98 最後の攻撃　作：ギガプラント

夏武斗「いくぞ！！俺のターン！！！」


夏武斗「ドロー！！」




漆原「この瞬間、邪商魔神エビル・ストレングスの効果発動！」


漆原「カードがドローされた事により、私のフィールドにエビルトークン１体を特殊召喚！」星１・ＤＥＦ１００


漆原「そしてモンスターが増えた事により、エビル・ストレングスの攻撃力は８００ポイントアップ！」ＡＴＫ８２００→９０００



漆原「さぁ……貴方、夏武斗君といいましたか。モンスター２体とトークン３体でフィールドが埋まったこの状況、どうにかできますか！！」


漆原「何もできない無能な夜見原君に変わって、まだ手も足も折れていない貴方がこの状況を打破してくれるのでしょう？？」


漆原「できるものなら私に見せて下さぁいよ。さああ！！」


夏武斗「仁が…無能だって…！？」


漆原「えぇ！！だって他にどう言えばいいのでしょう！？早々にライフを削られ攻撃もできず、悪あがきに出したモンスターの効果も毛程の打撃にもならなかった。」


漆原「おやぁ？もしやこの程度の働きで彼が優秀なデュエリストと……いや失礼。貴方の中の基準があまりにも低い事に気づかなかった私の落ち度です。申し訳ございません。」






漆原「彼は私に対して手も足も出ず無様にターンを終えただけの優秀なデュエリストだ！！はあっはっは！！！」






夏武斗「てっめえええ！！それ以上言いやがったら…！！」
仁「夏武斗」


仁「相手にするな。過度に煽るのは奴にも余裕がなくなっている証だ。気にしてやる義理は無い。」


漆原「…この私の余裕がなくなっているだと？？」


仁「間違いなくフィールドを制圧しておきながら俺達二人に対する恐れを消し切れない。だから威圧する事で自分を保とうとしている。違うか？」


仁「前に自分の予測の範囲外の出来事で敗北したからな……成程それでトラウマにでもなったか。」


漆原「なぁぁにを根拠に！馬鹿馬鹿しい！！負け惜しみの出まかせですか！！醜いですねぇ素晴らしく醜い！！」


夏武斗「仁…。」



夏武斗（アイツが俺達を怖がってるって…？本当にそうなのか？いくらなんでもこんな状況で……）


夏武斗（ん…？）



漆原「内心怯えているのはお前の方だろうに！！自分を保とうとしているのはどちらだろうかな！！」


仁「…鏡を見たらどうだ。絶大な恐怖に今にも泣きだしそうな顏が映るぞ。」


漆原「まだ減らず口をおお！！！」







夏武斗（違う……仁はアイツを挑発してるんだ…！！間違いない。）


夏武斗（…俺も、頭冷やさないとな。）



夏武斗「いくぜ！！俺達の本気！見せてやる！！」


夏武斗「俺は黒き森のウィッチをリリース！！」


漆原「リリースだと！？」


夏武斗「そして魔法カード『ビーティング』を発動！！」


夏武斗「デッキの上からカードを３枚めくり、その中から昆虫族モンスター１枚を選んで特殊召喚できる！」


漆原「ははっ！！運任せですか！実に子供らしい手です！！」


仁「子供らしいのと有効度は関係ないがな。」


