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第9話:デュエリストたる者 作:チュウ
先程まで俺とデュエルをしていた野盗の男は意識を失っているのか倒れたまま動かない。そして、その周りを下っ端の野盗達が心配そうにして囲んでいる。
「やりましたね!ユウキ!闇の尖兵との戦いから2連勝ですよ!」
「あ、あぁ!そうだな!」
俺は空元気にも似た返事でシャイニーに返事をした。
正直に言えば、俺は内心混乱していた。折角勝ってお姫様達を救えたのに、なんだか心の内がモヤっとした。
司ならこんな時なんて思うんだろう……なにをするんだろうか。
「ユウキ様……でよろしいでしょうか?」
可憐な声色と共に後ろから近づいてきたのは、赤いドレスを着た赤いゆるふわロングのお姫様だった。年齢は恐らく俺と変わらないんじゃないだろうか。
「あ、はい!いいですよ!」
正直めちゃくちゃ可愛いから話しするだけで結構緊張する……
「この度は危ない所を助けて頂きありがとうございます」
深々と一礼をした後、後ろにいた騎士っぽい人とメイドっぽい人も続けて礼をしてきた。
「いえ、その……よかったです、助けられて!」
「ちゃんとしたお礼がしたいので、どうか私達と共に同行をして頂けないでしょうか?」
こういう時ってちゃんとお礼を受け取った方がいいんだよな?
ちらっと俺はシャイニーを見た。
「いいんじゃないですか?貴族様がお礼と言っているんですから、受け取らないと無作法ですよ、ユウキ」
シャイニーの言質が取れたところで俺は了承の言葉を言った。
「分かりました!ご迷惑でなければついて行きます!」
「うふふ、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ?」
いや無理だろ緊張するよ!貴族だろ?作法とかよく分かんないし。それにこのお姫様見れば見る程可愛いな……
「姫様!どうやら我々の帰りが遅いためか、迎えの馬車と騎士達が来たようです!」
凄い声が大きい騎士さんだな……
「フレア様、あの者達はどういたしますか?」
メイドさんがお姫様に指示を仰いでいた。
あのお姫様フレアって名前なのか。
「そうですね……連行します。逃げられないように縛ってください」
「ふざけんな!なんで俺達だけこんな目に会わなきゃならねーんだ!」
野盗の下っ端達がそうだそうだと騒ぎ立て始めた。
こうなってくると、少し可愛そうにも思えてしまう自分がいた。
「……その件に関しては持ち帰って検討します。ですが、だからといって貴方たちの仕業を見過ごす訳にはいきません。大人しく連行されてください……」
そう言ったフレアと言うお姫様の表情はなんだか悲しそうに俺には見えた。
お姫様を迎えに来た大きな馬車の荷台に野盗達を連行した後、俺達はお姫様達が元々乗っていた馬車に一緒に乗り、町へ向かい始めた。
馬車の中には俺とシャイニーの他にお姫様とメイドさんがいた……俺場違いじゃないかな?
「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私は赤の国の第2王女のフレア・フォン・ヴァーミリオンと申します。この度は助けて頂き重ねてお礼を申し上げます……」
「いえ!頭を上げてください……そんなに感謝されなくても大丈夫ですから。俺は白井遊輝って言います!えと、フレア……様でいいんでしょうか?」
フレア様が頭を下げるから俺も咄嗟に頭を下げながら自己紹介をした。
「呼びやすいならなんでも構いませんよ?呼び捨てでも構いませんし」
「フレア様!流石にそれは……」
メイドさんの異議申し立ては最もだ。俺でも流石に呼び捨ては気が引ける。
「いいのです。デッキを持っている時点で最早貴族と同等の立場になっていると言っても過言ではありません。それに命の恩人であるこの方に私に対して必要以上の敬意を払って欲しいとも思いません」
「なら、フレア”さん”と呼んでもいいですか?」
様呼びは俺もなれないし、さん呼びならまだいいだろう。
「それで呼びやすいのでしたら私は構いません」
「分かりました。フレア様がご納得されているようでしたら私からはこれ以上はありません」
メイドさんも納得したみたいで引き下がった。
フレアさんはなんというか、自分を低く見積もっているような印象がするんだが気のせいか?
「それにしても謙虚なんですね。命の恩人なんですし、ここは横柄になにかを要求してくる場面かと思いましたが……どうしてしないのですか?」
それが普通なのか?
