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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第95話 異次元の死闘(特別企画)

第95話 異次元の死闘(特別企画) 作:ター坊

「こんなもんだろ」
「ふぅー。広いからなぁ」
「まぁ当番の仕事だからしっかりしないとな」
俺・城之内・クロウは風呂掃除を終えた。銭湯くらいの大きさのためなかなか苦労したが、全員で使うものを綺麗にしたという達成感がある。
「さてと、クロウ。例の計画をやるぜ」
「おう!」
「計画?何の話だ?」
「あぁ!えっと…まぁなんだ。気にすんな」
「そうそう。あ!ユイ!そう言えばまだ湯を張ってねぇだろ」
「そう言えばそうだな」
俺はクロウに促され、湯の蛇口を捻りに向かう。
キュッキュと回すと岩をイメージした造型のオブジェから湯が流れ落ちる。さてとこれで終わりだ。そう思った時だった。

ツルン

「うぉ!」
足を滑らせ転んだ…と思ったら違う。まるで背中から崖底に向かって落ちるような奇妙な感覚に襲われながら意識が遠退く。


「…あれ?ユイは?」
「さぁ?もう出たんじゃねぇか?それよか城之内」
「おう!そうだな。早く隠れ場所を…」










……あれ?ここはどこだろう。
気が付くと銭湯ではなく、どこか古めかしい建物が並ぶ道端の草むらに倒れていた。俺はまさかまた別の世界にやって来たのか?とりあいず起き上がって歩き出す。
時刻は夜なのか、空には満天の星が煌めき、月は優しい光で地を照らしている。こういう光景は都会じゃ見れない、田舎ならではであろう。……異世界に来たのにこの状況を楽しめるなんて俺も慣れたな。
しばらく歩いていると明かりが光る一軒の屋敷があった。決して豪華という訳ではないが落ち着いた雰囲気の古き良き屋敷といった趣で個人的には好ましい印象だ。

ポツポツ

「雨か…?」
頭に水の雫が触れる。まぁこのくらいなら

ピチャ、ピチャ

おっと!強くなってきたな。さっきまで綺麗な星空だったのに。仕方ない。あの屋敷に行こう。
玄関辺りに着くと雨足は強くなり、とても出歩けるような状況ではない。
「優しい人だと良いけどな」
俺はそんな期待を抱いてドアを叩く。

ガチャ

「はーい。どなた?」
出てきたのは初老くらいのおばさんだろうか。何はともあれ物騒な雰囲気はない。
「え~と。…私は旅の者ですがこの雨です。止むまでで良いので雨宿りをさせて下さい」
なんだよ旅の者って。どっかのゲームじゃねえよ!
「そうなのですか?こんな屋敷でよろしければどうぞ。あ、私はガネリと言います」
そう言ってその女性―ガネリさんは俺を屋敷に通した。
内装は掃除が行き届き、とても綺麗だ。
「ガネリおばさん。その人は?」
出てきたのは俺と同い年か下くらいの青年だ。ガネリさんの孫?いや、おばさんと言ったから違うのか?
「えぇ。旅の方で…名前は……」
「ああ。申し遅れました。私はユイと申します」

