第69話　秘剣舞う戦場　作：ター坊

「な、なんだ！？」
大声がしたかと思えば向こう側から中国雑技団のようなバク転をしながら誰か近づいてくる。
「貴殿らの相手」
「この迷宮兄弟が」
「「務めよう！」」(ハモリ)
双子だろうか。そっくりな容姿の二人が立ち塞がる。おでこの『迷』と『宮』の刺青くらいしか違いがない。
「アンタ達…！」
「舞、知ってるのか？」
「えぇ。一応ね…」
「さぁ、ここではタッグデュエル」
「挑戦者2名前へ」
タッグデュエルか…。
「ここは俺に任せとけ！」
「クロウ！」
いきなりクロウが名乗り出た。
「鉄砲玉のクロウ様が出ねぇでどうすんだよ！」
「クロウ、勝手に…」
「いや、待てアキ」
「ユイ？」
「この式霊決闘血祭。今後出てくる敵が不明な以上、出し惜しみは出来ない。ここは勢いのあるクロウに任せてみよう」
「…確かに」
「それにクロウの強さは一番付き合いが長いお前が一番分かってるだろ？」
「…そうね」
「では、もう一人前へ」
「ユイ殿。ここは拙者に行かせてはくれまいか」
「柳生さん…」
「拙者は親身になって下さったお主達に疑念を持ってしまっていた…。その償い、ここで果たしたい！」
「…分かった。けど、償うつもりで戦うなよ」
「えっ？」
「遊月さんの身が懸かってるからな。過去の清算よりお前達の世界の未来を守るつもりで戦えよ」
「ユイ殿…。委細承知！柳生八兵衛の戦ぶり、とくとご覧あれ！」
こうしてクロウと柳生さんのタッグが完成した。
「それでは」
「いざ尋常に」
「デュエル！」

ターン順は宮→クロウ→迷→柳生


「我のターン！我は『暴風小僧』を召喚！さらに魔法カード『二重召喚』でもう一回召喚可能となる。『暴風小僧』を生け贄に『風魔神-ヒューガ』を召喚！カードを2枚伏せてターン終了」
「俺のターン、ドロー！俺のフィールド上にカードが存在しない場合、『BF-逆風のガスト』を特殊召喚できる！さらにチューナーモンスター『BF-東雲のコチ』を召喚！レベル2の逆風のガストにレベル4の東雲のコチをチューニング！シンクロ召喚！レベル6『BF-星影のノートゥング』！ノートゥングの効果発動！」
「させぬ！カウンター罠『ストーム･バリケード』！これにより、モンスター効果の発動を無効にし、そのモンスターをデッキの一番上に戻させる！」
「くそっ！エクストラデッキに戻されるか！俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」
「我のターン、ドロー！」
「この瞬間、我は永続罠『苦紋様の土像』を発動し、モンスターとして特殊召喚する」
「礼を言うぞ弟よ。我は魔法カード『生け贄人形』を発動！これで『苦紋様の土像』を生け贄に『雷魔神-サンガ』を特殊召喚！」

「あの二人。まさかタッグデュエル用にデッキを調整しているのか？」
「息がピッタリね…」

「さらに魔法カード『魔神招来』を発動！これであと一体の魔神、『水魔神-スーガ』を効果を無効にして特殊召喚！ダイレクトアタック！」
「へっ！残念だったな！罠カード『聖なるバリア-ミラーフォース』で返り討ちだぜ！」
「笑止！速攻魔法『水魔昇壁』！これで破壊する効果を無効とする！」
「な、何！？」

