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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第84話:史上最悪のパーティー結成

第84話:史上最悪のパーティー結成 作:チュウ

 俺とフィオラ、クロリムは青の国の第1王子であるウカリ王子のいたテントを後にし、ある人物の元へと合流した。

 「遅いですよ。何をしていたのですか?」

 「よ!こないだ振りじゃん」

 遅いと忠告をして来たのは外谷宗次郎さんだ。相変わらず全身白い服を着ていて趣味が悪いと感じる。軽い挨拶をして来たのは、この間散々フィオラに酷い事を言った大圓寺正義だ。自分のやった事を忘れていると思うばかりの振る舞いに呆気に取られてしまった……

 「あぁ、ウカリ王子と話しをしていて遅くなりました」

 俺は宗次郎さんに向けて釈明をした。正義の挨拶は無視した。

 「そうでしたか、それはお疲れ様でした。ですが、それは大事な事です。ウカリ王子もこの国を背負う立場のある方……言わば我々の上司です。あいさつ回りという礼節は欠かせませんからね。立派な務めだと思いますよ」

 まぁ、上司には違いないが……何となくズレている気はする。

 「てか、マジで司って王女様と仲いいんだな?前の時も今も手繋いでいるしさ!マジでつき合ってねーの?」

 普段から移動の時は手を引いている事が当たり前になりつつあるから考えた事もなかったな。傍から見たらそう映るよな。

 「前にも言っただろ。同じ事を言わすな。彼女は国王様からお預かりしているだけでなにも……って痛っ!」

 急にフィオラが爪を立てながら手を握ってきたので、フィオラの方を俺は見た。

 「……だけってなに?ツカサと私の仲はそんなんじゃないでしょ?私はもうツカサなしじゃ生きられないんだよ?だからそんな事言わないでほしいな?」

 目が怖いんだが……圧が凄い。てか、滅茶苦茶話せるじゃんかよ!な、何で急に話せるようになった?てか、話しの内容的にこの場で言うのは不味くないか?

 「うっわ!出た出た、ヒス女……こえー。それって依存ってやつだろ?司もご愁傷様だな!」

 「……は?ツカサは私の想いをちゃんと受け止めてくれるの。お前みたいな器の小さい奴とは違うの、分かる?私が何もできない時にツカサは私の身体もちゃんと洗ってくれたの。そこまでお前にできるの?」

 「公衆の面前でいったい何の話しをしているのですか!これから魔人族を倒すという仕事なのですよ!仕事というのはその出来によって評価が大きく変わってきます!だからこそ・・・」

 収集つかねーよ……突っ込みたい事が多すぎる。
 クロリムは明後日の方向を見ながらボーっとしているし……

 「おい!いい加減にしてとっとと行くぞ!外谷さん、案内をしてください!仕事に遅れますよ!正義は一旦黙れ!フィオラは俺から離れずについて来い!クロリム、ボーっとしてないで行くぞ!」

 無理やりと言っていい程、強引に全員の歩を進めさせた。
 何でこんな気を回さないといけないんだ……はぁ……

 宗次郎さんの案内の元、俺達は目的地へと向かった。現状を聞いた感じだと、青の国が魔人族が根城にしている城を攻め落とそうと攻め続けているらしい。戦局は青の国優勢だが、城へ中々近づく事ができずに膠着してしまっているらしい。

 「それで、俺達は何をするんですか?」

 俺は現状を宗次郎さんから聞いた後、素直な疑問を投げかけた。

 「どうやら敵城内にスパイがいるらしく、我々を手引きをしてくれる算段になっています。そして、我々が場内の統制をかき乱し、場外にいる青の国の兵士達が攻めやすい状況を作る……そういった作戦です。つまり!この戦局を変えられるかは我々の双肩に掛かっていると言っても過言ではないという事です!」

 スパイか……というか、当たり前の様に話しが進んでいるが、何で魔人族を攻めているのかを聞いてなかったな。宗次郎さんは知っているか?

 「あの、何で青の国は魔人族を攻めているのか宗次郎さんは知っていますか?」

 「私も直接聞いたわけではないですが、国王様とウカリ王子は人間以外の種族をとても嫌っているご様子でして、遥か昔より青の国領内に魔人族が住み着いていると分かってはいたのですが、どこに住んでいるのかも分からず、またその攻め込む兵士を揃えるのにも大変苦労をされたと聞きます」