通された部屋はリビングだろうか。広い間取りで食卓テーブルや椅子、棚なども揃って普段の暖かい団欒の光景が目に浮かびそうだ。その部屋にはさっきの青年の他にもう一人の青年、それに少女二人がいた。
「ユイさん。よろしければどうぞ」
「あ。ありがとうございます」
ガネリさんはここにいる人数分のホットミルクが入ったマグカップを持ってきてくれた。
「それじゃあ改めまして…。私は」
「あぁそういう固いのは抜きでいいぜ?俺は仁ノ森(じんのもり)カケル。よろしくな」
「あぁ。よろしく。じゃあ…お言葉に甘えて…。俺はユイだ。よろしく頼む」
「ユイ?なんだか女の子みたいな名前だね」
「こらルナ。失礼よ」
「いや、いいさ。よく言われるし」
「あはは…。そうなんだ。私は牧瀬凛香(まきせ りんか)。こっちはルナよ」
「よろしくねユイさん」
ルナ?この子外国人だろうか?
「そして俺が霧野遊牙(きりの ゆうが)だ。よろしく頼む。ユイ」
「あぁ。こっちこそ」
先程のカケルとは違い、落ち着いた青年だ。
「それでユイさんはどこから来たの?」
いきなり、凛香さんがキツい質問をぶつける。
「えーっと…。たぶん聞いたことはないかも知れないけど、新横浜って言う国から来たんだ」
「シンヨコハマ?確かに分からないわ」
「どの辺なんだ?」
「うーん。かなり遠くとしか言いようがないかな?」
「そうなのか…?じゃあこの街にはなんかの縁があって来たのか?」
「いや。気の向くままの旅だからな。…ちなみに、ここはどこなんだ?」
「ここか?ここは少し前まで灰色の街って呼ばれたけど…」
「灰色の街?」
そこからはカケルが(なかなか熱く)説明してくれた。かつてこの街は荒れ果て、日が差すことのない暗い灰色の空が広がる不毛の地として誰も近寄らなかったという。と言うのもノーンとか言う奴の計画で太陽の光が遮られていたそうだ。そのノーンを打ち破り、街に光を取り戻したのが遊牙と俺達だ!とカケルが言った。
「とまぁ、今はこの街は復興に向けて動き出したってところだ」
「この街にそんなことが…」
そんな英雄御一行が目の前にいるって不思議だな。
「ねぇねぇユイさん!それってデュエルディスクでしょ?ユイさんもデュエルするの?」
腰のホルダーに付いてるデュエルディスクにルナちゃんが食い付く。
「あぁ。やるけど」
「私とデュエルしてくれませんか?チャリティーデュエル大会の為に少しでもデュエルして強くなりたいんです!」
「チャリティーデュエル大会?」
「あぁ。これな」
そう言ってカケルが1枚のチラシを見せてくれた。
「街の復興の為に…か。素敵な企画だな」
「だろ?なんならお前も参加するか?」
「いや。チラシだと大会まであと5日、予選も1日で終わらないし、この街に滞在するのは難しいかな」
マズイ。さすがにそれだけの日数、みんなから離れる訳にはいかない。
「なんなら部屋ひとつ貸すよ」
「ガネリさん。お気持ちは嬉しいですが、払う路銀もありませんし…」
「遠慮することはない。あんたも出るといい」
ここでそれでも出たくない!とは言いづらい。
「それでは…お願いします」
ガネリさんは満足そうに頷いた。
「じゃあユイさん、お願いしまーす!」
ルナちゃんはリビングの開けたスペースへトコトコ駆け、俺もその後を追う。
「それじゃあ…」
「デュエル!」

ルナちゃんのデッキはフレグランスと呼ばれる見たことがないカテゴリであったが、もう慣れたもの。というより俺の救世者も相手にとっては未知だからお互い様だった。互いに攻めと守りが入れ替わるシーソーゲームとなったが、ついにファイナルターンを迎える。
「俺のターン、ドロー。…これで決める!」
「ふぇ?」
「魔法カード『無限の可能性』を発動!これで墓地のシグナムとチューナーモンスター・シエラをチューニング!シンクロ召喚!『運命の救世者 ギア・デスティニー・ドラゴン』!さらに墓地の『救世の十字架』を除外し、フレグランス・ナイトの攻守を1000ダウンさせ、効果も無効にする」
「そんな!?」
「ルナのフレグランス・ナイトの攻撃無効効果が使えなくなったか」
「めちゃめちゃ強いじゃねぇか、アイツ…」
「行くぞ!バトル!ギア・デスティニー・ドラゴンで攻撃!」
「あわわ!罠カード発動!『フレグランス・スイートスリープ』!えーっと。これで相手のモンスターは全て守備表示となり、次のターン終了時まで効果が無効となる…っと」
罠が発動した途端、甘い香りが眠りの世界へ誘う。
「まだだ!ピュアリーのペンデュラム効果発動!このカードを破壊し、このターン、救世者は魔法・罠の効果を受けない!よってバトルは続行される!」

運命の救世者 ギア・デスティニー・ドラゴン ATK 2900 VS 月華の花騎士 フレグランス・ナイト ATK 1600

「けど、まだ1200残って…」
「バトルフェイズ終了時、ギア・デスティニー・ドラゴンの効果発動。これでこのターン与えた戦闘ダメージと同じ効果ダメージを与える」
「今受けた戦闘ダメージは1300…。じゃあ…」
「俺の勝ちだ」
「キャアァァ!」
ギア・デスティニー・ドラゴンのバーンダメージがトドメとなった。

