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第五十七話「マダムの危ない罠」 作:イクス

第五十七話「マダムの危ない罠」


サマーズに旅行に来た遊太達。それぞれ思い思いの楽しみ方で過ごしていた。二日目、知多がどのように過ごしていたのかを聞いた遊太達はというと。
「えーっ、知多君前会ったお金持ちのお嬢様の別荘に行っていたの?」
「羨ましいですねえ」
「い、いや~、たまたま会った子に、たまたまここで会っちゃったから招待されちゃっただけで、殆ど偶然みたいなもんじゃん?」
「いやいや、偶然にしては出来過ぎだよ全く!」
「一体、どんな幸運をしているんだよ知多は!」
そういうやりとりをしながら、二日目の夜も更けて行った。


サマーズ旅行三日目。サマーズにいられるのは、本日で最後となる。それを受けてか、今日の遊太達は……。
「ねえ皆、お土産何買うか決めた?」
「う~ん、俺はちょっとまだ決まっていないじゃん?」
「僕も、買ったのは殆ど自分の為のアメコミばかりでしたしねえ。お父さんお母さんの為に持って行くお土産は、まだ考えていないですけど」
「じゃあカリンちゃんは?」
「いえ、私はそういうのはあまり……」
「だよねえ。流石お金持ちは違うや」
といった具合に、他愛もない会話を繰り広げている。そして、話は菊姫へと振られる。
「ねえ、菊姫もお土産に何買うか決めた?」
「フフフ、このアタシはとっくに何を買うか決めていたぜ。ズバリ、サマーズのセントラルシティのショップにあるバッグだ!」
そう言って、懐から取り出したチラシを見せる菊姫。そのチラシには、フェルメスと書かれたライトグリーンのバッグであった。
それを見てか、隅で見ていたロベルトと烏間が興味を示す。
「あら、それって世界的に有名なデザイナー会社が作っているバッグじゃない」
「確かに、このバッグはここでなら買えると思うけどねえ」
「皆で分けたとはいえ、かなりのお金を持っているからな! これくらいあれば、きっと買えるだろう!」
「しかし、なんでまたそんなものを?」
「……えーっとね、実はマ……じゃなかった、お母さんがこれを見て、ほしいなあ~って言ってたから、これをプレゼントしてあげたらいいんじゃないかと思ってな……」
「アネゴのお母さん、意外とオシャレ好きッスからねえ」
「これを買ってあげたら、きっと喜ぶんじゃないかと思って……」
「へえ~、菊姫って意外とお母さん思いなんだねえ」
「ま、まあ。母さんにはいつも世話になっているからな! これくらいはしてあげないと、母さんは喜ばないからな!」
ふんぞり返る菊姫に対して、岩ノ井と鏡山がボソリと呟く。
「まあ、アネゴは家じゃお母さまとか言ってるッスけどね……」
「フリフリのスカートとか買ってもらって、喜んでいるから、それに大して報いたいって言ってたからねえ……」
「わー! テメエらそれは言うな!」
「へぇ~、菊姫にそんな趣味があったんだぁ~」
「全く、可愛いじゃん?」
「て、テメエら……!」
焦る菊姫に対し、ニヤニヤする遊太達であった。


翌日、それぞれ町へと繰り出す遊太達であった。そして、菊姫達も目的地としているセントラルシティへと繰り出すのであった。
「さて……行くぞテメエら! 買うぞ! 有り金はたいてでも買うぞ!」
「待ってくださいよアネゴ~!」
「はしゃぎすぎッスよ~」
そうして、菊姫は目的の品を買うためにセントラルシティを闊歩するのであった。

一方その頃、セントラルシティのビル、そこに八神アキラとその父八神義弘がいた。
「父さん……いい加減待つの止めないか? 向こう側の返答も無し、もう二時間以上も待っている……」
「いや、会社経営を行う者として、これくらいの理不尽には耐えるべきだ」
「それはそうだけどさ……いくら世界有数の金持ちと契約の直談判するとはいえ、こっちは父さんの忙しい業務の合間を縫ってこっちに来ているのに、向こうは腐るほど時間があるんだ。なのに忙しいだなんて、これもうわからねえな」
「確かに、そうだがねえ。金持ちというのはえてして自由奔放、わがままなものなのさ」
「そういうものなのか? でも、向こうが俺を所望しているって言うなら、俺が行っても良いんじゃ……」
「ダメだ、それは。お前のそのデュエルモンスターズの腕前は、自分の為だけに使いなさい。何も、金持ちの道楽の為だけに使うようなものではない」
「……ああ」
義弘とアキラがそう話していると、義弘の携帯電話に着信電話がかかってくる。
「はい、ICPの八神です。はい、本社との契約に関する最終確認についてですが、その件については……」
「ごめんなさい、その件についてなんだけど、もう少し待ってもらえませんか? 今少し予定がたてこんでおりましてね~」
「はあ、ですが……こちらとしても今後の予定というものが……」
「そういうことだから、ごめんなさいね」
そう言われると、電話は一方的に切られてしまった。
「……むう」
「父さん……」
電話の主の女性は、高級なソファに座りながら、モニターに映し出されているデュエルを見ている。
「この子……デュエリストとしての腕は良いんだけど、いかんせんワンパターンになってきたわ……この子はもうダメね、次の子を探してらっしゃい!」
「わかりました、ミラノ様。早急に探して参ります」
ミラノと呼ばれた、高級な服に身を包んだ女性は、グラスに注がれたドリンクを口に含むと、大きな溜め息をついた。
「どこかに私を満足させてくれるデュエリスト、いないかしら?」

