10 アンチインセクトデッキの脅威！　作：ギガプラント

（楠家）


夏武斗「仁……」


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夏武斗「く、くそ……。」


仁「……こんなものか。」


仁「今のお前からはあの時のような気迫が感じられない。」


夏武斗「えっ…？」


仁「…立ち去れ。敗者と話すことはない。」


夏武斗「ま、待っ…！」

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爺ちゃん「…夏武斗？」


夏武斗「んあ！？なんだ爺ちゃん？」


爺ちゃん「なんだじゃねえよ。さっきから難しい顔して考え込みやがって…お前らしくもねぇ。」


夏武斗「お、俺そんなに考え込んでたか…？」


爺ちゃん「ああ。もう不気味な程にな。魂でも落としてきたのかと思ったぜ。」


夏武斗「そっか……。」


爺ちゃん「なんでぇ夏武斗…えらく淡泊じゃねえか。こっちまで調子狂っちまうぜ…ったく。」



夏武斗「…なぁ爺ちゃん。」


爺ちゃん「んん？」



夏武斗「苦しんでるっていうか…無理してる奴がいて、けどそいつに話を聞こうとしたら突っぱねられて…。」


夏武斗「もしかしたら余計なことしちまってんのかもしんねえけど…それでもやっぱり、気になって…。」


夏武斗「そんな時って…どうするべきなのかな？何がしてやれんだろう？」



爺ちゃん「………」


夏武斗「………」


爺ちゃん「…ま、どうしてほしいかなんてのは本人にしかわかんねえんだ。それが分かんねえ以上、何をしてやったって相手からしちゃ有難迷惑な話なのかもな。」


夏武斗「………」


爺ちゃん「相手の為になんかしてやるってのは想像以上に難しいもんさ。例えどんなに誠意を持ったってな、その誠意すら不快に感じることもある。」


爺ちゃん「本当の意味で相手を理解するなんざはっきりいって無理だ。たとえ他人の心が読めたって、完璧な理解なんてできるはずもねぇ。」


夏武斗「……そう、だよな。」


爺ちゃん「…アイツのためだコイツの為だ、なんざ烏滸（おこ）がましいこと考えたって仕方ねえ。んなことよりてめぇがどうしたいのかの方がよっぽど大事なんじゃねえか？」


夏武斗「俺が……？」


爺ちゃん「正義の味方ぶってヘラヘラしてるより、馬鹿正直に自分を突き通すくらいの方が俺は好きだな。」


夏武斗「自分を…か。」











夏武斗「サンキュー爺ちゃん。俺、頑張ってみるよ！」



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（上波モノレール・センター最寄駅前）





夏武斗（今日、もう一度仁に挑みに行く。）


夏武斗（そして…今度は）


夏武斗「ん？」

dPhoneの着信音


夏武斗「誰だ………ん？天姉か。」





天音「夏武斗君ですか？」


夏武斗「あぁ、おはよう天姉！…どうかしたのか？俺まだ駅降りたばっかだぜ？」


天音「おはようございます。実はですね…」







夏武斗「なんだって？襲撃事件！？」


天音「はい。最近多くなってきているらしくて…実は前に夏武斗君とデュエルした人、覚えてますか？例のカード屋さんを教えてくれた方です。」


夏武斗「ああ、覚えてっけど…」


天音「…あの人も昨晩襲われたそうなんです。なんでもいきなりデュエルを申し込まれて、負けたら一方的にレアカードを奪われたって…。」


夏武斗「！！」


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夏武斗「そうだ！さっきのシンクロモンスター。なんかすっげえ光ってて格好良いな！」


青年「トリシューラのことか？へへ…こいつはつい昨日手に入れた物よ。何年か前に出たシークレットレアの限定品なんだぜ！」

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夏武斗「あの時の…！」


天音「そして…その襲撃者っていうのが何かおかしいらしくて。」


夏武斗「おかしい…？」



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青年「あんなの卑怯だ！稲妻の剣にダイアモンド・ダストだって！？俺のデッキが苦手とするカードの詰め合わせじゃないか！！！」