「ふぅ。負けちゃった…」
「でもいい勝負だったぞ、ルナ」
「遊牙!ホントに!?」
「あぁ。戦った俺もそう思うぞ。きっと大会ではイイ線行けるだろう」
「いや、それはアンタもだぜ」
「そうそう。融合・シンクロ・エクシーズ・ペンデュラムまで使うなんて」
「ああ。街の外には出たことないが、外のデュエリストはそんなに強いのか?」
ちょっと本気を出しすぎたか。いやでも手加減できるような相手でもなかったし…。
「ねぇ、遊牙ぁ!カタキ取ってよー」
「そうだな。俺自身も戦ってみたいし…いいか?」
「あぁ。俺は別に…」
「遊牙。いけないよ」
「ガネリおばさん…」
「ユイさんは旅で疲れてるだろうから、そう取っ替えひっかえでされたらご迷惑よ」
「いいえガネリさん、俺は別に…」
「そう…だな。ルナ、すまないがお前のカタキ討ちは明日だ」
「う~ん。でもユイさん明日からずっといるもんね。またデュエルしてくれますか?」
「あぁ。もちろん」
「やったー♪」



夜も更け、雨の音も止んでいた。俺はとりあいず遊牙とカケルの部屋に泊まることとなった。しかし、帰れるか否かの不安で眠れずにいた。
「なぁユイ。少しいいか?」
「遊牙か。どうした?」
「…少しここでは話しにくいから庭に」
「あぁ…」
やはり嘘やハッタリは苦手だな。どうもバレたっぽいぞ。
外に出て、遊牙と庭に向かう。
「…やっぱり旅人が手荷物0なんて変だよな」
「…ユイ。ルナとデュエルしている時のお前からは何も悪意は感じなかった。ガネリおばさんも信用したからこそ屋敷に入れたと思う。でも…」
「分かった。正直に話そう。最も信じてくれそうもない話だけどな」
俺は遊牙に打ち明けた。自分がこことは違う別の世界から事故で来たこと。俺がいた世界のこと。そこでの日々のことを。遊牙は話に割って入らず黙って聴いてくれた。
「ざっと今話したのが事実だ。それを信じろと言うのも無理だと思うけど」
「…いや。信じよう」
「本当か?」
「あぁ。ここまできて嘘をつくとは思えないし、それにさっきも言ったがお前は悪人には見えない」
「そうか…。ありがとう」
「俺こそ疑ってすまなかった。…それと約束する。やり方は分からないが、必ず帰る方法を見つけてお前を元の世界に送り届けてみせる」
「遊牙…。ありがとう…」
「聞かせてもらったぜ(わよ)」
え?俺と遊牙が振り向くとカケル・ルナ・凛香さん・ガネリさんがいた。
「それにしても異次元からデュエリストか!カッコいいぜ!」
「私、異次元の人とデュエルしちゃったんだ♪」
「どうりで見たことないカードだと思った…」
「悪い子じゃなくて良かったわ。ユイさんや。早く戻れると良いですね」
「みんな…。今の話を本気で信じてくれるのか?」
「うん!ねぇユイさん。異次元ってどんな世界なの?お話聞かせて」
なんだろう。悩んでた自分が馬鹿らしくて笑いが込み上げる。
「そうだな…。最近の話で、海賊船が降ってきた話はどうだ?」


結局、昨晩は話が盛り上がり、全員が寝静まったのはだいぶ夜が深くなった頃だった。
そして朝が来た。城之内達には何も言わずいなくなったからな。向こうはユイが行方不明だと大騒ぎになっているだろう。
「おはようさん、ユイ!」
「カケルか。おはよう」
一足先に部屋を出た俺の後ろにカケルがいた。
「朝早いんだな、お前」
「俺は大会の実行委員だから色々と仕事があってな」
「そうなんだ。頑張れよ」
俺はカケルを見送った後、昨日のリビングに行く。
「ユイさん。昨日はよく眠れましたか?」
「はい。おかげさまで」
「ユイさん、おはよー!」
「はい、おはようルナちゃん」
リビングには出掛けたカケルを除き、全員が揃っていた。
朝食を済ませた後、俺もこの屋敷の掃除などの家事を手伝う。さすがにタダで泊まってる以上、働かねば。朝方から日差しが強く、昨日の雨で濡れた地面もすっかり乾いていた。庭に洗濯物を干すのを手伝っている。
「ユイって男の子なのに家事上手よね」
「まぁ、一人暮らしが長かったからね。向こうの仲間の所でも料理作ったり掃除してたりしたさ」
「そうなんだ」
凛香(さん付けしなくても良いと言われた)と他愛もない話をしていると



ゴロッピッシャーン!ゴロッピッシャーン!ゴロッピッシャーン!