俺の一般常識だと、それは恩着せがましいって思うんだが……
「なんでって言われても……」
「ユウキはあまり頭がよくないからそんな高等な交渉術なんて持っていませんよ?」
「よくないって言うなよ!変な印象になるだろ!」
「ユウキとは会って間もないですが、あまり頭がよくないのは分かっていますよ?なので事実だからしょうがないです」
こいつ言いたい放題言いやがって!
「うふふ、仲がよろしいのですね」
「揶揄ってるだけよ」
シャイニーがフレアさんに訂正をさせた。
「にしても、何故野盗なんかに襲われていたのでしょうか?貴族でしかも赤の国の第2王女様ならカード1枚どころかデッキだって持っている筈でしょ?」
「そうなのか?」
俺はシャイニーに質問した。
貴族なら持っていてもおかしくないってどういう事だ?
「貴族に属する者は基本的に魔力を有している人間が多いんですよ。貴族は貴族同士で結婚して子を成しますから、子供に魔力が遺伝しやすいんです」
シャイニーが俺に詳しく教えてくれた。
成程、魔力も親譲りな所があるんだな。
「シャイニー様でよろしいでしょうか?女神様の使いの精霊様」
「様も敬語もいらないです。呼びやすいので構わないですよ」
なんとなくシャイニーは俺以外の人間に対しては当たりが強い気がする……
「分かりましたわ、では、シャイニーと呼ばせて頂きます。シャイニーの考える通り、私はデッキを持っています……ですが今日は精霊との契約の儀を行っていましたので、魔力が残り少ない状況でした。なのでとてもデュエルできるような状態ではなかったのです」
精霊との契約……そうか、俺はシャイニーがいるから契約とか考えなくてもカードが手に入ったけど、この世界の人は契約しないといけないんだよな……
改めて自分が恵まれた環境にいる事を再認識したな。
「さぁもう直ぐ着きますわ。赤の国の首都ヴァーミリオンです」
馬車の窓から外を見た。
町並みが綺麗だな……赤レンガで作られた建物の数々とひと際大きくて目立つ堅牢そうな城……とても栄えていそうだな。
俺達を乗せた馬車は野盗達が乗っている馬車と分かれ、町の裏口のような場所から町の中へ入り、大きな城の敷地内に入った。
「着きましたわ、降りましょうユウキ様」
フレアさんに促され、俺は馬車を降りた。
そういえば、俺には様をつけるのか……俺がさん呼びなのに変だよな……訂正しとかんとな。
「やぁフレア!帰りが遅くて心配したよ!」
俺がフレアさんに話しかけようとした時、随分と親しげにフレアさんに話しかけて来たのは俺と同い年くらいの金髪の青年だった。
「イアン様、ご心配をおかけしました……」
「いやぁ良かったよ!君が無事でなによりだ!さぁ契約の儀で疲れただろう?まずはお茶でも飲んでゆっくり……ん?」
なんだか急に俺の方を見てきたんだが……
「君は誰だい?従者でも騎士でもなさそうだし……」
「この方は私の命の恩人のユウキ様です。助けられた御恩を返す為に私達に同行して頂いたのです」
「君は貴族なのかい?」
なんでそんな事聞くんだ?
「いえ、俺は貴族じゃないです」
正直、俺のこの世界での地位なんてないに等しい。そう考えれば平民とかになるんだろうか?
