第71話　戦慄！迫り来る変態ペンギン　作：ター坊

~柚子サイド~

アルカディア･ムーブメントという場所に向かう黒咲やユイさんたちを見送ってどれくらい時間が経っただろうか。もう着いた頃かな？
……そういえば遊矢はどうしたんだろう。時間が空くとそればかり考えてしまう。お春さんみたいに変な奴らに捕まってるのかな…。それともこの街の何処かにいるのかな…。
「柚子さん、どうしたんですか？」
「あっ。小鳥」
「なんだかボンヤリして…」
「うん…。ちょっとね」
「もしかして…遊矢さんのことですか？」
「え？」
私ってそんなに顔に出てるのだろうか？
「私も似たような気持ちだから分かるんです」
「似た…気持ち？」
「私も…遊馬がどこにいるんだろうって思う時があります…」

それから私と小鳥は互いの幼馴染み、遊矢と遊馬君について話した。

「フフッ…。やっぱ幼馴染みってそういうものなのかな」
「そうですね」
話してると遊矢も遊馬君も似た者同士だと思った。人の気も知らないで無茶してハラハラさせること。笑顔のデュエルを目指して戦ってること。それに ―

「さぁ！どこですか、柊柚子14歳！オジサンを困らせるなんて悪い子だ」

突如、聞き覚えのある下品な声が私の名前を叫ぶ。
「な、何？」
「行ってみましょう、小鳥！」
声がした方向は大広間のあたりだ。私たちは走った。


私たちが駆けつけた時、その声の主がいた。
「ほほう。こうして見ると持ち帰りたいギャルが沢山いますなぁ」ﾍﾞﾛﾘ
私に…いや、そこにいた女の子達に寒気が迸った。
「あのときのしゃべるヘンタイペンギン！」
「気持ち悪い…」
「うるさい！子どもなんぞ興味ない！それよりもその健康的な脚がなんともそそられますなぁ」ﾚﾛﾚﾛ
「不埒ですわ！」
「ただの変態ね…」
「…キモい」
「ムッハハッハハ！ギャルにそう言われても興奮しますなぁー！」
「何よアイツ…」
「気色悪いです…」
とにかく気持ち悪かった。
「さて、柊柚子14歳！君にはあの方の元へ来てもらいますよ？」
「あの方？」
「戻らないと私自身の身も危ないのでね…。さぁこちらに！」
「嫌よ！この変態！」
「おぉ。なんと口の悪いこと。若者の言葉の乱れは世界共通ですなぁ。やむを得ません……キエェェ！！」
変態ペンギンが奇声をあげると突然冷風が吹き、床が凍り、氷の壁が私と変態ペンギンを囲むようにせり上がってくる。
「こ、これは！？」
「ぬふふ…。さぁ、これで二人っきりですねぇ。この大瀧修三55歳が個人レッスンをしてあげましょう。じっくり、ねっとりとねぇ。アッヒャヒャヒャヒャ…」ﾍﾞｯﾛｫｫ
「あ、アンタを倒せば良いんでしょ！？負けないんだから！」
私は全身から鳥肌が立つような感覚を押し殺してデュエルディスクを構えた。



先攻:柚子

「私のターン、魔法カード『独奏の第1楽章』を発動！これでデッキから『幻奏の音女アリア』を特殊召喚！さらに自分フィールド上に幻奏モンスターが存在する場合、手札から『幻奏の音女カノン』を特殊召喚！そのカノンをリリースして『幻奏の音女エレジー』をアドバンス召喚し、ターンエンドよ」
「私のターン、ドロー。私はフィールド魔法『ペンギン･アイランド』を発動！これでペンギンを召喚する場合、生け贄が１体少なくなります。これで手札からレベル5の『大皇帝ペンギン』をタダで召喚！『大皇帝ペンギン』を生け贄に捧げ、の効果を発動しますよ！これでデッキから『ロックフライペンギン』と『ヒゲチョウロウペンギン』を特殊召喚！さらに『ペンギン･アイランド』の効果で攻撃力･守備力が800アーップ！」
「上級モンスターが一気に2体…！」
「さぁ！バトルですよぉ。『ロックフライペンギン』は直接攻撃可能なのですよぉ~」
「そんな！」

ロックフライペンギン ATK 2800　直接攻撃

「うっ！…まだよ！」
「さらに『ヒゲチョウロウペンギン』の効果発動。相手に戦闘ダメージを与えた場合、相手は自身の場からカードを2枚選択して手札に戻さなければなりませんよ？」
「そんな…対象に取られないし、破壊でもないからアリアでもエレジーでも防げない…」
私は悔しかったが、自分のモンスターを手札に戻す。
「うはっはは！これで丸裸ですよぉ~。『ヒゲチョウロウペンギン』でダイレクトアタッーク！」

ヒゲチョウロウペンギン ATK 2500

「きゃあぁぁ！」
「んッほおぉぉぅ！良い悲鳴ですねぇ~。美少女を泣かすのは興奮しますなぁー！」
「うるさい！この変態ペンギン！」
「私はカードを1枚伏せてターン終了です」

柚子:LP 2700
変態ペンギン:LP 8000

「私のターン、ドロー！魔法カード発動！『融合』！これで手札の『幻奏の音女エレジー』と『幻奏の音姫プレディジー･モーツァルト』を素材に融合！天使のさえずりよ！至高の天才よ！タクトの導きにより力重ねよ！融合召喚！今こそ舞台に勝利の歌を！『幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ』！」
「アーッハハ！たかが攻撃力1000のモンスターで何が出来ると言うのですか？」
「そんなこと言ってられるのも今のうちよ！ブルーム･ディーヴァで攻撃！」

