第136話　目覚めるデュエリスト達　作：ター坊

~遊戯サイド~

…ここは……？
（もう一人の僕）
「相棒」
この奇妙な状況に相棒も動揺を隠せないようだ。
（僕達は確か家でデッキの調整をしていたハズだ）
「ああ。だが突然大きな雷が鳴って…」
（停電になって暗闇になってしまった…。少しして灯りがついたと思ったら）
「ここにいる。…という訳だな」
部屋にいたはずの俺達は見知らぬ場所にいた。
内装は童話の世界をイメージしたようなデザインで、あちこちに何かのキャラクターの彫像や凝った装飾のテーブルやイスがある。よく見ればそれらのテーブル席は半円を描くように並べられていることに気付く。また、段々になっておりコンサートホールのような造りだ。その段々の最下層にはステージのようなものがある。何かのショーが行われていたのだろうか。
「ん？これは」
ふとテーブルを見ると何か置かれていた。
「これは…ハンバーグ？」
テーブルには皿に盛られたハンバーグがあった。付け合わせの野菜やハンバーグは６割ほど食べられており、ナイフやフォークはソースで汚れたままでテーブルに置かれている。
（ここはレストラン…なのかな。でも…）
「ああ。分かっている」
相棒もこの不自然さには気付いたようだ。レストランだとしたら料理があるのは不思議ではない。だが、だとしたらこれを食べていた人はどこに行ったのだろうか。そもそも、人の気配が一切ない。一体どうなって




「武藤遊戯。いや、名も無きファラオ…と言うべきか」
「！？」
突如、後ろから声がして振り返る。気配は一切なかったハズだが。
「そんなに驚かないでくれたまえ」
そこには奇妙な出で立ちの男が立っていた。細身でスーツを着ていて、赤い髪を伸ばし、変なデザインの仮面を被っていた。声色からして男のようだが…。
「何者だ！言え！」
「とりあいずマスターDと名乗っておこうか。そんなことよりも…デュエルをしないかい？」
「何？」
コイツ…何を企んでいる？
（気を付けて。もう一人の僕）
「ああ。コイツ…今までにない不気味な威圧感を感じる……。だが、受けて立つぜ！」
「フッフフ。伝説とはどれ程のものか見せてもらおうか」
「デュエル！！」



だが…
「エクシーズ召喚！！」
「何！？コイツは一体…」
今までに見たことがない黒いドラゴン。そして聞いたこともない謎の召喚方法。俺はその直後に攻撃を受けて…





― ―っ
ここは…。
目を開けると薄暗い部屋の中、ベッドで眠っていたようだ。もう一人の僕は引っ込んでるようだけど…大丈夫みたいだ。
「遊戯！目ぇ覚ましやがったか！！」
懐かしく感じる声と思った瞬間、首を抑えられる。
「じょ、城之内君！」
「遊戯！良かったぜ！目が覚めて…。俺は、俺は…」
「城之内。暑苦しいから離れてやりな」
「遊戯、久しぶりじゃのう」
「…お久しぶりです」
城之内くんだけじゃない。舞さんや梶木漁太、それに夜光くんのR･A計画の時にいたカードプロフェッサーの玲子さん…だったかな。見知った顔が並ぶ。
「城之内くん。僕は一体…」
「えーっと…どっから話したらいいかな…」
「いいわよ、城之内。アタシが話すから。まぁ聞いたところで信じられるか分からないけど」
そう言って舞さんが今までの経緯を説明してくれ、僕は黙って耳を傾けた。





~十代サイド~

「おっかしいな…」
俺は確か急に雨が降ってきて近くの木の下に雨宿りしていたハズだ。そしたら突然、巨大な雷が落ちてきて気付いたら…。
「ここは…病院か？」
とても暗いが目が慣れてきて見えた景色がそんな感じだった。けどあっちこっちの壁や待合室のソファーはボロボロで今もやってるとは思えない。まるで廃墟だ。
（ここは…次元が違う場所のようだ）
「何？ユベル。どういうことなんだ？」
（あの雷の影響で僕達は別の次元に飛ばされたようだ。だけど…）
「だけど？」
（飛ばされた、というよりも誰かに招かれた、と言うべきかも知れないね）
「招かれた？」
ユベルとそんな話をしていると



