68 アインヘリアルの陰謀　作：ギガプラント

夏武斗「俺のターン！ドロー！」


夏武斗「道標だかなんか知らねえけど、そんな訳の分かんねえ理由で俺のヴィクトリー・ビートルを奪ったってのか！」


夏武斗「そんな事で！！」


宇佐美「………」



夏武斗「自分フィールドにモンスターが存在しない時、手札から『ウィング・シマー』を特殊召喚！」星４・ＤＥＦ１５００


夏武斗「そして『スワローテイル・フェアリー』を通常召喚！」星２・ＡＴＫ８００


宇佐美「チューナーモンスターか…！」


夏武斗「俺はレベル４のウィング・シマーにレベル２のスワローテイル・フェアリーをチューニング！」




逆巻く怒号の嵐！空を裂くこの腕に宿れ！



シンクロ召喚！



切り裂け！『裂刃（れつじん）ストームシックル』！星６・ＡＴＫ２２００




夏武斗「ストームシックルは昆虫族！森フィールドの効果で攻撃力と守備力は２００ポイントアップだ！」ＡＴＫ２２００→２４００


夏武斗（森フィールドで攻撃力が上がるとはいっても、攻撃力１５００のモンスターを攻撃表示で出しておくなんて…）


夏武斗（あの儀式モンスター…何かある！）


夏武斗（落ち着け…落ち着いて対処するんだ！！）



夏武斗「俺は裂刃ストームシックルのモンスター効果発動！」


夏武斗「１ターンに１度、このカード以下の攻撃力のモンスター１体を破壊する！」


夏武斗「俺は深緑の獅子王を破壊する！！シェーバースフィア！！」



球体の鎌鼬が獅子王の身体を包む。

瞬間、獅子王が大きく咆哮を上げ、緑色に薄く光る防壁が出現する。



宇佐美「無駄じゃ！獅子王は森の加護に護られておる！！」


宇佐美「深緑の獅子王はフィールドが森である時、戦闘・効果によって破壊されん！」


夏武斗「くっ…！」




宇佐美「…アリス嬢ちゃん達から聞いておったが、お主は昆虫族使いのようじゃの。」


宇佐美「森に住まう良いモンスターじゃ。」


夏武斗「アリス…？アリスってどっかで…。」


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仁「正面の雇われ連中はカムフラージュ……派手に暴れさせて内部の人間の目を逸らす為のおとり。」


