第180話　満足とファンサービスの果てに　作：ター坊

「次のデュエルはⅣと鬼柳か…」
「Ⅳ兄様、頑張って下さい」
「鬼柳！負けんじゃねぇぞ！！」
始まる前から周囲が盛り上がる中、遊矢は何やら不思議そうな顔をしている。
「遊矢。どうしたの？」
「あ、柚子。いや、前々から思ってたんだけどさ」
「うん」
「Ⅳさんの声って赤馬零児に似てると思わないか？」
「まさか！だって別次元の人間よ？気のせいよ。ほら、そんなことより始まるわ」
「あ、ああ」




「ふっ。さぁて、満足させてくれよ」
「ああ良いぜ。俺様のファンサービスで満足させてやる！！」


「「デュエル！！」」

「俺の先攻。モンスターを裏守備でセット。カードを１枚セットしてターンエンド」
鬼柳の１ターン目は思いの外静かな立ち上がりとなった。
「俺様のターン、ドロー！！『ギミック・パペット-ギア・チェンジャー』を召喚！さらに俺様のフィールドにギミック・パペットモンスターが存在することで手札から『ギミック・パペット-マグネ・ドール』を特殊召喚！そしてギア・チェンジャーの効果でマグネ・ドールと同じレベル８になる！」

「レベル８のモンスターが２体…」
「いきなり来るか！？」

「俺様はレベル８のギア・チェンジャーとマグネ・ドールでオーバーレイ！！２体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築！エクシーズ召喚！現れろ、Ｎｏ.４０。地獄よりの奏者。運命の糸を奏でし人形…。天より降りて葬送曲を響かせろ！ギミック・パペット-ヘブンズ・ストリングス！！」
光の渦から紫色の球体を中心とした謎のオブジェが浮上し、変形してⅣが所有するＮｏ.の一角となる。
「さて、受けて貰うぜ俺様のファンサービス！！ヘブンズ・ストリングスで裏守備モンスターを攻撃！ヘブンズ・ブレード！！」

Ｎｏ.４０ ギミック・パペット-ヘブンズ・ストリングス ATK 3000 VS インフェルニティ・クイーン DEF 900

「どうだ？俺様のファンサービスは？」
「まだ満足には程遠いな！」
「何！？」
「インフェルニティモンスターが戦闘によって破壊されたことで手札を全て捨て罠カード『インフェルニティ・リフレクター』を発動！！これにより破壊された『インフェルニティ・クイーン』が復活し、お前に１０００ポイントのダメージを与える。行け！」
「ぐあっ！」

Ⅳ:LP 8000→7000

先程倒された『インフェルニティ・クイーン』がセメタリーゾーンから飛び出し、Ⅳに魔法弾を放ちながらフィールドに舞い戻ってきた。
「くそっ！よくも俺様のファンサービスを…。俺はカードを１枚セットしてターンエンド」
「俺のターン、ドロー！俺は『インフェルニティ・ミラージュ』を召喚！さらに効果発動！！手札が０枚の時、コイツ自身をリリースすることで墓地からインフェルニティモンスター２体を特殊召喚する。蘇れ、『インフェルニティ・ネクロマンサー』！『インフェルニティ・ジェネラル』！！」
ミラージュがフィールドから消えると地面から魔法陣が現れ、そこから２体のインフェルニティがせり上がってくる。
「手札が０枚の時、『インフェルニティ・ネクロマンサー』の効果によって墓地から『インフェルニティ・ビートル』を特殊召喚。さらに『インフェルニティ・ビートル』は手札が０枚の時にリリースすることでデッキから同名モンスター２体を特殊召喚する！！」
あれよあれよという間にモンスターが並ぶ。

「出たぜ！鬼柳のハンドレスコンボだ！」
「一気にモンスターが５体…」
「さすが鬼柳だ。ハンドレスコンボでフィールドを揃えたか…」

しかし鬼柳はまだ満足はしていなかった。
「俺はレベル３の『インフェルニティ・ネクロマンサー』と『インフェルニティ・クイーン』にレベル２『インフェルニティ・ビートル』をチューニング！死者と生者、ゼロにて交わりしとき、永劫の檻より魔の竜は放たれる！シンクロ召喚！これが死神の真の恐怖！いでよ、『インフェルニティ・デス・ドラゴン』！！！『インフェルニティ・デス・ドラゴン』の効果発動！手札が０枚の時、相手フィールドのモンスター１体を破壊し、その攻撃力の半分のダメージを与える！破壊するのは当然、ヘブンズ・ストリングス！インフェルニティ・デス・ブレス！！」
魔竜が放つ煉獄の火炎弾が不気味な人形を焼き尽くす。
「ちっ！」

