第59話　氷を抜けるとまた難題　作：ター坊

デュエルは璃緒の逆転勝利で幕を閉じた。
「くっ！俺もここまでか…」
「あの…黒咲さん？負かしといてなんだけど俺達はあの変な喋るペンギンの同志じゃないぞ？」
「何！？」
「えっとね、黒咲さん。みんなはね…」
唯一面識があるアユが黒咲に今までのことを話した。

「貴様らも融合次元と戦っているのか…」
「まぁそれだけじゃないけどな」
黒咲も俺達とほぼ同じ経緯でこの世界に来たが融合次元の敵と接触し、それ以降この世界と融合次元の関連性を独自に調べていたらしい。このデュエルアカデミアに侵入したのも融合次元との関係があると踏んでのことらしい。
「それよりアナータ！あの傷をどうしてくれるノーネ！？」
「何がだ」
クロノス先生は大きく抉れた壁の傷を指差して黒咲に詰め寄る。
「あ、そうだ！なぁ黒咲！協力して欲しいことがあるんだが」
「何故貴様らに協力しなければならない？」
「ちょっと！なんですのその言い草！？」
「待て、璃緒」
「ですが、ユイさん」
「実は部屋に閉じ込められてる人達がいるんだ。けど凍ってて開かなくて。それでお前のあの力で壊して欲しいんだ」
「…良いだろう。だがそれが終わったらもう俺に関わるな」
「…分かった」
「案内しろ」



俺達は先程の扉の前に戻ってきた。
ﾋｿﾋｿ…「ねぇユイ。なんでアイツの言いなりなのよ」
ﾋｿﾋｿ…「仕方ないだろ？今は人命が優先だ」
「おい！聞こえちょるかー！扉から離れぇい！」
梶木が扉をガンガン叩いて中の人達に伝える。
「じゃあ頼んだ」
「ああ。現れろ！『RR-ライズ･ファルコン』！！」
黒咲がデュエルディスクにライズ･ファルコンをセットすると実体化する。
「行け！ブレイブクロー レボリューション！」
黒咲の掛け声と共にライズ･ファルコンの爪の一撃が壁を氷ごと打ち砕く。
「ああぁぁ！デュエルアカデミアが…なんて言い訳したらいいノーネ…？」
「クロノス先生…人命のためですので…」
壁が取り払われ、中の人たちが出てくる。
「うぅ。寒かった~！」
「本当にそうですよね…」
出てきたのは女の子二人組だ。
「あ！柚子お姉ぇーちゃん！」
「え？アユちゃん？それに黒咲！」
「な！柚子か…」
アユは柚子と呼ばれる少女に抱きついた。一方の黒咲は少し動揺しているようだが。
「なんだアユ。お前の知り合いだったのか？」
「うん。柚子お姉ちゃんだよ！」
「あの…貴方は…？」
「俺はユイ。一応、みんなの代表みたなもん…かな？」
「そうですか。ありがとうございます」
「いや、礼を言うなら黒咲に言ってくれ」
「黒咲がやってくれたの？」
「あ…あぁ。まぁな…」
先程から黒咲の様子がおかしいように見える。
「あ…あの、ありがとうございました」
「えっと、君は？」
「は、はい。北森…玲子と申します。助けていただき、本当にありがとうございました」
「どういたしまして。…誰かこの中で北森さんとの知り合いは？」
「知らんぜよ」
「悪いけど分からないわ」
「私も面識がある人はこの中にはいません…」
「そうか。まぁ他にも仲間はいっぱいいるから戻ったら探せばいいさ」
「…約束は果たした。俺は行くぞ」
黒咲が足早に立ち去ろうとすると
「待ちなさい、黒咲！」
それを柚子が止める。
「俺はお前達を助けたらもう関わらないという約束で助けたんだが…」
「はー！？黒咲、またそんなワガママ言ってこの人達困らせてるの！？」

ﾊﾟｼｰﾝ！

「ぐあ！」
柚子はどこから取り出したのか、ハリセンで黒咲に一閃を決める。
「あの…柚子さんと黒咲さんはどういったご関係ですの？」
「まぁ少し前に…ちょっとね」
そのちょっとが非常に気になるが。
「そうか。で、柚子、北森さん。行く当てがないなら俺達と来るか？」
「柚子お姉ちゃん！ユイお兄ちゃんのご飯ってすごくおいしいんだよ！」
「そうなの？まぁ、あの変態ペンギンから離れられるならどこでもいいわよ！」
「私もです」
「俺は…」
「黒咲も来るの！」
こうして新たに3人の仲間が加わった。





凍てつくデュエルアカデミアを出て俺達はDuelyへと帰える途中だった。歩きながらの話ではあの喋るペンギンの話が上がる。
「そしたらアイツ、私の首筋の匂いを嗅いで…」
「気色悪いですわ！」
「辛かったんだね、柚子お姉ちゃん…」
「私も足の裏でグリグリしてくれって…」
「玲子ちゃんも苦労したのねぇ」
あのペンギン、なんでも大瀧修三と言い、詳しいことは判らないが元は人間だったらしい。喋るペンギンがいたり、この世界もいよいよ何でもありになってきたな。





「討ち取ったりいぃぃ！！」
「じいや！ハチベエ！」
通り道にある公園から何やら叫び声が聞こえてきた。
「な、なんぜよか！？」
「悲鳴…だな」
「ユイ！どうする？」
「無視ってわけにいかないだろ？行くぞ！」
俺達は謎の叫び声と悲鳴がした公園へと駆けていった。