第82話　導かれた筋書き　作：ター坊

「遊戯！！」
「遊矢！」
デュエルに敗北した遊戯と遊矢に駆け寄ろうと、城之内･柚子が動いたときだった。
「きゃ！」
「くそ！なんだ！」
目が開けられない程の閃光が走り、その場にいる全員が直視できない。
「……あれ？」
閃光が収束し、目を開けると遊戯と遊矢の姿は何処にもなかった。
「チクショウ！遊戯！！」
城之内は壁を殴り、声を震わせる。自分が最も信頼する人間が敵になったことの嘆きか、それともけじめを付けると言ったのに果たせなかった己の不甲斐なさを嘆いているのか。柚子と権現坂も目に見えて落ち込んでいる。しばらくはそっとしておこう。
「助かったけど、君達は？」
「申し遅れました。僕はⅢと申します」
こちらの中性っぽい少年は礼儀正しく俺にお辞儀をしながら自己紹介した。
「俺はⅣだ」
こちらの顔に大きな傷がある青年は少々粗野な印象を受ける。さっきのデュエルの掛け合いからⅢの兄のようだ。
「Ⅳ。なんでテメェらがこんな所にいるんだ？」
「へっ！それはこっちの台詞だぜ、凌牙！」
「…なぁⅢ。アイツら仲悪いのか？」
「いいえ。むしろ良い方だと思いますよ」
「あー。喧嘩するほど仲が良い」
「「ちげぇよ！」」
「おぉハモった。でも、どうして本当にここにいるんだ？」
「はい。実は僕達の世界である事件が起こっていまして」
「事件？」
「決まって巨大な雷が鳴る日、デュエリストが行方不明になるという奇妙な事件がありまして」
「雷か…。ここにいるみんなや拠点で留守番してる他の仲間もそれを経験してるぞ」
「え？出来れば詳しいお話を聞かせていただけませんか？」
俺はⅢとⅣに俺達が経験した今までのことを話した。それと同時にⅢ達の経緯も聴いた。
彼らがその行方不明事件を調べていると雷が鳴る日にとある次元の反応が強くなることに気付き、一連の事件の原因がその次元にあると睨んで調査を開始。やって来たのがこの世界だと言う。アポリアが来た理由も総合して、この世界が出来たことで他の世界に異常を及ぼしていると考えていいだろう。
「ところで、さっきから後ろで寝てるのは誰だ？」
「女の子みたいですけど…」
二人は一通り話し終え、今度はあの少女を気にし始める。先程のデュエルもかなり騒がしかったはずだが全く起きる素振りを見せない。寝てるというより薬とかを盛られて眠らされているのかもしれない。
「そう言えば…遊戯達はこの子を狙っていたな…」

何故この子を狙う必要があるのだろうか？
もし遊戯達にとってもこの子が敵ならば、取り合いなんかしなかっただろう。遊戯達の口振りからも捕縛と言うより奪還しに来た、という感じだ。つまり遊戯達とこの子は繋がりがあるということになる。
そしてお春さんの一件で会ったマスターDが所持していた人が豹変するデュエルディスクの存在も引っ掛かる。この子が襲撃して来たときも同じデュエルディスクをしていた。つまりマスターDとこの少女にも繋がりがある、と見るべきだろう。
よって遊戯達とマスターDにも繋がりがある。
……途中強引なところがある三段論法だがここから１つの筋書きが生まれる。

「この子はマスターDから離反したが、マスターDはそれを良しとせず、遊戯達に連れ戻させようとした？」
確かにこの子は戦力としては申し分ないだろう(使うデッキは反則だが)。しかしマスターDは遊戯という最強クラスのデュエリストを連れているのだ。他にもたくさん強力なデュエリストがいる可能性もある。ならばこの子はマスターDにとって戦力以上にいなくなると困る理由があるのか？
「ユイよ。この少女をどうする？」
「……連れて帰ろう。目を覚ましたら色々と聞いてみる」
「でも前みたいに暴れちゃうかも」
「それならたぶん大丈夫だと思う」
と言うのもお春さんがあのデュエルディスクを装着した場面を思い起こすと、あのデュエルディスクがなければ大丈夫だと思える。
「じゃあ帰ろうか」
「あの…」
「どうしたんだⅢ？」
「実は……この世界に来てから通信機器も転送機器も故障したようで…」
「あー。そう言うことか。お前達も最初から連れていくつもりなんだけど」
「では…お世話になります」
「よろしく頼むぜ」







俺達はDuelyに帰ってきた。
「ただいまー」
「おかえりなさいませユイ様」
「おかえり……ってユイ！その子は！」
「ユイ！どうして…」
まぁ案の定と言うべきか舞とアキを始め、あの火事に直面した全員からこの少女を連れ込んだことに驚かれた。俺はみんなに、この子を尋問すれば何か分かるかも知れないと説得した。
「む？」
「アポリア、どうした？」
「また何か落下してくるぞ」
「また！？」
「しかも計算ではここに近い場所、巨大な物体が落ちてくる！」
全員が空を眺める。すると青空に巨大な黒い点が落ちてくる。



「あれは……船？」