Ⅳ:LP 7000→5500

「さぁ踊って貰うぜ。『インフェルニティ・ジェネラル』でダイレクトアタック！」
「くっ！調子に乗りやがって…！！」

Ⅳ:LP 5500→2800

「さらに『インフェルニティ・ビートル』でダイレクトアタック！！」
ビートルが突進するが





カイン

何かの金属音に阻まれた。
「ハーッハッハッ！！残念だったなあ。俺様は戦闘ダメージが発生した瞬間、罠カード『ギミック・ボックス』を発動させてもらったぜ。これで戦闘ダメージを無効にし、その受ける筈だったダメージの数値分の攻撃力を持つモンスターとして『ギミック・ボックス』を特殊召喚する！」
「ふっ…そうこなくちゃな…。俺のターンはこれでターンエンド」
「俺様のターン、ドロー！！さぁ受けて貰うぜ、俺様の極上のファンサービスをなぁ！まずは『ギミック・パペット-シザー・アーム』を召喚し、デッキから『ギミック・パペット-ネクロ・ドール』を墓地に送る。さらに墓地のギア・チェンジャーを除外することでネクロ・ドールを復活！さらに魔法カード『レベルクロス』を発動！手札を１枚捨て、シザー・アームのレベルを倍の８にする。そしてレベル８になったシザー・アームとネクロ・ドールでオーバーレイ！２体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築！エクシーズ召喚！！現れろ、Ｎｏ.１５！運命の糸を操る地獄からの使者、漆黒の闇の中より舞台の幕を開けろ！ギミック・パペット−ジャイアントキラー！」
現れた巨大な心臓が変形していき黒い傀儡人形となる。
「さぁ、ファンサービス第１弾！ジャイアントキラーのオーバーレイユニットを２つ使い、効果発動！相手フィールドの特殊召喚されたモンスターを選び、それを破壊する！対象は『インフェルニティ・ビートル』と『インフェルニティ・ジェネラル』だ！」
ジャイアントキラーの指先から糸が伸び、２体を捕獲して胸部に展開されたローラーへと引き摺りこんでいく。




ギュリュリュリュリュ！

火花と共にモンスターが砕かれていく。

「きゃああっ！」
「なんと…惨い…」
「うぇ…」

「だが安心しな。エクシーズモンスターではないためダメージは発生しねぇよ。だがしかし！これからがファンサービス第２弾だ！！魔法カード『ＲＵＭ-アージェント・カオス・フォース』を発動！これでジャイアントキラーをランクアップさせるぜ！俺様はジャイアントキラーでオーバーレイネットワークを再構築！ランクアップエクシーズチェンジ！！現れろ、ＣＮｏ.１５！人類の英知の結晶が、運命の糸を断ち切る使者を呼ぶ！ギミック・パペット−シリアルキラー！」
黒い傀儡人形は新たなるランクアップを果たし、黄金の人形へと姿を変えた。
「ランク５以上のエクシーズモンスターが特殊召喚されたことでアージェント・カオス・フォースを手札に戻し、シリアルキラーのオーバーレイユニットを使い、効果発動！『インフェルニティ・デス・ドラゴン』を破壊し！！その攻撃力分のダメージを与える！！エクスターミネーション・スラッシャァァァッ！！！」

シリアルキラーの糸が魔竜を捕らえると先の２体と同じようにローラーへと引き摺りこまれていく。
「喰らえ！俺様の！！ファンサービス！！！」
シリアルキラーからキャノン砲が伸び、閃光が発射される。
「ぐぁぁぁ！！」

鬼柳:LP 8000→5000

「おっと。まだ倒れてもらっちゃあ困るぜぇ？まだ俺様のファンサービスは続くんだからなぁ。俺様とお前とのＬＰ差が２０００以上ある事で魔法カード『傀儡儀式-パペット・リチューアル』を発動！墓地からレベル８のネクロ・ドールとマグネ・ドールを特殊召喚！そして復活させた２体とレベル８の『ギミック・ボックス』でオーバーレイ！３体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚！現れろＮｏ.８８！ギミック・パペット-デステニー・レオ！」
天空より玉座に腰掛ける巨大な獅子の人形が降り立つ。
「そして先程手札に加えた『ＲＵＭ-アージェント・カオス・フォース』を再び発動！デステニー・レオをランクアップさせる！」

「連続のランクアップ！？」
「Ⅳ兄様、さすがです！」
「やるな…Ⅳ」

「現れろＣＮｏ.８８。地獄より響く咆哮を轟かせる獅子、今こそ起動し勝利をもたらせ！ランクアップエクシーズチェンジ！ギミック・パペット-ディザスター・レオ！！」
獅子の王の人形はランクアップにより、黄金の獅子の像へと変わった。
「ディザスター・レオはオーバーレイユニットを１つ使う事で相手に１０００ダメージを与えるぜ！喰らいやがれ、このターンでのファイナル・ファンサービス！！マキシマム・カラミティィィッ！！！」
ディザスター・レオの口から巨大な火球が吐き出され、鬼柳に直撃する。

