第113話　誰も望まない戦い　作：ター坊

~柳生サイド~

拙者は城之内殿、クロウ殿、ゴーシュ殿と共に船を出て、死したと思ったユイ殿の元に向かった。


しかし、ユイ殿の様子は異様だった。
「……」
目が死んでいるような…。本当にユイ殿か？
「おい…。ユイ…だよな？まさか……ば、化けて出た訳じゃないよな？」
「…」
「どうしたんだユイ！お前らしくねぇノリだぜ？」
「……」
「おい！ユイ！俺達がどんなに心配したと思ってんだ！なんか言えよ！…ん？」
クロウ殿が何か気付いたようだ。…なっ！
「ユイ殿…。その黒い決闘籠手、もしや！？」
「……ああ」
ユイ殿は初めて口を開きその決闘籠手を展開する。
「ユイ！それは！？」
「サイコ･デュエルディスクじゃねぇかよ！」
「お前までマスターDの言いなりになっちまったのかよ！」
「俺はすべてを消す。それだけだ」
ユイ殿は無表情のままこちらを見据える。その目に闘志も殺気も感じない。まるで人形のような冷たさを感じる。
「ちきしょう！なら俺が目を覚まさせてやるぜ！」
「へっ！城之内。それは俺がやるぜ！」
「拙者も…っ！」
やはり昨日の痛みが…！
「柳生無理すんな！ここはこのクロウ様に！」
「いやここは」
「…面倒だ。3人まとめて掛かってこい」
「けっ！ずいぶん余裕なノリじゃねぇか」
「テメェの強さは知ってるが」
「俺達相手にナメてんじゃねぇか？」
「御託はいい。来い」
「ああ！やってやるぜ！」

「デュエル！！」

【順番は城之内→ゴーシュ→クロウ→ユイ】

「俺のターン！『ワイバーンの戦士』を召喚！カードを3枚伏せてターン終了だ！」
「俺のターン！『H･Cダブル･ランス』召喚！効果で手札からもう一体のダブル･ランスを召喚！俺はこの2体でオーバーレイ！戦士族モンスター2体でオーバーレイ･ネットワークを構築！エクシーズ召喚！『H-Cガーンデーヴァ』！カードを2枚伏せてターンエンドだ！」
「俺のターン！永続魔法『黒い旋風』を発動し、『BF-残夜のクリス』を召喚！『黒い旋風』の効果で『BF-そよ風のブリーズ』を手札に加える。さらにそよ風のブリーズは効果で手札に加加わった時、特殊召喚できる！俺はレベル4の残夜のクリスにレベル3のそよ風のブリーズをチューニング！黒き旋風よ、天空へ駆け上がる翼となれ！シンクロ召喚！『ＢＦ−アーマード・ウィング』！カードを2枚伏せてターンエンド！」
「…俺のターン、ドロー。魔法カード『炎王の急襲』を発動」
む？ユイ殿の山札が変わっている？
「いや。あのデッキ…。ユイが救世者を手にする前に使ってたデッキだぜ？」
「俺はこの効果で『炎王邪神獣バジリニクス』を特殊召喚」
山札から一枚せりだし、その札の式霊が召喚される。黒い焔が揺らめく。
「へっ！よく知らねぇモンスターだが、敵じゃねぇ！罠カード『奈落の落とし穴』を発動！これで除外だ！」
「やるじゃねぇか城之内！」
「おっし。これでユイの出鼻は挫いたぜ」
「…『炎王獣バロン』を召喚。カードを2枚伏せてターンエンド」
「俺のターン、ドロー！」
「バジリニクスの効果発動」
「何！？」
空に亀裂が走り、そこを砕いてユイ殿の黒い不死鳥が場に降臨する。
「バジリニクスは墓地に送られた、または除外されたターンの次のスタンバイフェイズ時、特殊召喚される。そして効果発動」
黒い不死鳥が翼を翻すと黒い爆風が城之内殿達の場に吹き荒れる。
「何！？ガーンデーヴァが…」
「アーマード･ウィングも」
「バジリニクスが自身の効果で特殊召喚に成功した場合、相手フィールド上のカードを全て破壊し、破壊した枚数×400ダメージを与える」
「何！？ぐあっ！」
「っ！」
「くっそー！」
「どうだ？少しは分かったか？俺の苦しみが」
「苦しみ…だと？」
「地獄に落ちてどれ程の痛みだったか。貴様らには想像もつくまい。しかし、マスターDはそんな俺を復活させてくれた」
「だからって、敵に寝返るのかよ！」
「いや。俺は気付いたんだ。正しいのはマスターDだと。誰かが支配しなければ次元が乱れ、新たな争いの火種になる。その支配者がマスターDになる。それだけだ」
「俺は認めねぇ！…俺はモンスターをセットしてターン終了」
「城之内。威勢のわりにはその程度か？」