「き、貴族でもないのにフレアと一緒の馬車に乗っていただと!?フレア!君は正気なのかい?貴族ではないという事は平民だろう?貴族ともあろう者が、平民と共に馬車に乗るなど……」
「命の恩人に貴族も平民もないでしょう?私は気に致しません。それに……私に感けていないで、婚約者であるお姉さまの所へ足を運んだ方がよろしいのでは?」
「もちろん君の姉君であるクレアの所へは行くさ。だが、その妹である君の帰りが心配で、わざわざ僕は足を運んだのだ。そのような言い草は連れないじゃないかフレア」
この人フレアの恋人かと思ったんだが、フレアのお姉さんの婚約者なのかよ……色恋に詳しい訳じゃないが、なんとなく昼ドラ感のあるドロドロとした関係に段々見えてきたぞ……絶対フレアさんに気があるだろ……
「それにフレアよ、幾ら君が気にしないと言っても周りはそうではないんだよ……この僕を含めてね。平民と貴族は区別しなければならない……でなければ国の安定が崩れてしまう!」
「それは詭弁でしょう!国の安定ではなく貴族の安寧のために区別しているようにしか私には思えません!」
「フレア……そんな我が儘を言うのは止めたまえ!君の品位が落ちてしまう!」
「そんなの関係ありません!私は助けられた御恩に報いたいだけです!」
フレアさんの気持ちは素直に嬉しい……だが、元々はシャイニーが提案した貴族に恩を売れば都合がいいかもしれない……という理由が発端で助けに入っただけだ。もちろん、俺自身は見捨てたくないって想いもあったが、平民と貴族が一緒にいるだけでこんなに拗れるとは思ってもなかった……
きっと俺が立ち去ればここで今起きている問題は解決する……
これ以上フレアさんに迷惑はかけたくない。
俺はそっとフレアさんとの距離を少しづつ取ろうとしたが……
フレアさんが悲しそうな表情をしながら横目で俺を見てくる。
「ユウキとやら……1度しか言わないぞ、フレアから離れてここから立ち去れ!平民風情がこの場所に立つ資格はない!」
そんな悲しそうな表情をしないでほしい……どうしたらいいんだ!
「ユウキ?あの人間にデュエルを申し込んでください。本当はここで逃げたくないんでしょ?」
「デュエルって……解決するのかそれで?」
「!?……そうです!イアン様!ユウキ様とデュエルをしてください!彼が勝てばここの場にいる権利を認めてくださいますね?」
フレアさんがシャイニーの言った提案に乗っかるように、イアンという貴族に交渉を持ちかけた。
正直に言えば、フレアさんが俺に対してそこまでする理由が分からない。とても恩返しだけでここまでするとは思えないし、何か理由でもあるのか?
「平民のくせにデッキを持っているのか……まぁいいだろう。貴族たる者そして、デュエリストたる者!申し込まれたデュエルは受けるのが礼儀……僕が勝てばここから出て行ってもらう。君が勝てばここにいる事を僕は認めよう」
俺に選択の余地はない……きっとこれがこの世界での貴族と平民の格差の様なものなんだろうな。だったらここは敢えてこのデュエルに乗ってみよう。言われっぱなしも嫌だし、何よりさっきからコイツの言っている事がなんとなく気に入らない!だったら!
「いいぜ!受けるぜそのデュエル!」
「やりましたね!ユウキ!闇の尖兵との戦いから2連勝ですよ!」
「あ、あぁ!そうだな!」
俺は空元気にも似た返事でシャイニーに返事をした。
正直に言えば、俺は内心混乱していた。折角勝ってお姫様達を救えたのに、なんだか心の内がモヤっとした。
司ならこんな時なんて思うんだろう……なにをするんだろうか。
「ユウキ様……でよろしいでしょうか?」
可憐な声色と共に後ろから近づいてきたのは、赤いドレスを着た赤いゆるふわロングのお姫様だった。年齢は恐らく俺と変わらないんじゃないだろうか。
「あ、はい!いいですよ!」
正直めちゃくちゃ可愛いから話しするだけで結構緊張する……
「この度は危ない所を助けて頂きありがとうございます」
深々と一礼をした後、後ろにいた騎士っぽい人とメイドっぽい人も続けて礼をしてきた。
「いえ、その……よかったです、助けられて!」
「ちゃんとしたお礼がしたいので、どうか私達と共に同行をして頂けないでしょうか?」
こういう時ってちゃんとお礼を受け取った方がいいんだよな?
ちらっと俺はシャイニーを見た。
「いいんじゃないですか?貴族様がお礼と言っているんですから、受け取らないと無作法ですよ、ユウキ」
シャイニーの言質が取れたところで俺は了承の言葉を言った。
「分かりました!ご迷惑でなければついて行きます!」
「うふふ、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ?」
いや無理だろ緊張するよ!貴族だろ?作法とかよく分かんないし。それにこのお姫様見れば見る程可愛いな……
「姫様!どうやら我々の帰りが遅いためか、迎えの馬車と騎士達が来たようです!」
凄い声が大きい騎士さんだな……
「フレア様、あの者達はどういたしますか?」
メイドさんがお姫様に指示を仰いでいた。
あのお姫様フレアって名前なのか。
「そうですね……連行します。逃げられないように縛ってください」
「ふざけんな!なんで俺達だけこんな目に会わなきゃならねーんだ!」
野盗の下っ端達がそうだそうだと騒ぎ立て始めた。
こうなってくると、少し可愛そうにも思えてしまう自分がいた。
「……その件に関しては持ち帰って検討します。ですが、だからといって貴方たちの仕業を見過ごす訳にはいきません。大人しく連行されてください……」
そう言ったフレアと言うお姫様の表情はなんだか悲しそうに俺には見えた。
お姫様を迎えに来た大きな馬車の荷台に野盗達を連行した後、俺達はお姫様達が元々乗っていた馬車に一緒に乗り、町へ向かい始めた。
馬車の中には俺とシャイニーの他にお姫様とメイドさんがいた……俺場違いじゃないかな?
