第182話　想いを乗せて、全力で　作：ター坊

デュエル大会はいよいよ終盤といったところまで進んできた。
「続いては準決勝第２戦！ユイさんVS美羽さんの対決です！」
「ここで勝った人が先程勝ち進んだ遊戯さんとの決勝戦になりますね！」
残す試合はこれを含めて２回という事もあり、今まで以上の盛り上がりとなる。
「よくここまで頑張ったな」
「うん…。でもユイに勝てるかな…」
「おいおい。やる前からそんなんでどうする？…あれを見てみろ」
「？」
ユイのやる目線の先にはＤｕｅｌｙに開いた大穴があった。これが開いた日もずいぶん前に感じられる。
「…」
美羽の顔色がやや曇る。
「…不思議なもんだな」
「えっ？」
「ディヴァインが起こした今回の事件は全ての次元を滅ぼしかねない滅茶苦茶な出来事だった。だけど、それが全部終わるとそこまで悪くなかったとも思えるんだ」
「どういうこと？」
「この事件が起きたからこそ、こうして別の世界の遊月達とも出会えた。同じ世界に住んでた俺と美羽でも出会う縁があったかどうかも分からなかったんだ。確かに傷つけ合って辛い時もあったけど、それと同じくらい一緒に過ごして楽しい事もあった。それに…」
「それに？」
「俺は大きく変われた。この世界で過ごしたおかげで忘れていた情熱を取り戻したし、大切な過去を振り返られたし、お前と遊月って言う一生大切にしたい人にも出会えた」
「ユイ…」
「お前もこの世界のおかげで変わった所があるはずだ。それを俺にぶつけてみろ！」
「…！…うん！」
美羽の顔色が戻りデュエルディスクを構える。

「行くよ、ユイ！」
「来い！」
「「デュエル！！」」

「私のターン。私は手札の『幻麗華団（カレイドファンタジア）-フレイム・キマイラ』を見せて魔法カード『美麗魔術（マジカル・ショータイム）-トリックカード』を発動！自分のデッキの上からカードを手札の枚数分めくって、その中で手札を入れ替えることが出来る！」
美羽はデッキの上からカードを４枚めくり手札と見比べる。
「私は３枚を入れ替えて、デッキの上に好きな順番で戻す。さらに『美麗魔術-オープニングパレード』を発動！これでデッキの上から５枚めくってその中の幻麗華団のペンデュラムモンスターをエクストラデッキに送る！」
美羽のデッキの上から５枚のカードは

『幻麗華団-エムシー・サキュバス』
『幻麗華団-ジェイド・ワイバーン』
『幻麗華団-カード・ウィッチ』
『美麗魔術-ペンデュラムブランコ』
『幻麗華団-ナイフダーツ・プリンセス』

「４枚はエクストラに送って残りは墓地へ。そして『幻麗華団-フレイム・キマイラ』を召喚して効果発動。これでこのカードをエクストラに送ってエクストラからエムシー・サキュバスを特殊召喚。エムシー・サキュバスの効果でデッキから『美麗魔術-アンコールショー』を手札に加え、カードを２枚セットしてターンエンド」
「手札を調整した上でエクストラ肥やし…美羽にとっては最良の先攻だった訳か。なら俺は最高の後攻で打ち崩す！俺のターン、ドロー。『黄薔薇の救世者-フレンディー∞』をペンデュラムゾーンにセットし、ＬＰを１０００払って発動！」

ユイ:LP 8000→7000

「フレンディーを破壊してデッキから『赤薔薇の救世者-ラブリー∞』と『白薔薇の救世者-ピュアリー∞』をペンデュラムスケールにセッティング！ペンデュラム召喚！！『金環の救世者-シエラ∞』、『誠実の救世者-タリス∞』、『信念の救世者-ヴェルネッタ∞』！」
ペンデュラム召喚によって救世者達が集う。
「シエラの効果を発動。コイントス判定」

