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HOME > 遊戯王SS一覧 > 51話 Show Me!!

51話 Show Me!! 作:コングの施し

幕を開けたアカデミア合宿の前哨戦となるスターチップ争奪戦。中盤に差し掛かったその戦いの中、龍平は異例の速さで勝ち点5つ、つまり☆8へと到達していた。そしてそんな彼の元に、決闘王杯ヤマナシ県予選優勝者である剣城闘次が立ちはだかる。彼の口より連発される親父ギャグの数々、そして伴っている異様なまでに高い実力。混沌たる決闘の行方は…。



10:47


『大石 龍平 5勝0敗 ☆:8
アオメ市立東雲中学校:1年
決闘王杯・チバ県予選:優勝』
vs
『剣城 闘次 5勝0敗 ☆:8
南野アルプス市立葦馬中学校:2年
決闘王杯・ヤマナシ県予選:優勝』


「俺のターン!」

デッキから、万力のような力を込めて、そのカードを引き抜く。まだ終わらない、紛うことなき強者同士の戦い。勝利と強さを欲する龍が、吠え奮う。


TURN:3
大石 龍平(ターンプレイヤー)
LP   :5200
手札   :3→4
モンスター:
魔法罠  :
フィールド:

剣城 闘次
LP   :8000
手札   :1
モンスター:《剣闘獣ドミティアノス》《剣闘獣総監エーディトル》《剣闘獣アンダル》
魔法罠  :セット×2
フィールド:


龍平と剣城の決闘。3ターン目に突入したその闘いであったが、展開のペースを握っているのは《剣闘獣》デッキの使い手である剣城闘次であった。

飄々とした態度とは裏腹に、龍平の思考の一瞬の隙につけ込むその技術で、たった1ターンで2体の融合モンスターの展開を可能にした。

龍平(《剣闘獣ドミティアノス》…やはりそいつが目の上のタンコブか。)

眼前に構える、屈強な海竜のグラディエーター《剣闘獣ドミティアノス》。他のモンスターとは明らかに違った異質な雰囲気を放つそのモンスター。改めて、その力を把握すべくテキストを確認する。


《剣闘獣ドミティアノス》(攻)
☆10 闇属性・海竜族/融合/効果
ATK:3500/DEF:1200


龍平(モンスター効果無効、攻撃対象の選択権を得る効果、そして《剣闘獣》の共通効果であるバトルフェイズ終了時のリクルート…か。)

ドローしたカードに目を向け、黙り込む龍平。その様を見て剣城は不敵な笑みを浮かべる。

剣城「フフ…確認しているねコウカを。
…コウカいしないようじっくり戦ってくれたまえ…フフ!」

龍平「ギャグ…よくネタ切れしないな。」
(この手のモンスターの王道の対策は高打点による強行突破。だがこいつは攻撃対象を自由に選べるからバトルフェイズに仕留めることがほぼ不可能…ならば!!)

龍平はドローしたカードを左手そのまま盤面に叩きつける。

龍平「速攻魔法…《ツインツイスター》!手札からコストとして《螺旋竜バルジ》を墓地に送り、セットカード2枚を破壊する!」

巻き起こる2つの嵐、それは息を合わせたように剣城のセットカードに向かって飛んでいく。

剣城(…フフ。このターン引いたカードだな?しかし…!)
「カウンター罠《大革命返し》発動!…そのカードはメイカクに止めさせてもらおう。…カクメイだけに!!」

ドローフェイズの一撃。相手のセットカードへの干渉が防がれ、龍平は顔を顰める。そして一瞬の静寂を裂く次の一手。

龍平「…防いできたか。
スタンバイフェイズ!俺はさっきのターン《妖醒龍ラルバウール》の効果で墓地に送られた《アークブレイブ・ドラゴン》の効果を発動!」

剣城「…墓地に送られた次のスタンバイに発動する効果。なるほどその布石…なかなか素敵だ!」

龍平「墓地に存在する、レベル7・8のドラゴン族を特殊召喚する。俺が選択するのは…《巨神竜フェルグラント》!」

竜を象る光の波が大地に降り注ぎ、龍平を中心として円形の人がフィールドに描き出される。

剣城(そのモンスター…1ターン目の《トレード・イン》で墓地に送っていたのか…!)

