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HOME > 遊戯王SS一覧 > 65 Dオーラ

65 Dオーラ 作:ギガプラント


(ジェネシック・エレクトロニクス本社・1階ロビー受付)


受付嬢「夜見原様ですね。お待ちしておりました。」


仁「………」

仁(わざわざ丁寧な事だな…。)


茶封筒の中に入っていた一枚の紙を取り出す。
綴られた文章の一部分を強く睨みつける。



『君は邑咲村(くにさきむら)という名に覚えはあるだろうか。』



仁(…既に跡形もない故郷の名を持ち出して、何が目的だ?)


受付嬢「ご案内いたしますので少々お待ちください。」




--- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- ---






(上波動物園・入場ゲート前)





香子「あっ!天音さ~ん!!こっちこっち~!!」



大きく手を振る香子。



天音「香子さん。ご無沙汰しています。」


夏武斗「おはよう香子。」


香子「アストベリー杯以来ね二人とも。元気だった?」


天音「え…っと」


横目で夏武斗の方を見やる天音。


夏武斗「あぁ。元気にやってるぜ!」


天音(………)


香子「スタジアムがあんな事になるなんてねぇ。ホントびっくりしちゃった。」


天音「香子さんは大丈夫でしたか?」


香子「見ての通り問題なしよ。私は偶然非常口近くにいたから。」


香子「でも皆無事だったみたいで良かったわ。ね?ミミ。」


胸元に抱えていたウサギのミミを軽く撫でる。


天音「ミミさんもお久しぶりです。」


香子「一緒にあなたを探してくれた天音さんよ~覚えてる~?ふふ。」


夏武斗「にしても動物園ってこんなデカいのか~すげぇなぁ!」


香子「夏武斗君、もしかして動物園初めて?」


夏武斗「いや、ずーっと昔に一回だけ行った事があるんだ。大天島にはこんなデカい建物無かったからな。」


夏武斗「猿の檻の中に入ろうとして大変だったんだってさ。って言っても殆ど覚えてないんだけど。」


香子「えーっと…入っちゃダメよ?」


夏武斗「入らねえよ!!」


天音「あはは…。」



天音「私は初めてなんです。こういう施設が無いところで育ったので。」


香子「へぇ~だったら沢山楽しんでって!私も楽しみなんだ~!」


夏武斗「オープン前の動物園に入れるなんてマジでラッキーだぜ。」


天音「でもオープン前なのに本当に大丈夫ですか?」


香子「うん。そこは……」

老人「心配せんでよいぞ娘さん。」


ゲート横を抜けてくる老人。


香子「お爺ちゃん。」


天音「あ、どうも。」


宇佐美「動物たちも少しは人の目に慣れておいた方が良いらしいしの。」


宇佐美「園長に話は通してある。遠慮なく楽しんでいくがええ。」


夏武斗「へぇ~サンキューな爺ちゃん。」


天音「ありがとうございます。」




--- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- ---



(ジェネシック・エレクトロニクス本社・社長室)