ﾁﾘｰﾝ…表！

「これでデッキから『銀麗の救世者-ミスリル・メイド∞』を手札に加える。そしてシエラがドライヴ条件を達成したことでドライヴ召喚！！来い、『純愛の真救世者-メルティエル』！」
「う…メルティエル…」
「ここまでのデュエルを見てたが、幻想麗団（ファンタジック・スターズ）から大幅に進化しているものの闇属性主力は変わっていないからな。天敵を出させて貰ったぞ」
そう、メルティエルは永続効果として闇属性モンスターの効果を無効にしつつ攻守を半減させる効果を持つため、まさに闇属性キラーとも言える性能である。ユイはこの準決勝に至るまでの美羽のデュエルを観戦し、対策を立てたのだ。
「さらにメルティエルのドライヴ召喚成功時に効果発動！ダイスロール！」

ｺﾛｺﾛｺﾛ…１！３！

「２枚ドロー。続いてタリスのコイントス」

ﾁﾘｰﾝ…表！

「表か…」
「きゃっ！」

美羽:LP 8000→6500

ユイとしては裏のハンデス効果を期待していたがそう易々とは通らない。
「今度はヴェルネッタだ」

ﾁﾘｰﾝ…裏！

「これによりこのターン、俺の救世者モンスターは貫通効果を得る！バトルだ！まずはメルティエルでエムシー・サキュバスを攻撃！」
「させないよ！速攻魔法『美麗魔術-チェンジカーテン』！！これでエムシー・サキュバスをリリースしてエクストラデッキからフレイム・キマイラを特殊召喚！！」
エムシー・サキュバスが足元に現れたカーテン付きの輪を上に投げるとカーテンが伸びてエムシー・サキュバスの姿を遮る。そして輪が重力に負けて落ちると中からいなかった筈のフレイム・キマイラが飛び出す。
「フレイム・キマイラがエクストラデッキからの特殊召喚に成功した事で相手フィールドのモンスター１体を破壊できる！破壊するのは当然メルティエル！！」
フレイム・キマイラの不意の一閃が決まり、メルティエルが破壊される。
「だが、メルティエルはタダではやられない！メルティエルが相手のカード効果によって破壊された時、フレイム・キマイラを除外させてもらう！」
「罠カード『美麗魔術-ミラージュシンクロ』を発動！これで私はフィールドのフレイム・キマイラとエクストラデッキにいるチューナーモンスター、カード・ウィッチをデッキに戻してチューニング！！忌む力宿す無垢なる傀儡師よ。その力を輝くステージの為に奮え！シンクロ召喚！！レベル６『幻麗華団-ドールマイスター・レミィ』！！」
燃える野獣と幼き魔女が重なりシンクロ召喚されたのは人形使いの少女であった。
「レミィは他のモンスター効果を受けない！」
メルティエルの光の翼の抱擁から庇うようにレミィの人形が光の翼に突撃して効果を防いだ。
「…さすがにやるな。こうも攻め手、返し手が悉く防がれるとは」
「うん、自分でも不思議なくらいかな…。前の幻想麗団よりも馴染んでるって言うか…」
「それだけお前も成長したってことだろう。だが、そう簡単に勝ちは譲らないさ。俺はバトルフェイズを終えてレベル４のヴェルネッタにレベル４のタリスをチューニング！！運命を司る機械竜よ。輝ける勝利の未来に俺を導け！シンクロ召喚！レベル８『運命の真救世者-ギアフェイト・X・ドラゴン』！！そしてカードを２枚セットしてターンエンド」
「ミラージュシンクロの効果によって特殊召喚されたモンスターはそのターン終了時にエクストラデッキに戻る」
ドールマイスター・レミィは蜃気楼のように消えてしまった。




ペンデュラムとドライヴを決めて火力で攻め立てるユイに対し、デッキのモチーフであるサーカスの奇術の如く魔法・罠を駆使して上手く攻撃と効果をかわす美羽。この２ターン分のデュエルには愛し合ってるから、などという遠慮や馴れ合いでの手加減なんか無い。

美羽はかつての弱い自分の殻を壊した、今の全力の自分をユイに見せようと―
ユイはこの世界で培った想いによって強くなった自分を以て美羽の全力に応えようと―

熱く激しくぶつかり合う。この全力の対決がいつ終わるか、そんなものは誰にも予想できない。