そしてこちらは、サマーズの高級街セントラルシティにいる菊姫だが……。
「あ~~……なんてこった……」
「まさか、あれほどお高いとは思わなかったッスねえ……」
「全くですねえ」
菊姫はカフェにて、メロンソーダ一杯だけを頼んで机に突っ伏していた。両隣には、菊姫の取り巻きである岩ノ井と鏡山が座っていた。
「なんだよ……桁が違いすぎるだろ……なんだよ50万ドルって……観光客の小遣いレベルじゃ全然足りないだろうがよ……0が1つ高いんだよ……」
「まあまあアネゴ、こればっかりはしょうがないッスよ。元々あんなお高いもの、買えるのがおかしいくらいッスから……」
「けどなあ~」
「とりあえず、適当なお土産でも買って帰りましょうよアネゴ~」
「仕方ねえかなあ~、どうしようかなあ~、諦めるほかねえのかなあ~」
といった具合に、取り巻きに宥められながら、机に突っ伏し愚痴を言っている菊姫。しかし、菊姫はとあることを聞く。
「オイオイ聞いたか? サバイバル7の話」
「聞いたよ、なんでも生き残りさえすればお金持ちのミラノって奴が好きな商品をくれるんだろ?」
「けれど、それをクリアした奴は一人もいないんだよ……やっぱり金持ちだけあって、凄腕の奴らばっかり集めているんだろうな~」
その言葉を聞いて、菊姫の耳がピクッと動く。そして、スッと席から立ち上がり、その話をしている二人の所へと足を運ぶ。
「ちょっとお兄さん達、その話ホント?」
「ええ? ホントはホントだが……」
「どこに行けばそれが出来る? デュエリストなら年齢問わず参加OK?」
「ハァ? お前みたいなガキが、サバイバル7に参加しようっていうのか?」
「ああ、もちろんさ。危うく諦めかけていたが……これならできそうだな!」
その様子を見ていた岩ノ井、鏡山の二人は、菊姫に近寄る。
「あ、アネゴ……まさか……」
「全く、知多並の幸運がアタシにも訪れたようだな! やってやろうじゃないの、サバイバル7!」


こうして、そのサバイバル7に挑むことになった菊姫。とりあえずサバイバル7の話をしていた二人の男に連れられ、会場へとやってきた。
そこは、とても大きな白い屋敷であった。
「そこのインターホンを押して、サバイバル7に挑戦しに来たと言えば、屋敷に通してくれるだろうよ」
「わかった! ありがとうな、お兄さん方々!」
男二人とは別れ、インターホンを押す菊姫。キンコーンと鐘の音が鳴ると、「誰?」という返答が帰って来た。それに対し、菊姫が答える。
「サバイバル7に挑戦しに来ました!」
「いいわ、入りなさい」
門が開き、菊姫達三人を迎え入れる。そして、屋敷の扉を開けると、中からタキシードを着た男が出てきた。
「サバイバル7、挑戦者ですね? こちらへどうぞ」
中へと通された菊姫達。中は、とても金糸や絹の絨毯といった豪華な内装で彩られており、屋敷の主がどれくらい金持ちなのかがわかる内装であった。
「あ、あの~アネゴ……」
「なんだよ岩ノ井」
「こういうのって、意外に危険なのでは……」
「なんだよ、ここまで来て引き返す訳にはいかねえだろ? 多少のリスクを受け入れないで、こういうことは成し遂げられないんだよ!」
「け、けれどアネゴ……」
「大丈夫! アタシを信じろ!」
「……アネゴぉ……」
男に連れられ、部屋の奥へとやってきた菊姫達。そこには、デュエルディスクが置かれ、置かれているディスクがコードによって繋がれているテーブルが一台あった。そして、向こう側には菊姫達が入ってきた扉とは違う扉があった。
この場所に着いた時、男が説明を始めた。
「ここが、サバイバル7の会場でございます。まずは、この会場の特殊ルール、いわばハウスルールについて説明させて頂きましょう。このサバイバル7は、挑戦者が7人のデュエリストと連続でデュエルをします。その7人のデュエリストと連続でデュエルをして、7人全員と勝てれば挑戦者のあなたの勝ち、負ければ例えどれだけ勝ってもそこで挑戦失敗となります」
「そして、その7人と連続でデュエルする時、相手のライフポイントは通常通り8000ですが、挑戦者であるあなたのライフポイントは20000から始めてもらいます。ただし、デュエルで受けたダメージはそのまま引き継がれたまま次のデュエルを行います。例えば一戦目で4000のダメージを受けた場合、二戦目のデュエルはそのまま4000のダメージを引いた16000のまま二戦目を行います」
「ライフポイントをたとえ1でも残して7戦勝利できれば、あなたの勝利となります。その場合は、ミラノ様から可能な限り」
「なるほど……要はライフを残して全部のデュエルに勝てばいいわけか」
「ここでのデュエルは、そこに置かれているデュエルディスクで全て行います。それでは、健闘を祈ります」
そうして、男は去っていった。そして、残された菊姫は、腕に専用のデュエルディスクをつける。
「よし、やってやるぜ!」
「あ、アネゴぉ……」
「心配すんなって、絶対に大丈夫だからよ!」
心配する岩ノ井、鏡山と違い、自信満々な菊姫。
そうこうしているうちに、サバイバル7は始まってしまった。ラウンド1のゴングが鳴り、目の前の扉からデュエリストが現れる。
「さあ、来いやー!」
そのデュエリストに、意気揚々と立ち向かって行く菊姫であった。

