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7Turn 繋がる異界 作:ジェム貯めナイト

 ――貴様らは“禍津幽行”という妖の集団に、聞き覚えはあるか?


 玉藻前の発した言葉に、遊陽はまるで聞き覚えが無い。と、カズと留音にもその言葉を伝えるが、2人も頭に疑問を浮かべて分からない。と返答する。


 「禍津幽行……久方ぶりにその言葉を聞いた――気がします」


 その言葉を聞いた途端、遊無が朧げながらも記憶を思い出したのか――まるで不倶戴天の敵だと言わんばかりに表情が険しくなったのを、遊陽は見逃さなかった。


 「何故でしょう――その者達に対して、私の中に沸々と怒りがこみ上げて来ます……」

 ――辛うじて、僅かな記憶とわらわ達への怒りは覚えておるようじゃな。“禍津幽行”とは、人間どもが名付けたわらわ――そしてもう2体の強力な幽鬼を中心とした、幽鬼の軍勢じゃ――。

 「禍津幽行……そういえば近所のじっちゃん達が昔――そんな伝説を話してくれた気が――」

 「伝説……!? カズ、知っているのか……?」


 記憶の片隅から何とか思い出そうとするカズに遊陽は振り向くと、昔聞いた話だが。とカズは語り始めた。


 「確か……遠方から遥々訪れた美女をもてなすうちに、その集落はやがて衰退し、最後は災害や他の集落に滅ぼされるって話があったと思うぜ。それが何とかの仕業だって――」

 ――推測の通り、そうしてわらわ達は実体化し、人間どもから全てを奪い取り、喰らい、負の感情を糧としてきたのじゃ!


 遊陽は明かされた事実に驚愕しつつも、カズと留音にそのことを伝えると、滅ぼされた集落や人々の末路を想像したのか、留音が悲痛な心境を口にした。


 「そんな……! なんて酷い――」

 ――酷い……じゃと? 人間とは常々、自らの欲を満たすためならどこまでも堕ちていく。わらわの外見に取り乱され、身の程も弁えず己が者にしようとした人間共はみな、わらわの望むがままに幽鬼を浸透させる手引きの末、国共々根絶やしに――。

 「もう……沢山ですっ……!」


 遊無が突如、湧き上がってきた怒りを発散させるかのように声を荒らげたことに、その場にいる全員が驚いて遊無へと振り返る。


 「……デュエルを再開しましょう。私は天邪鬼と飯綱をリリース!」

 ――フン! 怒り任せにわらわに命じようが、“今”の貴様では――。

 「お忘れでしょうか? いざとなれば貴女を“消滅”させることすら可能なこと
を――」


 召喚しようとする玉藻前のカードを、両手で持ち手に力を込めようとする遊無に対して、無駄じゃ。と玉藻前はせせら笑う。


 ――その札を破こうともわらわは滅びぬ。貴様達と接するこの身はあくまで分体――。

 「いえ――破く必要などありません。直接“私の思い”を伝えるだけです」


 念じるかのように遊無は眼を閉じ、握りしめた玉藻前に協力を要請する。

 そして二又の狐と、額から角の生えた小鬼が黒い霧となり霧散すると、遊無が液晶盤に玉藻前を置くとともに、精霊となり現れている玉藻前が自身の意思とは関係なく、デュエルの場へと移動を始めた。


 ――きっ――貴様! わらわに一体何を……!?

 召喚によって実体化しつつあることに何とか抵抗を試みる玉藻前だが、遊無の前まで移動した瞬間、彼女の変化に気付いた。


 ――妙じゃ……わらわと対峙した“あの時”とは違う――それにこの湧き上がる
“多幸感”は一体――。

 「……!? 私の“思い”が通じたのですね! デュエルを行うこともまた、私
の記憶を辿る手がかりなのです! 妖の妙技で敵を惑わし、九の尾で襲い来る者を薙ぎ払え! “アドバンス召喚”! 《妖幽鬼 玉藻前》……!」


 妖幽鬼 玉藻前
 効果モンスター
 /レベル7/闇/アンデット/攻撃力2400。
 このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 (1):このカードがアドバンス召喚した時に発動できる。墓地の「幽鬼」モンスタ
 ーの種類と同じ枚数自分のデッキの上からカードを墓地に送り、その中の「幽
 鬼」モンスターの種類と同じ枚数デッキからカードをドローする。


