81 クリスティアホールの夜　作：ギガプラント

（Ｍ.Ｃ.Ｃデュエルセンター）



光輝「…まさかデュエル関連のイベントがことごとく中止になるなんて。」


大駕「どうも釈然とせんのう…。露骨にひた隠しにされている感じが気持ち悪いわい。」


奏「………」


光輝「何かしら事情があるんだろうけど、デュエルに関するイベントだけだなんて…一体何があったんだろう。」


大駕「ふむぅ……。」


奏「………」


光輝「…奏？」


奏「………………」


光輝「奏、どうかしたのかい？」


奏「えっ？あ、光輝………ううん。何でもないわよ。」


光輝「そうか。ならいいんだけど…。」


大駕「…ジュニア大会の事は残念じゃったの。」


光輝「うん。子供達も皆残念がってた。」


奏「うん……。」


大駕「…まぁ今すぐ立ち直れとは言わん。が、あまり無理をせぬようにな。」


大駕「儂は先に失礼するぞ。」


光輝「あ、お疲れ大駕。」


奏「お疲れ。」





光輝「僕達も上がろうか。」


奏「…光輝。」






奏「私ちょっと用事があるから、先に帰ってくれる？」









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（？？？）



マヘル「アブソーバー運搬部隊は出たか。」


平留「…はい。ですが本当に今日中で宜しいのでしょうか。」


平留「先にも言ったとおり、明日紛れ込ませることも可能なのですが。」


マヘル「当日に荷物に紛れ込ませるのはリスクが高かろう。幾らお前が居るとはいえ常に監視できるわけではあるまい。」


平留「それはそうですが…。」


マヘル「言いたいことは分かる。何せ会場はあのクリスティアホール、警備も一段と強化されていよう。」


平留「…やはり私も行くべきでは」


マヘル「まぁ待て、万が一にもお前の顔が見られるのはマズい。明日の公演自体が中止になるのはなんとしても避けねばならんからな。」


平留「私はそんなヘマは致しません。」


マヘル「信用していないわけではない。だがこれも作戦の内だ。」


平留「……分かりました。」



マヘル「…ラーナのところへ行ってくる。」


平留「………」


マヘル（本当は私も向かいたいところだが……今はラーナを一人放っておけん。）










平留（心配なのはあの娘達だけでまともに作戦が遂行できるかというところなのだけど…。）






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（クリスティアホール・裏口）



アリス「っくしゅん！！」


双葉「アリス……大丈夫？」


ヴァルト「アリス様、夏とはいえ夜は気温が下がります。お身体を冷やしませんよう。」


アリス「平気だっつの！！どーせあの冷血女が噂でもしてんのよ！」


アリス「ったく、アイツが作戦の鍵になるとか言ってたけど、本人がサボってんじゃないのよ。」


ヴァルト「彼女は明日の主役ですから、念の為とのことです。」


アリス「マヘルはビビりすぎなのよもぉ！」


双葉「まぁまぁアリス、任務も今日でおしまいだから…。」


アリス「あー頭にくる！ちょっと双葉、これ中に置いてきて！」



アブソーバーの入った包みを渡す。



ヴァルト「私達はここで待機していましょう。大勢で入って警報を潜るのはやや手間ですから。」


ヴァルト「双葉…お願いできますか。」


双葉「うん。平気だよ。行ってくるね。」



奪った鍵で開けられた出入口から、ホール内に入っていく双葉。




アリス「ふん！とっとと終わらせて帰るわよヴァルト！」


ヴァルト「最後まで油断はなさいませんよう…。」






アリス「うるさいわね！！！！分かってるわよ！！！！」






ヴァルト「申し訳ありません……それとアリス様、お言葉ですが少々お声が」
アリス「分かってるっていってるじゃない！！」


ヴァルトの足を蹴り上げる。


アリス「一々突っかかってくるんじゃないわよ馬鹿執事のくせに。」






ヴァルト「…申し訳ございません。」


蹴りつけられた足を見つめるヴァルト。ヒシヒシと痛みが込みあがってくる。



ヴァルト「…………」


ヴァルト（こんなものではとても償いきれない。）


ヴァルト（私は………私はまだまだ裁かれなければならないんだ……。）


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（上波クリスティアホール前）



奏「…ここか。」


奏（実際に来るとやっぱり大きいわね。）


奏「例の連中が次に何かをするとしたら……大きなデュエルイベントが控えている此処よね。」



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竜太「おい！アストベリー杯後にジュニアスペースでも大会やるんだってよ！」