初めて遭ったあのときのような、大きな雷が轟いたが次第に収まる。
「凛香!ユイ!大丈夫か!?」
「凛香!!ユイさん!!」
屋敷から遊牙とルナちゃん、少し遅れてガネリさんが出てきた。
「一体なんだったのかしら。今の雷…」
「遊牙…怖いよ」
「大丈夫だぞ。ルナ」
「あれは?」
俺は気付いてしまった。庭の端に招かれざる者がいることを。
「どなた?」
ガネリさんが大きな声で呼び掛ける。するとそいつは跪いた姿勢から立ち上がる。
「なっ!」
全員が息を呑んだ。そいつは2mを軽く越える巨体と浅黒い上半身裸の皮膚、それと顔をすっぽり覆うようなフードを被った不気味な出で立ちだった。そして腕には
「あれは…サイコ・デュエルディスク!」
「ユイ。なんだそれは?」
「人間の精神や意識を侵食して凶暴なデュエリストにさせてしまう…。そんな悪魔の兵器とも言えるものだ」
「…ウオオォォ!」
突如、その巨人は雄叫びをあげ、デュエルディスクを構える。

シュボ、ヒュン、カッチャン

「何!?」
「これは」
その巨人のサイコ・デュエルディスクから2本の鎖が射出され、手錠のような先端が俺と遊牙の足首を捉える。
「遊牙!」
「ルナ!危ないから近付くな!」
「これ解くには奴とのデュエルで勝つしかないようだ…」
「そのようだな…」
俺と遊牙はデュエルディスクを構える。
「悪いな遊牙…。俺達の世界の面倒事なのに」
「気にするな。それに昨日、約束しただろ?」
やり方は分からないが、必ず帰る方法を見つけてお前を元の世界に送り届けてみせる。ルナちゃん曰く、遊牙は必ず約束を守るカッコいい人、とのこと。
「無事な状態でユイの仲間たちの所へ送り届けてみせる!」
「そうか…。ありがとう。じゃあ遊牙!アイツを倒すぞ!サイコ・デュエリストのコイツが街に出て暴れだしたら大会どころじゃなくなるぞ!」
「あぁ!みんなの復興の象徴、壊させはしない!」
「デュエル!」


【2VS1の変則デュエル。遊牙→ユイ→巨人の順】

「ユイ!俺から行くぞ!」
「あぁ!任せた!」
「遊牙!頑張って!」
「俺のターン。俺は『コープスナイト・ウェイス』を召喚」
闇の甲冑を纏う、影の騎士が現れる。ルナのフレグランス同様、この世界特有のカテゴリのようだ。
「さらに自分のフィールド上にコープスナイトが存在する場合、手札からチューナーモンスター『コープスナイト・アリエル』を特殊召喚できる!!」
チューナーということはシンクロ軸か。展開方法もオーソドックスでクセがない。タッグパートナーとしてはやり易い方だ。
「俺はレベル4の『コープスナイト・ウェイス』にレベル2の『コープスナイト・アリエル』をチューニング!闇の甲冑よ!勝利の剣をその手に抱きて、憚る敵を打ち払え!シンクロ召喚!現れろ!『コープスナイト・デッドシェリー』!!」
長髪の美しい姫騎士が降臨する。
「デッドシェリーはシンクロ召喚成功時、墓地から1枚コープスナイトを手札に戻せる。俺はアリエルを手札に戻してエンドフェイズ時、墓地に送られたウェイスの効果発動。デッキからコープスナイトを1枚加えることができる。俺は『コープスナイト・エリー』を加えてターンエンド」
実質、手札消費なしでシンクロ召喚できるとは便利だな。
「俺のターン。俺は『金管の救世者 シエラ』を召喚。コイントス判定」

チリーン…表!

