第２１話：フレアの戯れ　作：チュウ

　ギュンターさんとの取引から３週間程が経った。フレアの準備がようやく整ったらしく、俺達は馬車に荷物を入れてエルフの森へ旅をする事にした。
　メンバーは俺、シャイニー、フレア、メイドのメイさん、護衛の騎士さんの５人に馬車の操縦者の人が１人。奇しくも野盗に襲われた時に居合わせたメンバーがまた揃った。護衛の騎士さんは馬車の近くを護衛するように馬に乗っており、それ以外のメンバーが馬車に乗っている形となっている。

　「準備に手間取ってごめんなさいユウキ」

　フレアも貴族としての仕事が忙しいのだろう。

　「いや、フレアが謝る事はないよ。色々やらなきゃいけない事があったんだろ？」

どんな仕事があるのかはよく分からないが、やらなくちゃいけない事なんだから謝る必要なんてないと思う。

　「えぇ、長期間離れるかもしれないので、急ぎの要件を片づけてきました。ユウキも毎日のように貴族の方々にデュエルを申し込まれていたとか……そちらの対処ができずホントにごめんなさい……」

　確かにあれはきつかった……だけどフレアに負担を掛けたくなかったし、修行と思えばいいか。

　「いい修行になったよ！それにこれでフレアの事が少しでも守れるなら安いもんだ！」

　「ふふ……ユウキったら……あ！そうだ！これをユウキに渡したくて」

　なんだ？フレアが綺麗で小さな箱を取り出すと中からアクセサリーが出てきた。

　「アクセサリーか？」

　「えぇ、ブレスレットのようなものです。腕に着けてくれればいいですから」

　た、高そうなんだが……

　「でも悪いし……」

　「どうしても受け取って欲しいのです……それ程高価な物ではないですし、ホンの気持ちと思ってくれればいいですから！」

　そんな悲しそうな顔をされたら受け取らない訳にはいかないよな……

　「わ、分かったよ。大切に着けさせて貰うよ！」

　「うん！」

　やっぱフレア可愛い……じゃなくて！俺は受け取ったアクセサリーを左手首に着けた。ネックレスと見間違えるくらい細いブレスレットだ……真っ赤な宝石がひとつに、それらを銀色のチェーン状のものが輪をなして繋がっている。

　「凄く綺麗だ……ん？」

　俺は素直にそう思った。だが俺はメイさんがずっとギョッとした目で俺のブレスレットを見ていたのに気付いた。

　「メイさん？どうしたんですか？」

　俺が名前を呼ぶとメイさんは顔を窓の外に向けてこっちを見ようとしなかった。
　え？な、なに？なんなんだ？

　「メイ？」

　フレアがメイさんを見る目が何となく据わった目をしている様に見えたのだが……

　「御心のままに……」

　フレアがメイさんの名前を呼ぶと、何かを察したかのようにメイさんが傅く言葉を口にした。
　は？え？なに今のやり取り？
　全然分からないんだけど！もしかしてこのブレスレットってなんかヤバいのか！？もしかしてやっぱりかなり高価な物なのか！？でも今更外せないし……

　「やれやれですね……」

　シャイニーさん！？なに諦めてるの！？
　俺の想いとは裏腹に馬車は歩みを続けていた……