アストベリー「先ずはそちらの都合も考えず急に呼び立てた事を詫びさせてくれ。」


仁「………」


アストベリー「そして御足労感謝する。」


仁「…前置きはいい。本題に移れ。」


アストベリー「ふむ、あまり時間は取らせられんか。」


仁「こんなものをわざわざ送り付けてくるくらいだ。世間話がしたいわけではないだろう。」


二本の指を使い、手紙入りの封筒を投げつける。


アストベリーは仁に視線を向けたまま器用にそれを掴み取る。


アストベリー「そうだな…では何から話すべきか…。」




アストベリー「では初めに一つ確認したい。此処に赴いたという事は、君は邑咲村を知っているのか?」


仁「邑咲村は俺の生まれ故郷だ。といっても…」


アストベリー「今はもう……か。すまない。少々配慮に欠けた質問だった。」


仁「白々しいな。訊かずもがな知っていただろう。ジェネシックなら幾らでも調べられる事だ。」


アストベリー「確かにほぼ間違いないとは思っていた。だがあれこれ予測を立てるのと本人の口から聞くのでは信憑性に大きく差が出よう。」


仁「…それで、俺の生まれがどうしたというんだ。」



アストベリー「少し昔話をしよう。」





アストベリー「八年前、私はしがない一研究員だった。」





当時私はたった一人の仲間と共に、とあるエネルギーについて調べまわっていた。


人間の身体から放出される僅かなエネルギー。排泄や新陳代謝とは違う、もっと根源的な『何か』


今はそれを「Dオーラ」と呼んでいる。



だが当時の我々の研究成果はお世辞にも優れているとは言えなくてね。誰もが私たちを鼻で笑った。


「未知の力を観測できたのは喜ばしいが、そんな生産性の無いものを調べて何になる?他に研究すべき事柄は幾らでもあるだろう」と。


何処へ行っても変人扱い。それでもDオーラの不思議な魅力からは逃れられなかった。


そしてある時……私たちは見つけた。




~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~


大きな眼鏡に古ぼけた白衣の男が声をあげる。




ダグラス「アーネスト!!これを見てくれ!!」


小型のモニターを指差す。
驚いた様子の声に若かりしアストベリーは血相を変えて寄ってくる。


アストベリー「どうした…!」


アストベリー「なっ!これは…!!」





観測その物が難しいDオーラ。だがその場所は「異常」だった。





アストベリー「なんだこの濃度は……何億人単位で人が集まらなければこんな質量は…!」


ダグラス「だがこんな山奥の村にそんな人数居るわけがない。何かあるんだ!!この力の謎を解き明かす何かが!!」




ダグラス「こうしてはいられない!今すぐ行こうアーネスト!!」



~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~


仁「まさかその場所が…。」


アストベリー「そう、邑咲村だ。」




アストベリー「そしてもう一つ、無視できない事柄が一つあった。」


~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~


車を運転するアストベリー。
そして助手席で地図を広げるダグラス。


ダグラス「間違いない。この位置は邑咲村ってところだ。」


アストベリー「邑咲村……邑咲村…か。」


ダグラス「知っているのか?」


アストベリー「いや、ただ以前何処かで聞いたような…。」


ダグラス「まぁ行ってみれば思い出すかもしれないな!」


ダグラス「さぁて、何が出てくるのか…今からワクワクするな!」


アストベリー「気持ちは解るが少し落ち着いたらどうだダグラス?」


ダグラス「すまない。だが今回ばかりは許してくれ。漸く手がかりが掴めたんだ。」


ダグラス「それに、もしかしたらこの道の先には新たなエネルギーが待っているかもしれない!」


アストベリー「エネルギー…それだ!!」


ダグラス「おおっと!どうした?」


アストベリー「邑咲村……確か夜見原博士の住居があるところだ。」


ダグラス「夜見原博士だって!?エネルギー研究のスペシャリストじゃないか!」


ダグラス「丁度良い!僕等の研究の事を話せば、何か良い意見が貰えるかもしれない!」


アストベリー「あぁ…。」


アストベリー(膨大な力の反応を示した場所にエネルギー研究の学者……これは偶然なのか…?)




--- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- ---


(邑咲村)