描き出された光の陣は竜の翼をフィールドに映し出し、青白い光幕が弾けた。

龍平「来い!常世に輝ける竜の化身…《巨神竜フェルグラント》!」

儚く砕けた透明な光は、やがてはっきりとした竜の姿を象り、金色に翼を輝かせる竜がフィールドに降り立った。


《巨神竜フェルグラント》(攻)
☆8 光属性・ドラゴン族/効果
ATK:2800/DEF:2800


龍平「墓地から特殊召喚した《巨神竜フェルグラント》の効果を発動。フィールドに存在する《剣闘獣ドミティアノス》を除外する!
ディヴァイン・レイ!」

その翼に光が集約し、目を覆うほどに真白く輝きをます。白金色の翼をばっさとはためかせると、集約したその光が一斉にフィールドに降り注ぐ。

光の槍がフィールドを貫いていく。そんな中、剣城は目を真開き笑顔すら見せながら叫んでいた。

剣城「フフ…前のターンからこの状況を想定済みか!?
…するどいタイショ…キミ、相当勝ちタイッショ!?
オレは《剣闘獣ドミティアノス》の効果を発動!1ターンに1度、モンスター効果の発動を無効にし、破壊する!」

剣城はディスク上の《剣闘獣ドミティアノス》のカードを素早くタップする。同時に咆哮を上げる海竜の戦士。三叉の槍を地面に突き立てると、大波が大地を引き裂き《巨神竜フェルグラント》すら飲み込んでいく。

龍平「…効果処理に移る!」

《剣闘獣ドミティアノス》が巻き起こした大波に呑まれ《巨神竜フェルグラント》がフィールドから姿を消す。お互いに手札・セットカード・モンスターカードの大量のリソースを割いたこの一瞬。そしてその状況を転じさせる一手を繰り出すのは…

龍平「モンスターが破壊されたことで、墓地の《妖醒龍ラルバウール》の効果を発動。墓地に存在する自身を特殊召喚する!」


《妖醒龍ラルバウール》(守)
☆1 闇属性・ドラゴン族/効果
ATK:0/DEF:0


龍平「《ラルバウール》が特殊召喚に成功したとき、フィールドのモンスター1体を対象とし、手札を捨てることで対象と同じ種族・属性のモンスターを手札に加える。

俺は《ラルバウール》自身を対象としてこれを発動!」
小さな竜の赤い瞳が儚げに輝く。しかしその刹那、剣城は先ほどまで抱えていた自分の疑問が、パズルのピースのように頭の中で繋がっていくのを感じた。

走る。先読みへのインスピレーション。

剣城(…さっきの《ツインツイスター》…なるほど。ここで活きてくるのか。)

龍平目線、目に見えている妨害は1つのみ。しかし非公開情報たるセットカードを妨害とカウントするのであれば、その数は3つまで跳ね上がる。

そしてモンスターが破壊されたこのタイミングで通したいのは《妖醒龍ラルバウール》の効果。ここに来るまでに、絶対に《剣闘獣ドミティアノス》の効果を使わせる必要がある。そしてそれを使わせる役割を買ったのは《巨神竜フェルグラント》。

さらに残った2つの妨害たるセットカードたちを破壊するには、《ラルバウール》を特殊召喚する前に《ツインツイスター》を発動する必要があった。

しかし、本来であれば魔法罠の除去が生きるこの場面。龍平の《ツインツイスター》は、通っていない。

剣城「フフ…今日はここまで何できた?…オレはチャリだ!
《剣闘獣の戦車》を発動!…フフ!」

小さな赤い瞳の竜の体に、けたたましい戦車が突っ込んで行き、その身が爆発四散する。《ラルバウール》を通すための《ツインツイスター》、そして《フェルグラント》。それら全てを凌いだ男が、不敵に笑う。