ｶﾂｰﾝ…ｶﾂｰﾝ…ｶﾂｰﾝ……


向こうの廊下の曲がり角から誰かの足音が近付いてくる。
「誰かいるのか？」

ｶﾂｰﾝ…ｶﾂｰﾝ……

足音だけが廃墟に響く。
「答えろ！」

ｶﾂｰﾝ…

最後の一歩を踏み出して、曲がり角から出たところで姿を捉えた。
「お前は誰だ！」
「…精霊を従えるデュエリスト、遊城十代だな」
「俺を知ってるのか？」
「ああ。君たちのことは調べたからね」
君たち？俺以外にも誰かいるのか。
「申し遅れた。私の名はマスターD。さぁ、デュエルをしよう」




――はっ！
夢…か？
「ドロップアウトボーイ！目を覚ましたノーネ！」
「十代！大丈夫？」
「良かったよ、十代君」
「フン。この寝坊助め」
「あら~。万丈目のアニキもすごーく心配してたじゃない」
「うるさい！」
クロノス先生、明日香、吹雪さん、万丈目、おジャマイエロー？
「俺は一体…何をやってたんだ……？」
「やっぱり覚えてないのね」
「そうだね…。どこから話すべきか」
一体…どうなっているんだ…？





~遊馬サイド~

どこだココ？それが俺の第一印象だ。デュエル庵で稽古つけてもらおうと思って行ったものの雨とか降りだして、でっけー雷が近くに落ちたと思ったら…こんな所に。デュエル庵の周りの森の木とは明らかに違う木が生えてる。辺りを見ながら歩いていると拓けた場所に出た。川が流れている。その向こう岸には信じられない光景があった。

ウオオォォン！！
グオォォン！！

「ウッソォォ！！」
向こう岸に…恐竜がいた…。信じられねぇけど、現に俺の目の前にいる……。
「すっげー！！」
あの首が長いのなんて言ったっけ？えーっと…
「九十九遊馬くん…だね」
「だ、誰だ！」
突然後ろから声がして慌てて振り向く。木々の間からスーツ姿の仮面を着けた変な奴がいた。
「仮面なんか被って…なんだお前は！」
「いきなり会ってお前とは失礼な子だ。礼儀のできてない子は嫌いだなぁ」
「何言ってやがる！いきなり声掛けられたらビックリするだろ！？」
「フッフ。それもそうか。では自己紹介しよう。私の名はマスターDだ」
「マスター…D？」
「遊馬くん。早速で申し訳ないがデュエルをしないかい？」
「デュエル？」
「おや？アストラル抜きで戦えるかな？」
「なっ！」
どうしてアストラルのことを知ってるんだ？さっきの恐竜のことといい、もしかして別の世界の奴なのか。
「このデュエルに勝ってお前の正体を暴いてやる！D･ゲイザー、セット！」
「フッフッフ…」
「デュエル！」




しばらくして俺はだんだん圧されて…
「シンクロ召喚！！」
な、なんだその召喚方法は…！俺はその後…



――ん？
目を開けると天井が…。
「遊馬ぁぁ！」
「ぬお！」
こ、小鳥！？急にしがみついてきた。
「バカバカバカ！本気で心配したんだからね！私、私…」
「小鳥…。これは一体」
どうなってるんだ？
「あらあらお熱いこと」
「遊馬…。戻ってきてくれて良かった」
「ああ。ホントにな」
「へっ。手間取らせやがって」
「全くだぜ」
「あら。凌牙、Ⅳ。心配でそわそわしてた人の言葉とは思えませんわ」
「「うるせぇ！」」
いもシャーク、Ⅲ、ゴーシュ、シャーク、Ⅳまで。
「みんな、どうしたんだ…？」
「やっぱり覚えてないんだね。…とりあいず僕達が今まで遭遇してきたこと、順を追って説明するよ」
俺はⅢの話を聞くことにした。