ダグラス「どういうことだ…?大人が誰一人いないじゃないか…。」


アストベリー「…一体何が。」


少年「おじさん達、誰かに逢いに来たの?」


ダグラス「あぁ、ちょっと人を探してるんだけど…。」


少年「あれま…ちょっと遅かったね。大人はみ~んな社(やしろ)に篭っちまったよ。」


アストベリー「社?」


少年「村の奥にあるなんかでっかい建物さ。なんか知らねぇけど、この時期外から沢山人が来てさ皆で社の中に篭りきりになるんだ。一週間は出てこねえ。」


ダグラス「そんなに長い期間子供だけで…大変だな。」


少年「そうか?昔っからそうだったぜ?夜まで外で遊んでも怒られねえし、俺は好きだな。」


少年「ま、赤ん坊の兄弟がいる奴なんかは大変みたいだけど。」


アストベリー「しかしそこまでの事をして、その社とやらで一体何を…。」


少年「知らね。大人になったら教えてやるの一点張りでさ、全然教えてくんねぇんだ。なんかの仕事って言ったたけど。」


アストベリー「………」


ダグラス「いやしかし弱ったなぁ。暫く会えないとなると…車で野宿するにも限度があるぞぉ。」




少年「だったらさ、俺ん家来ねえか!?」


少年「あんたら都会の方から来たんだろ!?話聞かせてくれよ!!」


ダグラス「おいおい…大人がいないのにそんな勝手に…。」


少年「いいんだよ!俺がうまく言っとくからさ!ほらこっちこっち…!」


ダグラス「おい、こらこら……。」


アストベリー「………」

~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~


アストベリー「だが私が博士に会いまみえる事は無かった。」


仁「……例の事故か。」


アストベリー「あの厄災が何であるか…何が原因か、そこは未だ判っていない。」


仁「…それで、そんな話を俺にしてどうする?」


アストベリー「何が訊きたいかは分かっているのではないかね?君は夜見原博士夫妻の…。」


仁「確かに俺の両親は学者だった。」


アストベリー「やはりそうか…。」


仁「だがその力とやらの事を俺は何も知らん。当時小さな子供だった俺に、両親がそんな事を話すわけもない。」




アストベリー「ふふ、Dオーラについて君から話を聞きたいわけではない。寧ろDオーラの性質は近年少なからず判明してきている。」


アストベリー「その最大の特徴は、デュエルと密接に関連するという事だ。」


仁「…どういうことだ?」


アストベリー「Dオーラはデュエルを行っている際に発せられる闘志、歓声、そういったものに強く呼応する。」


仁「………」


アストベリー「私はこの力の全てを解き明かしたい。君を此処へ呼んだのはその為の協力を仰ぐ為だ。」


仁「協力だと?」


アストベリー「Dオーラの細かな動きを調べる為、私は1枚のカードを製作した。」


どこからかカードを取り出し、仁の下へ歩き出す。




アストベリー「君にこのカードのテスターとなってもらいたい。」


仁「…分からないな。何故そんな事を俺に託す?」


アストベリー「さぁ…何故だろうな。」


アストベリー「真実にたどり着く鍵となりえたかもしれない夜見原博士のご子息である君に頼む事で、私自身ある種の願掛けをしているのかもな。」


仁「理由になっていないな。」


アストベリー「違いない。それでどうだ?引き受けてくれるかね?」


仁「………」


アストベリー「なに、難しい事はない。使ってくれさえすればあとはdPhoneが勝手にやってくれる。」


アストベリー「それにこれはある意味で誰も持っていないレアカードだ。悪い話ではあるまい。」


アストベリー「何か役に立つやもしれんしな。」


仁(………)


仁「…いいだろう。」


カードを受け取る。



アストベリー「感謝する。成果次第ではまた別のカードを送る事もあるかもしれない。宜しく頼むよ。」


仁「…要件はそれだけか。」


アストベリー「あぁ、時間を取らせて悪かったね。」




アストベリー「…そうだ、これは別件なのだが。」


仁「………?」


アストベリー「君に直接何かという訳ではないが……一つ気になる情報を仕入れてね。」








アストベリー「一応、話しておこうか。」



--- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- ---



(上波動物園)


夏武斗「すげぇ!あれゴリラか!?本物か!?」


香子「あっ!夏武斗君そこは近づきすぎると……!」


夏武斗「うわっはぁ!!なんか投げてきた!!??」


天音「あ、あはは…。」


天音(完全復帰…とまでは行きませんが、夏武斗君…一先ず大丈夫そうですね。)




夏武斗「うぁ~びっくりしたぜ。」


香子「ふふ、ちょっと休憩しましょっか。…ミミ、ちょっと休憩よ。」


香子の横を歩いていたミミが器用に長椅子に飛び乗る。


天音「わぁ、お利巧さん。」


夏武斗「へぇ、実は結構しっかりしてんだな。」


ミミの頭に手を伸ばす夏武斗。


香子「あっ!!?」


夏武斗「えっ!?」


物凄いスピードで逃げ出すミミ。あっという間に見えなくなる。


香子「あ…ごめんなさい、言い忘れてた。」


夏武斗「えっ?どういうことだ?」


宇佐美「ミミの奴この間の一件で途端に男を怖がるようになってしまったようでの…今じゃ儂にも触らせてくれん。」


天音「あ、あの時の…。」


~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~


左右田「へっ!だったらこっちが勝ったらこいつは貰ってくぜぇ!?痛みつけて鍋にして食ってやらぁ!」


~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~



香子「…ごめん私ちょっと探してくる。」


天音「私もお手伝いします。」


香子「天音さん…ありがとね。」


夏武斗「俺は……行っても手伝えないか。」


香子「うん。ごめんね。」


宇佐美「では儂らは入口ゲートを見張るとしようぞ。あそこさえ見ておけば園内からは出られんじゃろう。」


天音「では、ちょっと行ってきます。」


夏武斗「あぁ、気を付けてな。」




















フードの男「………」
















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(次回予告)


夏武斗「ミミがまた逃げちまった!」


天音「動物園全体となると…探すのは大変ですね。」


夏武斗「俺が触ると逃げちまうし…天姉頼んだ。」


天音「はい。行ってきます。」


天音「飼育員さんにも話を聞いてみましょうか。」


天音「次回、『動物園の罠!?変則バトルロワイアル』」


天音「香子さん!今は戦ってください!!」
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・あれ?また人からカード貰ったぞ?いい加減に出さなきゃ…。
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ター坊
色々と過去が発覚する回。夜見原に託されたカード…なんかイシズが社長にオベリスク渡した時を彷彿とさせます。それと過去と言えばしれっと天音さんも暗いっぽい過去が?動物園がない境遇って…。
そして再びウサギのミミちゃんがやらかしました。嫌な予感の中、見つかるか? (2017-03-31 21:05)
ギガプラント
コメントありがとうございます。
そういえば社長の時もこんな感じでしたね。今回は神のカードではありませんw
因みに私は動物園行ったことがありません。いやホントに…… (2017-03-31 21:39)

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