鬼柳:LP 5000→4000

「さぁて。これで満足かな？」
「…フッフッフッ…。ハッハッハッハッ！笑えるぜ。こんなデュエル、なかなかねぇ！もっと満足させてみろよ！」
「何ぃ！？ちっ…。俺様はこれでターンエンド」
「俺のターン、ドロー！…カードをセットし、墓地の『インフェルニティ・ジェネラル』を除外して効果発動！墓地から『インフェルニティ・ネクロマンサー』と『インフェルニティ・クイーン』を効果を無効にして特殊召喚する。これでターンエンド」
「壁を作っただけかよ。俺様のターン！まずはディザスター・レオの効果を喰らって貰うぜ！マキシマム・カラミティー！！」

鬼柳:LP 4000→3000

「そして雑魚を蹴散らしてやるぜ！ジェノサイド・ガトリング・バースト！！フォービドゥン・メテオ！！」

ＣＮｏ.１５ ギミック・パペット-シリアルキラー ATK 2500 VS インフェルニティ・クイーン DEF 900

ＣＮｏ.８８ ギミック・パペット-ディザスター・レオ ATK 3500 VS インフェルニティ・ネクロマンサー DEF 2000

「これでターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー！…！俺はカードをセットし、リバース魔法カード『ＺＥＲＯ-ＭＡＸ』を発動！これで墓地より『インフェルニティ・デス・ドラゴン』を特殊召喚し、デス・ドラゴンの攻撃力以下のモンスターを全て破壊する！」
バチバチと弾くエネルギーの球が破裂し、その余波でシリアルキラーは崩れてしまった。
「ちっ！だがシリアルキラーがやられた程度じゃあ程遠いんだよなぁ？ディザスター・レオは効果の対象にならねぇから『インフェルニティ・デス・ドラゴン』の効果も効かねぇぜ」
「フッフッ…。俺はこれでターンエンド」
「なっ！テメェ何を余裕こいてやがるんだよ！？俺様のターン、ドロー！ディザスター・レオのオーバーレイユニットを１つ使い、お前に１０００ダメージを与えるぜ！マキシマム・カラミティー！！」
ディザスター・レオの口から再び巨大な火球が放たれる。







「この瞬間、カウンター罠『インフェルニティ・バリア』を発動！！」
魔竜の前に青白い結界が張られ、その結界がディザスター・レオの放った火球を跳ね返した。
「俺の手札が０枚でインフェルニティモンスターが攻撃表示で存在する場合、相手のあらゆる効果を無効にして破壊する！」
その跳ね返された火球は放ったディザスター・レオに直撃し、爆炎と共に沈んでいった。
「くそっ！よくも俺様のファンサービスをぶち壊しやがって！俺様はモンスターを裏守備でセットし、ターンエンド」
「俺のターン、ドロー。…俺はモンスターをセットし、墓地の『インフェルニティ・クイーン』の効果発動！『インフェルニティ・デス・ドラゴン』を選択し、ダイレクトアタックを可能にする！！」
「なんだと！？」
「お前とのデュエル、満足だったぜ！！『インフェルニティ・デス・ドラゴン』でダイレクトアタック！！」
「ぐああぁぁっ！」


Ⅳ:LP 2800→0


デュエルは決した。
「くっ！負けちまったか…」
Ⅳは悔しそうに片膝を着く。
「Ⅳ兄様。立って下さい」
そんなⅣに声を掛けたのは弟のⅢだった。Ⅲは優しい笑顔を浮かべて手を差し伸べる。
「みっともねぇよな。兄貴が負けるなんてよ」
「いいえ。僕は誇らしいと思いますよ。だってほら」
「？」
Ⅳは立ち上がるとハッと気付いた。周りからは拍手が起きていたのだ。
「なかなか良いデュエルでしたわ」
「俺もあんなエンタメデュエルしないとな」
「ああ。満足なファンサービスだったな」
拍手と賛辞はしばらく止まなかった。
「遊馬が言ってました。デュエルをすればみんな友達だって。分かり合えるって」
「分かり合える…」
「Ⅳ」
呼び掛けたのは勝者である鬼柳だった。
「久々に熱くなったデュエルだった。こんな機会はもうねぇかもしれねぇが…またお前のファンサービスで満足させてくれよ？」
「…ふざけんなよ。次会った時にファンサービスを決めて満足するのは俺様だ」
「ああ。楽しみしているぜ」
「…フッ」
Ⅳと鬼柳は握手ではなく、ゲンコツとゲンコツをコツンとぶつけた。