 「これが遊無ちゃんの――切り札ってことね……」

 「突然遊無の言うことを聞くなんて……一体何をしたんだ?」

 「私は“願った”だけです。神社での件と言い、私の願いは何らかの作用で現実
になるのかもしれません……」


 願いを叶える力――神社での出来事を思い出し、遊陽はあの時も絶体絶命の中、突如現れた祭りの竜と共にスチュパリデスを退けたことを思い出す。


 「留音さんには悪いですが、このデュエル勝たせていただきます! 召喚に成功した玉藻前の効果発動! 数多の都は衰退へと至る。斜狐転生……!」


 身に宿る効果を発動させた玉藻前の九の尾の先には、赤い人魂のようなものが宿り、赤黒く発光すると周囲に不穏な気配が瞬時に広がっていった。


 「これにより、墓地の「幽鬼」の種類だけデッキの上からカードを墓地に送り、その中の「幽鬼」の数だけドローします。……6枚を墓地に送り、《傘幽鬼 唐傘小僧》が含まれていたため1枚ドローします」


 傘幽鬼 唐傘小僧
 効果モンスター
 /レベル3/闇/アンデット/攻撃力1300。
 このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 (1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分の「幽鬼」モンスター
 が守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘
 ダメージを与える。
 (2):「幽鬼」モンスターをアドバンス召喚したターンに発動できる。
 墓地のこのカードを自分フィールドに特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚したこのカードがフィールドを離れる場合、デッキの一番
 下に戻る。


 「……その切り札と言い――遊無ちゃんのカードには、デッキを削る効果を持つものが多いわね。何か考えがありそうだけど、そう易々と突破はさせないわ」

 「今この場には、魑魅魍魎を従えし大妖怪が現れました。“墓地に幽鬼を送る戦術”の本懐――今こそ披露する時! いでませ! 妖を導く異界回廊……!」


 宣言とともに遊無の右手には、妖の炎が纏いつく。

 指先に宿した炎を遊無は空に向けて差し向け、解き放つと円を描いて宙に浮かんだ妖の炎は、怪しげな気配とともにこの世と“異界”を繋ぐ入り口へと変化していく。


 「何が起きているの……!?」

 「乱世を行脚する「幽鬼」のアドバンス召喚を条件に、このターンの間墓地の「幽鬼」達は百鬼夜行と成りてひしめき歩くのです。私は《逆幽鬼 天邪鬼》《憑幽鬼 飯綱》《削幽鬼 鎌鼬》《洗幽鬼 小豆研》の4体を大妖怪に付き従わせ、列をなしこの世に呼び寄せます……!」


 異界との間に繋いだ回廊から、4体の妖が大妖怪に付き従うように場に現れると、玉藻前を先頭とした百鬼夜行を形成する。


 『一瞬で5体のモンスターを揃えた……!?』

 「まずは鎌鼬が場に現れたことにより、留音さんの場に伏せられたカード1枚を手札に戻します! 陣風斬破……!」

 「これを失ったら……! 罠カード《怒涛潜流(デリュージ・アンダーカレント)》! 墓地からレベル4以下の「深層環姫」1体――クロシオを除外して、その攻撃力をコーラル・ナーワルに加えるわ……!」


 鎌鼬が鎌を振りかざすと同時に発生した衝撃波は、珊瑚の牙を持つ一角を中心に地面から噴き上がってきた激流に阻害され、場の一角に流水の鎧となって纏わりついた。


 怒涛潜流(デリュージ・アンダーカレント) 通常罠
 (1):自分フィールドのモンスター1体を対象に発動できる。
 自分の墓地からレベル4以下の「深層環姫」モンスター1体を除外して、ターン
 終了時までそのモンスターの攻撃力分対象のモンスターの攻撃力をアップする。
 相手ターンにこの効果を発動した場合、そのターンのバトルフェイズ中除外した
 「深層環姫」モンスターよりレベルの低いモンスターは攻撃できない。


 コーラル・ナーワル攻撃力2100→3300。


 「相手ターンに発動した《怒涛潜流(デリュージ・アンダーカレント)》の効果によって、このターン除外したクロシオのレベル以下のモンスターの攻撃は、深海を流れる激流が押し返すわ!」

