第75話　俺が望む明日　作：ター坊

~ところ変わってアルカディア･ムーブメント~


「デュエルで、貴様達を排除してやる」
「お春さん、どうしたのですか？」
マスターDによってデュエルディスクを装着されたお春さんの様子は明らかに普通ではなかった。眼は光を失って虚ろだが言動は狂気すら感じる。それに戦国時代から来たはずなのにデュエルとか言っている。
「あのデュエルディスクがお春さんを変えたって言うの！？」
「つまり、呪われた決闘籠手なのか！？お春殿！正気に戻られよ！」
「ウワァァ！」
「ダメなのか…。力づくで止めるしかない！」
俺はデュエルディスクを構えた。
「デュエル！」



先攻:ユイ

「俺のターン。俺は『金管の救世者 シエラ』を召喚。コイントス判定」

ﾁﾘｰﾝ…裏！

「これにより2枚ドローし、『慈愛の救世者 ココロナ』を墓地に送る。ココロナの効果発動！」

ﾁﾘｰﾝ…表！

「これでココロナを特殊召喚！俺はレベル4のココロナにレベル4のシエラをチューニング！シンクロ召喚！レベル8！『天舞の救世者 アメウズメ』！手札の『勇気の救世者 シグナム』と『白薔薇の救世者 ピュアリー』を見せてアメウズメの効果発動。ダイスロール」

ｺﾛｺﾛｺﾛ…4！

「これでLPを500回復して2枚ドロー。装備魔法『救世の十字架(アミュレット)』を装備し、カードを1枚伏せてターンエンド」

ユイ:LP 8500
お春:LP 8000

俺の第一ターン、かなり飛ばしたが、理由がある。お春さんが身に付けているデュエルディスクは以前禁止カードを満載した少女と同じものだ。ならば今回もかなり無茶苦茶な勝負が予想される、と考えたからだ。
「私のターン、ドロー！」

「お春さん…。お願い、戻って…」
「ユイ殿…」

「私はスケール0の『黒竜の像』とスケール13『白龍の像』でペンデュラムスケールをセッティング」
見たこともないモンスターだ…。しかし、『真紅眼の黒竜』と『青眼の白龍』に何となく意匠が似ている。
「これでレベル1~12のモンスターが同時に召喚可能！ペンデュラム召喚！」
放たれた光から現れたのは再び見たことのないモンスター達だった。
「『神炎皇の像』･『降雷皇の像』･『幻魔皇の像』を特殊召喚！私はこの3体でオーバーレイ！3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築！全てを蹂躙する破壊の龍王よ。今こそ我に征服する力をもたらせ！エクシーズ召喚！現れろ、ランク10！『邪龍王-アンニティオン』！」
エクシーズ召喚による光の渦から現れたのは巨大な龍だった。濃い紫の鱗、赤い眼光、ソリッドビジョンのはずなのに、そこにいるような恐怖を肌に感じている。
「アンニティオンの効果発動。オーバーレイユニットを１つ使うことで手札･墓地･デッキ･エクストラデッキから可能な限りモンスターを特殊召喚する」

「な、何ですって！？」
「インチキ効果だぜ！」
「どんなモンスターが…」

「これにより私はエクストラデッキから『青眼の究極竜』『サイバー･エンド･ドラゴン』『スカーレッド･ノヴァ･ドラゴン』『超銀河眼の光子龍 』を特殊召喚！」
アンニティオンが空に向かって身震いするようなおぞましい雄叫びを響かせるとグッパと空間が裂け、そこから大型モンスター達が我先にとフィールド上に舞い降りる。

「海馬の最終兵器とも言えるモンスター…。攻撃力ならば神すら上回るわ…」
「亮の奥義か…。厳しいね」
「ジャックのバーニング･ソウルが…。クッソー！」
「あれらも量産されたカードだと言うの……?」
「カイトのエクシーズモンスターまで…。ユイに勝ち目あんのかよ！」
「……」
「ユイ様…」
「うぬぅぅ！」