そしてこちらは、サバイバル7の主催者であるミラノ・エイリアルの部屋。モニターに映る、デュエリストのデュエルを退屈そうに眺めていた。
「この子もダメ、この子もダメ……最近ここに挑戦してくる子には、ロクなデュエリストがいないわね……途中でリタイアしたり、勝ったとしても辛勝だったり……ダメねえ~」
「ミラノ様、サバイバル7の挑戦者の中で、ミラノ様のお眼鏡にかなうデュエリストが現れました。いかがいたしましょう?」
「ふ~ん? まあいいわ、とりあえず見せてちょうだい」
先程9分割していたモニターの画面を、1つの画面に切り替える。そこには、菊姫がデュエルをしている様子が映っていた。
「子供……?」
「ただの子供ではございません。先程からこの少女、殆どライフを減らさずに3戦目まで来ています」
「あら、本当に……確かに3戦目だっていうのに、ライフが17000と余り減っていないわね」
「それだけではございません。見てください」
菊姫と対戦しているデュエリストは、守備力2000の『岩石の巨兵』と、守備力1800の『番兵ゴーレム』といった2体のモンスターを携え、フィールドにはフィールド魔法『断層地帯』と2枚の伏せカード、1枚の手札を持っている。ライフポイントは6200。
一方菊姫は、フィールドには守備力1300の『古代の機械兵士』、フィールド魔法『歯車街』と永続魔法『古代の機械要塞』があるのみであった。手札は2枚。ライフポイントは17000。
「いかにテメエの攻撃力が高くても、この鉄壁の守りは貫けねえだろ!」
「どうかな? アタシのターン、ドロー!」(菊姫手札2→3)
「アタシは手札より、魔法カード『嵐』を発動! 自分フィールドの魔法・罠を全て破壊して、破壊した分だけ相手の魔法・罠を破壊する! アタシのフィールドには2枚の魔法カードがある。これを破壊して、アンタの2枚の伏せカードを破壊する!」(菊姫手札3→2)
フィールドに吹き荒れた嵐によって、菊姫のカードと共に相手の伏せカードが破壊される。破壊されたカードは、いずれも罠カードの『D2シールド』と『鎖付き尖盾』であった。
「そして破壊された『歯車街』と要塞の効果発動! 『歯車街』は手札・デッキ・墓地から『アンティーク・ギア』モンスターを特殊召喚することができ、要塞は手札・墓地から『アンティーク・ギア』モンスターを特殊召喚できる! アタシはデッキから『古代の歯車機械』を特殊召喚して、墓地より『古代の機械飛竜』を特殊召喚する!」
「更に、特殊召喚された飛竜の効果発動! デッキから『古代の機械熱核竜』を手札に加える」(菊姫手札2→3)
「そして、『古代の機械歯車機械』と飛竜をリリースして、アドバンス召喚! 現れろ、レベル9『古代の機械熱核竜』!」
「兵士を攻撃表示にして、バトルフェイズ! 熱核竜で、『番兵ゴーレク』を攻撃! この時、熱核竜の効果発動! 『アンティーク・ギア』をリリースしてアドバンス召喚されたこのモンスターは、貫通ダメージを与えることができ、『ガジェット』をリリースしてアドバンス召喚された時は2回攻撃ができる! さらに、このモンスターが攻撃する時、モンスター・魔法・罠を相手は発動できない!」
「ぐぅっ」(挑戦者ライフ6200→5000)
「更に、熱核竜は攻撃した時、フィールドの魔法・罠を1枚破壊できる! フィールド魔法『断層地帯』を破壊!」
「なにぃ!」
「更に、もいっぱぁーつ! 熱核竜で、『岩石の巨兵』を攻撃!」
「ぐぅっ」(挑戦者ライフ5000→4000)
「更に、『古代の機械兵士』でダイレクトアタック!」
「ぐぅうっ! だがこれで、お前の攻撃は……」(挑戦者ライフ4000→2700)
「いいや、このターンで終わりさ! 速攻魔法『ライバル・アライバル』を発動! バトルフェイズに、モンスターを1体召喚できる! アタシは2体のモンスターをリリースして、手札の『古代の機械巨人』を召喚する!」(菊姫手札2→0)
バトルフェイズ中に召喚された、菊姫のエースカードである『古代の機械巨人』。その攻撃力は、3000とシメにはぴったりのカードである。
「なにっ!」
「お前のライフは2700。『古代の機械巨人』の攻撃力は3000。きっちりマクリだ! 行け『古代の機械巨人』! アルティメット・パウンド!」
「ぐあーっ!」(挑戦者ライフ2700→0)
「よっしゃあ! 勝ォー利!」
「さすがです、アネゴ!」
「当然ッスよ~!」
この様子を、モニターから見ているミラノとその執事。これを見て、ミラノはうっとりする。
「なんてデュエルなの……ただ相手を圧倒するだけじゃなく、搦め手も加えてのスキのない攻撃、さらに的確な読み……凄いじゃない!」
「それで、ICP社社長との確認についてですが……」
「そうね、社長さんにはちょっとここまで来てもらいましょうか。あ、息子さんも一緒にって連絡しておいて」
「わかりました」


ミラノの急な連絡を受けて、ミラノの邸宅へとやってきた、八神義弘とアキラ。本当に急な連絡だったため、若干急ぎ足で来た二人はちょっと息切れしていた。
「ハァ……ハァ……ふう……ミセスミラノ、本日はわが社との契約について、ご検討をしていただき……」
「今はその話は無し。今話したいのは社長であるあなたじゃなくて、息子さんのアキラ君」
「え、オレ?」
「見てちょうだい、コレ」
ミラノはモニターの電源をつける。そこに映し出されたのは、菊姫がデュエルをしている様子が映っていた。
「菊姫……? なんでヤツがここに?」
「あら、お知り合い? 私が主催するサバイバル7で、随分と好成績を残している子よ。今、丁度七戦目みたいね」
「アイツならこれくらいやってのける。ま、説明されたサバイバル7の内容なら、余裕でクリアできるだろうな」
「あら、ゲームはまだ終わらないわよ」
「何故? これが七戦目だというのなら、このデュエリストを倒したら終わりじゃないんですか?」
ミラノとアキラが話している一方、菊姫はデュエルの最中。ここで菊姫は、順調に進んでいた。
「アタシは手札より、魔法カード『融合』を発動! フィールドの『古代の機械巨人』と、手札の『古代の機械箱』2枚を融合させ、レベル10『古代の機械究極巨人』を融合召喚する!」(菊姫手札4→1)
「バトルフェイズに入り、速攻魔法『リミッター解除』を発動! フィールドの機械族モンスターの攻撃力を倍にする! これで攻撃力は、倍の8800! 攻撃だ! アルティメット・エクス・パウンド!」
「ぐわぁ~っ!」(挑戦者ライフ4000→0)
「……いよっし! これでライフ11000残してクリアだー!」
「おめでとうございます、アネゴー!」
「もう強すぎッスよ~!」
「これで、お母さんにフェルメスのバッグが……」
7戦やり終えた菊姫は、そのままデュエルディスクを外そうとするが。
「アレ? うまく外れない」
「ほへ?」
すると突然、ラウンド1の号令が鳴り、ライフが20000となって再びデュエリストが現れてデュエルが始まってしまう。
「ちょちょちょ……どうなってんだよ~!?」
「アネゴ~!」
「くっ……!」
一体どうなっているのか、訳も分からずデュエルを再開する。
その様子を、モニターで見ていたアキラは。
「これはどういうことなんですか? ミラノ様」
「どうもこうもないわよ、これは私のゲームなのよ? 私が終了宣言しない限り、ゲームはずっと続けてもらうわ」
「なんだと……!?」
「折角来てもらったんだもの、私を思いっきり楽しませてくれるまで、ずっとやってもらうわ」
「ウソだろ……!?」
モニターには、菊姫が必死でデュエルをしている内容が映し出されている。それを見て、アキラは父義弘にボソリと呟く。
「父さん……俺、行っていいかい?」
「ああ、そうしたいなら行ってくると良い」
「わかった……ミラノ様、俺もこのサバイバル7に参加してもよろしいですか?」
「ええ、良いわよ」
「ただし、やるのは俺のやり方でだ」