漆原「ぐぅ…ならばやってみなさい！！何が来ようと私のエビル・ストレングスには敵わない！！！」


夏武斗「いくぜ！！！」


デッキの上から３枚のカードを一気にめくり取る夏武斗。

『次元ボタル』
『ビートルーパー』
『クレストウィング・フェアリー』


夏武斗「よっしゃあああ！！！俺はチューナーモンスター『クレストウィング・フェアリー』を特殊召喚！」星１・ＤＥＦ１００


仁「チューナーか…！」


夏武斗「更に黒き森のウィッチがフィールドから墓地へ送られた事により効果発動！」


夏武斗「俺はデッキから守備力１５００以下のモンスター『リトルツインシャーマン』を手札に加える！」



夏武斗「シンクロモンスターさえだせればこっちのもんだ！！お前をぶっ倒す算段はついたぜ！！」


漆原「わ、私を倒す算段だと…！！？」


漆原「あああ、ありえないぃい！私のエビル・ストレングスは最強だ！！お前なんかに超えられる筈が無いいい！！！」


夏武斗「じゃあ試してみるか？」



夏武斗「一気に行くぜ！俺はレベル６のセンチネルピードにレベル１のクレストウィング・フェアリーをチューニング！」





燃え上がる命の焔よ！鮮麗なる羽音響かせ、深き夜天を照らしだせ！



シンクロ召喚！



羽ばたけ！『煌翅蝶（こうしちょう）－フェニックス・バタフライ』星７・ＡＴＫ２３００





漆原「だ、だからなんだというのですか！！！そんなシンクロモンスター１体、私のエビル・ストレングスの敵ではありませんよ！！」エビルＡＴＫ９０００→８２００


夏武斗「それはどうかな！」


漆原「なっ！？」


夏武斗「俺は装備魔法『共振の翼』を発動！フェニックス・バタフライに装備する！！」


漆原「装備魔法！？」


夏武斗「シンクロモンスターにのみ装備できる装備魔法さ。いくぞ、バトルだ！！」


夏武斗「バトルギルドの効果でライフを１０００払い、煌翅蝶－フェニックス・バタフライで邪商魔神エビル・ストレングスに攻撃！！」ＬＰ３８００→２８００


漆原「な、バトルだと！？攻撃力８２００のエビルスターに…！自滅する気ですか！？」


夏武斗「んなわけねえだろ！共振の翼の効果！！このカードを装備したモンスターが相手と戦闘を行う時、その相手モンスターの効果は無効化される！！」


漆原「はっ！効果が無効になったら…！！」


仁「エビル・ストレングスの元々の攻撃力は１０００……おまけに、トークンを身代わりにする効果も使えなくなる…！」


漆原「馬鹿な……私のモンスターが…！！」


夏武斗「いっけええええ！！！ルミネッセンス・フレア！！！」


炎に包まれた翼を大きくはためかせると、煌びやかな炎の渦が巻き起こる。



漆原「私は……私は……最強のカードコレクター…。」


漆原「こんな、こんなガキ共に噛み付かれることなどあり得ない高貴で輝かしい存在…！！」


漆原「嘘だぁぁ！嘘だ嘘だ嘘だ！！！！こんなモンスター如きに私のモンスターが！！やられるわけ！！！！」




















漆原「…ないじゃないですかぁ。」(ﾆﾁｬｱ)









