58 楯山の苦悩、自分自身のデュエル　作：ギガプラント

アストベリーカップ中止から数日後。

世間は大会で起きた竜巻騒動の話題で持ちきりとなっていた。

ジェネシックスタジアムの被害はかなりのもので、大多数の人間が修復にあたっているがそれでもかなりの時間を要するとの事。

今後大会を再開するか否かは現状不明で、ジェネシックからそれらしい発表も無い。


大会運営により一時休業中だったＭ.Ｃ.Ｃデュエルセンターは営業を再開し、いつものようにたくさんのデュエリストが集まっていた。






（Ｍ.Ｃ.Ｃデュエルセンター）



楯山「行け！ダイレクトアタック！」


男「うわああ！！」ＬＰ１３００→０





楯山「くっ…やはりこのデッキでも…。」


歩き出す楯山。







大駕（…やはり、どこかで見たことがあると思ったが）



～～～ ～～～ ～～～ ～～～ ～～～ ～～～



大駕「と、変に気を回してみたもののこれからどうするか…。」


大駕「よし！男に二言はない！走るとするか！」


大駕「ぬ？アイツは………」



海沿いにある小さな広場。
何か物思いに耽っているかのような表情の楯山がdPhoneにカードを設置する。



楯山「召喚！『光神機－桜火』！」


美しい機械獣が現れる。



楯山「くそっ……これも違う。見えない…！」


楯山「僕は……くっ！」



大駕「デュエルとは一人でやるものではあるまい。」


楯山「！？」


大駕「良ければ相手になろうではないか。」


楯山「あなたは……センターのスタッフの……。」


大駕「素性などどうでもよかろう！それより漢同士の熱いデュエル！良い酔い覚ましになりそうじゃ！！」



楯山「…悪いがそんな気分じゃない。」


大駕「ぬぅ！？」


楯山「…僕は帰る。」


大駕「なんと！？一体どうしたというのだ！」





楯山「…今の僕には勝利のビジョンが見えない。」



～～～ ～～～ ～～～ ～～～ ～～～ ～～～


大駕「………」







光輝「あれ？大駕、そっちはもう休憩かい？」


大駕「ん？光輝か。うむ、こちらは予定より早く作業が進んだのでな。」


光輝「そっか。こっちはまだかかりそうだよ。」


大駕「儂も手伝いに行こうか？」


光輝「ううん、こっちの仕事だし大駕は休んでてよ。」


大駕「そうか。ならよいが…。」



光輝「にしても大駕がこんなところに居るなんて珍しいね。」


大駕「あぁ…まぁ少しだけ気になる事があっての。」


再び楯山に目を向ける。


光輝「あ……楯山君。」


大駕「知り合いか？」


光輝「うん…まぁ。」


光輝「彼には…ホントに感謝しなきゃならない。」


大駕「その様子じゃと何かあったようじゃな。」


光輝「あぁ…ちょっとね。」


大駕「…良ければ聞かせてはくれぬか？」


光輝「えっ…！？」


大駕「なに、悪いようにはせん。ただ……」


大駕「少々奴の事が気になっての…。」


光輝「……まぁ君になら話しても大丈夫だろうね。」



光輝「この間の大会でのことなんだけど………」



--- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- ---













楯山「やはり…僕はあのデッキでなければ…。」






大駕「しゃんとせんか男だろう。」


楯山「…またあなたか。」


大駕「ほう覚えてくれておったか。これは光栄じゃのう。」


楯山「悪いが僕は…」


大駕「なんじゃ？先程デュエルしているように見えたが、まさかまた『そんな気分じゃない』と言うつもりではあるまい。」


楯山「…一体何なんだあなたは。」


大駕「儂の事などよい！それより早く始めようぞ！漢同士の熱きデュエルを！！」


楯山「意味が分からない…なんて暑苦しい人だ。悪いが僕は……」

大駕「そうやってまた逃げ出す気か？」


楯山「…なんだって？」


楯山「僕が…一体何から逃げ出しているというんだ！」


大駕「そのことに気づかぬ内はお前が求めるデュエルなど出来はせん！」


楯山「言いたい放題言ってくれるじゃないか…！」


楯山「良いだろう…相手をしてやる！」


大駕「そう来なくてはな！！行くぞ！」







dPhoneモードチェンジ！Ｄパッドモード！



ターゲットロックＯＫ！



ビジョンリンクＯＫ！



ファーストディールＯＫ！



デュエル！！