「これによってデッキから『奏笛の救世者 アルル』を手札に加える。カードを2枚伏せてターンエンドだ」
さて、問題はあの巨人がどんな戦法を取ってくるのか?だ。
「……」
巨人は黙ってドローする。ここから攻撃可能になる。
「手札を全て捨て、フィールド魔法『無限世界(ムゲンワールド)』…」
なんとか聞こえるくらいの声で巨人がそう告げる。なんらかのカードを発動した瞬間、周りの景色が宇宙のような空間となった。
「これは!?」
「『無限世界』…。全ての世界が集まる場所」
「全ての…世界?」
「『無限世界』効果発動」
巨人のデッキが光る。
「デッキから特殊召喚。『ブラック・マジシャン』『E・HEROネオス』『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』」
一気にモンスターが3体特殊召喚される。
「バトル。『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』で『金管の救世者 シエラ』に攻撃」
「させるか!罠カード『強制脱出装置』で手札に戻して…」
しかし、『オッドアイズ・・ペンデュラム・ドラゴン』は全く効いてない様子で突っ込んでくる。
「何!?」
「『無限世界』の効果で呼び寄せたモンスターに魔法・罠は効かない。よって続行」

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK 2500 VS 金管の救世者 シエラ ATK 1000

「『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』が相手に与える戦闘ダメージは倍になる」
「うぉっ!」
やはり、サイコ・デュエルディスクの力か…。衝撃が体に走り、痛みが伝わってくる。
「ユイ!」
「続いて『ブラック・マジシャン』でユイにダイレクトアタック」
「おっと!手札から『護法の救世者 ゴールドゴーレム』を捨て、このターン全てのダメージを0にする」
「…ならば『E・HEROネオス』で『コープスナイト・デッドシェリー』を攻撃」
「俺はデッドシェリーの効果発動!1ターンに1度、コープスナイトが攻撃対象になった場合、その攻撃モンスターを除外する!」
デッドシェリーは空間を切り裂いて次元の割れ目を作り、ネオスはその中に吸い込まれた。
「ターン終了時。『無限世界』の効果発動。自分のフィールド上に存在するモンスターの攻撃力の合計値の半分だけLPを回復する。『ブラック・マジシャン』と『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』の合計値の半分、2500回復し、ターン終了とする」

ユイ:LP 5000
遊牙:LP 8000
巨人:LP 10500

「俺のターン。ドロー!俺は手札から『コープスナイト・カリン』を墓地に送ることでこのターン、コープスナイトの攻撃力を500アップさせる。デッドシェリーで『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』に攻撃!」

コープスナイト・デッドシェリー ATK 2700 VS オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK 2500

「俺はモンスター1体をセットし、ターンエンド」
「俺のターン!ドロー(来たか)!『奏笛の救世者 アルル』を召喚。コイントス判定」

チリーン…表!

「これで墓地からシエラを蘇生!俺はレベル4のアルルにレベル4のシエラをチューニング!シンクロ召喚!現れろ!『天舞の救世者 アメウズメ』!アメウズメの効果発動。手札のシエラとフレンディーを見せてダイスロール」

コロコロ…4!

「これによって俺のLPを500回復し、『ブラック・マジシャン』をデッキの一番下に戻して、俺は2枚ドローする。さらに『黄薔薇の救世者 フレンディー』をPゾーンに置き、LPを1000払って効果発動。このカードを破壊してデッキから『赤薔薇の救世者 ラブリ』と『白薔薇の救世者 ピュアリー』をPゾーンにセッティング!これでレベル4~8のモンスターが同時に召喚可能!ペンデュラム召喚!エクストラデッキからフレンディー、手札から『友愛の救世者 エミュリン』!2体の効果発動。まずはエミュリンの効果使用時、LPを800支払いラブリの効果発動。表の効果を適用させ、墓地からゴールド・ゴーレムを手札に戻す。続いてフレンディーのコイントス判定」

チリーン…裏!

「これでこのターン、アメウズメの攻撃力を1500アップさせる。俺はエミュリンとフレンディーでオーバーレイ!エクシーズ召喚!『闘魂の救世者 ダイブレード』!」
本来ならばシンクロしてフレンディーを使い回したかったが、この先のことを考えれば戦闘破壊耐性を持つこいつが有益だろう。
「ダイブレードの効果発動。オーバーレイユニットを1つ使い、デッキから『救世の継承』を加える。バトル!2体でダイレクトアタック!」