「ほんとうか！？」
「やった！俺参加する！」
「デッキを強くしなきゃ。」
「わたしも出てみようかなぁ…。」
「優勝はぼくが頂きますよ。」
「わーいおいらもー！」


初「僕も……出てみようかな。」


竜太「おい初！大会じゃぜってー負けねえかんな！！俺に当たるまで負けんじゃねーぞ！」


初「う、うん！」



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奏（皆……。）





奏（ジュニア大会……皆あんなに楽しみにしてたのに。）


奏（それもこれも全部…！）


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大駕「カードを１枚奪われた。」


大駕「とびきり高価な奴を一枚な……全く、やってくれるわい。」

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奏「数に物言わせて大人数でカードを奪い取る……本当に最低な連中ね。」


奏（ジェネシック本社に盗みに入って、アストベリー杯を台無しにして、そして……今度はジュニア大会まで…。）


奏（あの子達が一体何をしたっていうのよ…！どうしてこんな……）




奏「絶対許さないんだから…。」


奏「大駕やあの子達の敵(かたき)………絶対に！」







？「……いわね！……ってるわよ！」







奏「えっ？」


奏（小さな女の子の声？こんな時間に？）


奏（……それに今の声どこかで）


奏「なっ！？」



裏門前に警備員らしき男が二人倒れている。



奏「ちょっと！大丈夫ですか！？ねぇ！！」


奏（気を失ってる…どうして…。）


奏「っ！まさか！！」


二人の警備員を後にし、ホールのゲート内へ駆けていく。





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ヴァルト「っ！？」


アリス「誰か来る！？警備員は寝てる筈なのに…！」





奏「なっ……！！」




アリス「ちっ…！あぁもう面倒なんだから！」


ヴァルト「やむを得ません、押さえます！」


奏「貴女……アリスちゃん！！？なんでこんなところに…！」


アリス「はぁ！？誰よあんた！気安く話し掛けんなっつーの！！」


奏「私よ！対嶋奏よ！この間会ったでしょう！？」


アリス「んなっ！？あん時の変なおせっかい！」


ヴァルト「…成程、どこか見覚えがあると思いました。」


奏「ねぇ！？なんであんた達こんな……まさかさっきの警備員達も…！」


アリス「あーもーうっさい！！ヴァルト！逃がすんじゃないわよ！」


ヴァルト「はい。ですが中の双葉を放ったまま無暗に力を使うのは危険です。」


奏「中に仲間がいるの！？それじゃアンタ達が例の…！」


アリス「ふん！だったら……こうすりゃいいのよ！！！」



突如アリスの袖の中から光の帯が飛び出す。

目にも止まらぬ速度で飛び出したそれは、奏のもとまで伸びると一瞬の内に腕に絡みつく。



奏「きゃっ！！何っ！？」


奏「これって……防犯用のバインドアンカー！？」


アリス「さっきの奴等から奪っておいて正解だったわね！さぁもう逃げられないわよ！大人しくやられなさい！」


奏「なんなのよ……まさか大会を滅茶苦茶にしたのは本当に…。」


アリス「ふん！だったらなんだってのよ。」


奏「っ！？」


ヴァルト「これ以上話す事はありません。貴女に恨みはありませんが、一気に仕留めさせて頂きます…！」


奏（バインドのせいで逃げられない…ここは戦うしか…！）






dPhoneモードチェンジ！Ｄパッドモード！



ターゲットロックＯＫ！



ビジョンリンクＯＫ！



ファーストディールＯＫ！



デュエル！！





アリス「先攻はあたしよ！あたしのターン！！」


アリス「速攻魔法！『メルヘン・プロローグ』を発動！」


アリス「手札の御伽現影モンスター２体を、魔法＆罠ゾーンに設置する！」


アリス「私は『御伽現影 ヘンゼル』と『御伽現影 グレーテル』を設置！」


フィールドに二種類の本が現れる。


奏「魔法＆罠ゾーンにモンスターを…！？」


アリス「更にもう一枚！魔法カード『童話解放』を発動！魔法＆罠ゾーンの御伽現影モンスター１体を特殊召喚する！」


アリス「御伽現影グレーテルを特殊召喚！」星３・ＤＥＦ１０００


アリス「更にその効果によりヘンゼルも特殊召喚！！」星４・ＤＥＦ１０００


２冊の本からお菓子を貪る少年と少女が飛び出す。


アリス「ヘンゼルが特殊召喚された事により更に効果発動！」


アリス「デッキからレベル４以下の御伽現影モンスターを魔法＆罠ゾーンに設置する！」


アリス「『御伽現影 リーゼル』を設置！」


新たな本がフィールド上に現れる。


アリス「いくわよ！あたしはレベル４のヘンゼルにレベルに３のグレーテルをチューニング！」




高貴なる幻想の支配者よ！仇なす愚物に断罪の宣告を下せ！



シンクロ召喚！



