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遊戯王Binarius(ビナリウス)/5Turn 竜舞う花伝 作:ジェム貯めナイト

 白熱したデュエルも佳境に差し掛かり、遊陽がカードを引いて確認するのを、遊無と留音は瞬きも忘れるほどに見入っていた。


 「一斗の場にはウォッカー・バロンと伏せカード――あのいやらしい顔からして、安易に攻撃しても返り討ちに遭うことは間違いないわ」

 「おま……!? 誰がいやらしい顔だ!」


 カズが抗議の声を上げるが、留音の言う通り遊陽の圧倒的不利を覆すことは困難を極めると、遊無は羽音を立てて遊陽を威嚇する赤い秋津を見て感じた。


 「……頼みの騎射三物 流鏑馬も手札に戻され、状況は明らかに不利。だがそれでも“賑やか”な祭りは止まらない! 手札の《ワッショイ・喪服蝶》と騎射三物 流鏑馬を墓地に送り、効果発動!」

 
 周辺に漆黒の翅から鱗粉を舞わせた蝶が飛び交い始めると、舞い落ちる鱗粉が子供の形となって、再び遊陽の場に氏神をその身に降ろす童子は舞い戻ってきた。


 「自ら騎射三物 流鏑馬を野に放っただと!?」

 「これにより墓地に送った騎射三物 流鏑馬とは異なる属性の「氏子」を墓地から蘇らせる! 戻って来い! 《ワッショイ・ヨリマシ》……!」

 ――りょーかいっ! マスター!


 ワッショイ・ヨリマシ攻撃力300。


 「これは……“あの時”と同じ――」

 「更に《祭場祝儀》を発動だ! 墓地の「氏子」5体をデッキに戻し、カードを2枚ドローする。この効果で選んだモンスターの属性が全て異なる場合には、代わりに3枚ドローできる……!」


 遊陽の墓地から5体の氏子達がデッキに戻されると、D・フェースの機能によって自動でシャッフルされたのち、3枚のカードがデッキから押し出される。


 祭場祝儀 通常魔法
 このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
 (1):自分の墓地の「ワッショイ」モンスター5体を対象として発動できる。
 そのカードをデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚
 ドローする。
 この効果で対象としたモンスターの属性が全て異なる場合には、ドローする枚  
 数は3枚になる。


 「……その3枚が、お前の運命を分かつことになるな」

 「このターンが“千秋楽”だ! このドローからその幕が上がるぜ! ドロー…
…!」


 再びカードを引いた遊陽は3枚の手札を確認する。

 遊無に留音――対戦相手のカズまでもが遊陽の動向に目を見張る中、最初に遊陽が掲げたモンスターによって、場にいるヨリマシがその身に“氏神”を宿らせていく。

 
 「ヨリマシは“氏神”をその身に宿す“尸童”となる! 無垢なる尸童よ! 神
霊を招き、その身に神力を宿し賜りて、御身を顕現せしめよ! “アドバンス召喚”! 現れろ、掛け声響く祭りの竜! 《ワッショイフェスタ・ドラゴン》
……!」


 稲光とともに天の彼方から威光を放ち、地上に降臨した祭りの竜が、カズと彼の従える赤き秋津に向けて咆哮を上げた。


 ワッショイフェスタ・ドラゴン 攻撃力2500。


 『これが……遊陽(君)の手に入れたカード――』

 
 尾を神輿に巻き付け、赤き秋津を視野に捉える祭りの竜を初めて見たカズと留音は、驚きを隠せないでいた。


 「更に俺は墓地のヨリマシを対象に、魔法カード《追善回向》を発動! これによりデッキの上5枚から異なる属性を持つ「氏子」を墓地に送り、そのレベルの合計×100LPを回復する」


 遊陽LP600→1000。


 「この効果で《ワッショイ・手水柄杓》と《ワッショイ・諷経風車》を墓地に送り、墓地に送られた手水柄杓の効果によって、墓地のハヤシフルートを再び手札に戻す」


 そして墓地から手札に加えたハヤシフルートを、遊陽は再びD・フェースに置く。

 篠笛の澄み渡った音が響き渡り、白い小袖に赤い袴をした巫女装束の奏者が再び場に現れた。


 「手水柄杓で戻したハヤシフルートを再び特殊召喚。そして最後に残った魔法カード――《式面翁》を発動だ! 式面翁によりワッショイフェスタよ! シテとなり異界を繋ぐ架け橋となれ!」


