第110話　みんなで繋いだ勝利　作：ター坊

~遊月サイド~

明智様が繋いでくれたこの番。なんとしても逆転の手を打たなくては。
「私の、番！」

ｼｭﾋﾞ…『水鏡の写し身』

ダメです…。遠呂智は札の効果を受けません。この札では逆転どころか凌ぐこともできない。
「私は札を伏せて終わりです…」
申し訳ありません、明智様…。
「拙者の番。…拙者も札を伏せて終えよう」
(八兵衛？)
八兵衛の表情は何か覚悟を決めたような感じがしました。
「余ノ番！遠呂智デ貴様ラノ式霊ヲ滅シ、攻撃シテ引導ヲ渡ソウ！！行けケエェェ！遠呂智！」
「…姫！ユイ殿！なんとしても信重を討ってくだされ！！」
「八兵衛！？何をする気ですか！？」
「拙者は速攻魔法『秘剣-活殺』を発動！！これで拙者は相手の場の最も攻撃力が高い式霊の半分の命値を失うことで戦闘幕を強制終了させる！」
「八兵衛！！」
「姫！御武運を！ぬおおぉぉ！！」
「柳生さん！」
八兵衛が遠呂智に斬りかかる。私にはそれを止めることが…。
「ぐああぁぁ！」
遠呂智に弾き返され八兵衛も後方の壁まで吹き飛ばされる。
「そんな…。八兵衛まで……」
「フ ハ ハ ハ！！遊月姫ヨ！貴様ノ宿命二巻キ込マレ、再ビ人ガ散ッタゾ！」
「……」
返す言葉もありません。私が巫女の末裔でなければと思うと…。
「だから、違うだろ！それに明智も柳生さんも散ってなんかいない！」
「ユイ様…。やめてください…。私は……」
「遊月！」
「は、はい！」
「明智も柳生さんも、俺達が勝つと信じ、自爆特攻までして俺達のターンを伸ばしたんだ。その気持ちを無駄にするわけにはいかないだろ！それに」
「それに…？」
「信重の言う宿命が嫌なら変えれば良いじゃないか。遊月が望む未来に」
「私が望む…未来？」
「ああ。お前が巫女の末裔でも争いが起きない、そんな未来を作れば良いんじゃないか？」
「できるのでしょうか…」
「出来るさ。でもそのためにはまず、信重を倒さないとな」
「ウツケメ！遠呂智二勝ツ方法ナドナイワ！」
「絶対無敵のカードはない。必ず攻略法はあるさ！」
ユイ様ってこうしてみると不思議な方です。ユイ様の言葉を聞くと、勇気が沸いてくると言うか…。頼もしく思います。
「さぁどうする？柳生さんの『秘剣-活殺』の効果でバトルフェイズは強制終了した。お前は遠呂智しかいない以上、このまま終えるしかない！」
「フンッ！虫ケラガ。ナラバ余ヲ倒シテミヨ！」
「じゃあ、そうさせてもらう！俺のターン、ドロー！」

ユイ:LP 3400
遊月:LP 5500
柳生･明智:脱落
遠呂智(信重):LP 1900

「……」
「あの……ユイ様？」
「ごめん…。さっきああ言ったけど全く攻略法思い付かないや」
「…フフ」
あれ？
「遊月、笑ったな」
「……自分でも不思議です…。こんな状況なのに」
「ま、暗く落ち込んでるよりは良いんじゃないか。俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」
「私の番…」
緊張が解れたのか、すごく落ち着いてるのが自分でも分かります。
「ユイ様？」
「どうした？」
「確かユイ様の世界での札を引くことは…」
「ああ。ドロー、だな」
「じゃあ私も、…ドロー！」

ｼｭﾋﾞ

この札は…。


織田の軍が魅河に攻めこんだ時に。
「父上！やはり私が信重公の元に嫁げば…」
「…日の本が織田に落ちれば絶望の国となろう。こうするのが正しかったのじゃ。遊月よ。これを」
「これは…。父上の？」
「ワシのような小国の主は織田に勝てんじゃろう。じゃがいつか信重と直接相まみえる時、この札で倒すのじゃ」
「なら、父上が使えば…」
「ワシには扱いきれんよ。それじゃあの遊月。有馬、柳生、お春。よろしく頼むぞ」
「はっ！命を賭して！」



この札はあの時父上がくれたもの。
「私は札を伏せて終わりです。…ユイ様。なんとか次の攻撃を凌げますか？」
「まぁ、なんとかなら」
「安心しました」
「フンッ。是非モ無シ！今度コソ終イニシテクレル！マズハ遠呂智デ全テノ式霊ヲ蹴散ラシテクレル！」

獄界邪龍 遠呂智 ATK 40000 VS 錬成の救世者 オリハルコン･クロック DEF 600　勇気の救世者 シグナム DEF 1200　水鏡の女中 ツララ DEF 1300

「遊月姫ヨ！貴様ガ信ジル異国ノ者ゴト散レィ！！」
「ダメージは通せないな！手札から『護法の救世者 ゴールド･ゴーレム』を捨ててこのターンのダメージを全て0にする！」
「イクラ伸バシタトコロデ遠呂智ハ倒セヌ！余ノ番ハ終イジャ！」
「俺のターン、ドロー！」
「ユイ様！何か信重公の墓地の札に干渉できる札は！？」
「墓地に干渉できるカード？これのことか？魔法カード『死者蘇生』を発動！これで信重の墓地から『黄金の魔神サドダイダラ』を蘇生させる！」
「それです！速攻魔法『魂の導き』を発動！これは相手の墓地を対象として札の効果が発動したときに発動できる札です！」
「一体ナンダト言ウノダ？」
「これにより、お互いの墓地と除外されている札を全て山札に戻ります！」
「…そうか！遠呂智のアホみたいな攻撃力はデッキ全てのカードが墓地か除外にあるから、それを無くせば！」
「ヌオォオオォォ！！ナンダコレハ！？」
遠呂智の体から群れ蛍のように仄かに光る魂が溢れてくる。
「ユイ様！トドメを！」
「ああ！俺はスケール9の『赤薔薇の救世者 ラブリ』とスケール3の『白薔薇の救世者 ピュアリー』でペンデュラムスケールをセッティング！ペンデュラム召喚！『未来の救世者 スキュルート』！」
「馬鹿ナ！？余ガ、無敵ノ遠呂智ガ…！！」
「だから言ったろ？絶対無敵のカードは存在しないって！長い戦いもこれで終わりだ！バトル！」

未来の救世者 スキュルート ATK 2500 VS 獄界邪龍 遠呂智 ATK 0

「グオォォオオォォォオオォォ！！」




私達は、勝ったのですね…。
父上。あの札を授けてくれ、ありがとうございました。
八兵衛、明智様。あの札を引くまで私達を守り抜いてくれて、ありがとうございました。
そして―
ユイ様。信重公を討ってくれて、私を励ましてくれて、


ありがとうございました。