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夏武斗「…対策が万全？」


天音「…万全、というより万全過ぎるらしいんです。まるで自分を倒すためだけに作られたデッキだったと…。」






？「みぃつけた！」





夏武斗「な、なんだ！？」


天音「とにかく夏武斗君も気をつけ……夏武斗君？」


？「おいそこのガキ…俺様とデュエルしてもらうぜ！ぶひゃひゃ！」


夏武斗「デュエル…？一体なんで…っていうかおまえ何モンだ！！」


？「俺様は雇われデュエリストの瓶田 大作（かめただいさく）！ちょいと訳あっておまえを倒しに来たのよ！」


夏武斗「雇われだって…！？」


瓶田「ああ！いやしかし、てめえみたいなガキを潰すだけでいいんだから良い仕事だぜ！」


夏武斗「なっ！」


天音「夏武斗君！？一体何が…夏武斗君！？」


瓶田「昨日の氷野郎も弱かったなぁ…いや俺様が強すぎるだけかｗぶひゃひゃ！！」


夏武斗「なっ！？…おまえが！！」


瓶田「さぁ…お前に恨みはねえが…」


瓶田「頂戴するぜ！！お前の持つレアカード、『ヴィクトリー・ビートル』をな！！」


夏武斗「何っ！？」


夏武斗（こいつ…何故俺のカードを…！）


夏武斗「ごめん天姉！また後で！！」


天音「ええっ！ちょ…待っ………」

通話を切る。


夏武斗「なんだかよくわかんねえけど…カードの強奪なんて許さねえ！」


瓶田「へへ…！」


夏武斗「行くぜ！！」






dPhoneモードチェンジ！Ｄパッドモード！



ターゲットロックＯＫ！



ビジョンリンクＯＫ！



ファーストディールＯＫ！



デュエル！！





夏武斗「先攻は俺だ！」


夏武斗「俺は『クロスソード・ハンター』を召喚！！」星４・ＡＴＫ１８００


夏武斗「俺はこれでターンエンドだ！」


瓶田「俺様のターン！ドローだ！！」


瓶田「あ～あ…嫌だねえ虫ってのは、俺様ホント大っ嫌いなんだよ…。」


夏武斗「……？」


瓶田「へっ！俺様は永続魔法『対虫燻煙（アンチインセクト・スモーク）』を発動！」

円柱状の箱より煙が漏れ出している。


瓶田「対虫燻煙の効果により、フィールド上の昆虫族モンスターの攻撃力は自分ターンのみ５００ポイントダウンする！」

燻煙に当たり苦しみだすクロスソード・ハンター。


夏武斗「ああっ！？虫の嫌いな煙があああ！」ＡＴＫ１８００→１３００


瓶田「へへん…そして俺様は『食虫マンドラゴラ』を召喚！」星４・ＡＴＫ１４００

不気味な大顎を持つ植物モンスター。


夏武斗「食虫！？」


瓶田「ああそうさこいつは見ての通りの食虫植物…。」


瓶田「食虫マンドラゴラが昆虫族モンスターと戦闘を行う場合、ダメージステップの間の攻撃力は１０００ポイントアップするぜ！」


瓶田「このままバトルだあ！！食虫マンドラゴラでクロスソード・ハンターを攻撃！」


瓶田「そしてダメージステップ時！食虫マンドラゴラの攻撃力は１０００ポイントアップする！」ＡＴＫ１４００→２４００


瓶田「喰らい尽くせ！！」

多数の蔓に動きを封じられ捕食されるクロスソード・ハンター。


夏武斗「うわっ！」ＬＰ４０００→２９００


瓶田「俺様はこれでターンエンド！！」


瓶田「へへ、運が悪かったなぁ…俺様大の虫嫌いだからついつい昆虫対策しちゃうのよ…ぶひゃひゃ！！」



夏武斗（間違いない！こいつがさっき言ってた襲撃犯だ！）


夏武斗（昆虫対策のカード…！偶然なんかじゃない、こいつは俺のデッキを知っていた。）


夏武斗（けど一体なんで…。）


夏武斗「あぁもうわかんねえ！俺のターンだ！ドロー！」


夏武斗（くそっ！１０００ポイントアップされるって事は…昆虫族だと２４００を超える攻撃力じゃないとあのモンスターの倒せない…！）



夏武斗「…俺はモンスターを裏側守備表示でセット。」


夏武斗「これで…ターンエンドだ。」


夏武斗（今はこうして防ぐしか…。）



瓶田「ぶひゃひゃ！そうだよなぁ？守りに徹するしか無ぇよなぁ！！？」


瓶田「せいぜい這いずり回ってな虫けら！！俺様のターン！ドロー！」


瓶田「俺様は２体目の『食虫マンドラゴラ』を召喚！」星４・ＡＴＫ１４００


瓶田「バトル！食虫マンドラゴラで、セットモンスターを攻撃ぃ！！」

リバースにより姿を現すゴキブリモンスター。丸呑みにされてしまう。


夏武斗「くっ、この瞬間『ゴキポン』のモンスター効果発動！」


夏武斗「このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、デッキから攻撃力１５００以下の昆虫族モンスター１体を手札に加える事ができる！」