闘魂の救世者 ダイブレード ATK 2600 + 天舞の救世者 アメウズメ 3800

「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

ユイ:LP 3700
遊牙:LP 8000
巨人:LP 3900

「ドローフェイズは『無限世界』の効果でスキップされる」
そんなデメリットがあったのか。しかし…
「デッキからモンスターを特殊召喚。『青眼の白龍』を3体特殊召喚」
強力モンスターが無制限に供給されるのは辛い。
「墓地より永続罠『邪悪なる鎖』を発動。これにより『青眼の白龍』3体をリリースし、『青眼の白龍3体連結(トライデント)』をエクストラデッキから特殊召喚し、このカードを装備する」
赤いドクロのような装飾が付いた鎖が3体のブルーアイズを繋ぎ止める。
「『邪悪なる鎖』が存在する限り『青眼の白龍3体連結』は相手が発動するカードの効果を受けない。バトル。」
「させるか!速攻魔法『サイクロン』を発動し、『邪悪なる鎖』を破壊。そうすればデッドシェリーの効果も通用するようになる!」
「ユイ!」
「『邪悪なる鎖』はフィールドから離れる場合、代わりにデッキの一番上のカードを除外する」
「何!?」
「『コープスナイト・デッドシェリー』に攻撃。攻撃宣言時、相手は手札からカードを発動できない」

青眼の白龍3体連結 ATK 4500 VS コープスナイト・デッドシェリー ATK 2200

「くっ…!」
遊牙もかなり苦しそうな表情だ。
「遊牙!しっかりして!」
「遊牙…!」
デュエルを見ている凛香とルナちゃんから悲鳴が上がる。
「大丈夫か!?遊牙!」
俺達のやり取りを無視して巨人は冷淡にデュエルを進める。
「さらに『邪悪なる鎖』の効果。装備モンスターが相手に2000以上の戦闘ダメージを与えた場合、次の自分のターン終了時まで相手はモンスターを召喚・特殊召喚できない」
「…すまない…。ユイ……。ダメージを受けたばかりに」
「気にすんな。あんな反則効果、予想出来なかったさ」
そんな効果あるならゴールド・ゴーレムを使ってた。だがもうなってしまったものは仕方ない。死にそうなときになるまで温存しよう。
「さらに『青眼の白龍3体連結』は1ターンに3回攻撃できる。2回目はそのセットモンスター」
「あと2回も!?」

青眼の白龍3体連結 ATK 4500 VS コープスナイト・ギミー DEF 0

「『コープスナイト・ギミー』は戦闘で破壊された時、デッキから3体のコープスナイトを墓地に送れる。俺はダリアン・フラーケン・レオンを墓地に送る」
「『青眼の白龍3体連結』は守備モンスターを破壊した場合、このカードの攻撃力の半分のダメージを与える」
「ぐわあぁぁ!」
守備表示で凌ぐことすら許されないのか?
「3回目。ダイレクトアタック」
マズイ!この一撃が決まれば遊牙は!行くぞ!ゴールド・ゴー
「ユイ…!大丈夫だ。俺は墓地に存在する『コープスナイト・レオン』の効果発動。相手の直接攻撃宣言時、墓地のこのカードを特殊召喚し、このモンスターと強制バトルさせる!」
巨大な盾を持った大柄な闇の騎士が遊牙を守るように虚空から現れる。

青眼の白龍3体連結 ATK 4500 VS コープスナイト・レオン DEF 2000

「また、このバトルでレオンは戦闘破壊されない!」
「ターン終了時、『無限世界』の効果で攻撃力の半分、2250分LPを回復し、ターンエンド」

ユイ:LP 3700
遊牙:LP 3450
巨人:LP 6150

「俺のターン。ドロー。俺は手札の『コープスナイト・ディビット』をレオンに装備させる。これでレオンの攻撃力は500アップし、戦闘破壊されなくなる。俺はこれでターンエンド」
「俺のターン。手札のゴールド・ゴーレムとシエラを見せてアメウズメの効果発動。ダイスロール」

コロコロ…1!

「俺は500回復する」
ここで二分の一を外すか…。
「俺はこれでターンエンド」

ユイ:LP 4200
遊牙:LP 3450
巨人:LP 6150

「ドローフェイズはスキップされる」
「そっちのスタンバイフェイズ時、手札からゴールド・ゴーレムを捨て、このターン発生するダメージを全て0にする」
「このままターンエンドし、LPを回復する」

