第145話　闇に喰われる！　作：ター坊

~十代サイド~

廊下の暗闇から歩いてきた男は薄汚れた白衣を着ていた。
「お前は一体誰なんだ！」
（十代）
（ん？ユベル）
（気を付けるんだ。奴からは邪念を感じるよ。何千年という積年の邪念がね）
（邪念？）
よく見たらその男の首には金色の首飾りがぶら下がっている。なんだか遊戯さんの千年パズルに似ているような気がする。
「誰…か。そうだな…宿主様の名を借りるならバクラだなぁ」
「バクラ？」
「名も無きファラオに関わりがある者さ」
名も無きファラオ…遊戯さんが『もう一人の僕』と呼ぶあの遊戯さんのことだ。
「お前の目的はなんだ！」
「目的…ねぇ。そうだな…特に無いが強いて言えば、面白いゲームだからさ」
「ゲームだと？」
「ああ。多くの世界が交じるこの世界での死亡遊戯(デス･ゲーム)。それを考えたマスターDはなかなか良い奴だぜ」
「ふざけんじゃねぇ！こちとらいい迷惑だぜ！」
ゴーシュがデュエルディスクを構える。
「ほぅ。威勢は良いようだがルールを聞かないうちに参加していいのか？」
「んだと？」
「なんせこれは闇のゲームだからなぁ」
「闇のゲーム？へっ！何をほざいてやがる」
「待って下さい！ゴーシュさん！」
「あ？Ⅲ」
「僕も文献でしか見たことはありませんけど、闇のゲームというものは実在します」
闇のゲーム…。俺も知っている。決闘都市決勝戦での遊戯さんの死闘などで出てきた危険なゲームだと聞いたことがある。
「だから、ここは僕が行く！」
「Ⅲ！何でだよ！そんな危険なこと、させる訳にはいかねぇよ！」
「遊馬…。ううん。遊馬は体力を温存すべきだし僕にだってトロンの紋章の力がある。だから心配しないで」
そう言ってⅢが前に出る。
「待てよⅢ！」
「え？クロウさん？」
「さっきはアキに先行かれたからな。今度こそ鉄砲玉のクロウ様の出番だぜ！闇のゲームだかなんだか知らねぇが、俺はそんなもんにビビらねぇよ！」
「クックック…。そうか。なら二人まとめてかかってきな！」
「けっ。後悔すんなよ？行くぜⅢ！」
「はい！」


「デュエル！！」

【順番はクロウ→Ⅲ→バクラ】


「俺のターン。俺の場にカードが存在しないとき、手札から『BF-逆風のガスト』を特殊召喚！さらに『BF-上弦のピナーカ』を召喚する！俺はレベル2の逆風のガストにレベル3のピナーカをチューニング！シンクロ召喚！『BF-煌星のグラム』！俺はカードを1枚伏せ、エンドフェイズにピナーカの効果発動！こいつがシンクロ素材として墓地に送られた時、デッキからブラックフェザー１枚を手札に加える！俺は『BF-精鋭のゼピュロス』を加えるぜ！Ⅲ、勝とうぜ！」
「はい！僕のターン。僕は『先史遺産マッドゴーレム･シャコウキ』を召喚！さらに手札から『先史遺産クリスタル･スカル』を墓地に送ることでデッキから『先史遺産クリスタル･ボーン』を手札に加える！カードを1枚伏せてターンエンド」
クロウは１ターン目から飛ばしてシンクロを決め、Ⅲは慎重な構えを見せた。
（問題はあのバクラという男がどんな戦術かを繰り出すか…だね）
「俺様のターン、ドロー！魔法カード『儀式の下準備』を発動！これでデッキから儀式魔法『闇の支配者との契約』と『闇の支配者-ゾーク』を手札に加えるぜ。そして儀式魔法『闇の支配者との契約』を発動！これで手札から『儀式魔人ディザーズ』『儀式魔人デモリッチャー』『夢魔の亡霊』を生け贄に降臨せよ！『闇の支配者-ゾーク』！」
（大量のモンスターを消費しての儀式召喚…。かなりハイリスクだけど何か策があるね）
「ゾークの効果発動！サイコロを振り、その目によって効果が変わるぜ」
「へっ！ギャンブル効果で勝てると思ってんのかよ！」
「それはどうかねぇ？ダイスロール！」

ｺﾛｺﾛｺﾛ…2！

「スーパークリティカルヒット。相手フィールドのモンスターを全て破壊する！ゾーク･インフェルノ！！」
「クソッ！まぐれ当たりが！」
「ダイスは嘘をつかないんでね」
「くっ！」
「さらに生け贄に捧げた３体の悪魔族を除外し、来い！『ダーク･ネクロフィア』！２体でそれぞれのプレイヤーにダイレクトアタック！」