 遊陽の元を離れ、公園の上空に舞い上がった祭りの竜を、1枚の揚幕が覆い隠していく。

 幕の中で祭りの竜は、大きな鏡の中で顎から立派な白い髭を生やした――上下に分かれた端正な老人の面をかけるとともに揚幕が上がって、目元を覆い顎から髭を生やした演者としての姿を一同に披露した。


 式面翁 通常魔法
 このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
 (1):自分フィールドの「ワッショイ」モンスター1体を対象に発動できる。
 このターンそのモンスターが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時ま
 で魔法・罠カードを発動できず、戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地に
 送った場合、自分フィールドのレベル7「ワッショイ」モンスターの数までデ
 ッキからカードをドローする。


 『姿が変わった……!?』

 「そして俺は、翁を演じるワッショイフェスタの効果発動! 俺の墓地の属性と種族の数だけ攻撃力を500アップして、お前の複翅キの攻撃力を200ダウンさせる! “賑やか”な催しで再び活気づけ! リバイタライズ・カーニバル
……!」


 祭りの竜を照らすように――上空に3つの光の球が浮かび上がると、胴体をしならせてまるで舞を披露するかのように、祭りの竜は宙を飛び回る。

 繰り返される繊細な動きは光の当たり具合とともに、無機質な面が命を吹き込まれたかのように様々な表情を取っているようにも思えた。


 ワッショイフェスタ攻撃力2500→4000。 ウォッカー・バロン攻撃力2600
→2200。 


 「2体の攻撃力差は1800。そして一斗の残りLPは500――」

 「バトルだ! 俺はワッショイフェスタでウォッカー・バロンを攻撃……!
“新たな能力”を得たワッショイフェスタの効果で、この攻撃に対して魔法、罠カ
ードは発動できない!」


 攻撃宣言とともに、面をかけた祭りの竜が金色の鱗を輝かせ、開口した口から放った光線が猩々の如く真っ赤なトンボへと襲い掛かる。


 「“賑やか”せ! 隆盛のプロスペリティ・バースト……!」

 「一斗……!」

 「まだだ! 式面翁の効果はモンスターの効果までは防げない! 手札の《複翅水蝎(ドラゴニュンヘ)ドロセア》を墓地に送り、この戦闘でのダメージを無効にする!」


 赤い秋津を貫き、迫り来る光線を前にカズの手札から現れた一匹のヤゴが彼の身代わりとなって、全身に光線を浴びて消滅する。


 複翅水蝎(ドラゴニュンヘ)ドロセア
 効果モンスター
 /レベル1/水/昆虫/攻撃力200。
 (1):相手モンスターの攻撃で自分が戦闘ダメージを受けるダメージ計算時に
 このカードを手札から捨てて発動できる。
 その戦闘で発生する自分へのダメージを0にする。
 (2):このカードがカード効果で破壊された場合に発動できる。
 このターン自分の昆虫族モンスターとの戦闘で発生する自分へのダメージを0
 にする。


 「これでもまだ、倒れないか」

 「ったり前だぜ! 俺がそう簡単にやられるかっての! ウォッカー・バロンに装備された複翅キ爆装が墓地に送られたことで、お前に500のダメージを爆撃するぜ!」


 機体の破損とともに弾かれた爆弾は遊陽の元へと転がり落ちると、爆発とともに彼のLPを削った。


 遊陽LP1000→500。


 「更に罠カード《複翅キ救助(ドラゴニック・シーレスキュー)》を発動! 破壊されたウォッカー・バロンを守備表示で蘇生し、その攻撃力分俺のLPを回復するぜ!」


 複翅キ救助(ドラゴニック・シーレスキュー) 通常罠
 (1):自分の「複翅キ」モンスターが相手によって破壊され墓地に送られた場
 合、自分の墓地の「複翅キ」モンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターを守備表示で特殊召喚し、その攻撃力分LPを回復する。


 カズLP500→3100。 ウォッカー・バロン守備力1400。


 「……俺は式面翁の効果によって、ウォッカー・バロンを戦闘で破壊したことにより、デッキから1枚ドローする」


 遊陽はデッキの上に手を置き、このドローこそ勝敗を分ける最後のドローだと、祈るようにカードを引いた。


 「……これは!? カズ! 俺はこのカードでこのデュエルの勝敗を“占う”ぜ
!」

 「“占う”……だと?」

 「速攻魔法《結占御籤》を発動! このカードは籤箱から出た籤棒の番号と同じ枚数だけ、デッキの上から「氏子」1体を呼び出せる権利を得る……!」


 結占御籤 速攻魔法
 このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
 (1):サイコロを1回降る。デッキの上から出た目と同じ枚数カードをめく
 り、その中の「ワッショイ」モンスター1体を特殊召喚する。
 その後自分はこの効果で出た目×100LPを失う。


