02 寡黙なる雇われデュエリスト　作：ギガプラント

（上波町・マンションの一室）




天音「伊世さ～ん？もうお昼ですよ～？」


伊世「ううん…あー天音（あまね）ぇ？あと５分～…。」


天音「もう…そういって起きた試しがないじゃないですか…。」


伊世「いいっしょ～？今日はキュージツなんだしさー…むにゃむにゃ」


天音「はぁ…お昼ご飯、簡単ですけど作っておきましたから。ちゃんと起きて食べて下さいね。」


伊世「さんきゅう…あんたぁ良い嫁になるわあ…あたしが嫁に貰ってやろうかね。」


天音「変な事言ってないで早く起きて下さい。あんまり不摂生してると身体壊しますよ？それじゃ私はセンターに行ってきますね。」


伊世「おおぅ…今日も張り切ってんねぇ…」




天音「はい！アストベリー杯に向けて、鍛錬は怠れませんから！」




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（上波町・広場）




街中にぽっかり開けた広場。大きな噴水を中心に広がる空間では若者を中心に様々な人が賑わっている。
dPhoneを使いデュエルする人もチラホラ。


夏武斗「うーん…。」
dPhoneの地図を見ながら唸る。


夏武斗「こんなでっけぇ街…来たことねえからどこがどこだか分っかんねぇぜ…。」


夏武斗「爺ちゃん待ちくたびれてるかなぁ…。」


夏武斗「とりあえず…いい加減どっかで道訊かねえと………ん？」



広場の一角。デュエルしている２人。辺りにはその様子を観戦している人もチラホラ。



青年「…ダイレクトアタック。」


男「うわあああぁぁぁ！！」ＬＰ０
弾き飛ばされる男。


男「く、くっそぉ…。」

うなだれる男。相手をしていた目つきの鋭い青年は無表情を崩さない。


中年「あいあいおォ疲れさんなんだよ。」


デュエルが終わるや否や、端で見ていた中年男性が男に詰め寄る。


中年「身ィの程をわァきまえないからこォなるんだよぉ…？」



男「ま、待て！…待ってくれ！」


中年「待ァてと言ｨわれて待ァつ奴はいないだろお？」
男のデッキを取り上げる。


中年「まァこの程度のカード、頂いても大してうゥれしくはないんだがねェ…。」


男「た、頼む！それだけは！俺が悪かったから…その…！」


中年「駄目駄目。約束はまァもらないとだァめだよォ？ヒッヒッヒッヒ！！！」



夏武斗「お、おい待てっておっさん！」
観戦している人の間を抜けて前に出る夏武斗


中年「なんだァいﾁﾐはｧ？このブルジー・Ａ・ゴールデン様にな～んの用向きだねェ？」


夏武斗「俺は楠夏武斗！そんなことより、負けたからってデッキを奪うことないだろ！」


ブルジー「あァん？ﾁﾐ分かってないよォだねェ？」


ブルジー「先に喧嘩売ってきたのはこォの身ィの程知らずなんだよォ？それに『負けたらデッキを譲る』のも同意の上だァしねぇ。」


夏武斗「だ、だからってホントに奪わなくても…っていうか勝ったのおっさんじゃねえじゃん！」


ブルジー「話の分ァからないガチンチョは嫌いだよォ…こいつはわァたしのし・も・べ。こいつの勝利はわァたしの勝利なんだよォ」


夏武斗「しもべって…そんな無茶苦茶な。」


ブルジー「ﾌﾝｯ！うゥるさいんだよ！おォまえも痛い目みないとわァからないかァね！」


夏武斗「なっ…！上等だぜ！デュエルでカツアゲなんてデュエリストとして見過ごせねえ！デュエルだ！」


夏武斗「俺が勝ったらそのデッキ、返してもらうぜ！」


ブルジー「ふむ。なァらばわァたしの僕が勝ったらおォまえのデッキも頂くんだからね！」


観戦者Ａ「おい！雇われ相手に挑む奴がまた出たぞ！」


観戦者Ｂ「まだガキじゃねえか！」


観戦者Ｃ「無茶よ、勝てっこないわ…。」


夏武斗の前まで出てくる先ほどの青年。


夏武斗「おまえ、なんだってこんなことしてんだよ？」


青年「・・・」


夏武斗「あーもー！なんなんだよ一体！」


ブルジー「夜見原（よみはら）！ひィと捻りにやってしまうんだよ！」


夜見原「・・・」
dPhoneを構える


夏武斗「クソッ！だったら勝って話を聞いてもらうまでだ！」



dPhoneモードチェンジ！Ｄパッドモード！



ターゲットロックＯＫ！



ビジョンリンクＯＫ！



ファーストディールＯＫ！



デュエル！！




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（ジェネシック・エレクトロニクス本社・モニタールーム）




男「何か変わりは？」


オペレーター「はっ、上波町全エリアにてＤオーラの出力は正常です。問題ありません。」


男「ご苦労。」


オペレーター「ですが…ここ数日で全体平均出力が上がっているように思います。」


男「大会が近いからな。デュエリストは皆、活気付く時期ということだろう。そこについては心配しなくていい。」


オペレーター「了解。」




男「さて…本格的に大会が始まるまでにどれほどの数値が出るか…。」




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夏武斗「俺が先攻だ！俺は『ブルズアイ・フェアリー』を召喚！」星３・ＡＴＫ１０００
蛇の目模様の羽を持つ妖精モンスター


