第31話　Heterodox Girl　作：ター坊

-夜-

全員の食事が済み、明日の話をしていた。万丈目とゴーシュの怪我もすっかり良くなり、動ける目処が立ったからだ。ここを離れてからの行き先の候補もいくつかあったが、その一方で物資の豊富さから手放すのは惜しい、ここを拠点として活動すべきだという意見もあり、話し合いはまとまらないでいた。
「もー。ケンカしないでよー！…ん？あの女の子だれだろ？」
話し合いの途中、アユが何かの存在に気付く。一体なんだろうと俺を含む全員がアユと同じ方向を見る。そこには一人の少女が立っていた。身長は低く、髪は腰の辺りまで伸び、黒いワンピースを着ており、その折れそうなほどか細い腕には…
「デュエルディスク？」
何だろうか、この少女は？よくよく見ると頬は痩せ、目は虚ろ、髪も手入れされておらず傷んでおり、服も汚れやほつれが目立ち、肩の辺りにはいくつもの注射の跡ようなものが見受けられた。俺達と同じようにこの世界にやって来てしまったのか？それとも羽蛾や素良のような新手の敵なのか？
「君、大丈夫か？」
俺がそう言って近付くと
「…いた」
彼女はそうぽつり呟くとデュエルディスクを展開する。
「問答無用というわけか！」
どうやら後者だったようだ。


先攻:ユイ

「俺のターン！俺は『ゴブリンドバーグ』を召喚！効果で…」
「させない。手札から『エフェクト･ヴェーラー』を墓地に送り、効果を無効…」
「くっ！」
シャドー･ミストの効果を使いダーク･ロウまで繋げようと思ったが潰されたか。
「…カードを2枚伏せてターンエンド」
俺が伏せたのは『奈落の落とし穴』と『強制脱出装置』。これである程度凌げるハズだ。
「…。ドロー。速攻魔法『サイクロン』でそのセットカードを破壊」
「奈落を抜かれたか…」
「永続魔法『未来融合-フューチャーフュージョン』を発動。エクストラデッキから『F･G･D』を選択し、四征竜、ブラスター･タイダル･テンペスト･レドックスと『エクリプス･ワイバーン』を墓地に送る」
「なっ！」
なんだと！禁止カードのオンパレードじゃないか。敵はこんなのを送り込んできたのか！？
「『エクリプス･ワイバーン』の効果で『レッドアイズ･ダークネスメタルドラゴン』をデッキから除外。さらに『龍の鏡』を発動。墓地の5体のドラゴン族を除外し、『F･G･D』を融合召喚。除外された四征竜の効果でデッキから『八俣大蛇』･『水征竜 ストリーム』･『デブリドラゴン』･『幻木龍』を手札に加える。エクリプスの効果でレダメも回収。魔法カード『次元融合』により2000ライフを支払い四征竜を特殊召喚」
お、おぞまし過ぎる。禁止カードの関係で共演することはなかったが、なんだこの回転力は。このデュエルを見ている他のみんなも圧倒されている。
「タイダルとレドックスでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚『幻獣機-ドラゴサック』。同様にブラスターとテンペストでもドラゴサック。ドラゴサックの効果でオーバーレイユニットを１つ消費し幻獣機トークンを生成。さらにドラゴサック自身をリリースしてセットカードを破壊」
「…！『強制脱出装置』で『F･G･D』を戻す！」
「…私はトークン2体をリリースして『八俣大蛇』をアドバンス召喚。手札からストリームの効果で『幻木龍』と共に捨てデッキからタイダルを特殊召喚。タイダルを除外しレダメを特殊召喚。レダメの効果で墓地のブラスターを特殊召喚。カードを1枚伏せ、バトルフェイズ」

八俣大蛇 ATK 2600 VS ゴブリンドバーグ ATK 1400

「うわぁあぁあ！」
「『八俣大蛇』が戦闘ダメージを与えたことでデッキから4枚ドロー。だけど…さよなら」

レッドアイズ･ダークネスメタルドラゴン ATK2800 + 焔征竜 ブラスター ATK 2800 +幻獣機-ドラゴサック ATK 2600　直接攻撃


「そんな、ユイ！？」
「ユイさんが…」
「ま、負けただと…」

そのデッキは禁止カードすら搭載された、常識が通じない異端なデッキであった。勝つ方法があるのか？俺はどうすれば良かったのか？負けて吹っ飛ばされる中、俺はそう思った。