風魔神-ヒューガ ATK 2400 +水魔神-スーガ ATK 2500　直接攻撃

「むおぉぉ！」
「なぁぁ！」

「柳生さん！クロウ！大丈夫か！」
「一気にLPを持ってかれたか…」

「我はこれで、ターン終了！」

クロウ･柳生:LP 3100
迷宮兄弟:LP 8000

「拙者の番！抜くぞ！」

「そう言えば柳生さんってどんな戦術使うんだろう？」
「僕が練習で戦った時は確か普通な感じの戦士族デッキだったねぇ」

「拙者は永続魔法『妖の刀 骸烏』を発動！これを拙者の腰に！」
え？発動したカードを身に付ける？

「あの札は！」
「遊月さん、何か知ってるのか？」
「はい。あの札……八兵衛が本気だという現れです。指南役ではない、一人の決闘将として」
「決闘将…」
「一体、どんな戦術を…」

「さらに魔法札『秘剣-星斬(ほしきり)』！これで相手の式霊を破壊し、その星の数だけ三百の損傷を与える！」
すると柳生さんはさっき発動させた骸烏を抜刀し、『雷魔神-サンガ』に斬りかかる。……あれ？これってデュエルだよな？
「馬鹿な！？プレイヤー自らが攻撃だと！？」
「はあぁぁ！」

ｼｬｷｰﾝ

柳生さんの『秘剣-星斬』は決まり、サンガは五芒星に切り刻まれた。
「ぬぁああぁ！」
「さらに骸烏の効果で相手の式霊が墓地に送られた時、山札を五枚めくり、その内から『秘剣-龍翔(たつがけ)』を手札に加える。さらに骸烏は秘剣を発動させた場合、四百の損傷を与える！札を四枚伏せて拙者の番はこれにて終いとする」

クロウ･柳生:LP 3100
迷宮兄弟:LP 5500

「くっ！しかし、貴殿らのモンスターは0。このターンで終わりだ！ドロー！魔法カード『魔風波』を発動！これで魔法･罠カードを全て手札に戻す！」
「なんの！華雲汰阿(カウンター)罠『秘剣-鷹狩(たかがり)』を発動！再び四百！」
「むうぅ！」
柳生さんは高く飛び上がり刀を一振りすると、その衝撃波で『魔風波』を両断する。…だからこれってデュエルか？
「これによって『魔風波』は無効となり、拙者は二枚札を引ける！」
「おのれぇ！ならば直接攻撃！行けヒューガ」
「罠札『秘剣-龍翔』発動！攻撃してきた式霊を墓地に送り、その攻撃力の半分の数値の損傷を与える！」
ヒューガが放った風の弾を柳生さんが避けると一気に肉薄し、すれ違い様にヒューガを切り捨てた。……デュエルなのか？
「骸烏の効果で五枚めくり、『秘剣-桜崩(さくらくずし)』を手札に加える」
「ならばスーガで攻撃！」
「そちらも通さぬ！罠札『抜刀受け』！これで攻撃を無効とし、山札より新たな刀『霊(みたま)の刀 鎮雪(しずめゆき)』を発動する！」
柳生さんのデッキからカードがせりだし、それが刀となってスーガの流水波を切り裂く。
「おのれ…ターン終了…」

クロウ･柳生:LP 3100
迷宮兄弟:LP 3500

「助かったぜ柳生！俺のターン、ドロー！俺は『霊の刀 鎮雪』の効果で800ダメージを与え、『BF-極北のブリザード』を召喚！これで逆風のガストを特殊召喚する！さらに手札から『BF-黒槍のブラスト』を特殊召喚！俺はレベル4の黒槍のブラストと逆風のガストにレベル2の極北のブリザードをチューニング！黒き疾風よ！秘めたる思いをその翼に現出せよ！シンクロ召喚！舞い上がれ、『ブラックフェザー・ドラゴン』！『水魔神-スーガ』は効果を無効にされているから怖くないぜ！バトルだ！ノーブルストリーム！！」