 「クロシオのレベルは4。あの精霊以外の攻撃は封じられた」

 「……続けて小豆研が現れたことによって、私の場の「幽鬼」1体に付き200のダメージを与えます! 研磨反響!」


 ジャッ――ジャッ……と小豆を洗う老婆が次第に手つきを軽やかに研ぎを続け、独特な旋律を持つ不協和音が発生すると、一同は思わず耳を塞いだ。


 「っ……!」 留音LP2100→1100。


 「留音さんの切り札は大幅に強化されましたが……この程度は想定内――再び飯綱の効果発動です! 私の場の「幽鬼」は5体――攻撃力は2000下がります! 狐の管憑き……!」


 二又の狐が尾の先より放った5つの黒い塊が続けざまに一角へと命中すると、強力な呪いに一角から力が奪われていく。

 自慢の珊瑚は養分が足りずにすっかりしぼみ、珊瑚の牙を持つ一角はすっかり弱り果ててしまった。


 コーラル・ナーワル攻撃力3300→1300。


 「そんな……私の育んだ珊瑚礁が……!」

 「これで終わりです! 私は玉藻さんでコーラル・ナーワルを攻撃!」


 遊無の指示を受け、全身に紫毒を纏わせた玉藻前は、更に両手へと猛毒を生成する。


 ――これが元主である“スチュパリデス様”を破った――貴様の力か――。

 「デュエルという儀によって、貴女達精霊と私達は通じ合える。カードとなった貴女達を使いこなすことで“信頼”だって生まれます! どうかデュエルでお力を貸してくださりますか?」

 ――フン! 確かに貴様は“力持つ者”のようじゃ。……仕方あるまい。それが
貴様の記憶を取り戻し、対価を受け取るためならば……! 息吹け――。


 両手の猛毒を合わせ、大口開けた巨大な狐の顔に変化させた玉藻前は、遊無の合図とともに2人同時に技の名を発すると、猛毒の狐を一角に向け突撃させる。


 『殺生吐附子……!』


 眼前に迫った毒々しい狐が留音と一角を飲み込むと、全身に焼け付く痛みが走って一角は消滅し、留音のLPも毒に侵され命尽きるのであった。


 「きゃあぁぁっ……!」 留音LP1100→0。

 「留音っ……!」


 デュエル終了とともに、その場に崩れ落ち地面へと倒れようとする留音の元に駆け寄ったカズは、既の所で彼女の身体を支えた。


 「あ……ありがと」

 「いいってことよ。……しかし、凄かったな」


 再び立ち上がった留音とカズの元に、遊陽と借りたD・フェースを返却した遊無は歩み寄って来る。


 「2人ともお疲れ。塰里のデュエル――間近で見たけど、凄くよかったぜ」

 「ありがとう。遊無ちゃん凄かったわね。初心者に負けちゃったかぁ……」

 「留音も弱くはないんだけどな。遊無ちゃん実は経験者じゃねーの?」

 「そんな筈は――それよりも、日が暮れましたがお二人は大丈夫ですか?」


 口々に2人のデュエルを褒め称える一同だったが、すっかり日が暮れ辺りは暗くなっていることを改めて確認すると、慌ててD・フェースの画面に表示された時刻を見て仰天する。