「バトル。『サイバー･エンド･ドラゴン』は貫通効果を持っている」

サイバー･エンド･ドラゴン ATK 4000 VS 天舞の救世者 アメウズメ DEF 2300

「くっ！だが『救世の十字架』を装備したモンスターのバトルで発生する戦闘ダメージは0になる」
「まだ残っている。一斉攻撃」

邪龍王-アンニティオン ATK 5000 + 青眼の究極竜 ATK 4500 + スカーレッド･ノヴァ･ドラゴン ATK 3500 + 超銀河眼の光子龍 ATK 4500　直接攻撃

「ユイ様ぁぁ！」
「さぁ次は…何？デュエルが終了していない？」
「まだ俺は…負ける運命ではないみたいだな…」
「何！？ノーダメージ！？」
「俺は攻撃宣言時、手札から『護法の救世者 ゴールド･ゴーレム』を捨てて全てのダメージを0にしたんだ」(昨日のデッキ調整で抜かなくて良かったぁ！)
「っ！だがこの最強の布陣、崩せるはずがない。アンニティオンはオーバーレイユニットが存在する限り無敵の耐性、戦闘破壊もモンスターをリリースすることで回避できる。私に負ける要素がない！このままターン終了」
「俺のターン、ドロー！これが俺が描きたい未来だ！罠発動！『俺が望む明日(ビリーブ･フューチャー)』！これは俺のフィールド上にモンスターが存在せず、相手フィールド上にエクストラデッキから特殊召喚したモンスターが2体以上いる場合、その内の2体を選択し、LPを半分払って発動する！これで究極竜と光子龍を選択し、同じ種類の『救世者』モンスターを特殊召喚する！俺は融合モンスター『叡智の救世者 ユグドラン』とエクシーズモンスターの『輪廻の救世者 メビウス･ライフ･フェニックス』を特殊召喚！メビウス･ライフ･フェニックスにはXカウンターが2つ乗る。Xカウンターはオーバーレイユニットとして使用できる。これによりメビウス･ライフ･フェニックスの効果発動。オーバーレイユニットを全て消費してコイントスを3回行う」

ﾁﾘｰﾝ…裏！表！表！

「これで『スカーレッド･ノヴァ･ドラゴン』と『青眼の究極竜』を選択してレベルの合計×200攻撃力がアップする」
「攻撃力7300…！」
「さらに魔法カード『死者蘇生』でアメウズメを復活！手札のシグナムとピュアリーを見せてアメウズメの効果発動」

ｺﾛｺﾛｺﾛ…3！

「これでLPが500回復し、『スカーレッド･ノヴァ･ドラゴン』をエクストラデッキに戻す」
「だけど、他のモンスターは…」
「俺はココロナの効果発動。コイントス」

ﾁﾘｰﾝ…表！

「これでココロナをエクストラデッキから特殊召喚。スケール9『赤薔薇の救世者 ラブリ』とスケール3『白薔薇の救世者 ピュアリー』でペンデュラムスケールをセッティング。『勇気の救世者 シグナム』を召喚し、コイントス判定をラブリの効果で表にする。これで『青眼の究極竜』を破壊」

「これであとはサイバー･エンドと光子龍だけね」
「今更だけど、彼すごいよね」
「……ふん」

「さらにシグナムとココロナでオーバーレイ！エクシーズ召喚！『闘魂の救世者 ダイブレード』！ダイブレードの効果でオーバーレイユニットを１つ使うことでデッキから『救世の賛美歌』を手札に。止めだ。ペンデュラム召喚！『未来の救世者 スキュルート』！スキュルートの効果！墓地のシグナムを除外し、コイントスを3回行う」

ﾁﾘｰﾝ…裏！裏！表！

「これで『超銀河眼の光子龍』をデッキに戻す」
「けどまだ、サイバー･エンドが…」
「墓地の『救世の十字架』の効果発動。これで『サイバー･エンド･ドラゴン』の効果を無効にして、攻撃力･守備力を1000ダウンさせる」
「な！」
「行くぞ！まずはダイブレードで弱体化したサイバーエンドに攻撃。ダメージ計算時、ダイブレードのコイントス判定」