 「でも遊陽君のLPは500。もし5か6の番号が出たら――」

 「面白れぇ! そう都合よく目当てのモンスターを引けたら苦労しねぇよ
……!」


 確率にして3分の1で、遊陽の敗北は決定してしまう。

 しかも狙い通りにモンスターは出せないことに、カズと留音は分の悪い賭けだと考えた事を口にした。


 「……運命とは、“思い”の強さが決めるのでしょう」

 『……? 遊無ちゃん?』

 「私がこうしていられるのは、“私を強く思ってくれた人”の思いだと――遊陽
さんにならきっとカードも答えてくれる――」


 遊無が持論を唱えるとともに、宙に現れた巨大な御籤箱がガラガラと大きな音を立てて揺れ始める。

 4人が固唾を飲んで見守る中、箱から引かれた1本の棒に書かれていた番号を見ると、遊陽はデッキの上4枚の中から神輿の担ぎ手を場に呼び出した。


 遊陽LP500→100。


 「番号は“4”だ! ……いたぜ! 現れろ《ワッショイ・カツギテ》! そし
てカツギテでウォッカー・バロンを攻撃! 軌条走破!」


 神輿を背負ったまま、墓地から引き揚げたばかりの真っ赤な秋津目掛けて担ぎ手は突進すると、体当たりによって今度こそ大破へと追いやった。


 「俺の――ウォッカー・バロンが!?」

 「更にカツギテが相手モンスターを破壊したことで、俺はデッキの上3枚の中からレベル4以下の「氏子」1体を呼び出せる! ……俺は《ワッショイ・スクーピングフィッシュ》を特殊召喚するぜ……!」


 背負った神輿の扉が開き、尾ひれの中心に薄い紙を円状に張りつけた真っ赤な金魚が、宙を泳いで場に現れた。


 ワッショイ・スクーピングフィッシュ
 効果モンスター
 /レベル3/水/魚/攻撃力600。
 このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 (1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、自分の墓地のレベル4以
 下の「ワッショイ」モンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターを特殊召喚する。


 「スクーピングフィッシュはその名の通り、俺の墓地からレベル4以下の「氏子」1体を掬い上げる! この効果で俺はヨリマシを再び場に呼び出すぜ!」


 祭りの金魚が地面の底から浮かび上がってきた影を、尾ひれで一掬いすることによって、水飛沫とともに再びヨリマシは場に降り立った。


 ――うわぁー! みんなせいぞろいだね――。

 「続けてハヤシフルートの笛の音を、カズのLPに届けてやるぜ!」

 「うげぇ……蚊の羽音かってくらい高すぎて、耳がキーンってなるぜ。相手の直接攻撃時、墓地から複翅水蝎(ドラゴニュンヘ)メンテーを蘇生し盾とする
!」


 巫女装束の奏者が吹き鳴らした高音域の音色に、カズが耳を塞いで顔をしかめる中、地中から1匹のヤゴがカズの前に飛び出して、彼の代わりに音波を受けて消滅する。


 「これで攻撃可能なのはその金魚と、ちっこい子供だけだ!」

 「……真打の登場は決まって最後だ。ハヤシフルートをリリースして、墓地の《ワッショイ・諷経風車》の効果発動!」


 巫女装束の奏者が篠笛を吹き鳴らしながら消滅すると、念仏の木霊を響かせて新たに吹く風が周囲を包み込むとともに、2本の風車が地面へと突き刺さった。


 ワッショイ・諷経風車
 効果モンスター
 /レベル2/風/魔法使い/ATK:200。
 このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 (1):このカードが墓地に存在する場合、バトルフェイズに自分フィールドの
 「ワッショイ」モンスター1体をリリースして発動できる。
 墓地のこのカードを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこのカードは以下
 の効果を得る。
 ●このカードは攻撃対象にされない(この効果が適用されたモンスターしか自
 分フィールドに存在しない状態での相手の攻撃は自分への直接攻撃になる)。


 「諷経風車……攻撃対象にされない効果を持つ、守り向きの能力だが――」

 「そのためのハヤシフルートさ! ハヤシフルートがリリースされ墓地に送られたことで、「ワッショイ」風属性モンスターである諷経風車の攻撃力は、このターン場の属性の数×500アップする!」


 巫女装束の奏者が去りつつも吹き鳴らす音の音色が4枚の羽を回転させ、唱えられる諷経とともに、風車へと自然界に存在する4つの力が収束していく。


 諷経風車攻撃力200→2200。
 

 「ま――まさか、ここまでやるとはな……」


 面を掛けた祭りの竜を中心に、4体の氏子が集まり、さながら能楽の一場面のような光景がデュエルを通して再現されているようだと、カズ達は見入っていた。


 ――おぉっ! “うじがみさま”もみんなも、すっごくかっこいい……!