 国のトップが嫌ってるのか……

 「ここ最近になってようやく魔人族の根城を見つける事ができたため、侵攻作戦を本格的に開始したという事みたいですよ?」

 「つ、つまり他種族が嫌いだからというだけで戦争をしているというんですか?……」

 「聞いた話しだけを纏めるとそういう事になりますね。ま、上の決めた事は絶対です。我々はそれを遂行するのみですよ。余計な事は考えない様にしてくださいね司君?」

 この国って本当に差別的で排他的だな。国王が望むダークネスの世界へ行けるのは人間族だけって事か……王子も美しさに固執しているし、人間以外は美しくないって考えなんだろう。
 それにしても、宗次郎さんの人柄が少しずつ見えてきたな。長い物には巻かれろというか、自分の評価をひたすら気にする人って印象だ。言っている事も一見合っているように聞こえるが、どことなくズレていると思うし極論とも取れる。当人は仕事を全うしているんだろうが、果たして本当に全うできているかは疑問だな。あまりこの人の言う事を真に受けない方がいいな。

 「分かっています。では、早くそのスパイをしている方に会いに行きましょう」

 俺は宗次郎さんの言葉を軽く流し、目的の人物に早く会う様に催促した。

 「そうですね、急ぎましょう」

 俺達は戦場の脇にある森を抜けて魔人族の拠点とする城近くまで来た。すると、一人の魔人族と思われる人物が空からいきなり現れた。

 「おわ!?ま、魔人族じゃねーかよ!」

 「見つかったのよ!?」

 正義とクロリムが驚く中、俺はいつでもデュエルができる様に構えた。ただ、一向にこちらに攻撃を仕掛けてくる気配がない。

 睨み合っていると、宗次郎さんが何かの合図なのか手でサインを目の前の魔人族である女性に送った。そのお返しとばかりに宗次郎さんとは別のサインを手で送り返してきた。

 「やはり貴女でしたか。魔人族側にスパイをしている方というのは」

 今のやり取りは味方同士にしか分からない暗号サインだったのか。敵に見つかったのかと焦ったぞ。

 「えぇ、お待ちしておりました。私はサリエラと申します。以後お見知りおきを」

 優雅に一礼し、にこやかにそう答えたその女性の服装は修道服を着ており、背中には悪魔の羽の様なものが生えている。魔人族なのに人間側に味方してくれるのはどういう意図があるのだろうか?純粋に気になってしまう。確か、クロリムの話しでは魔人族は人間をかなり敵視していた筈だが……

 「これはご丁寧にどうも……私は青の国及びモディファー様より派遣されました、外谷宗次郎と申します。本日はよろしくお願いいたします」

 いや、営業先への挨拶かよ!っていうくらい丁寧な挨拶だな。今は別にそこまでしなくてもいいんじゃないか?やっぱりちょっとズレてる気がするんだよな……

 「フフ、えぇ、よろしくお願いしますね?宗次郎様」

 「いや、ははは、よ、よろしくお願いします。はい」

 分かりやすく鼻の下を伸ばすなよ……まぁ、サリエラさんだったか?容姿もスタイルもかなり整っているし、男として分からなくはないが……

 「……ツカサもああいうのが好みなの?ねぇ、私じゃダメなの?身長も低いし、胸もないし……やっぱりスタイルのいい人じゃないとツカサは振り向いてくれないの?」

 うん、知ってた。来ると思っていたよその類の言葉。何となくフィオラの傾向が見えてきた気がする。てか、滅茶苦茶話す様になったな。内容はアレだが……

 「見た目だけで選ぶ訳ないだろ?俺はちゃんとその人の内面も大切にしている」

 「……じゃあ私はきっとツカサの好みじゃないんだよね……根暗だし、何もできないし……ツカサにお世話されてばっかりだし。でもでも、ツカサにお世話されるのが私はとても好きなの!だから辞められなくて……でもでも、それがきっと負担になっているんだよね……死にたくなってきた……」

 はぁ……話す様になってもまだこれか。というか、負担云々は考えていたんだな。

 「それで負担に思っているならとっくに離れている。根暗なのは周知の事実だし、今更だ。何もできないかは俺にはまだ分からないが、少なくとも俺にデュエルの手ほどきをしてくれるだろ?それに助けるって約束しただろ?」

 「……私が助かったらいなくなる?」

 助けたらか……考えていなかったな。最初は正直、仕事仲間だからとかの理由で関わり始めたが、この数日間でそれが当たり前の日常になってきて、フィオラがほっとけなくなってしまったな。たぶん、自分で思っているよりも情が移ったんだろう。今は仲良くしていきたいと思っている自分がいる。

 「一年やそこらでフィオラの症状が良くなるとは思っていないし、助かっても仲良くしていきたいとも思っている。長い付き合いになるんだ、別れる事よりも一緒にいて楽しい事を考えないか?」

 「……ツカサは優しいよね。私の面倒な話しにも付き合ってくれるしさ……一応自覚はあるんだよ?でも、ツカサなら聞いてくれるって思っちゃうとつい甘えて色々話し過ぎちゃうんだ。でも、そうだね……楽しい事も考えられる様にしていかないとね」

