73 俺達の誇り　作：ギガプラント

（とある辺境地）



けたたましい騒音と光を発しながら道程を走り行く集団。




ライジン「まだまだああああああ！！！ぶっ飛ばしてくぞオラアアアアアアァァァ！！！」


集団「うおおおぉぉぉ！！！」


フウジン「お前等ぁ！！亞流帝滅屠天変須斗（アルティメットテンペスト）の底力見せてみろやあああぁぁぁ！！！」


集団「押おおお忍っ！！！」





辺境の道という道を暴れまわっていた暴走族集団『亞流帝滅屠天変須斗（アルティメットテンペスト）』


地元じゃ俺等を知らねえ奴は居ねえ。


走る事しか能がない俺等は、その名を世界中に知らしめてやろうと日々バイクをぶっ飛ばしていた。







前列を走っているメンバーが声を上げる。



スコール「どおおっ！？アイツらはあああ！？」


ストーム「あ、ありゃあ…ここいらを縄張りにしてるっていうチーム、『怒羅魂悪武禁愚（ドラゴンオブキング）』じゃねえか！？」


スパーク「馬鹿か！！てめえら怯んでんじゃねええ！！」


フウジン「兄貴っ！！やるんだろ！！！？」



ライジン「当たり前よ！いい加減挨拶してやんねえとな！！」



ライジン「お前等！！そこで見てなあああっ！！」






兄貴は俺達の星そのものだった。


兄貴についてきゃなんも心配いらねえ。兄貴は絶対誰にも負けねえ。


そう。兄貴の存在そのものが亞流帝滅屠天変須斗（アルティメットテンペスト）の誇りだったんだ。






リーダー「あんたらか……他人の庭を随分土足で荒らしまわってくれたようじゃのう…！」


リーダー「誰に許可取って走ってんじゃゴルァ！！！」


ライジン「はっ！そこに道がありゃそいつはもう俺等の庭さ。自分家に入るのに許可取る馬鹿が何処にいる！」


リーダー「威勢は良いようじゃな若造…！！」




リーダー「かかってこんかい！！サシで勝負じゃあああ！！！」


ライジン「話が早くて助かるぜ！！！行ぐぞオラアアアアアアァァァ！！！」



フウジン「兄貴ィィィ！！！やっちまえええ！！！」


スコール「すっげえの見せてくれ～」


ストーム「でっけえ奴頼みますぜ～」


スパーク「おめえら！目ぇ離すんじゃねえぞ！！」





ライジン「シンクロ召喚！！ぶちのめせ！！『轟放雷落王（ごうほうらいらくおう） スパーキング』！！」





集団「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉ！！！」











だからあの日、あの事を聞いた時、俺達は最高に嬉しかったんだ。





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フウジン「プロデュエリスト！！？」



ライジン「…あぁ。」


ライジン「テレビの連中がこないだの一騒動を見てたらしくてな。俺のデュエルに惚れ込んだとかなんとか言ってやがったな。」


スパーク「プロって事はテレビやなんやらで活躍するって事か！！」


スコール「す、すげっえなぁ総長。」


フウジン「兄貴っ！プロになんのか！？」


ライジン「馬鹿言え、んなことしてみろ、チームはどうなんだよ。」


ライジン「俺は亞流帝滅屠天変須斗（アルティメットテンペスト）の頭だ。一人であんな世界に首突っ込む気はねえよ。」


スコール「あ、それもそっかぁ。」


ストーム「なぁ～んか勿体無いような気も……いや俺は総長に居てほしいすけどね！はい！」


スコール「でもプロかぁ……やっぱ毎日肉食えんのかなぁ…？」


ストーム「お前いっつもそればっかだな……だからブクブク太んだよ馬鹿。」


スコール「あははは……でもオレ、肉大好きだからなぁ。」


スパーク「おらてめえら、いつまでも下らねえ話してんじゃねぇ。」


ライジン「…はは、俺にゃあチームを捨てるような真似はできねえよ。」


ストーム「あ、じゃあ……チームを抜けずにプロになるってのは…」


スパーク「できるわけねえだろ禿。」（ﾍﾟｼﾝｯ!）


ストーム「痛ってぇ…。」


フウジン「………」











フウジン「でも兄貴……兄貴はどう思ってんだ？」


ライジン「んん？」


フウジン「俺知ってるぜ。ド派手なデュエルで周りを沸かせるの…兄貴超好きじゃねえか。」