夏武斗「ブルズアイ・フェアリーの効果発動！」


夏武斗「手札の昆虫族モンスターを墓地へ送り…」
ドン・ヘラクレスを墓地へ送る


夏武斗「カードを１枚ドロー！」


夏武斗「更に永続魔法『無視加護』を発動！」


夏武斗「カードを１枚セットして、俺はターンエンド！」


夜見原「…俺のターン、ドロー。」


夜見原「俺は『共闘の魔妖兵』を召喚。」星４・ＡＴＫ１７００
武装した悪魔モンスター。


夜見原「…共闘の魔妖兵でブルズアイ・フェアリーを攻撃。」


夏武斗「この瞬間！永続魔法無視加護の効果発動！」


夏武斗「墓地の昆虫族モンスター１体をゲームから除外する事で攻撃を無効にする！」


夏武斗「墓地のドン・ヘラクレスを除外し、その攻撃を無効にするぜ！」


大きな虫籠がブルズアイ・フェアリーを覆い攻撃を防ぐ。


観戦者Ａ「おお！あの兄ちゃんやるじゃねえか！」


観戦者Ｂ「いいぞー！雇われなんかに負けんなあぁ！！」




夜見原「…俺はこれでターンエンド。」


夏武斗「よし！俺のターン！ドロー！」


夏武斗「このまま一気に攻めきってやるぜ！まずはブルズアイ・フェアリーの効果発動！」


夏武斗「手札から『騒々虫』を墓地へ送り、１枚ドロー！」


夏武斗「そして、『ビートルーパー』を召喚！」星３・ＡＴＫ１５００


夏武斗「ビートルーパーの効果発動！このカードが召喚した時、手札か墓地からレベル３以下の昆虫族モンスター１体を特殊召喚できる！」


夏武斗「俺は墓地から、今墓地へ送った騒々虫を特殊召喚！」星２・ＤＥＦ３００


夏武斗「俺はレベル２の騒々虫に、レベル３のブルズアイ・フェアリーをチューニング！」




鋼をも断ち切る一対の刃振りかざし！大地の果てまで突き進め！



シンクロ召喚！



来い！『突甲戦士 ギラファイター』！星５・ＡＴＫ２０００





観戦者Ａ「おおぉ！あいつシンクロ使いか！」


ブルジー「ぐぬぬぬ…こォしゃくなァ！」


夏武斗「バトルだ！突甲戦士 ギラファイターで、共闘の魔妖兵を攻撃！クラッシャーダイブ！」


夜見原「・・・」ＬＰ４０００→３７００


夏武斗「この瞬間！ギラファイターの効果発動！このカードが相手モンスターを戦闘で破壊し墓地へ送った時、このカードの攻撃力の半分のダメージを与える！」


夏武斗「ギラファイターの攻撃力、２０００の半分で１０００ポイントのダメージだ！メンダブル・パワーフォース！！」


夜見原「・・・」ＬＰ３７００→２７００


夏武斗「まだまだ行くぜ！ビートルーパーでプレイヤーにダイレクトアタック！」


夜見原「・・・」ＬＰ２７００→１２００


夏武斗「よっしゃ！俺はこれでターンエンド！」



観戦者Ａ「いいぞ～兄ちゃん！」


観戦者Ｂ「そのままキメちまえ～！」


観戦者Ｃ「凄～い！そんな奴やっつけちゃって～！」



ブルジー「むきィィィ！！夜見原ァ！なァにやってんだよォ！！」


夜見原「・・・」


ブルジー「負ァけたりしたら金は一銭も出ァさないからなァ！！」


夏武斗「金ぇ！？おまえ金貰ってこんなことしてんのか！？」


夜見原「…おまえには関係ない。」


夏武斗「っ！」


夜見原「…俺のターン、ドロー。」


夜見原「俺は共闘の魔妖兵を召喚。」ＡＴＫ１７００


観戦者Ａ「なんだよまたおんなじモンスターかぁ？」


観戦者Ｂ「つまんねぇぞ～！！」


次々とヤジを飛ばす観戦者達。夜見原はまるで気にしていない。


夜見原「更に魔法カード『共鳴蘇生』発動。」


夜見原「フィールドのモンスター１体と同名のモンスター１体を、墓地から特殊召喚する。」


夜見原「墓地から共闘の魔妖兵を特殊召喚。」


夏武斗「同じモンスターを２体…！？」


夜見原「共闘の魔妖兵は他の同名モンスター１体に付き、レベルが１つ上がり攻撃力が３００ポイントアップする。」星４→５　ＡＴＫ１７００→２０００


夏武斗「２体ともレベルを上げてきた、これは…。」




夜見原「俺はレベル５の共闘の魔妖兵２体でオーバーレイ。」


夜見原「２体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。」



エクシーズ召喚！


現れよ！深淵を駆ける瞬速の槍！ランク５！『冥獄の猛将 ナイトメア・エッジ』！ランク５・ＡＴＫ２５００


漆黒の馬に跨り漆黒の鎧に身を包んだ騎士。


夏武斗「くっ！エクシーズ召喚か！」


ざわめく観衆


