第３３話：勉強会　作：チュウ

　「今日もよろしくお願いします！」

　そう元気よく返事をしたのはエルミアだった。
　今はエルミアがよく使っている空き家の中の部屋で俺を含めてデュエルの勉強会を始めるところだ。先生役はシャイニーにお願いをしてもらっている。

　エルフの森の復興の傍らで空いた時間を使い、俺とエルミアはここ数回に亘って勉強会を開いている。これはエルミアたっての希望だ。自分も役に立ちたいという願いから俺はエルミアに相談されてシャイニーにデュエルについての座学をお願いした。俺だけの知識ではとてもじゃないが教える事ができなかったからだ。

　「今日で何回目かは忘れましたが、そろそろ実践を混ぜてやっていきたいと思います」

　「実践ですか？」

　「そうです。ユウキが相手をしてあげなさい」

　「いいぜ、エルミアやろう！」

　「じゃあ今日はよろしくねユウキ！」

　早々にデュエルの準備をし始める俺達。
　今回はデュエルディスクではなくテーブルを使ってのデュエルだ。モンスターを実体化させるにはそれなりの広い空間が必要になってくる。この勉強会は他のエルフ族、特に人間族を嫌っているエルフ族達には秘密でやっている事だ。エルミアは族長の孫娘……赤の国に例えるならフレアと同じような立場の人だし。そんな上の立場の人が人間と仲良くしていたら、良い噂は立たない……だからこそ忍んでやらなければならないので、屋内でもデュエルできるようにテーブルを使ってその上にカードを置いてデュエルをする事にした。まぁ、俺にとってはこっちの方が馴染み深いけど。


ユウキ：ＬＰ８０００
手札：５枚

エルミア：ＬＰ８０００
手札：５枚


　「私の先攻で行くね！私は手札から《ローンファイア・ブロッサム》を召喚！」

《ローンファイア・ブロッサム》
効果モンスター
星３/炎属性/植物族/攻５００/守１４００

　「いいカードですねエルミア。あらゆる植物デッキの初動として扱われる事が多い優秀なカードで、最初に出すカードとしては最高の１枚です」

　シャイニーが絶賛するのは珍しいが、実際効果を見てみると植物なら何でも出せるっていう結構とんでもカードだな。

　「ありがとう！シャイニー先生！じゃあ、私はこの《ローンファイア・ブロッサム》をリリースして効果発動！」

　いったいどんな植物モンスターが出て来るのか……

　「……何出せばいいんだっけ？」

　「植物族の展開をするにあたって、エルミアにできそうなのはこのカードですね」

　シャイニーがエルミア側に寄り添いながら指示を出した。

　「成程！私は《聖種の地霊》（サンシード・ゲニウス・ロキ）を特殊召喚！」

《聖種の地霊》（サンシード・ゲニウス・ロキ）
通常モンスター
星１/地属性/植物族/攻０/守６００

　「今出したモンスターをリンク素材にして《聖天樹の幼精》（サンアバロン・ドリュアス）を出してください」

　「……ドリュ、ドリュ。ってどれ？」

　「…………え？」

　シャイニーがエルミアと一緒にＥＸデッキを見ていると何かに驚いた様だった。

　「ない……え？……何度見てもない……この間、持っていると言ってませんでしたっけ？」

　「え？木みたいなモンスターでしょ？これの事じゃないの？」

　エルミアはシャイニーに１枚のカードを見せた。

　「それは《聖天樹の精霊》です！リンク２じゃなくてリンク１のモンスターがいるんですよ！」

　「えぇーーー！！」

　何だか大変な事になっているみたいだな……

　「えーっと、もしかして必要なカードがない感じか？」

　俺は徐にシャイニーに聞いてみた。

　「そうですね……このままだと展開できない。ユウキ、申し訳ないですがデュエルの進行を巻き戻してもいいですか？《ローンファイア・ブロッサム》の効果が発動したところまで」