菊姫は、まだまだデュエルを続けている。何回も何回も。
「くっそー、倒しても倒しても次々にデュエリストが……」
「あ、アネゴ~!」
「アネゴ~!」
「く~っ!」
その時。
「乱入ペナルティ、2000ポイント!」
といった音声が流れると同時に、会場の横から人が現れる。ソイツは菊姫が良く知る人物だった。
「お前……アキラ!」
「『青眼の白龍』3体で、相手にダイレクトアタック。滅びの爆裂疾風弾、3連打!」
アキラはエースである『青眼の白龍』で、菊姫の相手であるデュエリストを倒してしまう。そして菊姫に向き直り、こう告げる。
「菊姫、運がなかったな。これはマトモなゲームではない。早々に立ち去った方が良い」
「ま、マジかよ……くっそ~! 騙された~!」
「だから怪しいって言ったのに、アネゴが勢いで進めるから……」
「ぐっ……スマン!」
アキラから聞かされた言葉を受けて、菊姫が取り巻き二人に謝る。しかし、この様子を見てデュエル場にモニターが映る。
「ちょっとぉ! 何人のデュエルを邪魔してくれてんのよ!」
モニターに映る、怒り顔のミラノ氏。それを受けて、アキラはモニターに向き直る。
「賞品でデュエリストを釣り、自分の気が済むまでデュエルをさせる……デュエリストを自分の欲望を満たす道具にするとは、許せねえな」
「なにい!? そんなことのにアタシを利用していただと!?」
「とまあ、菊姫も許す訳にはいかねえ奴だが、そう簡単には出してくれなさそうだな。そういう訳で菊姫、俺とデュエルしな」
「は?」
「確かに、あんな奴の為にデュエルするのは癪に触るかもしれないけどな、ここを出る為には奴を満足させねえといけねえからな。ま、俺と一戦交えてくれるだけで良い」
「……そうかい。ま、そういうことならしょうがねえか。んじゃ、やろうかい!」
「言っておくが、手加減するつもりはねえからな。全力で来い!」
「ああ、それくらい分かっているよ!」


「「ルールはマスタールール3! ライフポイントは8000!」」
「「デュエル!」」


突如始まったデュエルに、当初は困惑するミラノだったが、その様子を見てすぐモニターに向き直る。
「へえ……まさかあの子のデュエルが見られるなんてね、意外な展開になってきたわね」
「どうします? ミラノ様」
「せっかくだから見ようじゃない。なんだか楽しそう!」
「承知しました」
観戦を決め込むミラノに対し、アキラの父義弘はその後ろでそっと拳を握るのであった。
(アキラ……大丈夫かな?)


「先攻は俺が貰うぜ、俺のターン!」
そう言って手札を5枚ドローしたアキラの隣で、彼の精霊である『青き眼の乙女』が声をかける。
「良いの? アキラ君」
「仕方ねえことだろ、さて……やるか」

1・アキラのターン

「俺は手札を1枚捨てて、魔法カード『ドラゴン・目覚めの旋律』を発動させる! このカードはデッキから攻撃力3000以上で守備力2500以下のドラゴン族モンスターを2体手札に加える。俺は攻撃力3000で守備力2500の『青眼の白龍』と、『青眼の亜白龍』の2体を手札に加える」(アキラ墓地0→2)
「俺は手札の『青眼の白龍』を相手に公開することで、手札の『青眼の亜白龍』を特殊召喚する! 来い、『青眼の亜白龍』!」(アキラ手札5→4)
手札よりいきなり現れ出た、『青眼の白龍』にそっくりの白きドラゴン。攻撃力は3000と、非常に高い。
「更に、手札から魔法カード『調和の宝札』を発動! 手札の攻撃力1000以下のドラゴン族チューナーモンスター1体を墓地へ捨て、2枚ドローする。俺は手札の『伝説の白石』を捨て、2枚ドローする」(アキラ墓地2→4)
「そして、墓地へ送られた『伝説の白石』の効果発動。墓地へ送られた時、デッキから『青眼の白龍』1体を手札に加えられる」(アキラ手札4→5)
「そして、手札より魔法カード『トレード・イン』を発動させる。手札よりレベル8モンスターを捨てて、2枚ドローする。俺は『青眼の白龍』を捨てて、2枚ドロー!」(アキラ墓地4→6)
「俺はモンスターを1体セットし、カードを1枚伏せてターンエンド」(アキラ手札4→2)
「そしてこのエンドフェイズ、速攻魔法『超再生能力』を発動! このターン手札から捨てられた、または手札・フィールドでリリースされたドラゴン族1体につき1枚、エンドフェイズにドローできる。俺が手札から捨てたドラゴン族モンスターは、3体。よって、俺は3枚ドローする」(アキラ手札2→1→4)(アキラ墓地6→7)

