第１話：魔の手　作：チュウ

　キーンコーンカーンコーンー

　「やっと終わった……帰ろうぜ！司（つかさ）！」

　この学校の最後に鳴るチャイムが俺を解放した気持ちにしてくれる。そう、今から帰るのだ！１分１秒でもこの場所から離れてリラックスしたいのだ！

　「たく……待ってろ準備するから」

　相変わらずぶっきら棒と言うかクールと言うか、淡白に返事を返したこいつは俺の友達の渕野司（ふちのつかさ）だ。俺が通うこの高校に入学して早々仲良くなったのがこいつ……と言うか放課後まで付き合いがある友達は正直こいつしかいない……

　「というか、昨日部活に入るとか何とか言ってたのは何処のどいつだっけ？白井遊輝（しらいゆうき）君？」

　こいつ……ワザとらしく俺を挑発するようにフルネームで呼びやがって……しかも君付けだぁ？

　「うっせ！明日だ明日！明日また考えるんだよ！」

　「はぁ……部活入って彼女作るんじゃなかったのか？」

　「うぐっ……欲しいは欲しいけど……痛いとこ突くな！泣きたくなるだろ！」

　「遊輝は本当に面倒な性格だな……陽気で明るい奴かと思えば、怠け癖があって弄られると真に受ける……冗談も通じないようじゃ彼女どころか友達にすらなれないぞ？」

　ド正論をかまして来やがって……

　「お前も彼女いないだろ！偉そうに言いやがってぇ」

　司は頭はいいし見た目も結構良く、見た目の雰囲気と中身も相まってクールな印象に見られる事からそれなりに女子からは人気らしい。本人は気付いていないみたいだが。まぁそういう所がモテない原因のひとつなんだろうなと俺は思っている。クールで近寄りがたく人の好意に鈍感……改めて考えると何かの漫画の主人公ないしはライバルキャラみたいな性格だな司は。

　「俺もお前と同じくらい気にしてるんだから言うな……」

　司も意外と気にしてるんだよなぁ。

　「司は人見知りを何とかすれば行けるって！後考えすぎだ色々と」

　俺自身は噓偽りなくそう思ったのでそのまま言ってみた。

　「遊輝こそ顔は悪くないんだからその明日考えるって考え方を何とかしろ。そうすれば色々な場面で良く立ち回れるはずだ。もちろん彼女作りにも役立つ筈さ」

　嬉しい事を言ってくれるのはいいんだが……

　「男同士で傷の舐め合いは止そう……なんだか悲しくなってくる」

　「確かに……」

　話題を変えないとな……

　「そういえばさ、最近多いよな神隠しの事件」

　この町では１ヵ月くらい前から人が失踪する事件が多発している。そんなニュースを毎日のようにテレビとかで見ているから話題を変えるのに使ってしまったが、不謹慎だったかな……

　「あぁ〜確かに多いな。失踪者は全員１０～２０代が多いんだろ？俺達も他人事ではないよな……」

　因みに失踪者は俺達が住んでいるこの町にもいるみたいで、本当に他人事ではない状況だ。監視カメラには謎の黒い空間が出現してそこに人が入ってしまう……みたいななんともファンタジーのような失踪の仕方だ。

　「黒い空間ってどんな現象だよって感じだよな～」

　「まぁ……現実味がないよな、って！遊輝危ない！！」

　うわっ！！俺は司に突き飛ばされて地面に転んでしまった。割と痛い……

　「急になんだよ！って！司！！」

　司の身体が黒い大きな手に捕まれて黒い空間の中に引きずり込まれようとしていた。

　「司を離せ！」

　俺は咄嗟に起き上がってその黒い手を引き剝がそうとした。
　だが……

　「硬い……クソ！ビクともしないぞっ！」

　「おい、遊輝……離せ、このままだとお前も……」

　「うるせぇ！直ぐに諦めんじゃねーよ、ってうわぁ！！」

　黒く大きな手が勢い良く黒い空間の中に引き込まれると、俺と司は一緒にその空間の中に入ってしまった。



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※初投稿となります。第1話早々デュエル描写が一切ないですが、今後ちゃんとデュエルしていきます。