闇の支配者-ゾーク ATK 2700　クロウに直接攻撃

ダーク･ネクロフィア ATK 2200　Ⅲに直接攻撃

「ちっ！」
「うっ…」
二人共、かなりのダメージを受けたな…。ん？

ｼｭｳｩｩｩ

「なっ！」
「クロウ！」
「Ⅲ！」
俺を始め、遊星と遊馬、そして他のみんなも叫び声を上げる。
「遊星…そんな心配しなくたって…ってなんだこりゃ！？」
「これは一体！？」
二人自身も異変に気付いたようだ。そう。二人の体が…
「俺の腕がねぇ！？」
「僕の…足が……」
何かに食われたかのように削げ落とされていたのだ。
「気に入ってくれたかな？俺様の闇のゲーム。ライフを失えば闇の餌食になる。まぁ最も、これは俺様が前にやったデュエルの再現だがなぁ」
「じゃあ、もしクロウとⅢのライフが尽きちまったら…」
「永遠の闇に葬られるぜ」
これが…闇のゲームなのか…！
「さて。俺様はこのままターンエンド。さぁゲームは始まったばかり。楽しませてくれよ」

クロウ:LP 5300
Ⅲ:LP 5800
バクラ:LP 8000

「俺のターン、ドロー！『BF-精鋭のゼピュロス』を召喚！さらに俺の場にブラックフェザーがいることで『BF-疾風のゲイル』を特殊召喚できる！そしてブラックフェザーの特殊召喚に成功した時、罠カード『ブラック･リターン』を発動！これでお前のゾークを手札に戻すぜ！」
「それはどうかねぇ」

カイン！

「なっ！弾かれやがった！」
「ゾークを儀式召喚した時の生け贄を覚えているか？」
「儀式召喚した時の生け贄？」
バクラがクロウにそう問いかける。ゾークを儀式召喚した時の生け贄に捧げたのは儀式魔人と呼ばれるモンスター２体と通常モンスター１体。…儀式魔人…儀式……まさか！
「俺様が儀式召喚する際に使用したディザーズとデモリッチャー、コイツらは儀式モンスターに耐性を付与するのさ」
「耐性だと？」
「そう。今のゾークにはゾークを対象にするカードと罠カードが効かねぇのさ」
「んだと！インチキ効果もいい加減にしやがれ！なら俺はゲイルの効果発動！これで『ダーク･ネクロフィア』の攻守を半分にする！そしてレベル4のゼピュロスにレベル3のゲイルをチューニング！黒き旋風よ、天空へ駆け上がる翼となれ！シンクロ召喚！『ＢＦ−アーマード･ウィング』！アーマード･ウィングで『ダーク･ネクロフィア』に攻撃！」

BF-アーマード･ウィング ATK 2500 VS ダーク･ネクロフィア ATK 1100

「ほう。お見事…」
しかし、バクラの体は削れないでそのままだ。
「なっ！テメェ…。俺達におかしなことしたわりにはテメェはやられねぇのかよ！」
「おや？俺様が消えたら困るのはそっちじゃないのか？」
「どういう意味だ？」
「テメェらが勝てたら俺様もデュエリストの端くれ。相応の対価をくれてやるぜ。マスターDの正体や行き方をなぁ…。それに闇のゲームに勝てば体も元に戻るから安心しな」
「それはホントかよ？」
「ああ」
「へっ！ならお前をとっととぶっ飛ばしてやるぜ！俺はこれでターンエン」
「おおっと！ここで呪いが発動するぜ…」
「呪い？」
バクラがそう言うとデュエルディスクからモクモクと煙のようなものが立ち上ぼり、それはアーマード･ウィングにまとわりつく。
「『ダークネクロフィア』が破壊されたターンの終了時、装備カードとなってモンスターに憑依し、俺様の手駒になるのさ」
「なんだって！？」
アーマード･ウィングが相手の場に移る。

クロウ:LP 5300
Ⅲ:LP 5800
バクラ:LP 6600

「僕のターン、ドロー…。モンスターをセットしてターンエンド」
「随分早いターンエンドだなぁ。まぁいい。俺様のターン、ドロー！ゾークの効果発動！ダイスロール！！」

ｺﾛｺﾛｺﾛ…4！

「まぁなぶり殺しにするならちょうど良い目だ。そのモンスターを破壊するぜ！！」
「だけどやられっぱなしじゃない！僕は罠カード『ストーンヘンジ･メソッド』を発動！これで僕はデッキから『先史遺産ネブラ･ディスク』を守備表示で特殊召喚する！」
「ほう。もつねぇ。だが、それは仲間を見捨てるってことだなぁ。俺様は『首なし騎士』を召喚。３体のモンスターのダイレクトアタックでテメェの相方は終わるぜ」
「しまった…！」
「行け！アーマード･ウィングのダイレクトアタック！」
「安心しなⅢ！このクロウ様はしぶといぜ！相手の直接攻撃宣言時、手札から『BF-熱風のギブリ』を特殊召喚できる！」
「ちっ！セコいマネを！」

BF-アーマード･ウィング ATK 2500 VS BF-熱風のギブリ DEF 1600

「ならさらに別々に攻撃してやるぜ！」

闇の支配者-ゾーク ATK 2700 VS 先史遺産ネブラ･ディスク DEF 1500

首なし騎士 ATK 1450 クロウに直接攻撃

「くっ！」
クロウのライフが減少したことで今度は腹や脚の辺りが削れていく。
「クソッ…！」
「俺様はこれでターンエンド。闇のゲームはまだまだ続くぜ？」

クロウ:LP 3850
Ⅲ:LP 5800
バクラ:LP 6600