アキラ

ライフポイント8000
手札枚数4枚
モンスター2体
『青眼の亜白龍』(攻撃表示・攻撃力3000・光属性・レベル8)
(裏守備表示)
魔法・罠ゾーンのカード1枚
発動しているカード0枚
墓地の枚数7枚
除外されているカード0枚


2・菊姫のターン

「アタシのターン、ドロー!」(菊姫手札5→6)
(アキラの奴、初っ端からスピード全開でかましてきやがって! やりづらいったらありゃしねえ! だが、ここで勝つのはアタシだよ!)
「アタシは手札から、カードを2枚伏せる」(菊姫手札6→4)
「そして、手札から『ゴールド・ガジェット』を召喚! 効果発動。手札からレベル4の機械族モンスター1体を特殊召喚する。手札から『古代の機械飛竜』を特殊召喚する!」(菊姫手札4→2)
「飛竜が召喚・特殊召喚された時、デッキから『アンティーク・ギア』と名の付いたカード1枚を手札に加えられる。アタシはデッキより、『古代の機械巨人』を手札に加える」(菊姫手札2→3)
「レベル4のモンスターが2体、エクシーズ召喚か?」
「まだ速いぜ。アタシのフィールドに機械族モンスターが2体だけの場合、手札の魔法カード『アイアンドロー』は発動できる。これにより、デッキから2枚ドローする! ただし、このカードの発動後、特殊召喚は1度しか行えねえ」(菊姫手札3→2→4)(菊姫墓地0→1)
「そして、アタシは機械族・レベル4のモンスター2体を素材として、エクシーズ召喚! 現れろ、ランク4『ギアギガントX』!」
レベル4の機械モンスター2体が重なり合って生まれたのは、歯車のような装甲を身に纏った巨大ロボ。攻撃力は2300。
「『ギアギガントX』の効果発動。エクシーズ素材を1つ取り除き、デッキ・墓地からからレベル4以下の機械族モンスターを手札に加える。アタシはデッキより、レベル4の『古代の機械素体』を手札に加える」(菊姫手札4→5)(菊姫墓地1→2)
「……アタシはこれで、ターンエンド」

菊姫

ライフポイント8000
手札枚数5枚
モンスター1体
『ギアギガントX』(攻撃表示・攻撃力2300・地属性・ランク4)
魔法・罠ゾーンのカード2枚
発動しているカード0枚
墓地の枚数2枚
除外されているカード0枚


3・アキラのターン

「オレのターン、ドロー」(アキラ手札4→5)
(へえ……このリバースモンスターが危ないってことは直感で気づいたみたいだな。この伏せ守備モンスターは『デコイドラゴン』。攻撃対象とされたら墓地のドラゴンを特殊召喚してそのモンスターに攻撃対象を移し替えるモンスター……ま、少しは警戒するか)
「俺は伏せられているモンスター1体をリリースして、手札よりレベル6の『ライトパルサー・ドラゴン』をアドバンス召喚する!」(アキラ手札5→4)(アキラ墓地7→8)
アドバンス召喚によって現れたのは、攻撃力2500の光色のドラゴン。アキラはこのモンスターを出したことによって、攻めの度合が整った。
「さあて、行こうか? バトルフェイズに入り……『ライトパルサー・ドラゴン』で『ギアギガントX』を攻撃! パルサー・ストリーム!」
「カウンター罠発動! 『攻撃の無力化』! これにより、モンスターの攻撃は無効化され、バトルフェイズは終了する!」(菊姫墓地2→3)
「それにチェーンして、カウンター罠『ギャクタン』を発動! 罠カードの発動を無効化し、そのカードをデッキに戻す! これでソイツも意味なし、攻撃続行だ!」(アキラ墓地8→9)
「チッ、防げると思ったのに!」(菊姫ライフ8000→7800)(菊姫墓地3→5)
「続けて、『青眼の亜白龍』でダイレクトアタック! 滅びのバーンストリーム!」
「二度目は通させるかよ! リバースカード、オープン! 永続罠『古代の機械蘇生』! 自分フィールドにモンスターがいない時、墓地より『古代の機械』モンスター1体を特殊召喚できる! アタシはこれで、墓地から『古代の機械飛竜』を、守備表示で特殊召喚する! そして、特殊召喚された飛竜の効果で、デッキから『古代の機械巨人』を手札に加える」(菊姫墓地5→4)(菊姫手札5→6)
「……なら、攻撃は中止だ。メインフェイズ2に入り、リバースカードを2枚セットして、ターンエンド」(アキラ手札4→2)

アキラ

ライフポイント8000
手札枚数2枚
モンスター2体
『青眼の亜白龍』(攻撃表示・攻撃力3000・光属性・レベル8)
『ライトパルサー・ドラゴン』(攻撃表示・攻撃力2500・光属性・レベル6)
魔法・罠ゾーンのカード2枚
発動しているカード0枚
墓地の枚数9枚
除外されているカード0枚


