57 ジェネシックのエージェント　作：ギガプラント

dPhoneで電話をかける天音。


天音「もしもし、仁君大丈夫ですか。」


仁「花田か！今夏武斗の奴が……」


天音「大丈夫です、合流できましたから。」


仁「…そうか。」


夏武斗「あーそういえば仁達に何も言わずに飛び出してきちまったんだよな。」


天音「そちらは大丈夫ですか？」


仁「スタッフの指示でそのまま外に出た。一先ずは問題ない。」


天音「良かった…ロバートさんもご一緒ですか？」


ロバート「ピンピンしてるぜー！あー！あー！聞こえっかー姉ちゃん？」
仁「耳元で大声を出すな喧しい…！」
ロバート「あーもーこんな時くらいピリピリすんなよなぁ。」


夏武斗「仁達大丈夫なのか？」


天音「はい。無事避難できたみたいです。仁君が夏武斗君の事心配してましたよ？」


夏武斗「そっかぁ。悪いことしたな。」


仁「…別に心配など。」
ロバート「あれま素直じゃないねー。」
仁「離れろ気持ちが悪い。」
ロバート「だって近づかなきゃ聞こえねえだろぉ？」


天音「ふふ。」


天音「とりあえず私達も直ぐに戻ります。」


マイティ「あーそのーちょっといいですか～？」


夏武斗「えっ？」


天音「えっと…たしかあなたは…１回戦の…。」


マイティ「あ、どーもマイティです。覚えて頂いてて光栄です～」


夏武斗「そうだ、マイティお前一体何者なんだ？それに……」


奥で誰かに通信をしているユニを見やる夏武斗。


天音「あの人は…ユニさん…！？」


マイティ「あれぇ？お嬢さんユニとお知り合いなので～？」


夏武斗「たしか予選で戦ったんだよな。」


マイティ「成程、じゃあユニに勝ったのはお嬢さんという事ですか。」


マイティ「可愛らしいだけでなくお強いなんて…流石は楠さんのご友人ですねぇ。」


天音「え、えっと…どうも。」



ユニ「それはセクシュアル・ハラスメントです。」

いつの間にか通話を終え後ろに立っているユニ。


マイティ「これはこれは失礼……いやぁついつい。」


ユニ「だから思った事を直ぐ口に出すなと常々言っているのです…。あら貴女は…。」


天音「あ、花田天音です…どうも。」


ユニ「あの時の……成程そうでしたか。」


マイティ「えーと…それで我々の事なんですけどねぇ？ちょぉっと色々事情が立て込んでましてねぇ…。」


夏武斗「？」


ユニ「申し訳ありませんが、お二人には一旦我々についてきて頂きます。」


天音「えっ？」


マイティ「あーやっぱりそうなっちゃいましたか～。まぁそうなりますよねぇ。」


夏武斗「待て待て！ますます訳分かんねえよ！それについてくって一体どこに！？」


マイティ「あぁそんなに身構えなくていいですよぉ。ここからだと大した距離でもありませんし。」



ユニ「ジェネシック本社ビルです。」




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（上波町）


乱れたフードを被り直し、町中を忍者の如く駆け抜けていく３人の影。


ヴァルト「…助かりました。平留。」


アリス「…ふん。」


平留「イレギュラーな事態も想定して退却は速やかにと言われていたでしょう。」


ヴァルト「申し訳ありません。手を煩わせました。」


平留「煩わせたのはあなたじゃないでしょう？」


アリス「っ…！」


平留「自覚はあるようね。」


ヴァルト「確実に捕らえようとジェネシックも二人一組（ツーマンセル）で来ました。アリス様の過失では…」


平留「じゃあ逆の立場なら彼女はあなたのように直ぐに援軍に向かえたかしら？」


ヴァルト「それは…」
アリス「あぁもう！あたしが悪かったわよ！！謝りゃいんでしょ謝りゃ！！」


平留「謝罪など求めていない。失態を自覚して同じことを繰り返すなと言っているだけ。」


平留「謝罪も反省もこちらからすればなんの生産性もない。感情だけで動かないで。………これだから女は」


アリス「～っ！！」


ヴァルト「アリス様……」


アリス「うっさい！喋るな馬鹿執事！！」



平留「一先ず戻りましょう。アブソーバーをマヘル達に確認してもらわなければ。」