剣城「…フフ…筋は良い!
だが今のは《ラルバウール》を本命だと思わせすぎだ。…思わせぶりな子は…嫌いじゃないがね?」

3手全てを防いだ剣城は笑う。しかし眼前にいる龍平もまた、俯いたまま笑みを浮かべた。

龍平「…やっぱそう思ったか。…アンタなら読みを通してくれると思ったよ!」

剣城「…!!」

剣城が見せた一瞬の油断と慢心。自分の使った妨害が全て正解であるという確信から生まれたその一瞬の隙を、龍平は見逃さなかった。

龍平「永続魔法《星遺物の守護竜》を発動。
…本命はこれだ。ここまで妨害を全部吐いたな。」

龍平が見せる1枚のカード。それと同時に、白銀の鎧を纏った竜がフィールドに降り立つ。

剣城は驚いたような表情を見せたのち、自分のバックの中に手を突っ込む。

龍平「効果で、墓地の《聖刻龍ードラゴンヌート》を特殊召喚。」


《聖刻龍ードラゴンヌート》(守)
☆4 光属性・ドラゴン族/効果
ATK:1700/DEF:900


剣城はバックから白いポリ袋を取り出す。袋には『金ダコ』と書かれている。

剣城「いっぱい喰わされたわけだ。やるじゃなイカ…。」

そう言いながら、袋から竹串に刺さったたこ焼きを口に放り込んだ。

龍平「…命、かけてんだな。ギャグに。
オレは手札から永続魔法《オーバーレイ・ネットワーク》を発動し、その効果を使用。
フィールドのモンスター1体を対象として、そのモンスターとレベルが同じとなるモンスターを手札か墓地から効果を無効にして特殊召喚する!《聖刻龍ードラゴンヌート》を対象とする!」

フィールドに光の渦が巻き起こり、その《ドラゴンヌート》を巻き込んでいく。弾けんばかりの光は、淡く紫色の龍を象り始め、2体の龍が共鳴する。

剣城「《ドラゴンヌート》のレベルは4。すなわち墓地から上から読んでも下から読んでも《ドラゴラ…」

龍平「さらにカード効果の対象となった《ドラゴンヌート》の効果を発動。デッキ・手札・墓地からドラゴン族通常モンスターを攻守ゼロにして特殊召喚する。
再び現れろ。《神龍の聖刻印》!そして《オーバーレイ・ネットワーク》の効果で現れろ。《ドラゴラド》!」


《ドラゴラド》(守)
☆4 闇属性・ドラゴン族/効果
ATK:1300/DEF:1900

《神龍の聖刻印》(守)
☆8 光属性・ドラゴン族/通常
ATK:0/DEF:0


龍平のフィールドに現れた、黒い鱗の小さな竜と、巨大な金色の球体。1ターン目にフィールドに姿を見せたその2体が、再び剣城に対峙する。

剣城「…BF−極北のお久しブリザード…まさか君たちとまたあい見えるとは…!
しかしこのターン、キミは《オーバーレイ・ネットワーク》の効果でX召喚しかできない。そうだロウーアンチリバース?」

龍平(なんで急にブラックフェザーなんだ?)
「…そのデメリットが足を引っ張るなら、もとよりこの状況は作らない。
俺はレベル4の《聖刻龍ードラゴンヌート》と《ドラゴラド》をオーバーレイ!」

《ドラゴンヌート》、そして《ドラゴラド》の姿が光へと変わり螺旋を描きながら光の渦の中へ吸い込まれていく。

剣城「ランク4か…
まあパワフルなキミのデッキにしては、なかなか堅実というかリーズナブルなランクだと思うヨン?」

ガチャン!