4・菊姫のターン

「アタシのターン、ドロー!」(菊姫手札5→6)
「アタシは手札から、『古代の機械素体』を召喚!」(菊姫手札6→5)
菊姫の場に現れたのは、『古代の機械巨人』の外装を取り払い、枠組みだけで出来たようなモンスター。攻撃力は1600。
「手札を1枚捨てて、素体の効果発動! デッキから『古代の機械巨人』か、その名前が記された魔法・罠を1枚手札に加えられる。アタシは今回、3枚目の『古代の機械巨人』を手札に加える」(菊姫手札5→4→5)(菊姫墓地4→5)
「……これで手札の中に、『古代の機械巨人』が3体揃った訳か」
「その通り、アタシは手札より、魔法カード『融合』を発動! 手札・フィールドから、融合素材によって決められたモンスターを墓地へ送り、エクストラデッキから融合モンスターを有業召喚する! アタシが融合素材とするのは、手札にある3体の『古代の機械巨人』! 古の機械仕掛けの巨人よ! 今一つとなりて強大なる力を示せ! 来い、レベル9『古代の機械超巨人』!」(菊姫手札5→1)(菊姫墓地5→9)
3体の『古代の機械巨人』が一つとなって現れたのは、腕が六本、足が六本もある『古代の機械巨人』を3体結合させたようなモンスター。攻撃力は3300と、とても高い。
「へえ、ここでそのモンスターを出してくるとは、中々やるじゃあねえか」
「ヘヘヘ。こういう時こそ、攻め込むにはうってつけなんだよ! 超巨人の効果発動! このモンスターは、融合素材とした『古代の機械巨人』の数だけ、攻撃階数を増やす! 今アタシが素材にしたのは3体、よって、3回の攻撃が可能となる!」
「飛竜を攻撃表示にして、バトルフェイズ! 行け、超巨人! 『青眼の亜白龍』を攻撃! アルティメット・メガパウンド!」
「ぐぅっ! 耐えろブルーアイズ!」(アキラライフ8000→7700)(アキラ墓地9→10)
「さらに、『ライトパルサー・ドラゴン』へも攻撃! メガパウンド・ツー!」
「ぐああっ! くっ、やられちまったぜ……」(アキラライフ7700→6900)(アキラ墓地10→11)
「次の一撃で、ダイレクトアタックを――」
「やらせるか! フィールドから墓地へ送られた『ライトパルサー・ドラゴン』の効果発動! 墓地よりレベル5以上の闇属性・ドラゴン族モンスターを特殊召喚する! 俺が墓地から特殊召喚するのは……コイツだ! レベル7『パンデミック・ドラゴン』! 攻撃表示だ!」(アキラ墓地11→10)
アキラの墓地から現れた、ハザードマークを意匠としたドラゴンが現れる。攻撃力は2500と、とても高い。
「いつの間に、そんなモンスターを墓地に……構わねえ、このまま攻撃だ! メガパウンド・スリー!」
そのままグシャッと『パンデミック・ドラゴン』を潰す超巨人。しかし、潰された『パンデミック・ドラゴン』の体内からウィルスが溢れ出し、超巨人達に感染する。
「『パンデミック・ドラゴン』の効果発動! 破壊された時、フィールドの表側表示モンスターの攻撃力を全て1000下げる! これで、超巨人の攻撃力も、残りのモンスターも全て攻撃力を下げられたな……」(アキラライフ6900→6100)(アキラ墓地10→11)
「……くっ!」(超巨人攻撃力3300→2300)(飛竜攻撃力1700→700)(素体1600→600)
「さあ、攻撃してきなよ。素体は召喚したばかり、飛竜も表示形式を変更したばかりだから守備にはできない」
「チッ、素体と飛竜で、ダイレクトアタック!」
アキラに攻撃が通るが、それでも微々たるもので大したダメージにはならない。
「……もう終わりか?」(アキラライフ6100→5500→4800)
「チクショー……メインフェイズ2に入り、アタシは手札から『古代の整備場』を発動! 墓地より『アンティーク・ギア』モンスター1体を手札に加える。アタシが手札に加えるのは、『古代の機械巨人』だ。これで、ターンエンド……」

菊姫

ライフポイント7800
手札枚数1枚
モンスター3体
『古代の機械超巨人』(攻撃表示・攻撃力2300・地属性・レベル9)
『古代の機械飛竜』(攻撃表示・攻撃力700・地属性・レベル4)
『古代の機械素体』(攻撃表示・攻撃力600・地属性・レベル4)
魔法・罠ゾーンのカード1枚
発動しているカード1枚
『古代の機械蘇生』(永続罠)
墓地の枚数10枚
除外されているカード0枚


5・アキラのターン

「俺のターン、ドロー」(アキラ手札2→3)
「俺は手札より、『竜魔導の守護者』を召喚する! そして、効果発動。手札1枚を捨てることで、通常魔法の『融合』『フュージョン』カード1枚を手札に加えられる。俺はデッキから、『融合』を手札に加える」(アキラ手札3→2→1→2)(アキラ墓地11→12)
「そして、『竜魔導の守護者』の効果発動。エクストラデッキの融合モンスター1体を相手に公開し、それに書かれたモンスター1体を、裏守備表示で墓地から特殊召喚する。俺は『青眼の究極竜』を公開し、融合素材の『青眼の白龍』を特殊召喚する!」(アキラ墓地12→11)
「融合召喚で来るのか!?」
「ああそうだよ。俺は手札から『融合』を発動! 手札・フィールドの2体の『青眼の白龍』を融合素材として、現れろ! レベル10『青眼の双爆裂龍』!」(アキラ手札2→0)(アキラ墓地11→14)
2体の『青眼の白龍』が一つになり、現れたのは二つの首を持つブルーアイズの融合モンスター! 攻撃力は3000と、融合元と大して変わりはないが、とても恐ろしい効果を持っている。
「バトルフェイズに入り……双爆裂龍で超巨人を攻撃! 滅びの双爆裂疾風弾!」
「ぐぅっ! チッ、あの時攻撃力を下げられていなかったら……!」(菊姫ライフ7800→7100)(菊姫墓地10→11)
「まだだ! 双爆裂龍は、モンスターに対して2回攻撃ができる! もう一発だ! 飛竜へと攻撃! 滅びのダブル・バーストストリーム!」
「ぐぅぅぅっ!」(菊姫ライフ7100→4800)(菊姫墓地11→12)
「更に、『竜魔導の守護者』で、素体へと攻撃!」
「クッ、ここでこんなにもダメージをもらうたあ……」(菊姫ライフ4800→3600)(菊姫墓地12→13)
「まだ、終わらせはしないぜ! リバースカード、オープン! 速攻魔法『融合解除』を発動! フィールドの融合モンスター1体をエクストラデッキに戻す。その後自分の墓地に融合素材が揃っていれば、それらを特殊召喚できる! 俺は双爆裂龍をエクストラデッキに戻し、墓地より2体の『青眼の白龍』を特殊召喚する! 来い、『青眼の白龍』!」(アキラ墓地14→12→13)
「何っ!?」
攻撃が終わったと思ったら、まだまだ終わらないアキラの攻撃。2体の『青眼の白龍』が現れる。この2連撃を喰らってしまえば、ライフがあっという間に0になってしまう! 
「1体目の『青眼の白龍』で、ダイレクトアタック! 滅びの爆裂疾風弾!」
「やらせるか! 永続罠『古代の機械蘇生』の効果で、フィールドにモンスターがいない時墓地から『古代の機械』モンスターを特殊召喚する! この時、アタシが特殊召喚するモンスターは……超巨人! さあ、墓地から蘇れ、超巨人!」(菊姫墓地13→12)
『青眼の白龍』の攻撃を、その巨体で防ぐ超巨人。攻撃力3300と3000では、攻撃にためらいも出る。
「おっと、ここでそのモンスターを出してくるとはな。バトルは終了。メインフェイズに入り……俺はフィールドの『青眼の白龍』2体をリリースして、エクストラデッキより再び『青眼の双爆裂龍』を融合召喚する。これでターンエンドだ」(アキラ墓地13→15)