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（ジェネシック・エレクトロニクス本社・応接室）


夏武斗「ジェネシックのエージェントオオオ！！？？」


マイティ「あ、はい。一応。」


天音「まさか…ジェネシックの方だったなんて。」


ユニ「一応機密でしたので。直ぐに説明できず申し訳ありません。」


夏武斗「へぇ～。エージェントかぁ！」









夏武斗「ところでエージェントってなんだ？」



マイティ「がくっ！」


天音「か、夏武斗君…。」


マイティ「えーっと…まぁ確かに説明の難しい単語ですよねぇ。」


天音「正直私も詳しく理解できていません…。」









？「それについては私から説明しよう。」


天音「えっ！？」


２人のセキュリティを引き連れ部屋に入るアストベリー


アストベリー「簡単に言えば秘密裏に動く私直属の部下といったところか。まぁ部下というよりは仲間という言葉の方が私は好きだがね。」


夏武斗「ア、アストベリーさん！？」


マイティ「いや～僕なんてボスの部下で充分ですよ～。」


ユニ「恐縮です。」


アストベリー「ふふ、夏武斗君。こうして面と向かって会うのは久しぶりだね。」


夏武斗「ほっへ～…。」


天音「あ、そちらのお二人は…。」



丹波「やや！君達はあの時の……警部！これは事件の臭いですよ！！」


軽部「そういうのはいいって言ってんだろ。」(ｺﾞﾁﾝ!)


丹波「警部…痛いです。」


夏武斗「セキュリティのおっさん達まで…。」


丹波「お、おっさん……」


ユニ「説明が遅れてしまい申し訳ありません。」



ユニ「まず本大会を中止させた今回の騒動、これは事故ではなく人為的なものです。」


天音「人為的…。」


夏武斗「やっぱりあいつら…！」


天音「え？」


夏武斗「前にここで戦った３人組だよ……少なくとも二人はあそこにいた…。」


丹波「なんと同一犯！？これは臭いますよおお！！」


マイティ「な～るほど～。やっぱりそうでしたか～。」


ユニ「…予想通りですね。」


夏武斗「なんだ？どういうことだ？」


マイティ「実を言うとそれが聞きたかったんですよ～」


夏武斗「えっ？」


マイティ「ほら、あの人達フードで顔隠してたでしょ？だからどうにも顔が分からなかったんですよ。カメラはぜ～んぶ壊して行っちゃうし。」


軽部「大会に影響が無いようあの事件は大っぴらにしてなかったからな。目撃情報をかき集める事もしてねえ。………まさかこんなことになるたぁ思わなかったがな。」


ユニ「そして今日スタジアムでまたも襲撃犯が現れました。まず私達は彼等が本社襲撃の犯人と同一人物であるかどうかそれが知りたかったのです。」


丹波「偶然にもまた君が現場に居合わせたっていう話でしょう？不幸中の幸いというかなんというか…」


夏武斗「あぁ、間違いねえ！あん時このビルから出て来た奴らだった！」


軽部「よし、そうと分かりゃもうちょっと詳しく話を聞かせてもらおうか。」



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軽部「………ま、大体こんなとこか。」


天音「あまりお力になれず申し訳ありません…。」


軽部「いや、あなたは今回の現場に居合わせてなかったんだ。仕方のないことです。気にしなさんな。」


マイティ「いや～長々とすいません～。実は今回の事も機密なんで軽々しく外では話せないんですよ～。」


ユニ「重ね重ね申し訳ありませんが、今回の事もご内密にお願いします。」


天音「はい…。」


夏武斗「にしても会社からもの盗んだり大会を台無しにしたり、一体なんなんだよアイツらは！！」


天音「確かに……目的の為には手段は選ばないような人達みたいですけど…。」


軽部「会長さん、誰かに恨みを買ったりするようなことは？」


アストベリー「私も一応企業の会長ですからな。恨まれるようなことも珍しくはない。」


軽部「ま、だろうな………。」


丹波「にしてもおぼっちゃん…よくもまぁ事件現場に居合わせますねぇ？………ハッ！？実は薬で小さくなった高校生探て…」


軽部「黙ってろ」(ｺﾞﾁﾝ!)


