20 駆け付け三杯!?酔っ払いデュエル！　作：ギガプラント

（上波町・とある飲み屋）






店主「またツケだってぇ！！？」







男「いやぁ…その、明日の仕事の分でなんとかすっからよ。頼むぜ…な、大将？」


店主「そんなこといってこの間の分もまだじゃないか…。」


店主「龍（りゅう）さん…あんたにゃ恩があるから今まで大目に見てきたけどねえ、流石にもうウチの店も限界だよ。」


龍さん「そこをなんとか頼むよぉ！俺もかなり厳しくてさぁ…」


店主「まったく…日雇い生活なんてとっととやめて真面目に働きゃいいのに…。」


店主「龍さんくらいの腕なら最近よく聞く……なんだっけ？」


店主「あのぉ、金持ちが強いデュエリスト連れ歩いてるってやつ…。雇われ、だったっけか？それにでもなりゃいいだろうに…。」


龍さん「馬鹿言っちゃいけねえよ。御上に睨まれるような仕事は御免だぜ。」


龍さん「それに……金に物言わせて威張り散らす連中は嫌いでね。どうも気に食わねえ。」


店主「そうかい…。まぁそれはどうでもいいんだけどよ、しっかり払っておくれよ？酒代とつまみ代。」


龍さん「いやでも…ちょっとくらいおまけしてくれても…俺とあんたの仲だろう？」


店主「駄目だね。こっちだって商売なんだ。あんたにゃ悪いがいい加減に…」


龍さん「ああああああぁぁぁ！！用事思い出したあああ！！（棒読み）」

突然大袈裟に立ち上がる。

龍さん「じゃあな大将！また来るぜ！！」

全力疾走で逃げ出す龍さん。



店主「あああぁぁ！！今日こそは逃がさないよっ！！！」

追いかける店主。





龍さん「げっ！！追いかけてきやがった！！」


店主「こう見えて足の速さにゃ自信があんだ！さあ龍さん観念しなぁ！！」


龍さん「おいおい！店空けてきていいのかよぉ！！？」


店主「へん！それより今はあんたからツケを取り立てる方が大事ってもんさ！！」


龍さん「なんじゃそりゃ！無茶苦茶なぁ！？」


店主「いいから止まりなァ！！」


龍さん「わ～あ～あ～あ～！！！」






--- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- ---




（上波町・繁華街）



夏武斗「えーっと…多分こっちだと思うんだけどなぁ。」


夏武斗「ったく爺ちゃんも酒のつまみなんか買いに行かせるなよなぁ。」


夏武斗「此処どこらへんだろ？…うーん。」

dPhoneとにらめっこする夏武斗。





？「だあああぁぁぁ！！」


夏武斗「！？」


龍さん「おわっ！ちょっとどいてく…わあああ！！」


夏武斗「のわっ！！」

激突する２人


夏武斗「いてて…おおっとカードカード…。」

散らばった数枚のカードを集める。


龍さん（ん…デュエリスト…。）


龍さん「おっと…すまねえなあんちゃん。大丈夫か？」


夏武斗「あぁ…なんとか。」



店主「さぁもう逃げらんないよ龍さん。今までのツケきっちり払ってもらおうかい。」


龍さん「いやぁ…だから俺今金持ってなくて…。」


店主「だったら降ろしてきてもらおうかい。俺とあんたの仲だ、一緒についてくぜ？」



龍さん「うげ……。」


夏武斗「な、なんなんだ…？」


龍さん「いやえーっとな…。」


龍さん（………）


龍さん「…！」


龍さん「…おいあんちゃん、名前は？」


夏武斗「えっ？夏武斗だけど…。」


龍さん「よし、夏武斗か。…なぁ大将！ちょっとしたゲームをしねえか？」


店主「ゲームぅ？一体何するってんだい…。」


龍さん「デュエルさ！デュエルで勝ったらツケにしてもらうってのはどうだい？」