城之内:LP 6800
ゴーシュ:LP 6800
クロウ:LP 6400
ユイ:LP8000

「ユイ！目を覚ませ！俺のターン、ドロー！相手の場にモンスターが存在し俺の場にモンスターが存在しない場合、手札から『H･C強襲のハルベルト』を特殊召喚できる。さらに『H･Cスパルタス』を召喚！俺はこの2体でオーバーレイ！2体の戦士族でオーバーレイネットワークを構築！エクシーズ召喚！『H-Cエクスカリバー』！エクスカリバーの効果発動！これで攻撃力が」
「させない。手札から『幽鬼うさぎ』を墓地に送り、エクスカリバーを破壊」
「ユイ！テメェ…。相変わらず強いな」
「笑う余裕なんてあるのか、ゴーシュ」
「へっ。そうだな。これもノリってやつだ俺はこれでターンエンド」
「……」
「俺のターン、ドロー！！『BF-極北のブリザード』を召喚！これで墓地から残夜のクリスを特殊召喚する！俺はレベル4の蒼炎のシュラにレベル2の極北のブリザードをチューニング！シンクロ召喚！『BF-星影のノートゥング』！」
「罠カード『激流葬』。これで全てのモンスターを破壊する」
「けっ！だがノートゥングの効果は受けてもらうぜ！ホーミング･ソード！」
クロウ殿の式霊が剣を投げ、それがユイ殿を掠める。
「……」
ユイ殿の顔は微動だにしない。
「…くっ。ユイ！本当にテメェはサイコ･デュエルディスクに心まで乗っ取られたのかよ！？俺達との日々、無かったことにする気かよ！」
「…俺は乗っ取られていない。ただマスターDの言うことに道理があって、それに賛同しているにすぎない。それが間違いと言うなら勝って証明してみせろ」
「コノヤロウ！俺はこのままターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー。バジリニクスが復活。城之内のモンスターを破壊。400ダメージ」
「くそっ！」
「さらに破壊されたバロンの効果でデッキから『炎王炎環』を手札に。永続魔法『炎舞-「天キ」』を発動。これでデッキから『熱血獣士ウルフバーグ』を手札に。ウルフバーグの効果でバロンを蘇生。2体でオーバーレイ。エクシーズ召喚『魁炎星皇-ソウコ』。デッキから『炎舞-「天枢」』をセットし発動。天枢の効果で手札から『暗炎星-ユウシ』を召喚。バトル」

炎王邪神獣バジリニクス ATK 2700 +　魁炎星皇-ソウコ ATK 2400 + 暗炎星-ユウシ ATK 1800　クロウに直接攻撃

「うわぁぁ！！」
「クロウ！！」
「ユウシの効果でデッキから『炎舞-「天キ」』をセット。カードを1枚伏せてターンエンド」　

城之内:LP 6400
ゴーシュ:LP 6800
クロウ:脱落
ユイ:LP 7200

「ク、クロウ殿！ご無事で！？」
拙者は吹っ飛ばされたクロウ殿に駆け寄る。
「あぁ…。大丈夫だが…。くそっ！ユイに俺達の言葉はもう届かねぇのかよ！」
悔しさのあまり、クロウ殿は地面を殴る。
「これは…！？ユイ様！」
この声は！
「姫！」
いや、姫だけではない。美羽殿やメアリー殿、他の皆も集まる。
「八兵衛！これは一体！」
「…！遊月、美羽。来たか」
「ユイ…。…！？それはサイコ･デュエルディスク！どうしてこんなことをするの！？」
「美羽。何を言ってるんだ。お前だってこの力でマスターDに手を貸してたじゃないか」
「それは…。でも今は間違ってたって分かるの！だからもう…」
「おおっと。美羽。そこまでだぜ」
「ゴーシュさん？」
「俺達が目ぇ覚まさしてやるから待ってな」
「ゴーシュ。まだ勝つ気でいるのか？」
「ああ！当然だぜ！」
「無駄なのに。どうしてマスターDの思想が分からないんだ」
「へっ！分かりたくもないな！ユイ！俺達はデュエリストだぜ？負けるその瞬間まで諦めないぜ！」
「城之内もか…」
「行くぜ！俺のターン、ドロー！『ロケット戦士』を召喚！少しでもライフを削れるなら俺は行くぜ！『ロケット戦士』で『暗炎星-ユウシ』に攻撃！！」
「永続罠『炎舞-「天セン」』を発動。これでユウシの攻撃力を700アップさせる。さらに永続効果で300アップ」

