第107話　降臨する巫女の化身　作：ター坊

【ターン順　ユイ→遊月→柳生→明智→信重　　信重はLP10000でスタートし、ドローと攻撃も信重から】



「俺のターン。『金管の救世者 シエラ』を召喚。コイントス判定」

ﾁﾘｰﾝ…表！

「これでデッキから『錬成の救世者 オリハルコン･クロック』をサーチ。カードを2枚伏せてターンエンドだ」
「私の番。札を三枚伏せて『水鏡の白鳥 ミナモ』を召喚。効果によって守備表示にし、山札から一枚墓地に送って頂きます」
「フンッ」
「私の番はこれにて。八兵衛」
「御意！拙者の番！拙者は永続魔法『聖(ひじり)の刀 清輝(キヨテル)』と『霊の刀 鎮雪』を発動。鎮雪の効果で八百の損傷を与える！」
「…」
「さらに清輝の効果で五百の命値を回復。札を二枚伏せて終了だ」

ユイ･遊月･明智:LP 8000
柳生:LP 8500
織田信重:LP 9200

「続いては拙者の番です！拙者は『亡霊武者ノロイ』を召喚。札を一枚伏せて終いとします」
さぁ。よいよ次は信重の番だ。どんな戦術を。
「余の番。山札より一枚引き、魔法札『獄界招来』を発動。これにより余の手札と山札を全て墓地に送る」
「な、何！？」
信重の戦術が全く読めない。このターンで俺達全員を仕留めなければデッキ切れで敗北となる。とんでもない戦術があるのか？
「明智。アイツのデッキ…戦術はどうなってるんだ？」
「申し訳ないですが拙者にも。信重の実戦は初めて見ます」
全くの正体不明のデッキと言うことか。
「そして余は墓地にいる『妖魔衆　阿』と『妖魔衆　吽』の効果発動。この二体を蘇生し、得苦師伊頭召喚を行う」
「墓地でエクシーズ召喚だと！？」
「得苦師伊頭召喚。現れよ火の巫女の力よ！黒星八！『紅蓮の不死鳥サクラビ』！！」
燃え盛る巨大な鳥が光の渦より羽ばたく。
「あれは…火の巫女の化身！？」
「遊月、分かるのか」
「はい…。なんだか私のアデラノナナタキと同じ波長を感じるのです…」
…そう言えば信重は五行の巫女の力を吸収したみたいな話があったな。ということは遊月以外の木火土金の力を使えるのか？
「墓地の『妖魔衆　百々目鬼』の効果。こやつと墓地の式霊を除外し融合召喚を行う！」
「融合召喚！まさか…」
「影政、喜ぶが良い。再会ぞ。融合召喚！現れよ金の巫女の力よ！『黄金の魔神サドダイダラ』！」
太陽のように眩しい金色の輝きを放つ巨人が立ち上がる。
「くっ！義父上の式霊を…！」
「さらに墓地の儀式魔法札『冥府降霊』を発動。この札と式霊を除外し墓地の儀式式霊を召喚する降臨せよ！木の巫女の力よ！『深緑の覇王オオウドウロウ』！」
巨体なカマキリのような昆虫がこちらを睨み付ける。
「くっ！墓地から次々と！」
「そして墓地の罠札『冥界の振り子』を発動。除外することで墓地より偏出湯羅武札を二枚選択し置くことができる。余は朱怪得流一の『妖魔衆　牛頭』と朱怪得流十一の『妖魔衆　馬頭』を張る！」
「だが手札も何もないからペンデュラム召喚は…！」
「この二体の偏出湯羅武効果発動。墓地より一体のみ偏出湯羅武召喚を行う」
「そんな…！」
「現れよ土の巫女の力よ！『大地の明王フドウフジ』！」
これで4体目…。山のような巨体を誇る力士のような巨人が現れる。まさか1ターンでエクシーズ･融合･儀式･ペンデュラムを決めてくるとは。信重はこのターンで決めるつもりで来たようだ。しかしこれは逆にチャンスだ。この猛攻を耐えきれば信重はデッキ0のために敗北する。
「まずは裏切り者を叩くか。貴様の義父の札でな」
確か明智のノロイには戦闘破壊した相手を道連れにして破壊する効果がある。信重が自分の部下のカードを把握してないとは思えない。
「行け。サドダイダラ」

