらに万能カウンター罠『インフェルニティ･バリア』も伏せてある！俺の負けなんざありえねぇぜ！
「…フッ」
「あぁ？何がおかしい！」
「いや、昔思い出してただけや。いくで」
へっ。俺のハンドレスコンボを破る手は…。
「ウチは魔法カード『ラブ･ローズブーケ』を発動！自分のライフ半分支払い、さらに手札１枚を相手に渡すことでデッキから好きなカード１枚を手札に加えることができる。受け取りぃや！」
女はカードを1枚こちらに投げてくる。
「なっ！」
しまった！発動コストを払った時点で俺の『インフェルニティ・バリア』の発動条件であるハンドレスが破られた！
「そしてウチは『七彩海賊-常盤のクリケット』を召喚。デッキからアクアを手札に加え、『七彩海賊の旗』の効果で『七彩海賊-琥珀のソレイユ』を召喚。ソレイユの効果でクリケットとソレイユのレベルは５になる」
「レベル５が２体…」
「ウチはレベル５になったソレイユとクリケットでオーバーレイ！2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築！荒れ狂う大海原を幾重越え！沈まぬこと白夜の太陽の如く！今ここに伝説となって蘇りぃ！エクシーズ召喚！ランク5！『伝説の海賊女帝-太陽のゴールド･グレイス』！」
「ちっ！手札がなければ！」
「ウチの番はまだまだやで。そしてこれがさっき加えたカードや。『ＲＵＭ-ランページ･フォース』を発動！これで同じ種族でランクが２つ上のエクシーズモンスターをエクシーズ召喚扱いで上に重ねる！ウチはゴールド･グレイスでオーバーレイネットワークを再構築！荒ぶる七海を制した海賊女帝よ！ここに顕現し全てを嵐荒ぶ津波の如く奪い去れ！エクシーズ召喚！ランク７『七覇海女皇(セブンルーラー･エンプレス)-ミソロギア･アテナ』！！」
光の渦から女神と見紛う女海賊が現れた。
「ミソロギア･アテナの効果発動！１ターンに２度、相手フィールドのモンスター１体の攻撃力を半分にしてその数値分攻撃力をターン終了時までアップさせるんや！これで『インフェルニティ・デス・ドラゴン』と『インフェルニティ・デストロイヤー』の攻撃力を奪わせてもらうで！」
「何だとぉ！？」
「そして『ＲＵＭ-ランページ･フォース』で特殊召喚されたモンスターは相手に与える戦闘ダメージは倍になるで！バトルや！」
「ウソだろおぉぉ！！」

七覇海女皇-ミソロギア･アテナ ATK 5450 VS インフェルニティ・デストロイヤー ATK 1150
(発生する戦闘ダメージは倍)

「どぅわあぁぁ！」



~遊星サイド~

「鬼柳ぅ！」
メアリーの一撃が決まり、鬼柳は後方に飛ばされて倒れた。果たして、元に戻ったのか？俺は急いで駆け寄る。
「鬼柳！鬼柳！目を覚ますんだ！！」
「…っ！」
気が付いたか？
「鬼柳！」
「……？遊星…か？」
「鬼柳！そうだ！俺だ！」
目を微かに開き、鬼柳は怠そうに起き上がる。
「俺は…一体、何を？」
「良いんだ鬼柳」
サイコ･デュエルディスクの呪縛は解けているようだ。
「遊星…。他にもゾロゾロいるが、コイツらは…」
「ああ。そうだな…。どこから話せば良いか…」
「なぁ遊星。それなら一休みがてらでいいんじゃないか？」
「十代さん」
「そうだな。ずっと移動しっぱなしだし、適当なところで休憩入れようぜ」
クロウを始め、他のみんなも賛同した。





「…というのが今までにあったことだ」
「そんなとんでもないことになっているのか…」
俺は鬼柳に今までこの世界で起こった出来事を話した。
「鬼柳はマスターDについて何か覚えてることはないか？」
「いや。すまない遊星」
「いや、良いんだ。俺自身もここに来たものの、何も思い出せないでいる…」
そう。俺が最後に覚えていた巨大な車輪―観覧車に来たがマスターDに関しての記憶は何一つ思い出せない。
「くそ…」
「ま。慌てんなよ」
「え？」
後ろから励まされた。振り返ると十代さんがいた。
「俺もさっきのお化け屋敷じゃ、全然思い出せなかったしな。だから悔しがることじゃないと思うぜ。それに…」
「それに？」
「思い出そうがなかろうが、マスターDは絶対ブッ倒す相手だ。それだけは変わらない。だろ？」
「はい。そうですね」
「だから落ち込むよか、ブッ倒すって気持ち引き締めようぜ」
十代さんはニカッと笑いながら拳を突き出す。
「はい！」
俺も応えるように拳を突き出し、十代さんの拳とコツンとぶつけた。
「ふっ。遊星。良い仲間がまた出来たみたいじゃねぇか」
「鬼柳…」
「なら…俺も戦うぜ！遊星！」
「鬼柳…！ああ！！」
鬼柳も拳を突き出して俺の拳にぶつける。
「俺の満足はこれからだ！」
こうして、また一人頼もしい仲間が増えた。



「…」
「？アキ？」
十代さんの応援と鬼柳の気合でいくらか気を取り戻した俺の視界にアキがいた。何か考え込んでるようだが…。
「アキ。どうした？」
「遊星。その……今更って思うかも知れないけど、マスターDって何かディヴァインと似てるって思うの」
「似てる？」
「ええ。サイコ･デュエリストの力を以て世界を支配しようとしたり、私達を同士討ちにさせるよう仕向ける狡猾な策略…。それにバクラが言っていた、私達の中で会ったことがあるかも知れない人物…」
…合致するところは大いにある。サイコ･デュエルディスクが最たるもので、ディヴァインがサイコ･デュエリストを量産する目的で、と言うなら納得のいく話だ。
「しかしディヴァインは…」
「…そうね」
奴はダークシグナーとの戦いの時、ミスティーの怒りを買って地縛神に喰われた。とても生きているとは思えない。
「…ということはディヴァインの遺志を継ぐ誰か…なのかしら？」
「断定は出来ないが…」
マスターDの姿は未だにはっきりしないが、一つだけ確かなことがある。
どんな奴であろうと、俺達を仲間同士で傷つけ合わせるような奴を絶対に許すわけにはいかない、そして今度こそ勝って、元の世界に帰ってみせる。
俺はそんな闘志を改めて固めたのであった。