ﾁﾘｰﾝ…表！裏！

「これでダイブレードの攻撃力は800アップ！」

闘魂の救世者 ダイブレード ATK 3400 VS サイバー･エンド･ドラゴン ATK 3000 (戦闘ダメージは半分)

「これでアンニティオン以外のモンスターを全て倒せたわ」
「いっけぇぇ！ユイ！」

「メビウス･ライフ･フェニックスで攻撃！」

輪廻の救世者 メビウス･ライフ･フェニックス ATK 7300 VS 邪龍王-アンニティオン ATK 5000

不死鳥の紅蓮の風刃による一撃が邪龍王の首を切り落とす。
「うぅっ！だが、邪龍王がフィールドを離れる場合、全てのモンスターを破壊する！」
邪龍王の首から流れ出る血が噴水のように吹き上がり、幾万もの矢となって降り注ぐ。
「やっぱりそんな効果を持っていたか」
「何？」
「ただでやられるモンスターとは思っていなかったからな」
「まさか、効果を読んで…！」
「そう。ユグドランの効果で俺のフィールド上の救世者は全て無事だ」
ユグドランの加護により血の矢の雨は弾き返されていく。
「さらにアメウズメとスキュルートでダイレクトアタック！」

天舞の救世者 アメウズメ ATK 2300 + 未来の救世者 スキュルート ATK 2500　直接攻撃

「ぐああぁぁ！」
「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」

ユイ:LP 3950
お春:LP 700

「私の……ターン…ドロー」ｾﾞｪｾﾞｪ
お春さんは肩で息してるくらい疲労困憊といった感じだ。

「お春さん！大丈夫ですか？」
「姫！今はユイ殿の御武運を祈りましょうぞ。きっとお春殿を呪いから解放してくださる」

「私はPゾーンの2体の像の効果を発動する。それぞれを破壊して、デッキから『青眼の白龍』と『真紅眼の黒竜』を特殊召喚する！」
像が割れると中からドラゴンが現れる。
「魔法カード『未来融合-フューチャー･フュージョン』！」
「カウンター罠『救世の賛美歌』を発動！800支払って未来融合を無効にして除外。さらに魔法カードをターン終了時まで発動できなくする」
「……ターン終了…」

ユイ:LP 3150
お春:LP 700

「俺のターン、ドロー。墓地のシエラを除外してスキュルートの効果発動。コイントス判定」

ﾁﾘｰﾝ…表！表！裏！

「これで2体のドラゴンをデッキへ戻し、スキュルートでダイレクトアタック！」

未来の救世者 スキュルート ATK 2500

「きゃああぁぁ！」ｶｯｼｬﾝ






デュエルに勝利した途端、お春さんのデュエルディスクは弾け飛び、真っ二つに割れて壊れた。お春さん自身はその場に倒れこんでしまう。
「お春さん！！」
遊月さんは慌ててお春さんに駆け寄り、起こそうとする。
「お春さん、しっかりして下さい！お春さん！！」
「……ん…」
「お春さん！」
「姫様！？」
お春さんが意識を取り戻すと遊月さんは嬉しさのあまり、ぎゅっとお春さんを抱き締めた。
「姫様、私はとんでもないことを…」
「いいえ。良いのです。お春さんが戻ってきてくれて…。本当に良かった…」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ
遊月さんは感極まって瞳を濡らした。
ずっとお春さんに会いたいと言っていた遊月さんの望んだ明日が今日訪れて良かった。勝利なんかよりもずっと喜ばしいと思う。こういう光景こそ、俺が望んだ明日(みらい)でもあるのだから。本当に良かったな…遊月さん。



~マスターDサイド~


「メビウス･ライフ･フェニックスで攻撃！」

その後、映像に映ったのは無惨に敗北した私が作ったカードだった。
「シンクロはすぐ完成できるが、エクシーズは難しいものだな」
邪龍王は失敗作だったか。負けてしまうようでは神ではない。
「まぁデュエルディスクの性能が満足できるものと確認できただけでも良しとするか」