仁「そして貴様等は……ビルに潜入したコソ泥といったところか。」


天音「！？」


アリス「ちょっと双葉（ふたば）！あんたのせいで全部バレてんじゃないのよ！」


双葉「ちょっとアリス！声が大きい！」


ヴァルト「…アリス様、更に墓穴を掘らないでください。」


夏武斗「ホントに泥棒だってのか！？」



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夏武斗「っ！」


夏武斗「まさか……ジェネシックのビルに襲撃して、アストベリーカップを滅茶苦茶にしたアイツ等の仲間…！」


夏武斗「なんで…なんで香子の爺ちゃんがこんな事すんだよ！」


宇佐美「………」


夏武斗「なんだよ…答えろよ！クソッ！」



夏武斗（もうこうなりゃデュエルに勝つしか無え！）



夏武斗「バトルフェ……っ！」


夏武斗（ストームシックルは効果を使ったターン戦闘ダメージを与えられない…戦闘で破壊されないんじゃこのまま攻撃しても…。）


夏武斗「くっ…カードを１枚セットしてターンエンドだ…！」


宇佐美「ふむ…。」




宇佐美「儂のターン！」


宇佐美「行かせて貰うぞ！深緑の獅子王！プレイヤーにダイレクトアタック！」


夏武斗「んなっ！？ダイレクトアタックだって！？？」


宇佐美「深緑の獅子王は相手フィールドにモンスターが存在してもダイレクトアタックが可能なのじゃ！！」


獅子王と同じ形の幻が２体、夏武斗に真っ直ぐ向かって来る。



宇佐美「更に！！」



宇佐美「このカードがダイレクトアタックで与える戦闘ダメージは２倍となる！」


宇佐美「深緑の怒り！！」


夏武斗「なっ！？」


夏武斗「うわあああぁぁぁ！！！」ＬＰ４０００→６００


大きく弾き飛ばされる夏武斗。

ドーム状に広がった邪気の壁は、コンクリートの壁の如く冷たく夏武斗の身体をはじき返す。




夏武斗「がはぁ！！ぐっ……くうっ…。」


宇佐美「…手荒な真似をしてすまんの。」


宇佐美「消えゆく人間達の礎として、成さねばならぬ事がある。」


夏武斗「消えゆく人間達…！？」


宇佐美「………」


夏武斗「爺ちゃん！！どういうことだよ消えゆく世界って！！」


夏武斗「大体、お前等一体何モンなんだよ！！なんであんな酷い事すんだ！」


宇佐美「………」


夏武斗「おい！！」




宇佐美「……まぁ、このデュエルが終われば忘れてしまう事じゃ。良かろう。」


宇佐美「…聞かせてやるとするかい。」









－儂等は『アインヘリアル』－



－救世主ラーナの下に集う者じゃ－








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（？？？）


アリス「マヘル！なんでアタシ達に行かせてくれないのよ！！」


アリス「アタシとヴァルトはあのガキンチョの顔しっかり覚えてるって言ってんでしょ！！」


ヴァルト「アリス様…落ち着いてください。」


マヘル「あの少年……『楠夏武斗』については、今は宇佐美老人がついている。お前たちが出向く必要はない。」


アリス「はぁ！？なんでよ！！アイツのカードを奪い取るのが目的でしょ！？」


マヘル「それはそうだが、我らアインヘリアルの最優先事項は『力』の収集だ。ラーナはまだ力を欲している。」


マヘル「あのカードが『力』に関連するものかどうか…それはラーナに確かめてもらうまで分からんのだ。」


マヘル「だからこそ収集の手を止めるわけにはいかない。」


アリス「ちまちまアブソーバーで吸い取るの飽きたっつーの！！ったく。」


マヘル「もうラーナに残された時間は僅かなのだ…。」


マヘル「『人類滅亡』の目的が果たされないのは、お前にとっても喜ばしくないだろう？アリス。」


アリス「…ふん。分かったわよ。」


？？「しっかしよぉ…あの爺さん一人で大丈夫なのかぁ？集団で囲ってボコっちまえば早えだろうに。」


マヘル「下手に騒ぎを起こして町中にセキュリティを張られたらこちらとしても動きにくい。」


？？「ﾁｯ…ﾝどくせーの！」


アリス「にしてもなんなのよラーナが集めてるこの『力』っての…わけわかんないし。」



マヘル（力…か。）


マヘル（アーネスト……お前は確かこう言っていたか。）



マヘル「Ｄオーラ……と。」

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夏武斗「アイン…ヘリアル…？」


宇佐美「儂等の主ラーナは、救世の為この世の全ての人間を消し去ろうとしておる。」


宇佐美「儂等はその思想に手を貸し、彼女の道を切り開く為の集いじゃ。」


夏武斗「全ての人間を消し去るって…訳分かんねえよ！！なんでそんなことしなきゃなんねえんだ！」














宇佐美「…さあの。」













夏武斗「さあのって…！？ふざけんなよ！！」


宇佐美「…少なくとも儂は知らん。知る意味すら無いのじゃよ。」


宇佐美「儂等はラーナ嬢ちゃんに忠誠を誓って手を貸しているわけではないからの。」


夏武斗「じゃあなんで！！」


宇佐美「志は同じだからじゃよ………」










宇佐美「全ての人間を消し去ると云うな！！」