絶望に満ちた顔から一転、漆原は悪魔のような笑みを浮かべる。


夏武斗「っ！！？」


漆原「罠発動！！『マジェスティック・プライド』！」


漆原「発動後、このカードは装備カードとなり、モンスターに装備される！！！」


漆原「そしてこのカードが装備されている限り、装備モンスターの効果に対し相手はカードの効果を発動できず…」


漆原「その効果は！無効化されない！！」


夏武斗「なんだって！！？」


漆原「私はこのカードをエビル・ストレングスに装備！！よってエビル・ストレングスの攻撃力は依然として８２００のまま！！」


夏武斗「そんな…」

仁「くっ…！」


漆原「良いですねえ…希望が絶望へと変わるその瞬間。」


漆原「エビル・ストレングスのように自身の効果によって高い攻撃力を得るモンスターは、どうしても無効化に弱いという性質があるのですよねぇ。」


漆原「まぁさぁかこの私がそれに対する手を打っていないと！本当に！！お思いでしたかぁ～？？」


漆原「いやはや滑稽というのも重なれば喜劇そのものですねぇ！！エクセレント！！」




漆原「…ですがそろそろ飽きが来る頃。もう終わりにしましょう。」




漆原「さぁいらっしゃい愚かしいデュエリストよ！！自らの攻撃で破滅するのです！！！」


漆原「それが貴方の最後の攻撃だあああ！！！」






夏武斗（駄目だ…！！もうどうしようも…！！）




夏武斗「もう……終わり……」









仁「まだ終わらせない！！！罠カード発動！！『地縛霊の攪乱』」





仁「相手モンスターの攻撃対象を、自分のモンスターへと変更する！！」


仁「フェニックス・バタフライが攻撃するのは、冥獄公爵アシュタロードだ！！」


漆原「…ほう？」


夏武斗「っ！？」


エビル・ストレングスを取り囲んでいた炎は軌道を変え、アシュタロードへと向かっていく。

一気にアシュタロードに光が集束していくが、大鎌を大きく振りかざすとその炎の渦は真逆に煽られ、フェニックス・バタフライに襲い掛かった。



仁「…この戦闘で発生するダメージは２倍となる。」


夏武斗「くっ……ぅあああ！！」ＬＰ２８００→２４００


夏武斗（助かった……のか？）


漆原「エクセレント……致死量のダメージから彼を守るため、攻撃対象をより攻撃力の低い自分のモンスターに変更させたという訳ですか。」エビルＡＴＫ８２００→７４００


漆原「流石の私もこんな戦術は予想外でした。自ら相手を傷つける事で相手を守る……まさに貴方らしい戦い方だ。私感動致しましたぁ！」


仁「………」


漆原「ですが私には分かります。今のが君の最後の防御手段だ。」


夏武斗「えっ！？」


漆原「次の私のターン、そのカードで攻撃対象をエビルトークンに誘導する事で凌ごうと考えていたようですが……まさかここでそのカードを使う事になってしまうとは。」


漆原「自分が生き抜くためにならいくらでも他人を傷つけていた貴方が、まさか他人を助ける為にカードを使うとは思いませんでしたぁ。美しき友情劇―素晴らしいものです。」


漆原「だが、その代償に君は己の身を散らすことになる！！」


夏武斗「なっ！！」


漆原「最後に勇敢に花を咲かせ…そして今、負けを悟って絶望に染まる！！素晴らしいです！！」


仁「耳を貸すな夏武斗！！いつもの…」

漆原「いつもの戯言…とでも言うつもりですか？まぁそう思いたいのならそう思って頂いても構いませんよ？」


夏武斗「そ、そうだ！」


漆原「先程は夜見原君を無能と言いましたが……それは訂正致しましょう。」






漆原「自分の力を過信し、惨めにも足掻き、無様にも散っていく刹那、味方のお情けで一人なんとか生き残り続けている！！今の貴方の無能さに比べたら彼はずっと有能だ！！あっひゃははは！！！」




夏武斗「………っ！！！」



漆原「どぉうですかぁ？？夜見原君に生き長らえさせてもらったにも関わらず何もできないこの状況。無様ですねぇ～。」


仁「夏武斗！！」


夏武斗「俺は……」







夏武斗（アイツの言う通りかもしれない……俺は結局アイツになんの攻撃もできなかった。それに仁のカードまで…。）





夏武斗「俺が………無力なせいで……。」





















仁「思い上がるな！！！夏武斗！！」






夏武斗「えっ……？」


仁「俺が本当にお情けでお前を助けたと思うか…！」


仁「今俺が本当に絶望していると思うか！！」


仁「腑抜けている暇があったらとっととターンを進めろ！！！」





夏武斗「仁……！」




漆原「…な～んて言葉も、最後の強がりと考えると泣けてきますね。」


漆原「そう悲観的に捉えないでください。何も命を取ろうとは思っておりませんから。」


漆原「ただカードが手に入れば私は…」
夏武斗「黙ってろ…」




漆原「はい？」



夏武斗「下らない戯言言ってるだけなら黙ってろって言ったんだよ。まだ俺のターンだ。邪魔すんなっての。」


漆原「……なんだと？」





夏武斗「仁が負けを悟ってる訳がない……絶望なんかしてる訳がない…。」


夏武斗「俺も…！！まだ諦めたりなんかしてねええ！！！」


夏武斗「希望は！まだ！ある！！」


仁「…ﾌｯ」


夏武斗「俺は……カードを１枚セット！！これでターンエンドだ！！」



漆原「なんだその目は……気に入らない！！」


漆原「この瞬間バトルギルドの効果が発動します！！ターンプレイヤーがエンドフェイズに攻撃表示モンスターをコントロールしていない場合、１０００ポイントのダメージを受ける！！」