黒色のデュエルディスクのEXデッキが開き1枚のカードが顔を見せる。その1枚を引き抜き、盤面に叩きつけた。

龍平「エクシーズ召喚。ランク4、龍魂司る守護の化身《竜魔人クィーンドラグーン》!」

光が弾け、その粒が赤く燃え始める。燃ゆる炎は竜の体躯を描き、やがてその赫い波を引き裂いて、女性を思わせるフォルムのモンスターがフィールドに降り立った。


《竜魔人クィーンドラグーン》(守)
★4 闇属性・ドラゴン族/エクシーズ/効果
ATK:2200/DEF:1200


龍平「オーバーレイユニットを1つ取り除き、効果を発動。墓地のレベル5以上のドラゴン族《アークブレイブ・ドラゴン》を特殊召喚する。」


《アークブレイブ・ドラゴン》(守)
☆7 光属性・ドラゴン族/効果
ATK:2400/DEF:2000


炎に包まれた竜がフィールドに降り立ち、大きく叫ぶ。ビリビリとフィールドを揺らすその姿に、そしてその展開に、剣城は恍惚とした表情を浮かべた。

剣城「なあんだ…ランク4かと思えば今度はまた最上級モンスターを!
よくそこまで扱えるね、そのパワフルなデッキを…いいデッキ、でっきたねえ!?」

龍平「よく言われますよ。
…俺は墓地の《螺旋竜バルジ》の効果を発動。フィールドにドラゴン族が2体以上存在する時、このカードを特殊召喚する。」

龍平の墓地から1枚のカードが顔を出し、それを盤面に叩きつける。同時に出現する数多の星々。それは群をなし脈うち、巨大な顎へと姿を変えた。


《螺旋竜バルジ》(守)
☆8 闇属性・ドラゴン族/効果
ATK:2500/DEF:2500


相手の妨害を掻い潜り、さらに《神龍の聖刻印》、《竜魔人クィーンドラグーン》、《アークブレイブ・ドラゴン》、《螺旋竜バルジ》の4体のドラゴンを展開した龍平。その彼が打つ次の一手は…

龍平「俺はレベル8の《神龍の聖刻印》と《螺旋竜バルジ》でオーバーレイ!
刻み込まれた神の印、太陽の輝きを持って今解き放たれる。エクシーズ召喚!
ランク8《聖刻神龍-エネアード》!!」

2体のドラゴンが光の渦へと巻き込まれていく。中心より現れる緋色の球。神の名を持つそのドラゴンが胎動を始めた。

剣城「レベル8が2体!…来るぞゆ…」

刻み込まれた印は、ゆっくりとその姿を龍へと変えていく。太陽の如く輝きが、2人の決闘者を赫く照らす。


《聖刻神龍-エネアード》(攻)
★8 光属性・ドラゴン族/エクシーズ/効果
ATK:3000/DEF:2400


雄剛な竜が放つその光に包まれ、剣城は目を覆う。「マーベラス…!」と漏らす彼を前に、さらに太陽の竜は翼を大きく広げ、輝きを増していく。

龍平「《聖刻神龍ーエネアード》の効果を発動。オーバーレイユニットを一つ取り除き、任意のリリースしたモンスターの数だけ、フィールドのカードを破壊する。
…俺は《アークブレイブ・ドラゴン》をリリースし、《剣闘獣ドミティアノス》を破壊する!」

光の玉がその龍の胸元に飛び込んでいく。身体はより強く明るく紅く、ごうごうときらめきを増し、凄まじい熱波がフィールドを包み込んだ。

剣城「…ぐぉあ!
《剣闘獣ドミティアノス》を破壊するのが最終目的か!やってくレルロードドラゴン!!」

フィールドを焦がす赫い波は、海のグラディエーターたる《剣闘獣ドミティアノス》の体さえ貫き、ついにそれを見るかげもなく焼き焦がした。

龍平「これで邪魔なモンスターは処理できた。
…バトルだ!!《聖刻神龍ーエネアード》で《剣闘獣アンダル》を攻撃、聖天震撃!」


《聖刻神龍ーエネアード》(ATK:3000)
《剣闘獣アンダル》(ATK:1900)