夏武斗「っ！！」


宇佐美「儂はカードを１枚伏せてターンエンド！さぁ来い坊主！」



夏武斗「くっ…俺のターン！ドロー！」


夏武斗「志って…お前ら皆人間消そうってのかよ！」


夏武斗「そんなことの……そんな酷い事の為に俺のヴィクトリー・ビートルを使われてたまるか！！」


夏武斗「俺は『サーフィス・コマンドー』を召喚！」星２・ＡＴＫ３００
ロケットランチャー等の銃火器を背負うアメンボ兵士。


夏武斗「サーフィス・コマンドーのモンスター効果だ！自分フィールドの昆虫族モンスター１体をリリースし、フィールド上の魔法罠カード１枚を破壊する！」


夏武斗「俺はサーフィス・コマンドー自身をリリースして、森フィールドを破壊する！」


辺りの木にロケットランチャーを撃ち出す。




夏武斗「森のフィールドが無くなれば…！」


宇佐美「森を荒らさせはせん！儂は手札の『森の守護妖虫』を墓地へ送って効果発動！」


宇佐美「フィールドが森である時、カードを破壊する効果を無効にする！」


蝶のような神秘的な昆虫が半透明のシールドを放ち、ロケットランチャーの弾を消滅させる。


夏武斗「ちくしょお、やっぱり一筋縄じゃいかない…！」


夏武斗「こうなったらバトルだ！ストームシックルで深緑の獅子神を攻撃！！サイクロン・スウィング！」


宇佐美「罠発動！『暴虐の報い』！」


宇佐美「そして永続罠『深緑の精霊像』！」



地中より、獅子王を模した石像が現れる。



夏武斗「な、なんだ…！」


宇佐美「深緑の精霊像が存在し、フィールドが森である限り、儂が受ける全ての戦闘ダメージは０になる！」


宇佐美「これで儂へダメージを通す事はできなくなくなったも同然！」


夏武斗「何っ！！」


夏武斗（戦闘破壊もダメージも防がれた…！）


宇佐美「更に暴虐の報いの効果！バトルフェイズ終了時、このターン攻撃を行ったモンスターを破壊する！」


夏武斗「ストームシックル！！くそっ！させるか！」


夏武斗「罠カード！『命の御加護』を発動！」


夏武斗「モンスター１体はこのターン中カードの効果では破壊されない！」


球状のバリアがストームシックルの身体を包み込む。


宇佐美「っ！！森を荒らす事は何人たりとも許さん！！この森は儂が守る！！」


夏武斗「くそっ！なんでだよ！なんで爺ちゃんがこんなことしなきゃなんねえんだよ！」


夏武斗「森が好きで動物が好きで！その生き死にを狂わせる奴が増えてきたって悲しんでたじゃんか！！」


夏武斗「そんな爺ちゃんがどうして人間を消すなんて言うのか……俺全然分かんないよ！」


宇佐美「森を愛しているからこそ！これ以上人間を生かしてはおけぬのじゃ！」


夏武斗「まさか爺ちゃん…」


宇佐美「儂は何度も見てきた。人が自然相手に犯してきた数々の業を…！」


宇佐美「さぁどうした少年！！まだお主のターンは続いておるぞ！！」


夏武斗「……俺はカードを１枚セット、ターンエンド。」



宇佐美「儂のターン！！ドロー！」


宇佐美「森を荒らす人間にもはや慈悲の心は無い！」


宇佐美「行けぇ！深緑の獅子神よ！プレイヤーにダイレクトアタックじゃ！！」


再び獅子王と同じ形の幻が２体現れる。


宇佐美「これで決めさせてもらうぞい！！」


夏武斗「っ！罠カード発動！『インセクト・ブレス』！」


宇佐美「ぬぬっ！？」


夏武斗「自分のライフポイントより高い攻撃力の相手モンスターがダイレクトアタックしてきた時！デッキからカードを２枚ドローする！」


夏武斗「更に！その後に手札の昆虫族モンスター１体を墓地へ送る事で、墓地へ送ったそのモンスターの攻撃力分、攻撃してきたモンスターの攻撃力はこのターン終了時までダウンする！」


夏武斗（頼む！！）


夏武斗「２枚…ドロー！！」


宇佐美「……！」


夏武斗「よし！手札から攻撃力１５００の『サンド・トラッパー』を墓地へ送る！これで攻撃力は１５００ダウンだ！」ＡＴＫ１７００→２００


幻影となったサンド・トラッパーが獅子王本体に入り込む。
一瞬力を奪われた為か、獅子王の幻影が著しく小さく縮んででいった。


宇佐美「ちぃ！じゃが残りのダメージは受けてもらう！！獅子王の効果によってダメージは２倍じゃ！！」


夏武斗「くっ……ぐわあああぁぁぁ！！！」ＬＰ６００→２００



夏武斗「なんとか…持ちこたえた。」


宇佐美「………」


夏武斗「なぁ爺ちゃん…爺ちゃんが人間を消そうとする理由って……。」


宇佐美「…お前さんの考えている通りじゃよ。」


宇佐美「儂はもう、自らの業に気づかず破壊を繰り返す人間を見過ごしてはおけんのじゃ…！」





終










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（次回予告）


夏武斗「人間を滅ぼす事が目的のアインヘリアル…。」


夏武斗「香子の爺ちゃん、どうしてそんなとこにいるんだよ…」


天音「自然と人、二つの間に立っていた宇佐美老人は昔の事を思い返します。」


夏武斗「そんな……だけど…だけど！」


天音「次回、『罪と罰』！」


夏武斗「でもやっぱ、こんな方法駄目だよ！！」
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