夜見原「ナイトメア・エッジの効果発動。１ターンに１度、オーバーレイ・ユニットを１つ使う事で、手札から闇属性モンスター１体を特殊召喚する。」


夜見原「『先陣の魔妖兵』を特殊召喚。」星６・ＡＴＫ２４００
武装した悪魔モンスター。大きめの片手剣が武器。


夏武斗「上級モンスターを一気に…！」


夜見原「更に俺は手札から罠カード『タイフーン』を発動。フィールドに表側で存在する魔法・罠カード１枚を破壊する。」


夏武斗「て、手札から罠だってぇ！！？」


観戦者Ａ「おいあんちゃん！ルール分かってんのかぁ！？」


観戦者Ｂ「罠は手札から使えねえぞぉ！」


夜見原「タイフーンは相手フィールドに魔法・罠カードが２枚以上存在し、自分フィールドに魔法・罠カードが無い場合、手札から発動できる。」


夏武斗「そんな罠があったのか！？」


夜見原「無視加護を破壊する。」


フィールドに強風が吹きすさび、無視加護が倒壊する。


夏武斗「ぐっ！無視加護が…！」


夜見原「…バトル。ナイトメア・エッジで突甲戦士 ギラファイターを攻撃。」


夜見原「…デモニック・ランス」


相手に向って進撃し、闇の力を纏った槍（ランス）で身体を貫く攻撃。


夏武斗「ギラファイター！！」ＬＰ４０００→３５００


夜見原「続けて先陣の魔妖兵で、ビートルーパーに攻撃。」


夏武斗「ぐああぁ！！」ＬＰ３５００→２６００



観戦者Ｂ「おいおい全滅しちまったぞ！？」


観戦者Ｃ「やっぱり雇われデュエリストなんてやってる人には勝てないのかしら…。」



夏武斗（雇われデュエリスト…？なんなんだそれ…？）


夜見原「速攻魔法『報奨金』を発動。」


夜見原「このターン戦闘破壊したモンスターの攻撃力の合計分、自分のライフを回復する。」ＬＰ１２００→４７００


観戦者Ａ「あいつ！前のターンにやられた分を一気に回復しやがった！」


夏武斗「くそ…せっかく削ったライフが…！」


夜見原「俺はこれで…ターンエンド。」



夏武斗「俺のターン！」


夏武斗（ここはモンスターをセットして凌ぐしかないか…）


夏武斗「俺はモンスターをセット、ターンエンド。」


ブルジー「戦況が一気に逆転だァね。」


夜見原「俺のターン。」


夜見原「冥獄の猛将 ナイトメア・エッジの効果発動。」


夜見原「オーバレイ・ユニットを１つ使い、手札より２体目の先陣の魔妖兵を特殊召喚。」星６・ＡＴＫ２４００


夏武斗「オーバーレイ・ユニットは無くなったけど……」


夜見原「…バトルフェイズ。先陣の魔妖兵でセットモンスターに攻撃。」


夏武斗「セットモンスターは『霊木仙人』！この瞬間、霊木仙人のリバース効果が発動！」
老人のように見える古木のモンスター



観戦者Ｂ「リバース効果………ってなんだ？」


観戦者Ｃ「えっと確か…裏側から表側に変更された時に発動する効果…だったかしら。」



夏武斗「デッキからレベル４以下のモンスター１体を墓地へ送ることができる！」


夏武斗「俺はデッキから『スワローテイル・フェアリー』を墓地へ送るぜ。」


ブルジー「ふん…なァにするかと思えば、墓場のカードを増やしただけかァね。」


夜見原「…２体目の先陣の魔妖兵で、ダイレクトアタック。」


夏武斗「くっ！！」


ブルジー「ヒッヒッヒ！！」




夏武斗「ぐあああぁぁ！！」ＬＰ２６００→２００


ブルジー「さぁ次でトドメだァよ！夜見原、とっととやっちゃうんだァよ！」






夏武斗「く、くそ………！」



終











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次回予告

夏武斗「なんて強さだ！これが上波町のデュエリストか！」


夏武斗「でもあいつ、なんでこんな奴に手を貸してるんだろう…？」


天音「あれは…デュエルですか？えっ？違法デュエル！？」


夏武斗「デッキを渡したりなんてするもんか！このデュエル負けられねえ！」


夏武斗「次回！『反撃の一手！ヴィクトリー・ビートル』」


夏武斗「これが俺の切り札だ！」


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・『タイフーン』は投稿段階で日本未発売のカードです。相手ターンでも手札から使えるなんてペンデュラム涙目ですね。
・余談ですが『冥獄の猛将 ナイトメア・エッジ』は私がかなり前に投稿したオリカです。