店主「何言ってんだい！そんなの龍さんが勝つに決まってんじゃないか！！」


龍さん「いや…デュエルすんのは俺じゃあない…。」


店主「うん…？」


龍さん「おれの代わりにこの夏武斗があんたの相手をするぜ！」


店主「！？」


夏武斗「えええぇぇー！！？？」


夏武斗「ちょっと待てよおっさん！一体どういう事だよ！俺全然意味が……」


龍さん「だぁーもう男が細けえ事気にすんねぇ！！とにかくあの大将とデュエルして勝ってくれりゃいいんだって！」


店主「見ず知らずの坊主を代わりにって…アンタ正気かい！？」


龍さん「へっ！俺は人を見る目はあるつもりなんでぇ！やれんな夏武斗？」


夏武斗「だーもう！！……わかったよ！やってやるよ！」


店主「お、おい！俺はまだ受けるなんざ……！」


龍さん「大将！アンタが勝ったら今までのツケ全額払ってやらぁ！！それなら文句ねえだろぅ！？」


店主「……言ったね龍さん？男に二言は無いよ？」


店主「ようし乗った！！坊主！おまえさんに恨みはねえが全力であたらせて貰うぜ！！」


夏武斗「どうしてこんなことになってんだ？………ま、いいか！こっちも全力で行くぜ！！」





dPhoneモードチェンジ！Ｄパッドモード！



ターゲットロックＯＫ！



ビジョンリンクＯＫ！



ファーストディールＯＫ！



デュエル！！







店主「先攻は貰った！俺はモンスターを裏側守備表示でセット！」


店主「更にカードを１枚セットしてターンエンドだ。さぁかかってきな。」


夏武斗「俺のターン！ドロー！」


龍さん「頼むぜぇ夏武斗！この一戦に俺の生活が懸かってんだ！」


夏武斗「って言われてもなぁ。」


店主「言っとくけど龍さん！後ろでコソコソアドバイスするってのはなしだかんね！」


龍さん「分かってるよ。流石の俺もそんなに野暮なこたぁしねえさ。」



夏武斗「なんだかやりにくいなぁ…俺は『ビートルーパー』を召喚！」星３・ＡＴＫ１５００


夏武斗「ビートルーパーの効果発動！このカードが召喚された時、手札か墓地からレベル４以下の昆虫族モンスター１体を特殊召喚できる！」


夏武斗「現れろ！チューナーモンスター『スワローテイル・フェアリー』！」星２・ＤＥＦ８００


店主「チューナーモンスター……。」


龍さん「ほう…。」


夏武斗「俺はレベル３のビートルーパーにレベル２のスワローテイル・フェアリーをチューニング！」





鋼をも断ち切る一対の刃振りかざし！大地の果てまで突き進め！



シンクロ召喚！



来い！『突甲戦士 ギラファイター』！星５・ＡＴＫ２０００



龍さん「ﾋｭ～♪やるね～！」


店主（ﾆﾔﾘ）






夏武斗「うわぁ！？」

突如何処からか飛んでくる大きな盃。中に入った酒を強制的に飲まされるギラファイター。


夏武斗「な、なんだ…！？」

２発目の盃。同じように酒を飲まされるギラファイター。


夏武斗「ギ、ギラファイター…？」

３発目の酒を飲み干す。身体が赤く染まったギラファイターはその場に座り込んでしまう。


夏武斗「なっ！ギラファイターが酔ぱらっちまったあああ！！！」


龍さん「おおう…！おまえのシンクロモンスター中々良い飲みっぷりじゃねえか。」


夏武斗「呑気な事言ってる場合じゃねえよ！一体何が…！」


店主「はっはっは！おまえさんがシンクロを行う直前、俺は永続罠『駆け付け三杯』を発動していたのよ！」


夏武斗「永続罠！？」


店主「駆け付け三杯は、モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時、そのモンスターに『酔いカウンター』を３つ乗せる。」