太陽の竜の体が太陽のような色を通り越し、もはや白く、眩く熱を帯びてゆく。叫びを上げるとその口に白い炎を纏い、一直線に《剣闘獣アンダル》の方へと放った。

剣城「…来た来た来たシルキタス!!…ってぐぉあああああッ!!!!」
LP:8000→6900

その攻撃でLPを削られ、大きく仰け反った剣城だが、「どはあ!」と大きくはくと、乾いた笑みを浮かべて叫ぶように言った。

剣城「効いたぞお…今のは!」

龍平「…これでターンエンド。」
(《剣闘獣総監エーディトル》を残すことにはなったな。だがそう長く居座らせはしない!)

嵐のような攻防が続いた長い1ターンが幕を下ろした。剣城の妨害をさばいてLPを削り、さらになによりもエースモンスターたる《剣闘獣ドミティアノス》を倒した龍平。

対する剣城はフィールドに残った《剣闘獣総監エーディトル》を見つめ、そして願うようにして目を瞑り、勢いよくデッキトップの1枚を引き込む。


TURN:3
剣城 闘次(ターンプレイヤー)
LP   :6900
手札   :1→2
モンスター:《剣闘獣総監エーディトル》
魔法罠  :
フィールド:

大石 龍平
LP   :5200
手札   :0
モンスター:《竜魔人クィーンドラグーン》《聖刻神龍ーエネアード》
魔法罠  :《星遺物の守護竜》《オーバーレイ・ネットワーク》
フィールド:


ドローしたそのカードを見つめ、大きく息を吐く。その様から見ても、剣城が追い詰められつつあるのは明白であった。しかしここで剣城が声を上げる。

剣城「…キミのことだ。
《剣闘獣総監エーディトル》をフィールドに残す危険性を理解していないわけではないだろう。そしてその対処も…やっぱ相当勝ちタイッショ…?」

龍平「…同じギャグを擦ると見苦しいです。
…だがその通りだ。墓地に送られた次のスタンバイフェイズ時、《アークブレイブ・ドラゴン》の効果を発動。
再び現れろ。《巨神竜フェルグラント》!」


《巨神竜フェルグラント》(守)
☆8 光属性・ドラゴン族/効果
ATK:2800/DEF:2800


金白の鱗を儚げに輝かせ、屈強なその顎門がもう一度フィールドに姿を見せる。そして1ターン前と同じように、降り注ぐ白光の波。

龍平「…ディヴァイン・レイ!」

ちりちりと2人を包む光。それは《剣闘獣総監エーディトル》の姿を飲み込み、その姿を焦がしていく。

パリン…!と、儚く砕けたその姿はカードとなり、剣城の除外ゾーンへと吸い込まれた。

《巨神竜フェルグラント》(ATK:2800→3600)

剣城「さすがだ…盤面を取りつつしっかりと除去も両立している。…だが、これもまた一興!」

龍平「…何?」

俯いた剣城は顔を上げた。その顔に刻まれたのは、龍平のよく知るその目。「絶対に諦めない」という意思を孕んだ、決闘者の瞳。

剣城「…まさしく逆境!この決闘!そしてここでつけるぞ格好!!」

そう言い放ち天へと掲げる1枚のカード。そこに記されているのは…

龍平「《三戦の合》だと!?」

《三戦の合》。そう記されたカードが煌めき、ぶおおーん、と法螺が鳴る。同時にかき回される彼のデッキより、1枚のカードがその手に宿る。

剣城「デッキより通常魔法《再起する剣闘獣》をセットし…相手フィールドにモンスターがいることで、これをハツドウ!…今こそ仲間ハツドウんだよ!…フフ!」

墓地から1枚のカードが抜き出され、屈強なクマの戦士である《剣闘獣アンダル》が、ジャブで空を裂きながらフィールドに現れる。


《剣闘獣アンダル》(守)
☆4 地属性・獣戦士族/通常
ATK:1900/DEF:1500


龍平(《三戦の合》…相手がモンスター効果を発動したターンにのみ使えるリーサルウェポン。だがさっきのターンに手札にあれば《天球の聖刻印》の効果を使った後のメインフェイズ2に使わない理由がない。
…今ドローしたカードってわけか。)
「…いい構築だ。」