 フィオラの表情が少し明るくなった気がする。どうやら落ち着いたようだな。

 「お熱いですね?」

 サリエラさんが俺達の間を覗き込んで来た。

 「見世物じゃないですからね?」

 俺はサリエラさんに忠告をした。

 「見せつけているのかと思いましたが?」

 何でだよ……茶化しているなこれは。

 「……ツカサにちょっかい掛けないでね?」

 「そんな事しませんから安心してください」

 フィオラが牽制するも、なんのことかと躱すサリエラさんだった。

 「ホントお前らの関係ってめんどくせーよな!好きか嫌いかでいいじゃんかよ」

 「言いたい事は分かるが、正義のそれは短絡的過ぎだろ……」

 俺だって正義の様な考えに賛成だが、存外人間関係ってシンプルにはいかない事の方が多い。まぁ、正義の場合はそこまで考えていないと思うが……

 「全く!さっさと行きますよ皆さん!ねぇサリエラさん?」

 「そうですね。行きましょうか」

 宗次郎さん、サリエラさんに話すきっかけを待っていたかの様な口ぶりだな。そして、それを知ってか知らずかは分からないが、宗次郎さんに対してにこやかに対応するサリエラさん。正直、この人は自分を見せていないと言うか見せない人の様に感じる。なんというか、壁を感じるんだよな。

 そんな事をしつつ、俺達はサリエラさんの案内で難なく城の中へ入る事ができた。

 「あっさり入れるもんなんだな~」

 「当然でしょう!サリエラさんがこの日のために準備をして下さったのですから!ね、サリエラさん?」

 宗次郎さん、凄いサリエラさんを持ち上げるな……

 「フフ……えぇ、今の城内で戦える戦力は城の入口などに固まっていますからね。魔人族の方々もまさか自分達しか使わない裏口を使われるなんて思っていないでしょう。さぁ、城主はこの最上階ですので行きましょう」

 本当にもぬけの殻と言わんばかりに誰もいない。戦闘音や魔人族の声は確かにするが、その殆どが城門付近だ。これなら、誰にも見つからずに再紹介まで着きそうだな……って思っていたら。

 「そこで何をしている!き、貴様はサリエラ!?何故人間と一緒にいるんだ!まさか裏切ったのか!」

 「流石に見つからずにとは行きませんでしたね……えぇ、その通りですよ?端からあなた達の味方ではありませんでした」

 見つかってしまったか……サリエラさんも端から全く見つからずにとは想定していなかったみたいだな。しかし、随分な言いようだな。同じ魔人族なのに……全く気にしていないという様子だ。
 ともあれ、仲間を呼ばれると不味い。その前にデュエルに持ち込まないとな。

 「よっしゃ!ここは俺にまかせて先に行け!」

 正義が張り切ってそう言った。

 「お前の事だから大将首でも狙っていると思ったが?」

 俺は純粋に思っていた事を伝えた。

 「いや、もう失敗できねーからさ……次失敗したらモディファーに何言われるか分かんねーし。コイツなら負けねーだろ」

 セコイ……失敗したくないから適当に戦果を上げようとしているだけじゃないかよ。

 「貴様……人間風情が舐めるな!いつまでも我々魔人族がデュエルができないと思っている!」

 クロリムの話しでは、人間以外の種族はデュエルが苦手という事だったな。なまじ魔法が得意なせいで、デュエルの知識や技術が遅れているとか何とか……種族としての数も少ないし、それを研究したり受け継いだりする者が少ないのも原因の一つだったか?
 だが、それも昔の話しだし、今は違うのかもな。

 「な~に言ってんだよ!前に戦った魔人族達は全然相手にならなかったぞ?どの口が言ってんだよ!」

 正義は戦った事があるのか?そういえば仕事が失敗してモディファーに怒られたとか言ってたか。それって今回の魔人族との戦争に関するものだったのかもしれないな。

 「舐めた口が減らない人間だ……貴様らと同じ土俵で戦ってやろうというんだ。有難く思え!魔法での戦いなら貴様ら人間など敵ではないのだからな!」

 プライドが高そうな言葉だな。こういう一面もデュエルが苦手な部分に響いてきてそうだな。人間と同じ事をしなければならないという、俺からしたら意味の分からない屈辱的な理由?のせいで嬉々としてデュエルを上手くしようなんて思うやつもいないんだろうな。

 「そんなのデュエルができない負け惜しみじゃねーかよ!皆は俺に構わず先に行け!ここは俺に任せろ!」

 凄く楽しそうな表情……言ってみたかったんだろうな、そのセリフ。

 「なら任せたぞ!サリエラさん、先に行きましょう」

 「よろしいのですね?では行きましょう皆様」

 俺は正義にここを任せる事にしてサリエラさんに案内を催促した。正義のモディファーに怒られたくないっていう考えと、魔人族との戦闘経験があるというのを鑑みて大丈夫だと俺は判断した。怒られたくないなら分の悪い戦いは挑まないだろうからな。