ユイ:LP 4200
遊牙:LP 3450
巨人:LP 8400

さてと。これで召喚できるようになった。ここから反撃だ。
「俺のターン、ドロー。俺はチューナーモンスター『コープスナイト・エリー』を召喚し、効果発動!墓地から『コープスナイト・ギミー』を特殊召喚する。さらに墓地に存在する『コープスナイト・フラーケン』の効果発動!自分フィールド上のコープスナイト1体の攻撃力を0にし、特殊召喚する!俺はエリーの攻撃力を0にして特殊召喚」
遊牙のフィールドに闇の騎士達が揃った。
「俺はレベル3の『コープスナイト・ギミー』にレベル3の『コープスナイト・エリー』をチューニング!闇の甲冑よ!その魂に炎を宿し、煌めく剣を掲げん!!信じる仲間よ、新たな姿へ進化せよ!!シンクロ召喚!!燃え滾れ!!『コープスナイトプライム・フレアウェイス』!!さらにレベル2の『コープスナイト・レオン』にレベル5の『コープスナイト・フラーケン』をチューニング!闇の甲冑よ!鋼の闘志をその身に宿し、敵を切り裂く騎士となれ!シンクロ召喚!現れろ!『コープスナイト・デッドジャック』!」
炎の剣を持つ騎士と誇り高き闇の騎士が並び立つ。
「フレアウェイス…。最初に出したウェイスの進化派生か?」
「さらに、相手フィールド上に存在するモンスターの攻撃力が自分のコープスナイトよりも高い場合、墓地に存在する『コープスナイト・ダリアン』を除外して効果発動!これにより、デッドジャックはこのターン、ダイレクトアタックができる。そしてフレアウェイスは相手フィールド上にエクストラデッキから特殊召喚したモンスターがいる場合、ダイレクトアタックができる!行け!」
二人の騎士は剣を構え駆けて行く。ブルーアイズを飛び越え、巨人に斬りかかる。
「闇炎(こくえん)のクロスブレイク!!」

コープスナイトプライム・フレアウェイス ATK 2100 + コープスナイト・デッドジャック ATK 2500 直接攻撃

剣の軌跡が十字に走り、巨人は大きく仰け反る。
「あとは頼んだぞ、ユイ!」
「あぁ!任せとけ!」
「俺はこれでターンエンド」

ユイ:LP 4200
遊牙:LP 3450
巨人:LP 3800

「俺のターン、ドロー!トドメにはピッタリのカードだ!魔法カード『無限の可能性』!これで『輪廻の救世者 メビウス・ライフ・フェニックス』を召喚し、ゴールド・ゴーレムとアルルをオーバーレイユニットにする。メビウス・ライフ・フェニックスの効果発動!オーバーレイユニットを全て使い、コイントス判定」

チリーン…表!表!表!

「これでブルーアイズ達とアメウズメ、そしてデッドジャックのレベルの合計×200、攻撃力がアップする!さらに、罠カード『救世の継承』をゴールド・ゴーレムを選択し、デッキから『輝翼の救世者 プラチナフェザー』をサーチ。バトルフェイズ。メビウス・ライフ・フェニックスで『青眼の白龍3体連結』に攻撃!ダメージステップ時、手札からプラチナ・フェザーを墓地に送り、攻撃力を1000アップさせる!」
「!?」
燃え盛る翼は太陽の如く輝き、ブルーアイズへと突撃する。
「これでThe ENDだ!インフィニティ・ソウル・ノヴァ!!」

輪廻の救世者 メビウス・ライフ・フェニックス ATK 8900 VS 青眼の白龍3体連結 ATK 4500

「ヌォォオオォォ!!」


LPを0にすると、巨人は膝から崩れ落ち、倒れこんだ。
「やった…のか?」
「だといいんだが…」
「遊牙!見て!」
俺と遊牙がが顔を見合せ話していると急に凛香が叫び、急いで視線を倒れた巨人に戻す。
「な、なんだと?」
巨人はまるで砂のようにサラサラと崩れていく。サイコ・デュエルディスクも俺達を繋いでた鎖も、同様にサラサラと音もなく風に流れていく。
「なんだったんだ…」
「一応、終わった…ってことで良いよな?」
俺達は少々拍子抜けしてしまった。しかし、本当になんだったんだろうか?サイコ・デュエルディスクということは間違いなくマスターDに関係がある奴だろう。例えば刺客だったとか。俺達が知らない所でマスターDは何か行動を起こしてるのかも知れないな。
「遊牙ぁ!遊牙ぁ!」
ルナちゃんが今にも泣きそうな顔で駆け寄ってくる。
「遊牙ぁ!大丈夫?痛いところない?」
「あぁ。俺はなんでもない。心配掛けてすまなかった」
遊牙は優しくルナちゃんの頭を撫でる。
「全く遊牙は…ん?今度はなんだろうね?」
ガネリさんが目を向けた先を追うとエクシーズ召喚するときの光の渦のようなものが広がっていた。その中心には
「あれ?船?」
そこにはメアリーの海賊船が映っていた。まさか……入ったら戻れる?そう思い近寄る。
「ユイ。危ないぞ」
「いや、でも  ぬお!?」
俺はその光の渦に引き込まれてしまった。