ブラックフェザー･ドラゴン ATK 2800 VS 水魔神-スーガ ATK 2500

「さ、三魔神が全滅だと！？」
「よっしゃ俺はこのまま、ターンエンドだ！」

クロウ･柳生:LP 3100
迷宮兄弟:LP 2400

「我のターン、ドロー！来たぞ！儀式魔法『魔神合神』を発動！墓地に存在する三魔神を除外し、『合体魔神-ヘルゲート･ガーディアン』を儀式召喚する！」
「罠札『秘剣-岩砕(いわくだき)』！これでその式霊を破壊し」
「無駄なり！ヘルゲート･ガーディアンは破壊効果を受けぬ！」
「なんと！」
「ヘルゲート･ガーディアンで『ブラックフェザー･ドラゴン』を攻撃！攻撃宣言時、相手フィールド上のモンスターの攻撃力を半分にする！」

合体魔神-ヘルゲート･ガーディアン ATK 3750 VS ブラックフェザー･ドラゴン ATK 1400

「さらにヘルゲート･ガーディアンは3回攻撃が出来るのだ！もう一度攻撃！」
「させるか！直接攻撃を受ける場合、手札から『BF-熱風のギブリ』を守備表示で特殊召喚！」

合体魔神-ヘルゲート･ガーディアン ATK 3750 VS BF-熱風のギブリ DEF 1600

「今度こそ終わりだ！」
「拙者の墓地から『抜刀受け』を除外し、その攻撃を無効とする！」
「しぶといな…。だが、無敵のヘルゲート･ガーディアンを倒す術はあるまい。ターン終了だ」

クロウ･柳生:LP 750
迷宮兄弟2500

「拙者の番…。この引きに賭ける！」

ｼｭﾊﾞ

「拙者は札を二枚伏せ、鎮雪の効果で八百の損傷を与えて終いとする」

クロウ･柳生:LP 750
迷宮兄弟:LP 1600

「フハハ八！諦めたか！我のターン、ドロー！トドメだ！ヘルゲート･ガーディアン！」
「永続罠『陰(かげ)の刀 月雅(つきみやび)』を発動！これで一番に一度だけ攻撃を無効にして五百の返しを与える！」
発動させた月雅で衝撃波を弾き、その余波が迷宮兄弟に跳ね返る。
「悪あがきな！まだ二回攻撃出来るぞ？今度こそ終わりだぁ！」
「…そちらのな」
「何？」
「拙者のこの伏せは三刀でなければ放てぬ大技…。『絶･秘剣-刹那』…」
柳生さんは月雅を口に加え、両手の骸烏と鎮雪を交差させて構える。

そしてそれはまさに刹那- - -

気付けば音もなく崩れるヘルゲート･ガーディアンがいた。
「馬鹿な！？」
「我らのLPも0に！？」




俺達は唖然としていた。一人を除いて。
「やりましたね、八兵衛」
「ははっ！如何でしたかユイ殿」
「え？いや…」
「どうなされた？」
「その…今まで見たことのない戦い方だから驚いて…」
「フム…。確かに拙者の戦法は珍しい部類に入るかも知れませぬな。式霊に頼らないゆえ」
式霊に頼らない……。つまりフルモンならぬフル魔法罠ってことか？


「おいハゲ共。クロウ達が勝ったんだから札鍵とやらを寄越せよ」
「ぐぬぬ…。受け取るがいい…」
迷は懐から何か取り出すと、それを俺に向かって投げつけた。
「これは…IDカード？」
「みたいね」
「『あいでぃーかーど』とはなんでしょうか？それがお春さんを助けてくれるのでしょうか？」
「あぁ。柴田の言葉が本当ならばな」
こうして俺達は緑色のIDカードを手に入れた。



迷宮兄弟の階から出て暫く階段を上ると、『第二ノ関』と書かれた貼り紙があった。しかし先程のものとは違い、カラフルな色使いで書かれている。
「さぁ、次は誰が相手だ？」
バンッと扉を開けた。


「さぁ、かかってらっしゃい！」
「次はボクたち…」
「「『恋する乙女は無敵連合』が相手よ！！」」(ハモリ)