 「やっべ! もうこんな時間かよ……!」

 「遅くなっちまったな。……そうだ、良かったらうちに来いよ。夕飯食べたら2人とも母さんに送ってもらうぜ?」

 「お夕飯……! 私もご相伴してもいいかしら!」

 「あ……ああ、多分大丈夫だろ……」


 全員一通りデュエルを終えて、満足げに公園から遊陽の家へと向かおうとする。

 遊無も公園に背を向け、遊陽達に付いていこうとするが、再び半透明の姿で実体化した玉藻前が遊無とのすれ違いざまに、彼女だけに聞こえるようボソッと呟いた。


 ――ひとまずは、貴様の意向に従ってやろう――。

 「玉藻さん……!? 本当ですか!? ご助力、感謝します」

 ――貴様にはわらわ達を従えるに相応しい――“強大な力”が秘められているよ
うじゃからな――。


 渋々ながらもデュエルでの協力を申し出たのち、再び玉藻前は姿を消していく。


 「……どうしてそんな力が私の中にあるのか。私は失われた記憶にどれ程時間がかかろうとも、辿り着かなくてはいけませんね――」


 懐から取り出し眺めた玉藻前のカードを再びデッキへと戻すと、遊陽達の呼ぶ声を耳にして、遊無は公園の出口で待つ遊陽達の下へと急いで駆け寄って行くのであった。





 「遊無さん、遠慮せずいっぱい食べていいからね」

 「はい――ありがとうございます。お父さま」

 「大分顔色も良くなったねぇ……町の名産と私の料理を食べれば、すぐ元気になるさ」


 遊陽より色素の薄くなった――白い前髪に黄土色の髪をした遊陽の父と、セミロングの赤い髪色をした母は、遊無の皿に夕飯のメニューを次々と乗せていく。

 最初は遠慮気味だった遊無も、少々お節介気味ながらも優しげに接してくる遊陽の両親には悪い気はせず、取り分けられた料理に手を付けていた。


 「わぁ……! 遊陽君の家って、どの料理もとても美味しそうだわ!」


 遊無と遊陽の両親が囲む食卓から離れた仏間の部屋では、来客用の長机を囲むように遊陽達3人が夕食を共にしていた。


 「それはどうも。母さんは町の小料理屋勤めだからな」

 「あら! ママ嬉しいわぁ……! 塰里さんちの留音ちゃんに美味しいだなんて!」

 「相変わらず、ママさんの料理旨いよなー。真っすぐ帰らなくて正解だったぜ」

 「一斗はよく、遊陽君の家で食べたりするの?」

 「ああ――テスト前に泊まりで勉強会したり、夏休みとかにも遊びに来た時お世話になってるぜ」

 「そうなの? じゃあ次のテストからは私も一緒したいな」

 「来るのはいいけど……流石に泊まるところは――そうだ! 母さん!」


 遊陽の呼びかけに気付くと、遊陽の母は食後の剥いたリンゴの入った皿を持って、仏間までやってきた。


 「遊無の生活する部屋ってさ、結局どうするんだ?」

 「そうねぇ……遊陽、あんたの部屋半分譲ってくれないかしら?」

 「えっ――それって遊陽君と遊無ちゃん、2人が同じ部屋で過ごすってことですか……!?」


 外見上は遊陽に近い年頃の少女が、遊陽と同じ部屋で生活することに、留音は不安げな声色で問いかけた。


 「まあ……当面はそうなってしまうな」

 「仏間はパパが仕事で使うし、私はパパと一緒の部屋がいいしぃ……」

 「母さん達がこの調子だし、開いているのは俺の部屋しかないってことだ。塰里の方で何とか生活できないのか?」


 自分の家よりも、同性の留音の方で預かって貰えないかと言いかけたところで遊陽の視線の先には、手伝いで食器を片付けに来た遊無がこれ以上の迷惑はかけられないといった様子で、遊陽の腕を掴んで思い直すよう訴えかけた。


 「私は身を寄せてもらっているので、どのような場所でも構いません! 部屋が無いのであれば例え廊下でも――」

 「わ……分かった。俺の部屋を分けて使おうなっ……!」

 「遊無ちゃんはあんたと同室でもいいって! あんた遊無ちゃんが寝ている間、変なことしちゃだめよ?」

 「しないって! ……分かった。じゃあ先に風呂行って来いよ。その間に部屋まで布団を運び込んでおくからさ」


 日中干していた仏間の布団が納められた襖を指差しながら遊陽が了承すると、途端に信じられないといった表情で、遊陽の母と留音は両手で口を塞いだ。


 「まぁこの子ったら……! 部屋に布団広げて、お風呂上がりの女の子とナニする気!?」

 「遊無ちゃん! 遊陽君に襲われそうになったらすぐに呼んでね! パンツ1枚のまま素潜り漁させてやるんだから!」

 「変な曲解すんな……! ほら、もう遅いし食器の片づけはやるから、カズと塰里を送ってきてくれよ」

 「あら――もうこんな遅く。じゃあカズ君と留音ちゃん、またいつでも遊びに来てね!」

 『はい! ありがとうございました!』


 また学園でとカズと留音に別れを済ませ、敷地内に駐車した赤く塗られた車からカズと留音を乗せた母がエンジン音を響かせ、2人をそれぞれの家に送り届けに出発した。

 遊陽は先程の発言通り、遊無を風呂場に案内すると彼女が使う布団を自室へと運び込み、6人分の食器の後片付けを終わらせた頃、母の寝間着に身を包んだ遊無と再びリビングで鉢合わせた。