ライジン「………」


スパーク「副長…。」


フウジン「プロになりゃあ、それがいくらでもできんじゃねえか！？こんな辺境だけじゃねえ！！世界だ！世界が兄貴のデュエルで沸きあがるんだ！！」


スコール「世界…。」


ストーム「せ、世界かぁ…。」


ライジン「フウジン…お前…。」


フウジン「そのチャンスが今目の前にぶら下がってるんだろ？」


フウジン「考えてみろよ。兄貴なら絶対世界ごと震わせられる！！兄貴がそれをやるんだぜ？俺達の兄貴が！！」


スコール「俺達の…。」


ストーム「兄貴が…。」


スパーク「………そりゃ。」











３人「最っ高じゃねえかあああ！！！」









スコール「総長がホントの意味で天下を取るんだ！」


ストーム「もしかしてもしかして！その総長の下に居た俺達も有名になっちゃったり！？」


スパーク「バ～カ、んな虫のいい話があっか。」


スコール「んでもでも、テレビくらいは来るかも…。」



スパーク「総長…」



スパーク「俺達みたいなヒヨッ子がこんな事言うのはお門違いかもしれませんが。」


スパーク「俺、兄貴が世界に行くとこ見たいです！」


ストーム「ろくでなしだった俺等にとって、兄貴は何よりでっかい星なんです！」


スコール「俺達の誇りが有名になって…もっとでっかくなるとこ見てぇなぁ。」


フウジン「勿論俺もだ兄貴！」


ライジン「お前等…。」


フウジン「チームの事は俺が死ぬ気で纏める！！だから兄貴！！」


スパーク「兄貴が行きたいってちょっとでも思ってるんなら…！」








ライジン「へっ……。」








ライジン「るああああああぁぁぁぁぁぁ！！！」


ライジン「よおおおし分かったあああ！！！お前等あああ後の事は任せたぞ！！！」





ライジン「このライジンの名ァ！！！世界中に知らしめて来てやらあああ！！！」





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（ボロ屋）


古びた小さなアパートの一室。
狭い部屋には大勢の男達が集まっており、そこに設置されているこれまた古いテレビを囲むように座っている。


ストーム「おいスコール！何やってんだ早く点けろって！もう始まっちまうぞ！！」


スコール「やってるよぉ……あっれぇなんで点かねえんだぁ？」


ストーム「だぁ～もう故障かよこのポンコツめ！こういうのはなぁ…叩けば直るって相場が決まって……」


フウジン「やめろ馬鹿！プラグが抜けてるだけじゃねえか！！」


スコール「あぁ、ホントだぁ！！」


ストーム「ったくこのデブ…！」


スパーク「よし、ほら点いたぞ。静かにしろお前等。」


フウジン「兄貴は！？兄貴は出てっか！？」


スパーク「おっ！丁度選手入場みたいっすね。」



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（テレビ中継）


実況「青おおおおおおコーナアアアアアア！！！」


実況「プロデュエル界に唐突に現れ！！プロデュエル界を荒らしまわる春雷の如き男おおお！！！」


実況「ラァァァァァァイジィィィィィィン！！！！！」



「うおおおおおお！！！」
「待ってましたあああ！！！」
「今日も盛大に暴れてくれえええ！！！」



ライジン「るあああぁぁぁぁ！！！」


ライジン「てめえのライフ！！全部頂くぜえええ！！！」



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スコール「総長だ総長！！」


ストーム「今日もかっけえぜええ！！」


スパーク「やっぱすげえよ俺等の総長は！」


フウジン「兄貴いいい！！！」





フウジン「やっちまえええ！！！」









兄貴がプロとしてテレビに出るまで、大して時間はかからなかった。
ったりめえだ！俺達の総長が、俺の兄貴が負けるわけねえ！
プロ連中なんて屁でもねえさ！


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フウジン「あのギャーギャー騒いでた連中も、竜巻で吹っ飛んじまえば良かったのになああ！！」