店主「そしてこのカードがフィールド上に存在する限り、酔いカウンターの乗ったモンスターの攻撃力は、酔いカウンター１個につき３００ポイントダウンしちまうのさ！」


夏武斗「くっそぉ～！ギラファイター…。」ＡＴＫ２０００→１１００


店主「ただしこのカウンターはターンプレイヤーのスタンバイフェイズ毎に１つずつ取り除かれる。」


店主「酔いはだんだんと覚めていくもんだからな。…って言ってもおまえさんにゃまだ分からねえか。はっはっは！」


夏武斗「うぅ…無理矢理酒を飲ますなんて、なんて強烈な罠だ…。」


龍さん「いやいや酒も悪いもんじゃねえぜ？特に暑い日にグピッっていくビールなんてのは……」


夏武斗「酒の事はいいよ！どうせ飲めねえし！！」


店主「さぁどうする坊主！攻撃するかい？」


夏武斗（攻撃力１１００か…。低くなった攻撃力で無理に攻撃を仕掛けるのは危険だ…。）


夏武斗（それにあの罠カードの効果はあいつ自身にも及ぶはず、だったらここは…）


夏武斗「俺はこれで…ターンエンドだ。」


店主「ほう…攻撃はしないか。だったらこっちからいかせてもらうぜ。」



店主「俺のターン！ドロー！」


店主「俺はセットしていた『白酒豪鬼（しろしゅごうき） ヴァイツェン』を反転召喚！」星３・ＡＴＫ１２００

ジョッキ片手の全身白い鬼。

どこからか飛んでくる３杯の盃。


店主「駆け付け三杯の効果発動！さぁたんと飲め！」

くぃっと３杯軽く飲み干すヴァイツェン。


店主「酔いカウンターを３つ乗せる！」


夏武斗「これで攻撃力が９００ポイント………」


店主「へへっ！白酒豪鬼ヴァイツェンは、駆け付け三杯による減少数値を上昇に変える効果があるのよ！」


夏武斗「なんだって！！？」


店主「さぁ飲めば飲むほど強くなるぜぇ！」ＡＴＫ１２００→２１００


店主「さぁてもう一体だ！俺は『黒酒豪鬼（くろしゅごうき） スタウト』を召喚！」星４・ＡＴＫ１５００

ビール瓶を抱えた黒い鬼。



店主「駆け付け三杯の効果発動だ！」

再び飛んでくる盃。


店主「勿論こいつも酒でへばったりしねえ！攻撃力アップだ！」ＡＴＫ１５００→２４００


夏武斗「こっちのモンスターは弱くなっちまうのにあっちのモンスターは逆に強くなるってのか…！？」


龍さん「あーあー…酔っ払いは怖いねえ。」


店主「あんたにゃ言われたくないよ龍さん…。」


龍さん「はぁ…。大将よぉ、今日はまた一段と張り切ってないか…？」


店主「あんたにツケ払ってもらうためだからね！手を抜けって方が無理なこった！」


店主「さぁバトルフェイズだ！」


夏武斗「くっ！」


店主「白酒豪鬼ヴァイツェンでそのシンクロモンスターを攻撃！」

酒を一気に飲みほすとフラフラと立ち上がり、空っぽになったジョッキをギラファイターめがけて投げつける。


夏武斗「ぐあっ！」ＬＰ４０００→３０００


店主「まだまだぁ！黒酒豪鬼スタウトでダイレクトアタック！」

一気飲みしたビール瓶を勢いよく投げつけてくる。


夏武斗「どわあああぁぁぁ！！！」ＬＰ３０００→６００


飛ばされる夏武斗。それを支える龍さん。

龍さん「っと！大丈夫か？」


夏武斗「あぁ…でもあのおっさん、強えぇ…！」


店主「最後にカードを１枚セットしてターンエンドだ。」


店主「そろそろお金を降ろす準備でも始めたらどうだい龍さん？」


龍さん「けっ、言ってろい。」



夏武斗「まだまだ…！俺のターン！ドロー！」


夏武斗「自分フィールドにモンスターが存在しない時、『プリミティブ・バタフライ』を特殊召喚できる！」星５・ＡＴＫ１２００

