55 大会中止!?吹き荒ぶ陰謀の風！　作：ギガプラント

天音（グレイシア平留さん……彼女の実力は前に見た通り。）


天音（あちらが先行なので１キルという事はないでしょうが…）


平留「先行は私だ！私のターン！！」


天音「！？」


茶ノ畑「力強いターン宣言から始まったデュエル！さぁここからは瞬き厳禁です！！」


平留「会場のマドモアゼルよ！！私は貴女の為、必ず勝利を掴み取る！！」


拳を振り上げ高らかに宣言する平留。
それに応えるように一気に歓声が沸き上がる。

「グレイシア様あああ！！」
「愛してますわあああ！！」
「私の為に……きゃああ！！」


平留「出でよ！我が分身となるモンスターよ！」


平留「私は『悲恋の青年 ロミオ』を召喚！」星４・ＡＴＫ１４００
イタリア風の衣装に身を包んだ青年。


平留「更に私は魔法カード『廻りあう運命』を発動し、デッキから『悲恋の乙女 ジュリエット』を攻撃表示で特殊召喚！」星３・ＡＴＫ０


平留「愛し合う二人の出会いはいつも必然！会場の皆と私が、今日ここに出会えたように！！」


「きゃあああ！！！」
「必然よおおお！！」
「こっちむいてえええ！！」


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（ジェネシック・エレクトロニクス本社・モニタールーム）


オペレーターＡ「こちら本社モニタールーム！管制室応答せよ！」


アストベリー「！？」


オペレーターＡ「管制室！応答がありません！」


オペレーターＢ「通信機器の故障…！？」


オペレーターＡ「くそっ！繋がらない！映像も……向こうのカメラが壊れているのか！？」


アストベリー「落ち着け！遠隔操作で非常用ドローンを作動させろ！」


オペレーターＡ「は、はい！」


アストベリー「そちらは配置中のセキュリティに応援を要請！ドローンの操作は私が受け持つ！」


アストベリー（オットー…お前なのか！？）


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天音（なんだか……微妙にやりにくいですね…あはは。）


平留「私はこれでターンエンド。」



天音（気を取り直して……）


天音「私のターン！ドロー！」


天音「スタンバイフェイズ時、手札の『朝凪の精霊』のモンスター効果発動！」


天音「このカードを手札から特殊召喚します！」星３・ＤＥＦ０


天音「そしてメインフェイズに入り、『雨天使 レーゲン』を召喚！」星３・ＡＴＫ１５００


天音「行きます！レベル３の朝凪の精霊と雨天使レーゲンでオーバーレイ！」


天音「２体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築！」



エクシーズ召喚！


現れよ！『アプリコット・レイニー』！！ランク３・ＡＴＫ１６００



茶ノ畑「早速エクシーズが決まった！攻撃力は１６００！対するグレイシア平留のロミオの攻撃力は１４００！ジュリエットに至っては０だ！！これはチャンスか！！？」


平留「傷つけさせなどしない！！悲恋の青年ロミオがフィールドに存在する限り、相手は悲恋の乙女ジュリエットを攻撃する事ができない！」


平留「更に！ジュリエットが存在する限りロミオは戦闘によって破壊されない！」


天音「っ！」


平留「愛する者は何があろうとも守り抜く！たとえこの身が朽ちようとも！！」


「私も守ってえええ！！」
「私もおおお！！」


天音「耐性効果ですか……ですがこちらも負けません！」


天音「アプリコット・レイニーのモンスター効果発動！」


天音「相手モンスター１体の攻撃力と守備力を８００ポイントダウンする！レイン・ドレイン！」


平留「くっ！たとえどんなに強い風雨に打たれても…我が永劫たる愛は打ち砕けん！」ＡＴＫ１４００→６００


天音（この人…本当にあの時と同じグレイシアさんなんでしょうか…。）


天音（大女優の仕事モード…なんですかね？）


天音「っといけない集中しなきゃ。私は装備魔法『リフレイン・ボウ』を発動！アプリコット・レイニーに装備します！」


天音「バトルです！アプリコット・レイニーで悲恋の青年ロミオを攻撃！ドロップアロー！」


平留「っ！」ＬＰ４０００→３０００


天音「更に！リフレイン・ボウを装備したモンスターが相手を戦闘破壊できなかった時、もう一度だけ続けて攻撃ができます！もう一回！ドロップアロー！！」


平留「くっ！天は二人を引き裂こうというのか！」ＬＰ３０００→２０００


「グレイシア様があああ！！」
「ああんなんてこと！！」
「ちょっと何よあの女！！」

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楯山「あの女だとおおお！！貴様等誰に向かってそんな口を叩い……」
竜太「あーもー一々反応すんなって！！」