幻奏の華歌聖ブルーム･ディーヴァ ATK 1000 VS ロックフライペンギン ATK 2800

「何？何が起こっているのだ？戦闘破壊されないだと」
「ブルーム･ディーヴァは戦闘と効果では破壊されないモンスター…。そして特殊召喚されたモンスターと戦闘を行った場合、元々の攻撃力の差分のダメージを与えてそのモンスターを破壊するわ！」
「な、なんですとー！」
「まだよ！速攻魔法『融合解除』を発動！これでブルーム･ディーヴァをエクストラデッキに戻し、融合素材となったエレジーとプレディジー･モーツァルトを特殊召喚！またまた攻撃！」

幻奏の音姫プレディジー･モーツァルト ATK 2900 VS ヒゲチョウロウペンギン ATK 2500

「ぎょーあ！」
「さらにエレジーでダイレクトアタック！」

幻奏の音女エレジー ATK 2300　直接攻撃

「むあぁぁー！」
「どう？メインフェイズ2。私はプレディジー･モーツァルトの効果で手札の『幻奏の音女アリア』を守備表示で特殊召喚してターンエンドよ！」
「おおっと。最近の若者はせっかちでいけない。私はこのタイミングで罠カード『ペンギン･マーチ』を発動。このターン破壊されたペンギン達をを攻撃力を半分にして特殊召喚する」
「このタイミングで…？」

柚子:LP 2700
変態ペンギン:LP 4300

「私のターン、ドロー！私は『ロックフライペンギン』を生け贄に、いでよレベル8、ペンギン達の皇帝！『カイザーペンギン』！」
天を突くような巨大ペンギンが現れる。
「さらに『カイザーペンギン』は場に出た時、全てのペンギン以外のカードの効果を無効にするのだあぁー！」
「そんな…！またロック効果が…」
「さらにそれだけではないのです！自分のペンギンを１体生け贄に捧げることでデッキから通常モンスターであるペンギンを特殊召喚できるのです！おいでなさい『ペンギン･ウォリアー』！」
『カイザーペンギン』の一声で海から２体のペンギン戦士が飛び出してきた。
「バトルですよ。『カイザーペンギン』は墓地のペンギンの数×1000の数値を得ます。しかし、その代償としてLPを半分支払わなければなりませんがねぇ。必要経費ですよ」

カイザーペンギン ATK 3800 VS 幻奏の音姫 プレディジー･モーツァルト ATK 2600

「さらに２体の『ペンギンウォリアー』で攻撃！」

ペンギン･ウォリアー ATK 2400 VS 幻奏の音女エレジー ATK 2000
ペンギン･ウォリアー ATK 2400 VS 幻奏の音女アリア DEF 1200

「そんな…！」
「グフフ…。手札も場もこれで0！あとは文字通り丸裸にしてあげましょうねぇ」
「ま、まだよ！まだ負けてない！」
「最後までオジサンを困らせる子だなぁ。諦めたまえ。私はカードを1枚伏せてターン終了だ」

柚子:LP1100
変態ペンギン:LP 2150

（フッフフ。私が伏せたのは速攻魔法『リベンジ･サクリファス』。これで万が一私のモンスターがやられてもその相手モンスターを生け贄に上級モンスターを召喚できる。あぁ…。出来るならばあの方に献上する前に脇や太股をなめ回したいなぁ！グフフ…）
あの変態ペンギン…。何か企んでいるのか？気色悪い笑みを浮かべている。けど…
「私は、アンタなんかに絶対負けない！」
遊矢に会えるときまで、絶対に！
「私のターン……ドロー！」
――来た。
「私は『独奏の第1楽章』を発動！これでデッキから『幻奏の歌姫ソプラノ』を特殊召喚！さらにソプラノの効果で墓地から『幻奏の音女カノン』を手札に加えるわ。そしてカノンを特殊召喚！」
「そんなモンスター２体では壁程度にしかなりませんよ？」
「いいえ！ソプラノの効果発動！このモンスターとカノンを墓地に送ることで融合召喚を行える！」
「ば、馬鹿な！魔法なしで融合ですとぉぉー！？」
「響け歌声！流れよ旋律！タクトの導きにより力重ねよ！融合召喚！今こそ舞台へ！『幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト』！マイスタリン･シューベルトの効果発動！お互いの墓地から合計3枚になるようにカードを除外し、攻撃力を除外した枚数×200アップさせるわ。これでアンタのペンギンを除外する！コーラス･ブレイク！」
「しまった…。『カイザーペンギン』は攻撃力を墓地のペンギンで決定するモンスター…」
「これで終わりよ！ウェーブ･オブ･ザ･グレイト！」

幻奏の音姫マイスタリン･シューベルト ATK 3000 VS カイザーペンギン ATK 800

「ぬおぉぉー！」






変態ペンギンは吹っ飛ばされ、敗北したためか氷の壁があっという間に溶けてなくなってしまった。
「柚子さん、大丈夫？」
「柚子おねえちゃん、勝ったんだね！」
「小鳥、アユちゃん…。うん。大丈夫よ！」
私が氷の壁の中でデュエルしてる間、他の皆は黒タイツの集団と戦ってたみたい。



「くっそー…。最強の…最強の助っ人はまだなのか？このままでは…あの方に殺される…！」