飛んでくる３つの盃。


夏武斗「あああぁ…プリミティブ・バタフライ…。」ＡＴＫ１２００→３００


夏武斗「だぁ～！プリミティブ・バタフライの効果発動！１ターンに１度、自分フィールドの全ての昆虫族モンスターのレベルを１つ上げる！」


夏武斗「プリミティブ・バタフライのレベルは６に上がる！」星５→６


夏武斗「そして俺は『クレストウィング・フェアリー』を召喚！」星１・ＡＴＫ５００

またまた飛んでくる３つの盃。


夏武斗「クレストウィング・フェアリー……。」ＡＴＫ５００→０


龍さん「お？そいつもチューナーかい。良い飲みっぷりだ！」


夏武斗「おっさんどっちの味方なんだよ！」


龍さん「がっはっはｗ」


夏武斗「ったくもう！俺はレベル６となったプリミティブ・バタフライにレベル１のクレストウィング・フェアリーをチューニング！」






燃え上がる命の焔よ！鮮麗なる羽音響かせ、深き夜天を照らしだせ！



シンクロ召喚！



羽ばたけ！『煌翅蝶（こうしちょう）－フェニックス・バタフライ』星７・ＡＴＫ２４００




店主「またシンクロ召喚か！…だがそいつにもしっかり３杯飲んでもらうぜ！」

３杯の盃を強引に飲まされるフェニックス・バタフライ。


夏武斗「くっ…！」ＡＴＫ２４００→１５００


夏武斗「あ～もう酒は懲り懲りだあああ！！！」


店主「遠慮するねぇ！さぁこれで攻撃力は届かねえ！どうする？」


夏武斗「くっそぉ！だったら攻撃力を上げるまでだ！」


夏武斗「俺は墓地のクレストウィング・フェアリーの効果発動！」


夏武斗「墓地のこのカードを除外する事で、自分フィールド上のモンスター１体の攻撃力を５００ポイントアップする！」


夏武斗「フェニックス・バタフライの攻撃力を５００ポイントアップだ！！」ＡＴＫ１５００→２０００


店主「墓地からモンスター効果だとぅ！？」


夏武斗「まだまだ！俺は装備魔法『アブソーブ・ウィップ』を発動！」


夏武斗「このカードを装備したモンスターが自身より高い攻撃力のモンスターに攻撃する時、攻撃対象のモンスターから攻撃力１０００ポイントを吸収する！」


店主「更に攻撃力を吸収だぁ！？」


夏武斗「こっちもやられてばっかりじゃないぜ！これならそっちのモンスターを倒せる！」


夏武斗「バトルだ！フェニックス・バタフライで………」


店主「させてたまるかい！罠発動！『酔拳』！」


夏武斗「す、酔拳！？」


店主「このターン相手は酔いカウンターの乗ったモンスターを攻撃対象に選択できない！」


龍さん「あんにゃろう…たっぷり酔わせた上にあんな罠まで…。」


夏武斗「くそっ…俺はカードを２枚セットしてターンエンドだ。」




終











--- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- ---

（次回予告）

夏武斗「くっそぉ…俺のモンスターが…。」


龍さん「いいねえ…タダであんなに酒が飲めて。俺もモンスターになりたいぜ…。」


夏武斗「おっさん…さっきからそればっかじゃんか…。」


龍さん「いやまだ序の口だ！俺はまだまだ飲めるぜぇ！？」


夏武斗「それよりも今はデュエルを…！」


龍さん「おっしゃ～じゃんじゃん注いでこ～い！！」


夏武斗「次回！『村の生き残り、ロバート・バーンズ』」


夏武斗「おっさんは今のままでも十分モンスターだよ！！」

--- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- ---
・モンスターの名前はビールの種類だったりします。