「ハァ、ハァ…。みんな!大丈夫か!?」
「カケル!」
「急にでかい雷がこっちら方面に落ちたみたいだから大丈夫かと思って急いで帰ってきたんだが…あれ?ユイは?」
「それが…」
「ユイさん…」
「ユイ…。無事だと良いんだが…」





「痛っ!」
激闘の後なのに、なんとも地味な帰還である。気付けば船のデッキに尻餅をついていた。帰ってきたんだよな?一晩黙っていなくなったけどなんて言い訳しようか?正直に話すと混乱を起こしかねないから言いたくはないんだが。とりあいず船内に戻ろう。
「ユイっち。ここにおったんか」
バッタリとメアリーに出くわした。
「あ、あぁ。悪いな」
「ん?何がや?」
「いや、1日くらい空けちゃって…」
「変なやっちゃなぁ。…せや。風呂掃除のことで話あるから、ちょい来てな」
「え?風呂掃除?」
どういうことだ?昨日やって今日もやったのか?俺は訳も解らぬままメアリーについていく。


「何?」
連れてこられたのは風呂場だった。そこには椅子に縛り付けられた城之内とクロウ、それとピリピリした様子の女性陣がいた。
「えっと…。どうなってるんだ?」
「ユイ!助けてくれ!俺達は無罪だと言ってくれ!」
「城之内!黙りな!」
舞が城之内の頭を丸めた雑誌みたいなもので叩く。
「何があったんだ?」
「ユイ様…。実は…」
遊月さんの話を纏めると、掃除が終わったと思って脱衣場に入ったらクシャミがした。そこには城之内とクロウがいて覗きをしようとしたのではないかと疑いを掛けられた、という訳だ。…どうやら俺が遊牙達の世界に飛ばされて向こうでは一晩過ぎたが、こっちではそんなに時間が経っていないようだ。
「…フフ」
「え?ユイ様?」
「あーごめんごめん。…あ、そう言えば、俺が湯を張る前に城之内とクロウが計画とか言ってたなー」
「ユイ!テメェ!俺達を売る気か!?」
「ねぇ、クロウ。計画ってどういうことかしら?」
「アキ、目ぇ怖いって!」
騒がしくも、安心できる仲間の所に戻れて

「…本当に良かった」







コラボレーションに協力してくださった ほーがん さん、ありがとうございました!
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ギガプラント
これはこれは素敵な共闘。
救世者とコープスナイト、主人公カテゴリが互いに助け合うと格好良いですね。巨人さんの思い切ったチートカードっぷりもいいですねw (2015-07-16 23:02)
ター坊
ギガプラントさん、コメントありがとうございます。
主人公同士の対決なども考えたのですが、今までのコラボ企画だと、主人公対決(名無しのゴーレムさん)→主人公同士のタッグマッチ(光芒さん)と来たので、被らない対決方式は何かと考えたら「主人公2人でボスキャラを叩き潰す」になりました。ちなみに巨人の「青眼の白龍3体連結」は知る人ぞ知る東映版遊戯王の劇場版で海馬が使ったカードをアレンジしたものです。元々は打点4500で8連続攻撃…恐ろしや~ (2015-07-16 23:36)
ほーがん
こちらこそありがとうございました。
私のキャラクターが他の作品で見られるなんて夢のようです。そして、細かい描写に、私の話をよく読んで下さったんだなと感じました。本当にありがとうございます。
「闇炎のクロスブレイク」いいですね。私の話でも使わせてもらっていいでしょうか?
(2015-07-17 01:16)
ター坊
ほーがんさん、コメントありがとうございます。
嬉しいと言う言葉が何よりもありがたいです。『遊戯王ロストゲート』は人物の設定や世界観が好きな作品ですので、それを表現できたようで良かったです。必殺技についてですが、気に入ってくれたのであればどうぞどうぞ♪ (2015-07-17 06:56)

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110 第174話 勝利の宴、そして最後の願い 986 6 2017-04-20 -
179 第175話 貴方と共に生きた証 1377 9 2017-05-11 -
108 第176話 限界を越えた力 DLIVE 1014 6 2017-05-24 -
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