初「楯山さん…落ち着いて。」


楯山「何を言っている！あちらにおわすお方をどなたと心得る！！恐れ多くも……」
初「ああ！ほらほらターンが廻ったよ楯山さん！！」


竜太「ったく、どっちが保護者だか…」


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（？？？）


マヘル「スタジアム全体で濃度上昇。流石はトップスターか。」


マヘル「そろそろ奴等が嗅ぎ付けてくる頃か…。」


マヘル（アーネスト……お前には悪いが）


マヘル「今こそ…『オペレーション・アブソーブ』を始動させる！」

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アストベリー「これは…！！？」


非常用ドローンから送られる映像には、オペレーター達が全て気絶している管制室が映し出されている。


アストベリー（管制室を……何が狙い……あれは！？）


管制室の丁度真上にあたる高台。通常人が出入りできないその場所に、フードを被った人影と大きめの機材が見える。


オペレーターＢ「あれは……まさか！」


アストベリー「アブソーバー……まさか！？」


ドローンを逆方向の管制室へ向かわせる。
そこにはアストベリーの予想通り、同じくフードの人間とアブソーバーが映し出される。



「いけえええ！！」
「やっちまえ！！」
「頑張れえええ！！」
「グレイシア様あああ！！」



アストベリー「くっ！Ｄオーラの質量は！！」


オペレーターＡ「か、管制室からのデータが送られてこないので…」


アストベリー「最後に受け取ったデータでいい！！クラスは！？」


オペレーターＡ「えっと……ウォーテリー級！！ただし限りなくダルキー級に近づいています！」


アストベリー「やはりか…この状況で下手な使い方をすれば……！」



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平留「私のターン！！ドロー！！」


平留「おお神よ！！何故愛し合う二人にこのような仕打ちをなさるのか！！悲恋は続く…何処までも！！」


平留「私は速攻魔法『仮死の毒薬』を発動！」


平留「この効果により、ジュリエットは血に塗れた醜い大地へと散る……。」


薬を飲みほしそのまま破壊されるジュリエット。


天音「えっ！？」



平留「ジュリエットを失ったロミオは絶望し……物語は悲しき結末へと走り出す！！」


平留「悲恋の青年ロミオのモンスター効果発動！ジュリエットが破壊された時、フィールドの全てのモンスターを破壊する！」


天音「！！？」


平留「木霊する悲劇！！」


アプリコット・レイニーもろとも破壊されるロミオ。


平留「更にこの効果で破壊したモンスターの数×５００ポイントのダメージを互いのライフへ与える！」



「うううぅぅぅ！！」
「ロミオ様あああ！！」
「涙で…涙で前が見えません…。」



平留「ジュリエットの効果！このカードが破壊されたターン、自分が受ける効果ダメージは全て回復する効果となる！」ＬＰ２０００→３０００


天音「くっ！！」ＬＰ４０００→３０００


平留「無慈悲なる運命に翻弄されし若き二人の結末。その悲しき最期が人々の心を変え、醜い戦は終わりました。」


平留「エンドフェイズ！仮死の毒薬で破壊されたモンスターは再び息を吹き返す！」星３・ＤＥＦ０

フィールドにジュリエットが蘇る。


平留「どんな結末を迎えようとも、二人が育みあった愛は永遠のものなり！！！」


「わあああ！！！」
「ブラボーブラボー！！！」
「最高よおおお！！！」


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（管制室上部）

通信機器でマヘルと連絡をとるアリスとヴァルト。


マヘル「今だ！！」


アリス「はいはい！！」


ヴァルト「行きます！！」


二人が一斉にアブソーバーを起動させる。


アリス「フルパワーでいいのよね！！それっ！！」



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アストベリー「まずい！！即刻大会を中止させろ！！セキュリティを含め会場内の人を全員避難だ！！」


アストベリー（オットー貴様…！！）


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天音（す、凄い歓声……こんなの初めて。）


茶ノ畑「これは凄いパフォーマン……うぎゃう！！」


突如吹きすさんだ突風に会場全体が呷られる。

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（ジェネシックスタジアム・控え室）

モニターに詰め寄る夏武斗。


夏武斗「なんだ！？どうしたんだ！？」


仁「…外の様子がおかしい。」


ロバート「ん？ありゃあ…つむじ風かなんかか？」


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天音「きゃ…！！」


「うわあああ！！」
「なにこれ竜巻！？」
「あ！俺のカードが！！」


天音（急にこんなに強い風…！）


竜巻の如くフィールドや客席を荒らしまわっていく突風。
カードや荷物を護るもの、室内に逃げ出すもの、その場でうずくまるもの、皆それぞれに突然の異常現象に恐怖している。