夏武斗「ぐあああっ……っと。……へん！！全然へっちゃらだぜ！！」ＬＰ２４００→１４００



漆原「何が希望ですか……無様に泣き叫んでいればいいものを…。」


漆原「私のターン！ドロー！！」


漆原「そしてこの瞬間、邪商魔神エビル・ストレングスの効果発動！」


漆原「カードがドローされた事により、お前のフィールドにエビルトークンを１体特殊召喚する！」


夏武斗「またか……！」星１・ＤＥＦ１００


漆原「モンスターが増えた事により、エビル・ストレングスの攻撃力は８００ポイントアップ！」ＡＴＫ７４００→８２００


漆原「どれだけごちゃごちゃ言っても私には勝てない！！勝てないんですよ！！！」


漆原「先ずは貴方から消してあげましょう！！！邪商魔神エビル・ストレングスで、冥獄公爵アシュタロードに攻撃！！」ＬＰ４０００→３０００



漆原「アンダーマインド・ディザイア！！」












仁（やはり来るか…。）







仁（腹立たしいが、奴の言った通り……地縛霊の攪乱は俺が握っていた最後の防御手段。）







仁（俺は…ここまでか…！）













夏武斗「仁！！！」








仁（夏武斗、後はお前が………！！）








夏武斗「させっかよおおおお！！！罠発動！『罠蘇生（トラップ・リボーン）』！！」


漆原「なんだと！！？」


夏武斗「ライフを半分払い、相手の墓地の罠カード１枚を除外する事で、このカードの効果はそのカードと同じになる！」ＬＰ１４００→７００


夏武斗「俺が除外するのは、仁の墓地にある『地縛霊の攪乱』！！効果発動！」


仁「お前……！」


夏武斗「攻撃対象は、さっきお前が押し付けてきた俺のトークンだ！そぉ～ら、こっちにお～いで～！おし～りペ～ンペ～ン！！」


エビル・ストレングスの放った光線が軌道を変え、夏武斗のフィールドのエビルトークンの１体を貫く。


漆原「ぐううっ…！！！」


夏武斗「トークンは破壊されても墓地に行かず消滅する！よってお前はバトルギルドの効果で回復はできないぜ！！」




夏武斗「今度は俺が助ける番だ！これでチャラだぜ、仁！！」


仁「…ふん、いいだろう。」





漆原「なんなんだなんなんだ鬱陶しいんだよ貴様ァ！！！」


漆原「私はカードを１枚セット！！ターンエンド！！！」


漆原「ちょこまかちょこまか庇い合いやがって！！いい加減に私に討たれなさい！！！」


漆原「今のコストでお前のライフも１０００を切った！！もうお前等は二人揃って攻撃もできない雑魚なんだよおお！！」





仁「……だからお前は甘いというんだ。」


漆原「まだ言うかこのクソガキが！！」


仁「…誰が攻撃できないって？」



漆原「何を言………なっ！！！？」


漆原「どういうことだ！！何故！！！」


そこで漆原は初めて気が付いた。



先程自分が「攻撃に必要な資金」と例えた、デュエルにおける命の源、ライフポイント。

仁のそれは「１７００」の数値を指していた。





仁「俺はまだ……攻撃が可能だ！！！」





終










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（次回予告）


夏武斗「よっしゃ！仁のライフは１７００！一回だけならまだ攻撃できる！」


夏武斗「ん？何驚いてんだ？まさかなんでライフが回復しているのか分からないのか？」


夏武斗「へっへ～ん！俺達のスーパーコンビネーションが生んだ奇跡のコンボさ！お前に分っかるっかな～？」


夏武斗「次回！『託した１ターン』」


仁「…お前は分かっているのか？」


夏武斗「も、もも、もっちろ～ん分かってるぜ！！？」
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・「罠蘇生」はアニメZEXALにおいて、遊馬が使用したカードです。