楯山「僕のターン！手札より『ジェルエンデュオ』を召喚！」星４・ＡＴＫ１７００


楯山「カードを１枚セットしてターンエンドだ！」



大駕「儂のターン！ドロー！」


大駕「儂は永続魔法『不法闘鬼（イリーガルオーガス）』を発動！」


大駕「初めから全力で行かせてもらうぞ！バトルフェイズ！」


楯山「バトルフェイズだと！？モンスターも無しに一体どうするつもりだ！！」


大駕「慌てるでない！モンスターなら今から用意するわい！」


大駕「速攻魔法『闘鬼取引（オーガスディーリング）』を発動！」


大駕「デッキよりレベル４以下の武装闘鬼モンスター１体を特殊召喚する！」


大駕「さぁ来い！『武装闘鬼 マインゴーシュ』！」星３・ＡＴＫ６００
左手に小さな剣を構えた怪しげな笑みを浮かべる鬼。


大駕「マインゴーシュがバトルフェイズ中に特殊召喚された時、フィールドのカード１枚を破壊する！」


大駕「先ずはお前のセットカードを退かせてもらうぞ！行け！マインゴーシュよ！」

マインゴーシュが軽やかに飛び上がりセットカード目掛けて襲い掛かる。


楯山「ふん！罠発動！『攻撃の無敵化』！このターン僕が受けるダメージは０になる！」


大駕「チェーン発動で返したか…上等じゃ。そうでなくては面白くないわい。」


楯山「何を企んでいるか知らないがたかだか攻撃力８００のモンスターじゃ僕のモンスターは倒せない！」


大駕「まだまだ！儂は永続魔法不法闘鬼の効果により、バトルフェイズ中に武装闘鬼モンスターを召喚できる！」


大駕「儂はマインゴーシュをリリース！『武装闘鬼 グラディウス』をアドバンス召喚！」星５・ＡＴＫ２２００
短めの刀剣を携えた老鬼。


楯山「バトルフェイズ中にアドバンス召喚！？」


大駕「更に武装闘鬼グラディウスのモンスター効果発動！」


大駕「このカードが召喚に成功した時、デッキの上から２枚を確認しその中に武装闘鬼モンスターがあった場合、１体を特殊召喚できる！」


２枚のカードがめくられる。
『闘鬼休業』
『武装闘鬼 サーベル』

大駕「ようし上等！『武装闘鬼 サーベル』を特殊召喚！」星１・ＡＴＫ０
騎兵の鎧を身に纏った小さな鬼モンスター。


楯山「くっ、更に展開を…！」


大駕「サーベルがバトルフェイズ中に召喚・特殊召喚された時、デッキから武装闘鬼モンスター１体を墓地へ送り、ターン終了時までそのレベルと攻撃力を得る！」


大駕「儂は『武装闘鬼 ファルシオン』を墓地へ送る！よって攻撃力は１８００アップじゃ！」星１→５　ＡＴＫ０→１８００


大駕「待たせたな！行くぞ！儂は武装闘鬼グラディウスでジェルエンデュオを攻撃ぃ！」


楯山「無駄だ！ジェルエンデュオは戦闘では破壊されない！」


楯山「更に攻撃の無敵化の効果により、僕へのダメージは０だ！」


大駕「ほう…攻撃は無意味という事か…。」


大駕「攻撃は止めじゃ。だがこれで終わると思うな！」


大駕「儂はレベル５のグラディウスとサーベルでオーバーレイ！」




鬼に刃！鮮血に染まる刃振りかざし、対峙する敵を殲滅せよ！


エクシーズ召喚！！


現れよ！無慈悲なる慈悲の刃！『武装闘鬼 ミセリコルデ』！！ランク５・ＡＴＫ２５００




大駕「カードを３枚セット！ターンエンドじゃ！」



楯山「くっ…僕のターン！ドロー！」


楯山「このまま押し切られてたまるか！！僕はジェルエンデュオをリリース！」


楯山「アドバンス召喚！！『虚無の統括者（ヴァニティー・ルーラー）』！」星８・ＡＴＫ２５００


大駕「ぬ！？レベル８じゃと！？」


楯山「ジェルエンデュオは天使族・光属性モンスターをアドバンス召喚する場合、２体分のリリースにできる！」


大駕「だが攻撃力は互角じゃ！どう来る！」


楯山「ふん！僕は魔法カード『一騎加勢』を発動！このターン中虚無の統括者の攻撃力は１５００ポイントアップする！」ＡＴＫ２５００→４０００


楯山「バトル！虚無の統括者で武装闘鬼ミセリコルデを攻撃！」


大駕「甘い！速攻魔法『ハーフ・シャット』発動！虚無の統括者の攻撃力をターン終了時まで半分にする！」ＡＴＫ４０００→２０００


楯山「ぐううっ！！」ＬＰ４０００→３５００


大駕「ハーフ・シャットの効果を受けたモンスターはこのターン戦闘では破壊されん！」


大駕「じゃが武装闘鬼ミセリコルデの効果発動じゃ！このカードが戦闘を行った時、デッキからレベル４以下の武装闘鬼モンスター１体を特殊召喚できる！」


楯山「そうなんでもかんでも思い通りに行くと思うな！虚無の統括者のモンスター効果により、相手は一切の特殊召喚ができない！！」