剣城「お褒めに預かり光栄だよ!…フフ、大目に見はしない!
みすみす見過ごすわけに行かんのだよ…キミのミスを!」

龍平(…確かにさっきのターン《聖刻神龍ーエネアード》の効果で《アークブレイブ・ドラゴン》だけでなく《竜魔人クィーンドラグーン》もリリースして、融合モンスター2体を仕留めていれば、こうはならない可能性もあった。
…結果論ではあるが、裏目に出たのは事実か。)


がさ、ごそ、


すっかり得意げになった剣城は、懐からプラスチックのパックを取り出す。ビニールが被さったその中には赤い果実が詰まっている。

龍平「…何してんです?」

剣城「フフ…《剣闘獣》、と言えばこのモンスターであろう…!
いくぞ!!剣闘獣!ストローーーゥベリィーーー!!!」

そう叫んでパックから真っ赤なイチゴをビシっと見せつける。表面の粒々とした種が太陽光を反射してキラキラと光っている。

ツッコむ気も起こらない龍平と、ドヤ顔でイチゴを構えた2人の間にしばしの沈黙が走る。漫画などでよくある寒風のエフェクトが走っているのではないかと思わせるほどに、空気がピッシリと凍りつくのを感じていた。2人とも。

剣城「…おっと、これはストロウベリィー…だったね。…フフ!
ではなくこっち、《剣闘獣ベストロウリィ》!!」

苦笑いを浮かべながら手札の1枚のカードをデュエルディスクに打ち付ける。同時にごおお、と風が巻き起こり、深緑の鎧に身を包んだ猛禽がその声を上げる。


《剣闘獣ベストロウリィ》(攻)
☆4 風属性・鳥獣族/効果
ATK:1500/DEF:800


剣城「さらに、この2体をリンクマーカーにセット!」

《剣闘獣アンダル》、そして《剣闘獣ベストロウリィ》の姿が閃光の鏃となり、天にサーキットを描き出す。

龍平「リンク召喚か!」

剣城「ザッツライ!…そしてキミは…THE・ツラい!
リンク召喚!LINK−2!《スレイブパンサー》!!」


《スレイブパンサー》(攻)
LINK-2 地属性・獣族/リンク/効果
ATK:800[↙︎・↓]


土埃を巻き上げ、黒い毛並みを轟かせる獣1匹。グオオ、とけたたましく咆哮すると、剣城のデッキから1枚のカードが彼の手に宿る。

剣城「フフ…《スレイブパンサー》の効果により、デッキから速攻魔法《団結する剣闘獣》を手札に加え…そしてバトル!
宣言しよう!このバトルで…この場、討る!!」

龍平「討る。…取るってことか。わかりづらい。」
(冷静にギャグの分析してる場合じゃないな。その効果次第では、あるいは…!)

剣城「速攻魔法《団結する剣闘獣》を発動!
墓地に存在する《剣闘獣アンダル》と《剣闘獣ベストロウリィ》をデッキに戻し、融合モンスターを召喚条件を無視してEXデッキから呼び出す!!」


ガンゴンゴンー!!!


先ほどよりも大きくゴングが鳴り響き、《剣闘獣アンダル》と《剣闘獣ベストロウリィ》の姿がデッキに吸い込まれていく。

風がごおお!と巻き起こり、大翼の影が蠢く。目を開けていられないほどの突風に、龍平も顔を覆う。

龍平(墓地のモンスターで融合!しかも速攻魔法で!!)