 「私がこのパーティーのリーダーなんですよ!勝手に指示を飛ばさないでください!」

 宗次郎さんが俺に注意をしてくるが、見つかった以上は早急に目的地まで行って役目を果たす必要がある。向こうの人数は分からないが、こっちは少数だ。数で圧倒されたら負ける。判断は速い方がいいだろうと思い、聞こえないフリをした。

 「もう直ぐ魔王の間です!」

 城の内部はとにかく階段だらけだった。上へ上へと登るのは正直疲れる。魔人族は普段からこんなのを往復しているのかと感心しかかったが、よく考えたら魔人族は羽があるから飛べるのだから平気なのか。

 そんな事を考えていると、どうやら目的地に着く様だ。

 「む!?何故人間がここにいる!」

 「いや、待て!貴様、サリエラではないか!人間と一緒にいるという事は、裏切ったのか!」

 魔王の間とやらの扉前には魔人族の兵士と思われる二人組がいた。流石に警備なしとはいかないよな。

 「元より仲間ではありませんでしたけどね?どうしますか、宗次郎様?」

 サリエラさんが淡々と仲間ではなかったと宣告をした。どの程度スパイ活動をしていたかは分からないが、情とかは少しも湧かないのだろうか?仮にも同族だし。というか、元よりという事は元々人間側って事だよな?その辺り、サリエラさんの事情がよく分からないな。勝ち馬に乗った……そんな単純な理由とも思えないし。

 「そうですね……司君、ここはお願いできますか?私はサリエラさんと一緒にボスを叩きますので」

 まぁ、いいか。一応このパーティーのリーダーって言っているし。宗次郎さんが倒してくれるのであれば俺も楽ができる。そもそも、俺は無理やりこの戦争に関わっているのだからボスとやらを倒す事には固執していない。やってくれるのならやってもらおう。

 「それで構いません」

 俺は了承した。そして、直ぐに宗次郎さんとサリエラさんは魔法の間に向かった。

 「舐めた真似を!」

 「おい、よく見たら人間の子供じゃないか?なら楽勝じゃないか?」

 完全に舐められているな。

 「で、二人で戦うのか?それとも、片方だけが戦うのか?それとも、そこの黒くて小さい精霊が戦うのか?」

 クロリムが戦う訳ないだろ……フィオラは強いから一人で無双しそうだが……ここは。

 「俺が相手になる。で、どっちから来るんだ?」

 「ハハハッ!バカが!ここが戦場という事を分っていないようだな!こうやって戦うんだよ!決闘魔法!【強制決闘】(コンパルジョン・デュエル)+【賭け決闘】(アンティデュエル)を発動!」

 魔人族の片方がそう言うと、二人が持っているデュエルディスクから紫色のチェーンが俺の持つデュエルディスクに繋がれた。

 「ひ、卑怯なのよ!これじゃ2対1じゃないのよ!」

 クロリムが驚いた感じで訴えていた。俺は何をされたのかイマイチ理解しきれていなかった。

 「クロリム!これは何なんだ!」

 「昔話しで戦争の話しをしたと思うけど、その時に人間が開発した相手と強制的にデュエルさせる魔法と、お互いに何かを賭けてデュエルを強要する魔法なのよ!」

 は!?なら強制的に2対1をやらされるのか!?冗談じゃないぞ!

 「お前らが作った魔法が、我々に使えないとでも?自分達で決めたルールだろ?守るよなぁ?」

 「……ツカサ!わ、私も戦うよ!」

 フィオラが参戦の意思を訴えたが……

 「ダメなのよ!この魔法が掛かってしまったら、乱入によるデュエルはできないのよ!」

 どうやら一人で二人を相手にしないといけないらしい。

 「俺達が勝った時のアンティルールはお前の命を要求する!お前は何を俺達に賭けて欲しいんだ?」

 い、命を賭ける……ここまで戦いらしい事がなかったからか、今になってそれが現実なんだと実感させられる。もう蚊帳の外じゃないんだ……しっかりしなければ。

 「確か、人間達は我々を頻りにカードに封印していたな。貴様もそれが望みなのだろ?腹立たしい!仲間の無念をここで晴らさせてもらう!」

 俺は関係ないって言いたいが、それをやっている奴らの味方っていう立ち位置だからな……そんな事は言えない。目の前の魔人族達も多くの仲間を封印されたんだろう。だからと言って、ここでやられるわけにはいかない!

 「分かった、それでいい。デュエルだ!」

 文字通り命がけの戦い……絶対に勝つ!
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