アキラ

ライフポイント4800
手札枚数0枚
モンスター2体
『青眼の双爆裂龍』(守備表示・守備力2500・光属性・レベル10)
『竜魔導の守護者』(攻撃表示・攻撃力1800・闇属性・レベル4)
魔法・罠ゾーンのカード1枚
発動しているカード0枚
墓地の枚数15枚
除外されているカード0枚


6・菊姫のターン

「アタシのターン、ドロー!」(菊姫手札1→2)
(くっ、これじゃあ今の状況はどうにもできない!)
「バトルフェイズに入り、超巨人で――」
「おっとその前に、永続罠『闇の増産工場』を発動! フィールド・手札のモンスター1体をリリースして、1枚ドローする。俺は『竜魔導の守護者』を墓地へ送り、1枚ドローする」(アキラ手札0→1)(アキラ墓地15→16)
「チッ、流石に的になるようなモンスターを残してはくれねえか! 超巨人で、双爆裂龍を攻撃! アルティメット・メガパウンド!」
「だが、双爆裂龍は戦闘では破壊されねえ!」
「ぐぐ……アタシはこれで、ターンエンド」

菊姫

ライフポイント3600
手札枚数2枚
モンスター1体
『古代の機械超巨人』(攻撃表示・攻撃力3300・地属性・レベル9)
魔法・罠ゾーンのカード1枚
発動しているカード1枚
『古代の機械蘇生』(永続罠)
墓地の枚数12枚
除外されているカード0枚


7・アキラのターン

「俺のターン、ドロー」(アキラ手札1→2)
「俺は手札から、魔法カード『闇の量産工場』を発動! 自分の墓地より、通常モンスター2体を手札に加える。俺は『青眼の白龍』を2体手札に加える」(アキラ手札2→1→3)(アキラ墓地16→14→15)
「バトルフェイズに入り……俺は『青眼の双爆裂龍』で、『古代の機械超巨人』を攻撃! 滅びの双爆裂疾走!」
「攻撃力が低いモンスターで、攻撃力が高いアタシのモンスターを攻撃するだって!?」
「双爆裂龍は戦闘では破壊されず、このモンスターの攻撃で破壊されなかったモンスターは、ダメージステップ終了時に除外される! これで、お前のモンスターは除外だ! 反射ダメージは受けるが、これで墓地から特殊召喚できまい」(アキラライフ4800→4500)
「クッ……だけど、これでダイレクトアタックは――」(菊姫除外0→1)
「手札より速攻魔法『銀龍の轟咆』を発動! 墓地よりドラゴン族通常モンスターを特殊召喚する! これにより、俺は墓地から『青眼の白龍』を特殊召喚する!」(アキラ手札3→2)
「何!? それにチェーンする! 永続罠『古代の機械蘇生』で、アタシは墓地より『古代の機械飛竜』を特殊召喚する!」(菊姫墓地12→11)
「特殊召喚された飛竜の効果で、アタシはデッキより『古代の機械箱』を手札に加える。更に、箱の効果発動
。箱は手札に加わった時、デッキから攻撃力か守備力が500の地属性機械族モンスターを手札に加える。アタシはデッキより『古代の機械騎士』を手札に加える」(菊姫手札2→4)
「だが、焦って特殊召喚しちまったみたいだな。双爆裂龍はモンスターへと2回攻撃できる! 飛竜へと攻撃!」
「っく!」(菊姫墓地11→12)
「そして、『青眼の白龍』で、ダイレクトアタック! 滅びの爆裂疾風弾!」
「ぐぅぅぅっ!」(菊姫ライフ3600→600)
「俺はこれで、ターンエンド。いよいよ、後が無くなってきたな……」

アキラ

ライフポイント4500
手札枚数2枚
モンスター2体
『青眼の双爆裂龍』(攻撃表示・攻撃力3000・光属性・レベル10)
『青眼の白龍』(攻撃表示・攻撃力3000・光属性・レベル8)
魔法・罠ゾーンのカード1枚
発動しているカード0枚
墓地の枚数15枚
除外されているカード0枚