茶ノ畑「あわわわ！！皆さん！室内へ避難してください～！！」


茶ノ畑「大会は中止です！！急いで！」

「俺のター……うわあ！！」
「うわ！なんだこりゃ…！」
「これは演出ってレベルじゃねえぞ…ぐうう！！」


天音「一体……何が…！！」


あらかじめ配置されていたセキュリティ部隊やスタッフが会場を入り乱れ、参加者たちを室内へ誘導していく。


「デュエルは全て中止です！！早く！早く非難を！！」
「押さないでください！転ばないように！！」
「こちらからも非難できます！！慌てないで！！」


スタッフ「あなたも早く！」


天音「は、はい！！……平留さんは」




天音「あれ…居ない…。」




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夏武斗「そんな…さっきまであんなにいい天気だったのに！」


仁「………」


ロバート「おいおい…こりゃ洒落になんねえぞ…。」





夏武斗「天姉…！」


部屋を飛び出していく夏武斗。


ロバート「お、おいちっこいの！！」


仁「…あの馬鹿が！」

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客席に居た楯山達は互いに掴まりながら少しずつ避難口へと向かっていた。


竜太「くぅ…目が開けらんねえ。」


楯山「なんなんだこれは…」


初「うぅ…」


スタッフ「君！掴まって！！」

金属製の手すりを片手でがっちりと掴み、もう片方の腕を竜太の方へと伸ばす。


竜太「よっし！んん～！！！」

精一杯手を伸ばしその手に掴まる。


竜太「くうっ！引っ張っぞ初ぇ！！」


初「うん…！！あっ！！？」


初の身体が大きく引っ張られた瞬間、腰に付けていたデッキホルダーが座席にぶつかり音を立てて外れる。
支えとなるものを失ったデッキはホルダーごと突風の餌食となり、数メートル先に見える最前列の座席の下に入り込んでいた。


初「僕のデッキが…！！」


楯山「くそっ！！」


楯山は初に掴まっていた手を放し、座席方向へ精一杯手を伸ばしながらダイブする。


初「楯山さん！！」


竜太「おい！馬鹿！！」


スタッフ「君！！」


楯山「僕の事はいい！！先にその二人を！！」


スタッフ「だが…！」


楯山「こんな風ごときに負ける僕では……！！」

成人男性でも楽々吹き飛ばすほどの風に耐えながら、座席の縁を掴み少しずつ進んでいく。


楯山「もう少…し」


長いようで短い時間を掛け、ついに楯山の手が初のデッキに届く。


楯山「よし…」


初「楯山さん……」


竜太「すっげぇ……」


楯山「早く中に戻れ！僕も直ぐに………っ！！」


風上から赤い物体が楯山目掛けて飛んでくる。
それが観客の誰かが使っていたメガホンである事に気づいた時には既に楯山の真横を通り過ぎていった。

初「あぁ！！」
竜太「！！」
楯山「なっ…！！」


楯山のデッキホルダーを弾き飛ばしながら…。






大きく飛び上がったはそれは客席とフィールドを仕切る手すりに衝突し、その衝撃と共にホルダーの蓋を破壊した。





３人は突風に中に消えていく４０枚の紙を呆然と見送るしかなかった。






終










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（次回予告）


夏武斗「天姉！大丈夫かぁ！！天姉えええ！！」


ロバート「あの馬鹿…いきなり飛び出す奴があるか！！」


仁「…くっ、見失った！」


夏武斗「う、うあああ！！！飛ばされるううう！！？」


夏武斗「くそっ！こんなんじゃ碌に動け……えっ！？」


夏武斗「お前等……あん時の！！」


夏武斗「次回！『オペレーション・アブソーブ』」


？「あれ～楠さん？なんでまたこんなとこに。」
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・某劇団とは全く関係ありません。
・次回より「アインヘリアル編」に入ります。またまたＯＰテーマも変わるよ！（もちろんそんなものはない）

・区切りという事で（本編的には全然区切りが良くないが…）またなんか特別回でもやろうかな～とか思いました。何かしらやってほしいことがあったりしたらコメント頂けると嬉しいです。