 「俺達氏子の結束は、立ちふさがる困難さえも乗り越え、平穏を求め祈祷する! 諷経風車とスクーピングフィッシュでカズに攻撃だ!」


 風車が吹き流す暴風と、金魚が水面を叩いて巻き起こした水飛沫が空中で弾けて、2体の攻撃を合わせた風雨がカズの頭上から降り注ぐ。


 「ちっ……!」 カズLP3100→900→300。


 「これが――これこそデュエルなのですね……! “あの時”と同じ――諦めな
い心がある限り、精霊達は答えてくれる……!」


 遊無の呟きを遊陽とヨリマシは聞き入れるとともに、無言で頷いた。

 そしてヨリマシは小さく拳を握ると、立ち昇る気力が薄っすらとした竜の姿となり、カズをめがけて狙いを定める。


 ――このデュエル、おわらせるよマスター!

 「ああ 俺はヨリマシでカズに攻撃だ! 宿せ――」


 『憑神命(ツキガミノミコト)……!』


 ヨリマシから離れ、大口を開けて迫り来る竜を前に――カズは完敗だ。と口にすると、D・フェースを装着した腕を降ろした。


 「うっ――ぐああぁぁっ……!」 カズLP300→0。


 「一斗……!?」


 竜に衝突された衝撃で、カズは後ろに吹き飛んで地面を転がり、遊無達の手前で背中を向けて倒れる。

 決着とともに倒れたカズの元に、留音は血相を変えて駆け寄ると、彼の顔を心配そうに覗き込んだ。


 「だ……大丈夫なの?」


 遊無とともに駆け寄ってきた遊陽も倒れたカズを見て、心配そうに覗き込む中、カズは呆然とした表情で身を起こすとすぐに口角を上げて、突然笑い出した。


 「クク――ワーッハッハッ……!」

 「か……一斗? 頭でも打った……?」


 3人が呆気に取られて心配そうに見つめる中、やがて落ち着いたカズはその場で起き上がると、遊陽に近付きポンポンと肩を軽く叩いた。


 「ハハッ……お前凄っげぇな! お前らも見たか? ワッショイフェスタが出てからの流れ――ここまで熱くなれるデュエルは中々ないぜ。なぁ……!」

 「お前こそ――紙一重の攻防で、俺が負けてもおかしくなかった。やっぱりお前とのデュエルはワクワクする――お前こそ“最高の友”だな……!」


 ガシッと、2人は笑みを浮かべながら右手同士で固い握手を交わす。

 そこには互いに信頼のおける――友人としての二人の関係が、遊無と留音にもハッキリと見て取れた。


 「……私、少し遊陽君が羨ましいわ」

 「留音さん……?」


 少し寂しそうに――互いに屈託ない笑顔を浮かべる遊陽とカズを見る留音の視線に、遊無はどう声を掛けていいか分からず沈黙するが、やがて吐露した感情を否定するように留音は1人――首を横に振った。