現出せよ！『御伽現影クイーンオブハート』！星７・ＡＴＫ２０００





奏「１ターン目からシンクロ…！」


アリス「まだまだ！永続魔法『メルヘン・バトンタッチ』を発動！」


アリス「１ターンに１度、フィールドの御伽現影モンスターを魔法＆罠ゾーンに設置できる！」


奏「えっ！？」


奏（出したシンクロモンスターを引っ込めた…？一体何を……！？）


アリス「更にその後、魔法＆罠ゾーンから別の御伽現影モンスターを特殊召喚できる！」


アリス「チューナーモンスター、御伽現影リーゼルを特殊召喚！」星４・ＤＥＦ５００


アリス「リーゼルが魔法＆罠ゾーンから特殊召喚された時、デッキの１番上をめくり、そのカードが御伽現影モンスターだった場合、そのカードを設置できる！」


デッキからカードがめくられる。


アリス「めくったカードは『御伽現影 ガリバー』！これも設置！」


アリス「あたしはこれでターンエンド！」


奏（この娘…子供なのになんて複雑なデッキを…！）



奏「私のターン…ドロー。」


奏「相手フィールドにのみカードが存在する時、『騎楽士 アレグレット』は特殊召喚できる！」星５・ＤＥＦ１６００


奏「そして『騎楽士 オッタヴィーノ』を通常召喚。」星３・ＡＴＫ１３００
ピッコロを携えた少年戦士。


奏「オッタヴィーノの効果発動。ターゲットとしたインスターモンスター１体の攻撃力は５００ポイントアップする！」


奏「ターゲットはアレグレット。」ＡＴＫ１２００→１７００


奏「更にアレグレットの効果発動！このカードが自分のモンスター効果のターゲットとなった時、自分フィールドのモンスター１体のレベルを５にする！」


ヴァルト「…！」


奏「この効果でオッタヴィーノのレベルを５に！」星３→５


奏「私はレベル５となったオッタヴィーノとアレグレットでオーバーレイ！！」



無限に高まりゆく激情の旋律！弾き鳴らせ！！


エクシーズ召喚！


現れよ！荒々しき奏者『騎学極士（プレインスター） フェローチェ』！ランク５・ＡＴＫ２６００




アリス「いきなりエクシーズモンスター…！ﾁｯ!」


ヴァルト「しかしバトルロイヤルで１ターン目の攻撃はできません。」


奏（くっ…やっぱりそこが痛いわね。）


奏「私はこれでターンエンド。」



ヴァルト「私のターン。」


ヴァルト「『ツインソード・ナイト』を召喚。」星４・ＡＴＫ１７００


ヴァルト「魔法カード『騎士勲章』を発動。」


ヴァルト「レベル４以下の戦士族モンスター１体をリリースし、そのモンスターと同じ属性でレベル５以上の戦士族モンスター１体をデッキまたは手札から特殊召喚する。」


ヴァルト「私は地属性のツインソードナイトをリリースし、地属性の『歴戦の騎士団長』を特殊召喚！」星７・ＡＴＫ２２００


ヴァルト「歴戦の騎士団長のモンスター効果発動。墓地よりツインソード・ナイトを特殊召喚。」星４・ＡＴＫ１７００


ヴァルト「そして私は魔法カード『共振装置』を発動。」


ヴァルト「自分フィールド上の同じ種族・属性のモンスター２体のレベルをエンドフェイズまで同じにします。」


ヴァルト「ツインソード・ナイトのレベルを歴戦の騎士団長と同じ７にします。」星４→７


奏「レベル７が２体…来るわね…！」


ヴァルト「行きます！私はレベル７のツインソード・ナイトと歴戦の騎士団長でオーバーレイ！」





揺るぎなき信念の焔、冷たき鋼の剣に宿りて、忠誠の心を示せ！



エクシーズ召喚！



来たれ！『ガーディアンナイト・フェデルタ』！ランク７・ＡＴＫ３０００




奏「攻撃力３０００…！？」


奏（これは流石にキツいわね……やっぱり２対１だと…。）


ヴァルト「カードを１枚セット…これでターンエンドです。」


ヴァルト「次のターンから攻撃が可能になります。…アリス様。」


アリス「分かってるっつーの！！とっととやるわよ！！」


アリス「私の…………！」






？「僕のターン！！」






３人「！！？」


突然奏の背後から上がった声に目を丸くする。



奏「あ、アンタ……！」





終











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（次回予告）


アリス「まさか！仲間が駆けつけてきたっていうの！？」


ヴァルト「…こんな場所と時間帯で増援が来るとは。」


アリス「ふん！面倒だけど別にいいわ！二人纏めてぶっ飛ばせばいいだけだもの！」


ヴァルト「アリス様、どうか油断なさいませんよう…。」


アリス「うっさいわよ！無能執事！」


奏「貴女！なんて口の利き方するの！」


アリス「なんか文句ある！？あたしに指図すんじゃないわよ！」


アリス「あぁ～イライラする！とっとと喋れなくしてやるわ！」


奏「次回！『不思議の国のタッグデュエル』」


？「行くよ奏！僕等であの娘達を止めるんだ！」
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・これまた提供して頂いたカードがよく出る回です。改めまして皆様ありがとうございました。