剣城「《剣闘獣》の代名詞!ダメージに油断しちゃ駄目ーじゃ!
融合召喚!《剣闘獣ガイザレス》!!」

風の渦が破れ、屈強なその猛禽の全貌が明らかになる。《剣闘獣ベストロウリィ》を思わせるその外見であるが、さらに堅牢な鎧に、そしてさらに剛健な四肢を併せ持っている。


《剣闘獣ガイザレス》(攻)
☆6 風属性・鳥獣族/融合/効果
ATK:2400/DEF:1500


龍平(攻撃力2400…だがここで出してきたってことは!)

龍平の脳裏に走る予感。相手が強者であるが故に予想できたその効果。
こちらの盤面に干渉する効果。それが迫りくることに、全身が警鐘を鳴らす。

剣城「《ガイザレス》が特殊召喚に成功したとき、フィールドのカードを2枚まで破壊する!ダブル・WIN・WIND!」

翼を大きくはためかせ、螺旋状に渦巻く風が《聖刻神龍ーエネアード》と《巨神竜フェルグラント》の体を貫いた。

立っていられないほどの突風に顔を覆う。歪んだ表情を浮かべる。この状況、予想できたその効果。しかし予想できた上で…

龍平(…何もできない!)

剣城「フフ…まだまだ…残った1匹も破壊したい!ここに立つのは墓石だい!
《剣闘獣ガイザレス》で、《竜魔人クィーンドラグーン》を攻撃!突風でストップゥ!」


《剣闘獣ガイザレス》ATK:2400
《竜魔人クィーンドラグーン》DEF:1200


一瞬にして姿を消した《剣闘獣ガイザレス》。目を追う暇などなく、風を纏った剛腕が無防備な《竜魔人クィーンドラグーン》の身体を音すら置いていく勢いで砕いた。

もとよりスタンバイフェイズに《巨神竜フェルグラント》を蘇生し《剣闘獣総監エーディトル》を除外する計画だった龍平は、《竜魔人クィーンドラグーン》を守備表示でX召喚している。そのためその戦闘で身に及んだダメージはゼロに抑えられた。しかし…

龍平(…本当に場を討ってきたか!)

たった手札2枚から全てのモンスターを破壊した剣城。龍平の頬に一筋の汗が走る。だが、これでは終わらない。龍平ももちろん理解していた。だからこそ身構えていた。このバトル後に待ち受ける《剣闘獣》の真価に。

剣城「バトル終了時、《剣闘獣ガイザレス》の効果を発動する!
自身をデッキに戻すことで、デッキより新たな《剣闘獣》を2体呼び出す!」


がんごんごん!!


何度目か、鳴り響くゴングと獣たちの歓声。剣城のデッキが素早くシャッフルされ、2枚のカードが飛び出す。

剣城「デッキより特殊召喚!まずは《剣闘獣レティアリィ》!そして《剣闘獣ダリウス》!」

うおおお!と鳴り止まぬ歓声の中で、屈強な2匹のグラディエーターがフィールドに入場する。海蛇のような、爬虫類を彷彿とさせる《剣闘獣レティアリィ》、そして馬を思わせる《剣闘獣ダリウス》。


《剣闘獣レティアリィ》(守)
☆3 水属性・水族/効果
ATK:1200/DEF:800

《剣闘獣ダリウス》(守)
☆4 地属性・獣戦士族/効果
ATK:1700/DEF:300


龍平「今度は2体…!」

剣城「フフ…ただ単に展開したわけではないよ!まずは《剣闘獣レティアリィ》の効果を発動!
この《レティアリィ》はいい働きをするよ?…そのレアリティの割に…フフ!」

海生の戦士はその槍を投擲し、それは瞬く間に龍平のディスクを貫いた。その墓地から白く凍りついた1枚のカードが抜き出される。

剣城「《剣闘獣》モンスターの効果で特殊召喚された時、相手の墓地のカードを1枚除外する!
X素材になっていたからといって見逃すほどオレの目は節穴ではない!…そのモンスターは不死やな、だからね…フフ!」