　「俺は構わないぜ」

　「ごめんユウキ……」

　「いや、大丈夫だ。ゆっくり覚えて行こうぜ！俺もまだまだ初心者に毛が生えたくらいだし一緒に強くなろう！」

　「うん！」

　落ち込んでいたエルミアの顔が明るくなって良かった。

　「エルミアは返事はいいんですけどねぇ……」

　「うぐっ……」

　シャイニーが毒突くとエルミアが図星を突かれたのか気まずそうな表情になっていた。

　「仕方ありません、他に有用そうなモンスターを出しましょう」

　「ならこの子！いつも《ローンファイア・ブロッサム》の効果で出しているの！」

　エルミアが自信満々に１枚のカードをシャイニーに見せると……

　「ん～～～～～～～それしか選択肢がない……」

　シャイニーが非常に渋い顔になっている。

　「じゃこれで！《ギガプラント》を攻撃表示で特殊召喚！」

《ギガプラント》
デュアル・効果モンスター
星６/地属性/植物族/攻２４００/守１２００

　「……やっぱりダメかな？」

　エルミアが急に心配な表情でシャイニーを見ている。

　「まぁ、正直ダメですかね……もっと展開して強力な効果を持ったモンスターを呼びたいです」

　「だよね……ユウキの友達なんだっけ？あの黒いフードを被ってた人。あの人の傍にいた黒っぽい精霊にこのモンスターを出したら言われたんだ……勝つ気あるの？って」

　随分と辛辣な事を言われたんだな……
　ちょっと前の俺ならこのカードももう少し強く見えたんだろうが、シンクロ召喚を多少学んだ後だと物足りないって感じてしまうし、もっと知識がある人が見たらそういう意見になってしまうんだろうな。

　「うちのクロリムが失礼をしましたね。このカードも別に弱い訳ではないんです。ただ、時代と共にカード効果が追いつけなくなってしまっただけなんです」

　「時代に追いつけないか……耳が痛いね。私達エルフ族は長い年月をこの森に籠って生活をしてきた。外の情勢なんて知る由もなく平和に……そうしている間に人間達は力を付けて私達はその力、デュエルに対抗する術もなく敗れた。このカードと一緒で時代に取り残されて、いつの間にか追いつけなくなっちゃった」

　エルミアがいつにもなく暗い表情でそう言った。

　「だけどこれからだろエルミアは。変わろうとしてるじゃないか！俺も司には負けた……アイツの戦術はマジで凄いって思ったよ。だからこそ、次は負けたくないんだ。エルミアも悔しかったんじゃないのか？ならさ、マジで一緒に強くなろうぜ！そして見返してやろう！いつまでも弱いままじゃないんだって分からせてやろうぜ！」

　「そう、だね。そうだよね……うん、私も悔しかった。あの時私にもっと戦う力があればって思った。ありがとうユウキ……私、頑張る！」

　エルミアを励ましている俺だが、もちろん他人事ではない。俺も頑張らないとな。

　「ユウキのターンだよ。思いっきりきて！今のユウキの全力を受けてみたいの」

　「分かった、行くぜ！俺のターン、ドロー！」

　この手札ならシャイニーの指示がなくてもいけそうだな。

　「俺は手札から《スターブライト・シスター》を召喚！」

《スターブライト・シスター》
効果モンスター
星４/光属性/魔法使い族/攻７００/守１９００
このカード名の②③の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
①：このカードが召喚した場合に発動できる。このカードを守備表示にし、自分は７００ＬＰ回復する。
②：このカードが守備表示で存在する場合に発動できる。デッキから「スターブライト」のカード名が記された魔法・罠カード１枚を手札に加える。
③：このカードが光属性ＳモンスターのＳ素材として墓地へ送られた場合に発動できる。自分の墓地から「スターブライト・シスター」以外の「スターブライト」モンスター１体を特殊召喚する。