夏武斗「俺はデッキから…チューナーモンスター『クレストウィング・フェアリー』を手札に加えるぜ！」


瓶田「悪あがきはよしなぁ！２体目の食虫マンドラゴラでダイレクトアタック！」


夏武斗「ぐあああぁぁ！！」ＬＰ２９００→１５００


瓶田「…このままエンド、と言いたいところだが」


瓶田「今モンスター効果で手札に加えたのはチューナーモンスター…シンクロ召喚する気だなてめぇ？」


夏武斗「………」


瓶田「ふん！永続魔法発動！『虫除けバリアー』！」


瓶田「これでお前の虫けらは攻撃できない！！」


夏武斗「今度はバリアー！？攻撃を封じるだって！？」


瓶田「ターンエンドだ！！ぶひゃひゃ！」




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（Ｍ.Ｃ.Ｃデュエルセンター）


天音「夏武斗君！夏武斗君！！」


天音「あれ？通じない…！？」


天音「そんな…夏武斗君。」



天音（さっき駅を降りたばかりって…。ならきっとまだ！）

駆けだす天音。


天音「伊世さん！ちょっと出てきます！」


伊世「えっ？ちょ、どうし……天音ぇ！？」



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夏武斗「俺のターン！！ドロー！」


夏武斗（シンクロを呼び出しても攻撃ができない…まずはあの煙とバリアをなんとかしねえと！！）


夏武斗（それまでは耐えるしかない！）


夏武斗「自分フィールドにモンスターが存在しない場合、手札から『プリミティブ・バタフライ』を特殊召喚できる！」星５・ＤＥＦ９００


瓶田「何かと思ったら今度はちょーちょかい…。」


夏武斗「プリミティブ・バタフライの効果発動！１ターンに１度、自分フィールドの昆虫族モンスター全てのレベルを１つずつ上げる事ができる！」星５→６


夏武斗「そして俺は、クレストウィング・フェアリーを召喚！」星１・ＡＴＫ５００

紋付きの羽を持つ妖精。


夏武斗「俺はレベル６となったプリミティブ・バタフライに、レベル１のクレストウィング・フェアリーをチューニング！」





燃え上がる命の焔よ！鮮麗なる羽音響かせ、深き夜天を照らしだせ！



シンクロ召喚！



羽ばたけ！『煌翅蝶（こうしちょう）－フェニックス・バタフライ』星７・ＤＥＦ１２００




瓶田「だがお前のモンスターは攻撃ができない！！……と思ったら守備表示か腰抜けめ！！ぶひゃひゃ！」


夏武斗「うるせえ！！一々茶々入れてくんな！！」


夏武斗「俺はカードを２枚セット！！」


夏武斗「これでターンエンドだ！」



瓶田「俺様のターン！ドロー！！」


瓶田「ぶひゃひゃ！来たぜ！俺様の最強アンチインセクトモンスター！！」


夏武斗「何だって…！？」


瓶田「俺様は２体の食虫マンドラゴラをリリース！」


瓶田「アドバンス召喚！！来い！『トゲトゲ大神官』！」星８・ＡＴＫ２５００

トゲトゲ付きの服や装飾品に身を包んだ神官。武器はモーニングスター（棘付き棍棒）。


瓶田「トゲトゲ大神官は昆虫族モンスターとの戦闘では破壊されず、昆虫族モンスターの効果を一切受け付けない！」


瓶田「お前がどんなモンスターを出そうと、絶対にこのモンスターを倒すことはできないのさ！！」


夏武斗「くっ…まさに対昆虫族モンスターてことか…。」


瓶田「そして更に！トゲトゲ大神官のモンスター効果発動だ！」


瓶田「１ターンに１度、手札１枚を墓地へ送る事で、デッキ・墓地から『トゲトゲ神の殺虫剤』１枚を手札に加える！」


夏武斗「今度は殺虫剤だって！！？」


瓶田「いくぞぉ！魔法カード発動！『トゲトゲ神の殺虫剤』！」


瓶田「フィールド上の昆虫族モンスターを全て破壊するぅ！！ぶひゃひゃひゃひゃ！！！」


夏武斗「全て破壊！？」


瓶田「さぁウザったい虫けらを葬り去ってくれる素敵な女神様のご登場だぜぇえええ？？？」


瓶田「降臨しろ！！トゲトゲ神よ！！」

天より女性の物と思われる手が伸びてくる。その手には殺虫剤が握られている。


瓶田「くたばりなぁ！」

容赦なくフィールド全域に発射される殺虫剤。




夏武斗「！！！」






終












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次回予告

夏武斗「っだあああ！！攻撃も駄目！効果も駄目！あのトゲトゲどうすりゃいいんだよ～！！」


夏武斗「相手は完全に俺の昆虫モンスターの対策をしてるし…しかも毎ターン昆虫族を全破壊だって！？」


夏武斗「いつまでも守ってる訳にはいかねえし……この状況をなんとかしねえと、俺に勝ち目はない…！」


夏武斗「次回！『トゲトゲの猛攻！１ターンの隙をつけ』」



天音「夏武斗君！夏武斗君！！早く出て下さいよ～！」

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・「トゲトゲ大神官」…もっと他に名前なかったのかと自分でも少しだけ思ってますｗ
・「ヴィクトリー・リワード」のオリカを（ちょっと頑張ったイラスト付きで）投稿させて頂きました。宜しければご覧くださいませ。