「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私は赤の国の第2王女のフレア・フォン・ヴァーミリオンと申します。この度は助けて頂き重ねてお礼を申し上げます……」
「いえ!頭を上げてください……そんなに感謝されなくても大丈夫ですから。俺は白井遊輝って言います!えと、フレア……様でいいんでしょうか?」
フレア様が頭を下げるから俺も咄嗟に頭を下げながら自己紹介をした。
「呼びやすいならなんでも構いませんよ?呼び捨てでも構いませんし」
「フレア様!流石にそれは……」
メイドさんの異議申し立ては最もだ。俺でも流石に呼び捨ては気が引ける。
「いいのです。デッキを持っている時点で最早貴族と同等の立場になっていると言っても過言ではありません。それに命の恩人であるこの方に私に対して必要以上の敬意を払って欲しいとも思いません」
「なら、フレア”さん”と呼んでもいいですか?」
様呼びは俺もなれないし、さん呼びならまだいいだろう。
「それで呼びやすいのでしたら私は構いません」
「分かりました。フレア様がご納得されているようでしたら私からはこれ以上はありません」
メイドさんも納得したみたいで引き下がった。
フレアさんはなんというか、自分を低く見積もっているような印象がするんだが気のせいか?
「それにしても謙虚なんですね。命の恩人なんですし、ここは横柄になにかを要求してくる場面かと思いましたが……どうしてしないのですか?」
それが普通なのか?
俺の一般常識だと、それは恩着せがましいって思うんだが……
「なんでって言われても……」
「ユウキはあまり頭がよくないからそんな高等な交渉術なんて持っていませんよ?」
「よくないって言うなよ!変な印象になるだろ!」
「ユウキとは会って間もないですが、あまり頭がよくないのは分かっていますよ?なので事実だからしょうがないです」
こいつ言いたい放題言いやがって!
「うふふ、仲がよろしいのですね」
「揶揄ってるだけよ」
シャイニーがフレアさんに訂正をさせた。
「にしても、何故野盗なんかに襲われていたのでしょうか?貴族でしかも赤の国の第2王女様ならカード1枚どころかデッキだって持っている筈でしょ?」
「そうなのか?」
俺はシャイニーに質問した。
貴族なら持っていてもおかしくないってどういう事だ?
「貴族に属する者は基本的に魔力を有している人間が多いんですよ。貴族は貴族同士で結婚して子を成しますから、子供に魔力が遺伝しやすいんです」
シャイニーが俺に詳しく教えてくれた。
成程、魔力も親譲りな所があるんだな。
「シャイニー様でよろしいでしょうか?女神様の使いの精霊様」
「様も敬語もいらないです。呼びやすいので構わないですよ」
なんとなくシャイニーは俺以外の人間に対しては当たりが強い気がする……
「分かりましたわ、では、シャイニーと呼ばせて頂きます。シャイニーの考える通り、私はデッキを持っています……ですが今日は精霊との契約の儀を行っていましたので、魔力が残り少ない状況でした。なのでとてもデュエルできるような状態ではなかったのです」
精霊との契約……そうか、俺はシャイニーがいるから契約とか考えなくてもカードが手に入ったけど、この世界の人は契約しないといけないんだよな……
改めて自分が恵まれた環境にいる事を再認識したな。
「さぁもう直ぐ着きますわ。赤の国の首都ヴァーミリオンです」
馬車の窓から外を見た。
町並みが綺麗だな……赤レンガで作られた建物の数々とひと際大きくて目立つ堅牢そうな城……とても栄えていそうだな。
俺達を乗せた馬車は野盗達が乗っている馬車と分かれ、町の裏口のような場所から町の中へ入り、大きな城の敷地内に入った。
「着きましたわ、降りましょうユウキ様」
フレアさんに促され、俺は馬車を降りた。
そういえば、俺には様をつけるのか……俺がさん呼びなのに変だよな……訂正しとかんとな。
「やぁフレア!帰りが遅くて心配したよ!」
俺がフレアさんに話しかけようとした時、随分と親しげにフレアさんに話しかけて来たのは俺と同い年くらいの金髪の青年だった。
「イアン様、ご心配をおかけしました……」
「いやぁ良かったよ!君が無事でなによりだ!さぁ契約の儀で疲れただろう?まずはお茶でも飲んでゆっくり……ん?」
なんだか急に俺の方を見てきたんだが……
「君は誰だい?従者でも騎士でもなさそうだし……」
「この方は私の命の恩人のユウキ様です。助けられた御恩を返す為に私達に同行して頂いたのです」
「君は貴族なのかい?」
なんでそんな事聞くんだ?