　「召喚時、このカードを守備表示にして７００ＬＰ回復する！」

ユウキ：ＬＰ８０００→ＬＰ８７００

　「更に、シスターの②の効果！デッキから《輝く七芒星》（スターブライト・へプタグラム）を手札に加える！」

《輝く七芒星》（スターブライト・へプタグラム）
通常魔法
このカード名の①②の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
①：デッキから「スターブライト」モンスター１体を手札に加える。
②：墓地のこのカードを除外して発動できる。自分の墓地・除外状態から光属性Ｓモンスター及び「スターブライト」モンスターを合計２体までデッキに戻し、そのカードの数×７００ＬＰを自分は回復する。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。

　「今手札に加えた《輝く七芒星》を発動！デッキから《スターブライト・フレイミア》を手札に加える！」

《スターブライト・フレイミア》
効果モンスター
星１/光属性/炎族/攻５００/守２００
このカード名の①②の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
①：デッキから「スターブライト」のカード名が記された魔法・罠カード１枚を墓地へ送って発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。この効果の発動後、自分はＥＸデッキから「スターブライト」モンスター及び光属性Ｓモンスターしか特殊召喚できない。
②：このカードがＳ・儀式の素材として墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「スターブライト・フレイミア」以外の「スターブライト」モンスター１体を手札に加える。

　「《スターブライト・フレイミア》の①の効果により、デッキから《七芒星の儀式》（へプタグラム・リチューアル）を墓地へ送り、手札のこのカードを守備表示で特殊召喚！更にこの瞬間、墓地へ送られた《七芒星の儀式》の②の効果発動！デッキからスターブライトの儀式モンスター１体を墓地へ送る！俺が送るのは《スターブライト・ブレイズ・ドラゴン》だ」

《七芒星の儀式》（へプタグラム・リチューアル）
儀式魔法
このカード名の②③の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
①：レベルの合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上になるように、自分の手札・フィールドのモンスターをリリースし、自分の手札・墓地・除外状態から「スターブライト」儀式モンスター１体を儀式召喚する。この時、リリースするモンスターが「スターブライト・フレイミア」の場合、そのモンスター１枚で儀式召喚に必要な分のリリースとして使用できる。
②：このカードが手札・デッキから墓地へ送られた場合に発動できる。自分の手札・デッキから「スターブライト」儀式モンスター１体を墓地へ送る。
③：このカードが墓地に存在する場合、自分の墓地の「スターブライト」儀式モンスター１体を除外して発動できる。このカードを手札に加える。

　「墓地の《七芒星の儀式》の③の効果！俺の墓地の《スターブライト・ブレイズ・ドラゴン》を除外してこのカードを手札に加え、そのまま①の効果を発動！フィールドの《スターブライト・フレイミア》１体をリリースして儀式召喚！現れろ！《スターブライト・ブレイズ・ドラゴン》！」

《スターブライト・ブレイズ・ドラゴン》
儀式・効果モンスター
星１０/炎属性/ドラゴン族/攻３０００/守２５００
「七芒星の儀式」により降臨。
このカード名の①③の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
①：このカードが儀式召喚した場合に発動できる。お互いの墓地からカードを７枚まで除外する。この効果でカード７枚を除外した場合、さらに相手フィールドのカード１枚を破壊できる。
②：このカードの攻撃力はお互いの除外状態のカードの数×１００アップする。
③：このカードが相手によって墓地へ送られた場合または除外された場合に発動できる。自分の墓地からこのカードのレベル以下のドラゴン族・光属性Ｓモンスター１体を特殊召喚する。

「《スターブライト・ブレイズ・ドラゴン》の①の効果は今回は発動しない。その代わりに儀式素材として墓地へ送られた《スターブライト・フレイミア》の②の効果を発動！デッキから《幻想の光霊シャイニー》を手札に加える！」

《幻想の光霊シャイニー》
チューナー・効果モンスター
星１/光属性/天使族/攻０/守０
このカード名はルール上「スターブライト」カードとして扱う。このカード名の、①の効果を使用するターン、自分はＥＸデッキから「スターブライト」モンスター及び光属性Ｓモンスターしか特殊召喚できない。
①：光属性ＳモンスターをＳ召喚する場合、手札のこのカードもＳ素材にできる。
②：このカードをレベル８以下の光属性Ｓモンスター及び「スターブライト」ＳモンスターのＳ素材とする場合、このカードのレベルを２～４として扱う事ができる。