 「ううん――何でもないわ。私は“今の関係”から飛躍して、“より深い関係”
を一斗と結びたいもの」


 再び胸に手を当て、ほんのりと頬を赤らめさせながらカズを見つめる留音を目にして、遊無はカズの“特別”になりたいという――留音の秘めた“彼への一途な思い”を察した。


 「……ってなわけで、遊無ちゃんもデュエルの感じ、掴めただろ? 早速デュエルしてみろよ」

 「あっ――はい。お二人はお疲れのようですし、留音さん、私とのデュエル――お願いしてもよろしいでしょうか?」

 「……――」


 早速遊無が留音へとデュエルを申し込むも、留音は心ここにあらず。といった様子で、頬を紅潮させたまま顔を俯かせている。


 「おい――塰里? 具合でも悪いのか?」

 「……!? な――何!?」

 「いや……遊無がデュエルしてほしいって――」


 我に返った留音は遊陽の言葉を聞くと、慌てて遊無に向き直る。


 「そ――そうね。元々遊無ちゃんにデュエル教えるのだったわね……!」

 「お前どうしたんだよ? 腹でも減ったのか?」

 「えっ……!? いや――その、“ちょっと”は空いてるけど……」

 「またかよ。……仕方ねぇ、後でまた遊陽に払わせるからさ。近くのコンビニまで買いに行ってやるよ」


 動揺しつつも留音はカズに言われるまま、遊陽にもお礼を言いつつ、やがていつもの調子を取り戻した。

 なんで俺に。と不服そうな表情で遊陽が睨む中、カズはじゃあ行ってくる。と言い残し、公園を飛び出して行った。


 「カズさんは優しいのですね」

 「あいつは本当、気が利く良いやつなんだ。取り敢えず遊無には俺のD・フェースを貸すから、先に始めちゃおうぜ」


 遊陽は自らのD・フェースを操作し、来るまでに作った遊無用のアカウントに切り替えると、遊無に手渡した。

 遊陽と再び現れたヨリマシが2人を見守る中、遊無と留音はお互いにデッキをセットし、D・フェースを構えてカードを引く。


 「じゃあ――行くわよ? 遊無ちゃん」

 「はい。玉藻さん達との初陣、必ずや勝利を掴んでみせます――」


 『デュエル――』


 遊無LP4000 留音LP4000。


 「私から行かせて貰います。まずは――《憑幽鬼 飯綱》を召喚します!」


 遊無は手札から選んだカードをD・フェースの液晶盤に置き、場に呼び出す。

 すると二又の尾を持つ狐が唸り声を上げて、音もなくふわりと遊無の場に降り立った。


 飯綱攻撃力1400。


 「それから――このカード、《軒轅狐墳》を発動させます。このカードは確か、発動した後そのまま存在し続ける魔法カードですよね?」

 「その通りだ。フィールド魔法や装備魔法と同じく、永続魔法は破壊されるまで場に残り続けるぜ」


 軒轅狐墳 永続魔法
 このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 (1):自分の「幽鬼」モンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算
 時に発動できる。
 戦闘を行う「幽鬼」モンスターの攻撃力は、攻撃モンスターのレベル×200
 アップする。
 (2):自分フィールドの「幽鬼」モンスターが戦闘・効果で破壊され墓地に送
 られたターン終了時に、墓地に存在する破壊されたモンスター1体を対象とし
 て発動できる。
 このカードを墓地へ送り、そのモンスターを自分の墓地から特殊召喚する。


 「カードを1枚伏せて、私のターンは終了です」

 「随分と消極的みたいだけど……初デュエルだからって手は抜かないわ。その程度の備えなんて、潮騒と共に深海まで引きずり込んであげる……!」


 自らのデッキに手を掛け、留音はカードを引く。

 引き当てたカードを見た留音は、そのまま漲潮を思わせる勢いで、彼女の動向に身構える遊無へと、千波万波といえる勢い強さで迫り来るのであった。





 「遊陽と――」

 「遊無の――」

 『二人はビナリウス!』


遊無「遊陽さん! カズさんとのデュエル、無事勝利できましたね! おめでとうございます!」

遊陽「ありがとな遊無。最後のドローから何とか氏子達の効果で、ヨリマシまで繋げられたぜ」

遊無「身に宿した“氏神”によるヨリマシ君の攻撃――攻撃力300とは思えない
迫力でしたね。これもヨリマシ君が“特別な精霊”だからでしょうか?」

遊陽「あいつが身に宿す“2つの加護”が作用しているんだろうな。それはさてお
き、次は遊無のデュエルだな」

遊無「その対戦相手――遊陽さんの同級生であり、カズさんの幼馴染である留音さんについて、今回はお話ししましょう」

遊陽「塰里は実家が漁師と海女漁をやっていて、境階町の店で並ぶ魚は塰里の実家が獲ったものも多いって、カズから聞いたぜ」

遊無「カズさんの方が詳しいのですね。ご両親同士が親しいのもあって、お二人の付き合いは遊陽さんよりも長いと聞きました」

遊陽「あの二人は一緒に育ってきたといっても過言はないからな。……だがカズ――“商”本一斗に対して、余り=塰里は“割り切れない”思いを抱えているようだ
な」

遊無「留音さんは本編で言った通り、カズさんとは“より深い関係”で結ばれたい
とお考えのようです。お二人の仲がさらに深まるよう、私も応援したいと思います」

遊陽「ということで次回は、押し寄せる津波の如く激しい攻撃に、遊無は徐々に窮地へと追い込まれる。そして次のターンは耐えきれない。と、遊無が逆転の1枚を願ってドローフェイズを迎えると――」


 『次回! 遊戯王Binarius(ビナリウス) -還流の海人- お楽しみに!』
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