大駕「ぬぬ！？そう来よったか！！」



大駕「特殊召喚を封じられたか…上等じゃ。新たなデッキも早速使いこなしているようじゃの。」


楯山「！？」


大駕「じゃがまだしっくりは来ない…か？」


楯山「…一体あなたは」


大駕「話は大体聞いた。お前は立派な男じゃよ。」


楯山「ふん……そんなことを言いに来たのか。」


大駕「過程の話なぞどうでもよかったの。問題は今……今のお前じゃ！！」


楯山「下らない説教なんて聞く気はない！僕はカードを１枚伏せてターンエンドだ。」虚無ＡＴＫ２０００→２５００



大駕「儂のターン！ドロー！」


大駕「いい加減前を向いたらどうじゃ。どんなに強くともそんなデッキでは熱くなどなれぬじゃろう！」


大駕「儂は武装闘鬼ミセリコルデの効果発動！！」


大駕「オーバーレイユニットを１つ使う事で、相手モンスター１体はこのターン攻撃力が半分となり戦闘では破壊されなくなる！」


楯山「知った風な口を！デッキを丸ごと失った者の気持ちがあなたに分かるか！！」


楯山「カウンター罠『オーバー・ウェルム』発動！」


楯山「自分フィールドにアドバンス召喚されたレベル７以上のモンスターが存在する時、相手の罠または効果モンスターの効果を無効にし破壊する！」


大駕「くぅぅ…！！」


大駕「なんじゃ！？ならばお前は己の行いを悔いたのか！」


楯山「五月蠅い！！早くターンを進めろ！！！」



大駕「…儂はモンスターをセットしてターンエンドじゃ。」



楯山「僕のターン！！」












楯山「…己の行いを悔いたのかだと？」






楯山「僕は僕の信念に基づいて行動したまでだ！！悔いたりなどする訳がない！！」


楯山「だからやりきれないんだよ！！あの頃の…あのデッキでの感覚が取り戻せない今この瞬間が！！」


楯山「勝利のビジョンが見えない戦いが！！」


楯山「どんなに勝ったって動けないんだよ！！今のあなたのように！！」


大駕「………」


楯山「『シャインエンジェル』を召喚！」星４・ＡＴＫ１４００


楯山「装備魔法『メテオ・ストライク』を虚無の統括者に装備！」


楯山「虚無の統括者！！セットモンスターに攻撃！！」


セットされていた『武装闘鬼 バーゼラルド』が姿を現す。ＤＥＦ０


楯山「メテオ・ストライクの効果で貫通ダメージ！！」


大駕「くうううぅぅ！！」ＬＰ４０００→１５００


大駕「バーゼラルドは戦闘で破壊され墓地へ送られた時…１枚ドローできる…！」


楯山「シャインエンジェルでダイレクトアタック！！」


大駕「ぐはっ！」ＬＰ１５００→１００


楯山「ターンエンド。」



楯山「どのカードを使ってもどんな戦術を使っても…あの頃の光がチラつくんだ！」








楯山「取り戻せないんだよ！！どうやっても！！」







大駕「それが逃げていると言ってるんじゃ！！」


楯山「！！？」


大駕「いつまで過去の自分を追いかけているつもりじゃ？」


大駕「今お前がせねばならんのは失った栄光を取り戻す事か？」


大駕「過去にすがり後ろばかりみているお前に、本当の己自身のデュエルなどできる筈なかろうが！！」


大駕「過去は過去じゃ！！今、そして未来の為に動けぃ！！」


大駕「あの頃の感覚ぅ？下らん！！それを上回る新たな感覚を己の物にすればいいだけの話じゃろうが！！」


楯山「新たな……感覚だと…！？」


楯山「そんなもの…僕には…」


大駕「できるできないではない！！何が何でも勝ち取るのじゃ！それをやり遂げる力こそ本当の信念んんん！！」


大駕「儂のターン！！ドロオオオォォォ！！」


楯山「！？」


大駕「ようし！！バトルフェイズ！！」


大駕「儂はあああ！『武装闘鬼 ハルパー』を召喚んんん！！」星４・ＡＴＫ１５００


大駕「バトルフェイズ中に召喚されたハルパーの攻撃力は１２００アップする！！」ＡＴＫ１５００→２７００


楯山「攻撃力２７００だと！？」


大駕「武装闘鬼ハルパーで虚無の統括者を攻撃ぃ！！」


楯山「まさか…こんな…！！」ＬＰ３５００→３３００


大駕「これで特殊召喚は可能じゃ！！罠カード『闘鬼夜行（オーガスプロフェッション）』を発動！」


大駕「武装闘鬼モンスターを任意の枚数リリースし、その数まで自分の墓地・手札から武装闘鬼モンスター特殊召喚する！」


大駕「儂は武装闘鬼ハルパーをリリースし、墓地より『武装闘鬼 ファルシオン』を特殊召喚！」星５・ＡＴＫ１８００