これでシンクロ召喚の準備が整った！

「行くぜ！俺はフィールドのレベル４《スターブライト・シスター》に手札のレベル４扱いの《幻想の光霊シャイニー》をチューニング！シンクロ召喚！来い！《スターブライトネス・ドラゴン》！」

《スターブライトネス・ドラゴン》
シンクロ・効果モンスター
星８/光属性/ドラゴン族/攻２５００/守２１００
チューナー+チューナー以外のモンスター１体以上
このカード名の②③の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
①：このカードがフィールドに存在する限り、自分フィールドの「幻想の光霊シャイニー」をＳ素材としてＳ召喚したＳモンスターは相手の効果では破壊されない。
②：光属性モンスターのみをＳ素材として、このカードがＳ召喚したターンのメインフェイズに発動できる。自分の墓地・除外状態から「幻想の光霊シャイニー」１体を手札に加える。
③：このカードがドラゴン族・光属性ＳモンスターのＳ素材として墓地へ送られた場合に発動できる。このカードを特殊召喚する。

　「シンクロ素材として墓地へ送られた《スターブライト・シスター》の効果を発動！それにチェーンして《スターブライトネス・ドラゴン》の効果も発動！」

チェーン１：《スターブライト・シスター》
チェーン２：《スターブライトネス・ドラゴン》

　「《スターブライトネス・ドラゴン》の効果で墓地から《幻想の光霊シャイニー》を手札に加え、《スターブライト・シスター》の効果で俺の墓地から《スターブライト・フレイミア》を守備表示で特殊召喚！」

　これで更にシンクロ召喚する事ができる！

　「俺はフィールドのレベル１《スターブライト・フレイミア》に手札のレベル４扱いの《幻想の光霊シャイニー》をチューニング！シンクロ召喚！《幻層の守護者アルマデス》！」

《幻層の守護者アルマデス》
シンクロ・効果モンスター
星５/光属性/悪魔族/攻２３００/守１５００

　「更に《スターブライトネス・ドラゴン》を対象に手札から装備魔法カード、《デーモンの斧》を装備！攻撃力を１０００アップする」

《スターブライトネス・ドラゴン》
攻２５００→攻３５００

　「バトル！《スターブライト・ブレイズ・ドラゴン》で《ギガプラント》に攻撃！」

エルミア：ＬＰ８０００→ＬＰ７４００

　「《スターブライトネス・ドラゴン》で攻撃する時、《スターブライトネス・ドラゴン》を対象に手札から速攻魔法発動！《スターブライト・ライジング》！」

《スターブライト・ライジング》
速攻魔法
このカード名のカードは１ターンに１枚しか発動できない。
①：自分フィールドの光属性Ｓモンスター１体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力はターンの終了時までそのモンスターの守備力分アップする。対象のモンスターが「スターブライト」Ｓモンスターの場合、そのモンスターは以下の効果をターン終了時まで得る。
●そのモンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分の数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。

　「攻撃力を２１００アップさせる！」

《スターブライトネス・ドラゴン》
攻３５００→攻５６００

エルミア：ＬＰ７４００→ＬＰ１８００

　「最後に《幻層の守護者アルマデス》でダイレクトアタック！」

エルミア：ＬＰ１８００→ＬＰ０

　「ユウキの勝ちですね」

　「手も足も出ないとはこの事ね……でもユウキはやっぱり強いって改めて分かった。これからはユウキを目標にしようと思うからよろしくね」

　かなりの一方的な戦いになってしまい、俺も何て声を掛けたらいいか分からなかったが、エルミアからは思いの外、好意的な意見が飛んできた。元々、全力を出して欲しいと言ったのはエルミアだったが、少々大人げなかったとも最後は思った……だが、エルミア自身が納得した形でデュエルを終えられているのなら俺としては嬉しい。

　「なら俺ももっと頑張らないとな」

　エルミアの目標としても恥じないようにこれからも頑張ろうと改めて心に誓った。