丹波「警部…痛いです。」



軽部「捜査協力感謝致します。気を付けて帰るようにな。」


夏武斗「あぁ。」
天音「はい。」


アストベリー「おっと……最後に一つだけ。」


夏武斗「？」



アストベリー「前回はごたついて顔を出せなくて申し訳ない。」



アストベリー「本社襲撃の際に連中と闘ってくれた事、そして今回の件。心から感謝する。有難う。」



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（？？？）


平留「報告は以上です。」


アリス「………」


ヴァルト「………」


マヘル「ご苦労。よくやってくれた。」


双葉「…皆が無事で良かった。」


マヘル「…アリス、ヴァルト。」


ヴァルト「はい。」
アリス「な、なによ…。」


マヘル「そう畏まらんでいい。私が聞きたいのはその少年が放った光の事だ。」


ヴァルト「あの時の……」


アリス「…思い出すだけでムカついてきた。なんなのよあれ！」


ヴァルト「何か……ラーナの力にとてもよく似たものを感じました。」


双葉「お姉ちゃんの！？」


？「ほぉ……。」


？？「わっけ分かんねえ…。」


マヘル「ラーナの……他には何か？」


ヴァルト「あの光がどういったものかは分かりませんが…カードから放たれていた事は確かです。」


マヘル「カードだと…一体」


ヴァルト「すみません。そこまでは……」





アリス「……ヴィクトリー・ビートル。」


ヴァルト「……！」


アリス「あのカードはヴィクトリー・ビートルってカードよ。私からははっきり見えたもの。」


マヘル「成程な……。」


マヘル（ラーナとよく似た力…か。）



マヘル「今後の方針を今一度考える必要がありそうだな。」




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（上波町・繁華街）


奏「ふいぃ～ﾋｯｸ!」


光輝「奏……流石に飲み過ぎだって…。」


奏「ふああ……あによ光輝文句っでもあんのぉ？じぶんは引き分きぇだったきゃらってぇ…。」


光輝「いや、それとこれとは関係が…」


大駕「無駄じゃ光輝よ。こうなった奏嬢とは暫く会話ができん。」


光輝「そ、そんな…。」


奏「うぅ…なんなのよあの竜巻わぁ。あだしの大会をがえせええ！ううぅぅ…。」


光輝「奏…。」


大駕「まぁ今は好きにさせてやれ。あんなことになっては誰でも混乱するだろう。」


光輝「……本当に凄い風だったからね。」


大駕「幸い儂等は皆建物内に居たが、もう少し早ければお前も危なかっただろうな。」


光輝「うん……客席はもっと凄かったらしい。初君達が無事で良かった…。」


奏「うーん……。」


光輝「っと！」


大駕「ほら奏嬢…足元に気を付けい。」


光輝「もう、弱いのにどうしてここまで飲んじゃうんだよ…。」


奏「弱いって言うなあああ！！あんただって引き分けたくせにいいい！！」


光輝「そういう意味じゃないってば！！」



大駕「がっはっは！！これは骨が折れそうじゃな！」


大駕「まぁいつまでも嘆いていても仕方がない！過去より今じゃ！という訳で光輝よ、奏嬢をしっかり寮まで送るのだぞ！」


光輝「え！？大駕はどうす……」
大駕「儂は一駅分走って帰る事にした！！一足先に失礼するぞ！！」


急に走り出す大駕。


光輝「えぇ！ちょ、大駕！！………行っちゃった。本当に突拍子もないなぁ。」



奏「………ばーか。」






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大駕「と、変に気を回してみたもののこれからどうするか…。」


大駕「よし！男に二言はない！走るとするか！」










大駕「ぬ？アイツは………」




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（ジェネシック・エレクトロニクス本社前）



夏武斗「あー…座りっぱなしでくたびれたぜ…。」


天音「随分長い時間座っていましたからね。お疲れ様です。」



夏武斗「はぁ～あ………アストベリーカップ、もうホントに終わりなのかな…。」


天音「会場の機器も派手に壊れていましたし……再開するにしてもかなり後でしょうね…。」


夏武斗「あ～も～！！せっかく上波町まで来たのにぃ！！」


天音「夏武斗君……落ち着いて。」





僅かな沈黙の後、ふと震えだす天音のdPhone



天音「あ、誰でしょう………。」


天音「…！？香子さんです！」


夏武斗「香子ってあの……そっか。アドレスを交換してたんだな。」


天音「はい。えーっと……」


メールを確認する天音。



天音「夏武斗君。香子さんから動物園に誘われました。」


夏武斗「動物園？」


天音「はい。上波町から少しだけ離れるんですけど、近日オープンの大きな動物園ですね。」


天音「お爺さんの知人の方が経営するそうで、開園前に特別に入れてもらえるんだそうです。」


天音「そこで、せっかくだから皆さんもどうですか？とのことです。」


天音「まだ結構先のお話ではあるんですけど、夏武斗君もどうですか？」


夏武斗「動物園かぁ。そういや最後に行ったのいつだったっけなぁ。」




天音「夏武斗君。行きましょう？」


天音「丁度良かったとは言いませんが、良い気分転換になると思うんです。」


天音「それに、たまには皆で遊びに行くというのも楽しいですよ♪」


夏武斗「うん。そだな！」


夏武斗「ありがとな天姉。俺、行くよ！」


天音「ふふ、仁君達も誘ってみますね。」


夏武斗「う～ん…仁の奴来るかなぁ？どうも動物園って感じがしねえっていうか…」


天音「あはは…まぁ一応声はかけてみます。」





終











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（次回予告）


楯山「違う！！こんなのは僕のデュエルじゃない！！」


楯山「取り戻せないのか……あの感覚は。」


楯山「やはり僕は…あのデッキじゃないと…くっ！」


光輝（楯山君……ごめん。初君の為に…。）


光輝「次回、『楯山の苦悩、自分自身のデュエル』」


楯山「僕は……どうすればいいんだ…！」
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・今更ながらここから新章で良かった気がしてきた…。
・次回の前にコラボ編………の予定です。