ロケット戦士ATK 1500 VS 暗炎星-ユウシ ATK 2300

「だけど『ロケット戦士』は戦闘で破壊されず、ダメージも受けないぜ。カードを1枚伏せてターン終了だ！」
「俺のターン、ドロー！…モンスターをセットしてターンエンドだ！」
「俺のターン、ドロー。セットしている『炎舞-「天キ」』を発動し、『勇炎星-エンショウ』を手札に。そしてエンショウを召喚して効果発動。天キを墓地に送り城之内のセットカード破壊」

ﾊﾟﾘｰﾝ『マジックアーム･シールド』

「ユウシでも天キを墓地に送り、ゴーシュのセットモンスターを破壊」

ﾊﾟﾘｰﾝ『H･C夜襲のカンテラ』
 
「さらにエンショウとユウシでオーバーレイ。エクシーズ召喚『武神帝カグツチ』。これでデッキの上からカードを5枚墓地に送る」

ｼｭﾊﾞﾊﾞ『火舞太刀』『炎王神獣ガルドニクス』『炎王の急襲』『炎舞-「玉衡」』『炎王獣ヤクシャ』

「バトル」

炎王邪神獣バジリニクス ATK 2700 + 武神帝カグツチ ATK 2900 + 魁炎星皇-ソウコ ATK 2600　ゴーシュに直接攻撃

「ゴーシュ！」
「城之内！あとは任せた！」
「まだだ。リバースカードオープン。『炎王炎環』の効果でソウコを破壊し、『炎王神獣ガルドニクス』を特殊召喚。『ロケット戦士』に攻撃」

炎王神獣ガルドニクス ATK 2700 VS ロケット戦士 ATK 1500

「ぐああぁ！」
「城之内。デュエルを諦めないと言うなら見せてみろ。俺はこれでターンエンド」

城之内:LP 5200
ゴーシュ･クロウ:脱落
ユイ:LP 7800

「俺のターン…、ドロー！……」
「城之内。お前は頭では解ってるハズだ。勝つ手はないと」
「…」
「どんなに足掻いても無駄だ。第一、君は英雄ではない。それを俺に勝って心を取り戻すなんて。思い上がりも良いところだ。何かのヒーローにでもなった気か？」
「……ターン…終了…」
「そう。それで良い。お前はおとなしく負ける。そしてマスターDに協力しろ。俺のターン、ドロー。バトル」

炎王邪神獣バジリニクス ATK 2700 + 炎王神獣ガルドニクス ATK 2700 + 武神帝カグツチ ATK 2900　城之内に直接攻撃

「城之内殿！」


あまりに圧倒的すぎる。城之内殿、ゴーシュ殿、クロウ殿、いずれも手練れのハズ。それを一度に相手をして勝つとは。


~美羽サイド~

ユイが帰ってきた。
そんな話を聞いて駆けつけたらそこにいたのはユイの姿をした何かだった。城之内さんも負け、その場にいた全員が戦慄した。
「…。さて。美羽。遊月。来てもらおうか」
「来てもらう…ってどこに」
「マスターDの所だ。美羽。お前の協力が必要不可欠だ」
嫌だ…。恐い。逃げ出したい。……でも。
「…ユイ、お願い！戻って！」
「美羽。デュエルディスクを構えて俺と闘(や)る気か？」
「美羽。下がって。ここは私が」
「ううん。アキ。お願い。私にやらせて」
「どうしてなの？」
「私だって、正直言って……恐いよ。私に手を差し伸べてくれた人と戦うなんて。とっても辛いし嫌だよ…。でも」
「でも？」
「そんな優しいユイがみんなを傷つける姿を見るのはもっと辛いの！だから私が正気に戻す！」
「美羽…。お前も所詮は城之内達と同じ考えか。良いだろう。デュエルしよう。そしておとなしくさせてマスターDの元へ」

「デュエル！」



私は一生懸命やった。戦ったけど、やっぱり強い…。

美羽:LP 1300　手札･フィールド0
ユイ:LP 5000　手札0　フィールド　『炎王邪神獣バジリニクス』『炎王神獣ガルドニクス』『魁炎星皇-ソウコ』『炎王獣バロン』『暗炎星-ユウシ』『炎舞-「天キ」』『炎舞-「天枢」』『炎舞-「天セン」』

「これでトドメだ」

炎王邪神獣バジリニクス ATK 2700　直接攻撃

終わった―。
ごめんね。ユイには助けてもらえたのに、私は助けることが出来なかった―。






ｷｭﾋﾟｰﾝ









―あれ？
「何！？ダメージが通ってない！？何故だ！？ん？バトルロイヤルモード？誰だ？乱入したのは！？」
私のライフは少しも減ってなかった。一体…誰だろう？