ロバート「竜巻って……おいおいあれもお前が起こしたってのか！？」


フウジン「あぁそうさ！まぁ正確にゃあ『俺の同業者』だがな。」


ロバート「くっ…！仲間がいるって事か…。」


フウジン「仲間……？」


フウジン「はんっ！俺の仲間はチームの連中と兄貴だけだ！！それ以外の連中なんざ知ったこっちゃねえ！！」


フウジン「俺はここでお前を倒し、そして全ての人間をぶっ潰す！！」


仁「全ての人間……だと？」


ロバート「…スケールの大きな話なことで。」



ロバート「だぁ～ったく！！なんなんだよ！仲良くやろうぜぇ？」


ロバート「なんで人間消すなんて物騒な事になってんだぁ！？歪んだ独占欲かぁ！？」


フウジン「ふざけろ！！兄貴の敵（かたき）が取れれば後は知ったこっちゃねええ！！」


ロバート「敵（かたき）…！？」



フウジン「俺のターン！！」


フウジン「俺は『エクスプリンター・チーターボ』を召喚！！」星２・ＡＴＫ４００
小型のエンジンを搭載し猛スピードで駆けだすメカニカルなチーター。


ロバート「あれまぁ……手が付けらんねえってか？」


仁「気を抜くな！来るぞ！」


フウジン「俺はレベル２のチーターボにレベル３のレックレスプレスをチューニング！！」




永久の疾走終わらぬ加速！光の速さを超え、風を切れ！



シンクロ召喚！



再び突っ走れ！『エクスプリンター・瞬足神アキレウス』！ 　星５・ＡＴＫ２２００





ロバート「また出てきやがった！」


仁「それだけじゃない…！」


フウジン「瞬足神アキレウスがシンクロ召喚された事により効果発動！このカードのシンクロ素材となったチューナー以外のモンスターの数だけ、このカードにスプリントカウンターを置く！」


フウジン「乗るカウンターは１つ！そしてその数×３００ポイント攻撃力がアップする！」ＡＴＫ２２００→２５００


ロバート「ﾁｯ!またカウンターが…！」


フウジン「瞬足神アキレウスの更なる効果発動！スプリントカウンターを１つ取り除き、フィールドのカード１枚を破壊する！！」ＡＴＫ２５００→２２００


フウジン「ガトリング・スローターを破壊だ！！今度こそ消えなあああ！！ハイスピード・インパクトォ！！！」

斬撃がガトリング・スローターに直撃する。



ロバート「クッソ！速攻魔法『遠心分離』発動！」


ロバート「融合モンスターが相手によって破壊された時、そのモンスターに記されている素材モンスターを攻撃表示で墓地から特殊召喚する！」


ロバート「蘇れ！『マシンガン・ソルジャー』！『カラミティ・バルカン』！」マシンガン星４・ＡＴＫ１８００　カラミティ星５・ＡＴＫ２０００


フウジン「今更そんな壁無駄なんだよ！！バトルフェイズだ！」


フウジン「駿足神アキレウスでマシンガン・ソルジャーを攻撃！バッシュ・モーメント！！」



ロバート「こんなとこでやられるわけにゃあ行かねえんだ！！永続罠発動！『フュージョニック・ソウル』！」


ロバート「自分フィールドまたは墓地の融合モンスター１体をエクストラデッキへ戻す事で、バトルフェイズを終了する！」


ロバート「俺は『ガトリング・スローター』をエクストラデッキに戻し、バトルフェイズを終了させる！」


フウジン「クッソがああああ！！邪魔建てしやがって！！」



ロバート「おいっ！さっきの『敵』ってどういうことだ！」


フウジン「ああん！？そのまんまの意味だよ！！」


フウジン「プロになって活躍していた兄貴は嵌められた！！あの屑野郎に！！」


ロバート「…！！？」


仁「…嵌められた？」


ロバート「もしかして……ライジンが突然引退した事に関係があんのか！？」


フウジン「引退ぃぃぃ？そんな生温いもんじゃねえ！！」



フウジン「兄貴は……あれからずっと兄貴は帰って来ねえ！！帰って来ねえんだよおおおおおお！！！」


仁「………！」





ロバート「帰って……来ない？」






終










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（次回予告）


仁「鼓舞の声が木霊する。輝き続ける自分達の誇りを称えるように。」


仁「しかし彼等はそんな日々から光を奪う一つの知らせを耳にする。」


仁「人知れず動く悪意の渦中で、彼はいつもの彼だった……」


フウジン「１０年……１０年だ！！俺は１０年間ずっと待ってた！！」


仁「次回、『ライジンの選んだ道』」


フウジン「兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴いいいいいい！！！！」
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・チームメンバー３人組、名前紛らわしすぎ問題。