8・菊姫のターン

「アタシのターン……」
(ここでアタシが勝つためには、あのモンスターを一気に倒せるような攻撃力を得るしかない……しかし……アタシの手札には『古代の機械巨人』と飛竜で手札に加えた『古代の機械』モンスター2体。そしてフィールド魔法『歯車街』……これじゃ逆転は難しい)
(頼む、ここで逆転できるカードを……引かせてくれ!)
「ドロー!」(菊姫手札4→5)
引いたカードをチラ見する菊姫。一瞬見えたそのカードを見て、思わず顔がにやける。
「ハハッ、こんなとこでこれをドローするなんて、ついているぜ!」
「何……?」
「ここでアタシの、とっておきを見せてやるぜ! 手札から魔法カード『パワー・ボンド』を発動!」
「何……そのカードだと!?」
「このカードは、機械族専用の融合魔法。このカードを使って融合召喚したモンスターの攻撃力を二倍にする。だが、これを使って融合召喚した場合、エンドフェイズに融合したモンスターの攻撃力分のダメージを受ける。だが、このターンで決めてしまえば問題はない! アタシは手札の『古代の機械巨人』と『古代の機械』モンスター2体を融合させ、『古代の機械究極巨人』を融合召喚する!」(菊姫手札5→1)(菊姫墓地12→16)
『パワー・ボンド』の効果によって融合召喚された『古代の機械究極巨人』。元々の攻撃力は4400と高いが、『パワー・ボンド』によって倍の8800となる! 
「おっと……こりゃちょっとマズイか?」
「行くぜ、バトルだ! 『古代の機械究極巨人』で、『青眼の白龍』を攻撃! アルティメット・エクス・パウンド! これで終わりだァァッ!」
ドガァンンと、派手な音を立てて『青眼の白龍』が破壊される。これにより、5800ものダメージが与えられる……? 
「よっしゃ! これで……」
「いやあ、焦ったわ。まさかそんなカードで一発逆転を狙われるとは、恐ろしいカードを持っているな」
「なっ、バカな……ライフが減っていない! 4500のままだ! 伏せカードは発動されていない。だったらどうして……」
「墓地の『ガード・ドラゴ』の効果を発動した。このモンスターは墓地から除外することで、戦闘ダメージを1度だけ0にできる。これで、お前の8800の攻撃は通らなかったぜ!」
「なっ、そんな……やられた……! ……力のあるカードには、代償が伴う。このエンドフェイズ、融合召喚したモンスターの攻撃力分のダメージを、アタシは受ける……」(菊姫ライフ600→0)


デュエルが終了し、アキラの勝利で終わった。すると、カチャリと音を立てて菊姫の腕につけられたデュエルディスクが外れる。
「くっ、そ~! あと一歩だったっていうのに、あそこであんなカードを発動されるなんて……」 
「お前も、随分成長していたみたいだな。アレがなきゃ俺は終わっていた。ま、俺とアイツに比べりゃ、まだ一歩とどかねえって感じだけどな」
「チクショー! 今度は絶対に勝ってやるからな、覚悟していやがれ!」
「アネゴ……」
「アネゴ……」
「あんな奴の為にデュエルしたのはシャクだったがな、ま、そこそこ楽しめた。じゃあな」
そう言って、アキラは去って行った。

そして、ミラノの部屋へと戻ってきたアキラ。
「どうでしたか? 今のデュエルは」
「凄かった……とっても凄かったわ! 今まで見た中で一番!」
「じゃあ、今日はここまでってことで……」
「あ、アキラ……」
「あら、もう行っちゃうの? ICPの社長さんと、その息子さん。契約のことはどうしたの?」
「え?」
「あんなデュエルを見せてもらったんだもの。今の私は最高の気分よ! さあ、仕事の話に戻りましょうか」
「……やれやれ」


あの悪夢のようなサバイバル7を終えた菊姫は、ホテルへと戻る途中であった。取り巻き二人も連れて。
「あ~あ、全くついてないったらないぜ。あんな目にあうとは……」
「だから、怪しいことには首を突っ込まない方が良いって言ったじゃないッスか」
「まあ、そうだな。今回は全体的にアタシに非がある。お前達を巻き込むことにもなっちまったな。スマン」
「まあ、こうして無事に帰ってこれたし、良いんじゃないですか? 殆どアキラ君のお陰ですけど……」
「そうだよ! アキラの奴、前にも増して強くなりやがって……あと一歩だったのになぁ~! クソ~! ま、でも。今のアタシじゃアイツには勝てないってこともわかった。まだまだ足りないものが、沢山ある。次会った時は、その時は……」
そう呟いているうちに、ホテルへと辿り着いた菊姫達であった。
「おっ、戻って来たか」
「あっ、菊姫! どこ行ってたの?」
「ああ、ちょっくらデュエルしてた。遊太、お前みたいにな」
「え~、菊姫もデュエルしてたの~? やっぱり好きなんだねえ~」
「遊太みたく、菊姫もデュエルバカじゃん!」
「うるっせーぞ知多!」
「まあまあ菊姫さん、知多君だってデュエルが好きなんですから、そう怒らないでほしいですわ」
「フフ……やっぱりこの子達はデュエルがお土産選びよりも優先されることなんだねえ。雛姫」
「ええ、まったくね。ロベルト」


こうして、いろいろあったサマーズ旅行は、終わったのであった。
家に戻ってきた遊太は。
「ただいま~。アレ? いつもならお父さんがいの一番に駆け寄ってくるはずなのに、なんで出てこないんだろ?」
「おかえりなさい、遊太。ああ、お父さんならあなたがいないショックで筆が進まなかったから、今頃ホテルでカンヅメになっているんじゃない?」
「ふーん、そうなの。お父さんにもこまったもんだねえ」
「ええ、まったく」

そして、菊姫も。
「ただいまぁ~。あー疲れた……」
「お帰り~ヒメちゃん! お土産ありがとうね!」
「え?」
「旅行先から届いたわよ! 前から欲しかったフェルメスのライトグリーンカラーバッグ! ありがとね~!」
「え? あ、うん……よかったね……」
(どうしてこんなことになったんだ? まさか……アキラの奴がなんかやったのか?)


とまあこんな風に、遊太達のサマーズ旅行は終わったのであった。


第五十七話。終わり。
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65 第九十六話「最終予選2 竜姫神と青眼」 468 0 2022-01-04 -
70 第九十七話『最終予選3 約束のために』 566 0 2022-01-10 -
62 第九十八話「最終予選4 VSJ4最強」 672 0 2022-02-01 -
54 第九十九話「異変」 517 0 2022-02-27 -
73 第百話「D1グランプリ、本戦開始!」 415 0 2022-04-09 -
75 第百一話「プロの実力」 427 0 2022-05-07 -
63 第百二話「デストーイ・デコレーション」 518 0 2022-06-04 -
46 第百三話「アマゾネスの首領」 376 0 2022-07-10 -
41 第百四話「プロ辞めます!」 462 0 2022-08-28 -
40 第百五話「強襲! 梁山泊デュエル!」 340 0 2022-10-16 -
49 第百六話「鉄屑と星屑」 556 0 2022-11-27 -

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