黄金の魔神サドダイダラ ATK 2800 VS 亡霊武者ノロイ ATK 0

「な、何！？」
ノロイの攻撃力は1000あったハズ…。それが0になった挙げ句、効果も発動しないとは…。
「魔神の攻めを防げるものはなし。続いてサクラビで柳生に直接攻撃！」
「八兵衛！！」
「姫！ご安心を！罠札『秘剣-龍翔』を発動し、サクラビを墓地送りにして半分の数値を削る！」
柳生さんの龍翔は確実に捉えた。不死鳥は翼を両断され地に伏せた。
「…サクラビの効果」
信重がそう呟くと不死鳥は燃え上がり再び飛び立った。
「ば、馬鹿な！」
「サクラビが御緒羽阿麗湯新斗を持った状態で墓地に送られた場合、復活して墓地の札一枚を御緒羽阿麗湯新斗として加え、余の命値を攻撃力半分だけ回復し、攻撃力も千上がる」
ライフ差が広がるのも柳生さんがダイレクトアタックを食らうのもマズイ！
「行け。サクラビよ」
「させません！罠札『水鏡の写し身』を発動し」
「遊月姫よ。主の力では何も守れぬ。オオウドウロウの効果発動。墓地の札一枚を除外して魔法罠の発動を止める」
「それこそさせない！俺は手札から」
オリハルコン･クロックを発動しようとした時だった。デュエルディスクが反応しない。
「あれ？」
「オオウドウロウがいる限り、余の番に手札から札の発動はできぬ」
な！つまり…

紅蓮の不死鳥サクラビ ATK 3500　柳生に直接攻撃

「ぐああぁぁ！！」
…ゴメン柳生さん。防げなかった。
「今度はフドウフジでの攻撃だが攻撃宣言時、全ての式霊の表示形式を攻撃表示に」
ミナモの攻撃力は0…。ダメージを最小限にするには
「速攻魔法『救世の聖火』を発動！これでフドウフジを破壊する！」
「是非に及ばず。フドウフジの効果を発動。これで破壊対象をサクラビに移す」
「何！？」
正しい対象を破壊できなかったためドローもできず、厄介なサクラビを墓地送りにしてしまった。
「サクラビは再び蘇る」
破壊されたサクラビは再び爆炎と共に飛翔する。
「フドウフジでミナモを攻撃」

大地の明王フドウフジ ATK 2500 VS 水鏡の白鳥ミナモ ATK 0

「きゃっ！」
「姫！」
「さらにサクラビで異国の者に攻撃」

紅蓮の不死鳥サクラビ ATK 3500　俺(ユイ)に直接攻撃

「うぅっ！」
「さらにオオウドウロウで異国の者と影政に攻撃」

深緑の覇王オオウドウロウ ATK 2600　俺(ユイ)と明智に直接攻撃

「うっ…」
「くはぁッ！」
「余はこれで終いとしよう」
「拙者はノロイを復活させます…」

ユイ:LP 1900
遊月:LP 5500
柳生:LP 5000
明智:LP 2600
織田信重:LP 11700

4体の五行の巫女の化身。その強さは人数による優位を簡単に覆してしまった。
無限に復活する不死鳥
全ての抵抗を無力化する黄金の巨人
連続攻撃とこちらの牽制を封じる蟷螂
守備体勢をこじ開けてくる力士
どれも厄介だ。それともうひとつ判明したことがある。……コイツ…遊んでいる。今のターン、少なくとも誰か一人は倒せたハズだ。それなのに攻撃をわざと分散させて俺達を弄んでいる。しかも、弄べると言うことはデッキ切れによる敗北を起こさない算段も出来ていることを意味している。
「クックック…」
信重は俺達が苦しむ様を見て、歪んだ愉悦の笑みを浮かべていた。