 「お風呂頂きました。お布団まで……本当にありがとうございます」

 「どういたしまして。父さんは仏間で明日の準備しているよ」

 「準備……?」

 「父さんは寺に努めているんだ。朝早くから出勤して仏様に祈ったり、法事に出たりと結構忙しそうだぜ」

 「でしたらお邪魔にならないよう、遊陽さんの部屋に向かいましょうか」


 そして2人は階段を上り、既に2人分の寝るスペースが整った遊陽の部屋で寝る準備に入る。


 「コップとか歯ブラシとか、遊無が使う分は週末にでも揃えておかないとな」

 「ご両親もおっしゃっていましたが――この外見上、遊陽さん達と同じ学園に通う必要があると思います」

 「そうか。なら次の週末一緒に見に行くか? 遊無は神社の外の事は全く知らないんだろ?」

 「……! はい! 町を見て回れば、何か思い出すかもしれません――」


 それに。と自分の布団から遊陽の座っている場所まで詰め寄り、彼の隣に腰かけた遊無は、静かな笑みを浮かべつつ遊陽に告げる。


 「遊陽さんや皆さんが育ったこの町の事、しかと目に焼きつけておきたいですから――」

 「そ――そうか」


 一気に距離を詰め、身体が触れる程の距離まで来た遊無が浮かべる笑みに遊陽はタジタジとしつつも、そろそろ寝るぞ。と彼女を自分の布団まで戻して、自らの布団へと身をうずめた。


 「ま……まあ、自慢じゃないがいい町だぞ? 週末が楽しみだな!」

 「はい。おやすみなさい。遊陽さん――」


 電気を消し、2人は布団で眠りにつく。

 やがて訪れるだろう遊無を加えた学園生活に思いを馳せつつ、週末は遊無に町の事を知って好きになってもらおうと、遊陽は1人これからの生活がうまくいくことを願いつつ、安らかな眠りに落ちていくのだった。





 「遊陽と――」

 「遊無の――」

 『二人はビナリウス!』


遊陽「玉藻前を言いくるめるとはな……神社の時と言い――遊無、お前には何か“特別な力”が宿っているのか?」

遊無「私にも分かりません。ですが「幽鬼」達は過去の私と因縁がある様子――もっと打ち解ければ過去の私や力について、何か聞き出せるかもしれませんね」

遊陽「渋々といった今の調子じゃ、いつになることやら……じゃあ今回は遂に明かされた――「幽鬼」の共通効果について語らせてもらうぜ」

遊無「まずは下級の幽鬼ですね――彼らはレベル5以上の上級幽鬼をアドバンス召喚することによって、そのターン中墓地から蘇生する起動効果を持ちます」

遊陽「妖を導く異界回廊――リンク召喚の口上にもある未来回路をもじった名前と演出に、墓地から一斉に湧き出るペンデュラム召喚要素も合わさった技だな」

遊無「これにより単体ではそれほど強力な効果を持たない幽鬼でも、一挙に集えば脅威となりうる積極的に狙っていきたい技ですね」

遊陽「そして上級の幽鬼は相手ターン終了時に自身をデッキの一番下に戻して、墓地の幽鬼2体を蘇生させることにより、最上級の“三大妖怪”を呼び寄せる下準備を整えるぜ」

遊無「玉藻さんに残る2体――いずれも強力な力を持つ“精霊”です。この3体を
筆頭に一部の幽鬼達は“猛毒”を操り、立ちふさがる敵はことごとくなぎ倒すこと
でしょう」

遊陽「何かを暗示するかのように“猛毒”が取り上げられるが、ここで次回予告!
俺達と同じ学園に通い、外の世界をより深く知るため、俺は週末に“賑やか”な繫華街へと遊無を連れだす。……えっ? 作者から俺にコメント? デ――デート
じゃねぇから! 服装だって普通だしシルバーも巻かねぇよ!」


 『次回! 遊戯王Binarius(ビナリウス) -幕間 遊楽の休日- お楽しみに!』
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ジェム貯めナイト
今回で主要キャラのデッキは一通り披露を終えました。
“願いが現実となる”遊無の力の正体については、現在執筆中の話でいよいよ明かされます! まだまだ先ですが、気長に待っていただけると幸いです。 (2022-11-26 18:55)

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