「いえ、俺は貴族じゃないです」
正直、俺のこの世界での地位なんてないに等しい。そう考えれば平民とかになるんだろうか?
「き、貴族でもないのにフレアと一緒の馬車に乗っていただと!?フレア!君は正気なのかい?貴族ではないという事は平民だろう?貴族ともあろう者が、平民と共に馬車に乗るなど……」
「命の恩人に貴族も平民もないでしょう?私は気に致しません。それに……私に感けていないで、婚約者であるお姉さまの所へ足を運んだ方がよろしいのでは?」
「もちろん君の姉君であるクレアの所へは行くさ。だが、その妹である君の帰りが心配で、わざわざ僕は足を運んだのだ。そのような言い草は連れないじゃないかフレア」
この人フレアの恋人かと思ったんだが、フレアのお姉さんの婚約者なのかよ……色恋に詳しい訳じゃないが、なんとなく昼ドラ感のあるドロドロとした関係に段々見えてきたぞ……絶対フレアさんに気があるだろ……
「それにフレアよ、幾ら君が気にしないと言っても周りはそうではないんだよ……この僕を含めてね。平民と貴族は区別しなければならない……でなければ国の安定が崩れてしまう!」
「それは詭弁でしょう!国の安定ではなく貴族の安寧のために区別しているようにしか私には思えません!」
「フレア……そんな我が儘を言うのは止めたまえ!君の品位が落ちてしまう!」
「そんなの関係ありません!私は助けられた御恩に報いたいだけです!」
フレアさんの気持ちは素直に嬉しい……だが、元々はシャイニーが提案した貴族に恩を売れば都合がいいかもしれない……という理由が発端で助けに入っただけだ。もちろん、俺自身は見捨てたくないって想いもあったが、平民と貴族が一緒にいるだけでこんなに拗れるとは思ってもなかった……
きっと俺が立ち去ればここで今起きている問題は解決する……
これ以上フレアさんに迷惑はかけたくない。
俺はそっとフレアさんとの距離を少しづつ取ろうとしたが……
フレアさんが悲しそうな表情をしながら横目で俺を見てくる。
「ユウキとやら……1度しか言わないぞ、フレアから離れてここから立ち去れ!平民風情がこの場所に立つ資格はない!」
そんな悲しそうな表情をしないでほしい……どうしたらいいんだ!
「ユウキ?あの人間にデュエルを申し込んでください。本当はここで逃げたくないんでしょ?」
「デュエルって……解決するのかそれで?」
「!?……そうです!イアン様!ユウキ様とデュエルをしてください!彼が勝てばここの場にいる権利を認めてくださいますね?」
フレアさんがシャイニーの言った提案に乗っかるように、イアンという貴族に交渉を持ちかけた。
正直に言えば、フレアさんが俺に対してそこまでする理由が分からない。とても恩返しだけでここまでするとは思えないし、何か理由でもあるのか?
「平民のくせにデッキを持っているのか……まぁいいだろう。貴族たる者そして、デュエリストたる者!申し込まれたデュエルは受けるのが礼儀……僕が勝てばここから出て行ってもらう。君が勝てばここにいる事を僕は認めよう」
俺に選択の余地はない……きっとこれがこの世界での貴族と平民の格差の様なものなんだろうな。だったらここは敢えてこのデュエルに乗ってみよう。言われっぱなしも嫌だし、何よりさっきからコイツの言っている事がなんとなく気に入らない!だったら!
「いいぜ!受けるぜそのデュエル!」
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