大駕「武装闘鬼ファルシオンがバトルフェイズ中に特殊召喚された事により効果発動！墓地より『武装闘鬼 グラディウス』を特殊召喚！」星５・ＡＴＫ２２００


大駕「更に！手札より『武装闘鬼 バスタード』の効果発動！」


大駕「バトルフェイズ中に武装闘鬼モンスターが召喚・特殊召喚された時、手札のこのカードをそのモンスターと同じレベルにして特殊召喚できる！！」星３→５　ＡＴＫ１３００
長剣を振り回す狂気的な鬼モンスター。


楯山「一気に３体のモンスターを並べただと！！？」


大駕「まだまだバトルは終わらん！武装闘鬼ファルシオンでシャインエンジェルを攻撃ぃ！」


楯山「ぐぅ！シャインエンジェルのモンスター効果発動！デッキから２体目のシャインエンジェルを特殊召喚！！」星４・ＡＴＫ１４００　ＬＰ３３００→２９００


大駕「続いてグラディウス！！攻撃ぃ！！」


楯山「まだだ！！シャインエンジェルを特殊召喚！！」星４・ＡＴＫ１４００　ＬＰ２９００→２１００


楯山「これであなたのモンスターは攻撃を終え……」
大駕「罠発動！『ワンダー・エクシーズ』！」


楯山「！」


大駕「この効果によってエクシーズ召喚を行う！」


大駕「儂はレベル５のファルシオン、グラディウス、バスタードの３体でオーバーレイ！！」




究極の力解放せし悪鬼よ！！眼前の猛者を薙ぎ倒し、三千世界の覇者となれぃ！！



エクシーズ召喚！！



行け！！『武装闘鬼 ツヴァイヘンデル』！！ランク５・ＡＴＫ３０００





両手剣を持つ巨大な鬼神。


楯山（こんな最上級エクシーズモンスターを……！！）








楯山「……負けてたまるか。」


楯山「僕は………僕は……」






楯山「今の僕を信じて闘う！！」


楯山「罠発動！『時空の落とし穴！』」


楯山「エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターを持ち主のデッキに戻す！！」


空間に大きな歪ができ大きな穴となる。
穴そのものが高速で移動しツヴァイヘンデルを飲み込んだ













と楯山が確信した瞬間。歪が消滅する。



大駕「武装闘鬼ツヴァイヘンデル！最後の一匹を攻撃じゃああ！！」


楯山「何！？どういうことだ！？何故罠が…！！」


大駕「ツヴァイヘンデルがフィールドに存在する限り、バトルフェイズ中のみ相手フィールドのカード効果は全て無効となる！！」


楯山「！！」


ツヴァイヘンデルの大剣がシャインエンジェルを両断する。


楯山「ぐあああ！！」ＬＰ２１００→５００


大駕「これで最後じゃ！武装闘鬼ツヴァイヘンデルの効果発動！」


大駕「このカードが相手モンスターを戦闘破壊した時、オーバーレイユニットを１つ使う事で、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える！！」


楯山「っ！？」


大駕「これで最後じゃ！！悪来鬼神撃！！」


巨大な剣圧が楯山目掛けて飛ばされる。


楯山「があああっ！！」ＬＰ５００→０





ＷＩＮ・大駕














楯山「………」


楯山「己自身のデュエル…か。」






大駕「上等じゃ。」




大駕「最後のターンのお前は、今まで以上に漢であったぞ。」


楯山「…全く、おせっかいな人だ。」


大駕「がはは！よく言われるわい！！」


楯山「はぁ…疲れた。僕はもう行く。」


ゆっくりと歩き出す楯山。それを見据えつつ動かない大駕。







大駕の横を通り過ぎて数メートル。









楯山「………ありがとう。」






終











--- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- ---

（次回予告）


光輝「大駕、楯山君の事ありがとう。」


大駕「なぁに、儂は何もしておらん。あ奴が自分自身で立ち直っただけの事。」


光輝「…君らしいね。そういうところ。」


大駕「がっはっは！それじゃあ儂は帰るぞ！またな光輝よ！」


光輝「…あの頼もしさと優しさ。それが大駕の強さか。」


光輝「次回！『動き出した影』！」


大駕「ほう…この儂に喧嘩を売るとはいい度胸じゃのう。」
--- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- ---
・びっくりするくらい自然に鉄壁できてびっくり。