龍平「《螺旋竜バルジ》…!」

白く凍りついた《螺旋竜バルジ》。
《聖刻神龍ーエネアード》のX素材となることで除外のデメリットを免れていたその存在を、剣城は見逃しはしなかった。さらに彼の《剣闘獣》の猛攻は止まらない。

剣城「さらにさらに!《剣闘獣ダリウス》の効果を発動!
…さっきのターン《アトリクス》の効果で墓地に送っておいた《剣闘獣ウェスパシアス》を特殊召喚しアス!」


《剣闘獣ウェスパシアス》(守)
☆7 水属性・海竜族/効果
ATK:2300/DEF:0


龍平「そのモンスター…《剣闘獣ドミティアノス》の融合素材か。だが…」

《剣闘獣ドミティアノス》は破壊したはず。そう思い口に出そうとした刹那、まだフィールドに役割が残っているであろうカードに気付き、口をつぐんだ。

《スレイブパンサー》…ただ単に《団結する剣闘獣》をサーチするためだけに呼び出したならば、攻撃できない攻撃力800を並べただけ。逆説的に、その効果は、その役割は、まだ残っている。

剣城「本当に察しがいい…。
オレは《スレイブパンサー》の効果を発動!《剣闘獣ダリウス》をデッキに戻し、もう1体の《剣闘獣》を、《剣闘獣》の効果による扱いで特殊召喚する!
来るんだ!《剣闘獣エクイテ》!!」

だがら!だがら!

天馬を思わせるその身体。しかし上半身に屈強な腕を携えたそのモンスターが忙しくフィールドを駆ける。


《剣闘獣エクイテ》(守)
☆4 風・鳥獣族/効果
ATK:1600/DEF:1200


剣城「フフ…共通効果として、《剣闘獣》融合モンスターは自身の持つ条件以外では、召喚条件を無視しなければ特殊召喚ができない。蘇生はできないということだ。
しかしこの効果…可能にするには、こうかなあ?」

墓地に存在する《剣闘獣ドミティアノス》のカードを握り、それをEXデッキに戻す。

剣城「《剣闘獣エクイテ》は、墓地の《剣闘獣》を手札に戻す。これを融合モンスターに使うと…エグいて!」

龍平(やはり、ギャグなんかを口走る割には強い…構築はもちろん、トリッキーな《剣闘獣》を手足みたいに操っている。
そして…来る!!!)

ざわ…と空気が騒ぎだす。

胎動を始める。再び決闘の海を破り、その姿を見せんとする。剣城のエースモンスター。

剣城「さっきとは違う。正規召喚だ!
フィールドの《剣闘獣ウェスパシアス》、《剣闘獣レティアリィ》、《剣闘獣エクイテ》の3体をデッキに戻し、このカードを融合召喚する!来い来い来い!!!」

揺れる大地が裂け、巨大な波の壁が二人を包み込む。そして今一度、波の奥にその巨体を映すその戦士。

剣城「融合召喚!現れろ!ナミナミならぬナミの英雄!《剣闘獣ドミティアノス》!!」


ばっしゃーーーん!!


波の壁が弾け、今再び《剣闘獣》の最強戦力たるその戦士が姿を見せた。《剣闘獣ウェスパシアス》を彷彿とさせながらも、さらに巨大でさらに屈強。引き締まった体と紺碧の鱗。そして銀色に輝くその鎧と武具は、まさしく戦いのために最適化された到達点。


《剣闘獣ドミティアノス》(攻)
☆10 闇属性・海竜族/融合/効果
ATK:3500/DEF:1200


龍平「…来たか!!」

先ほども感じた、威圧感。手札が潤沢にあった1ターン前だからこそ突破することができたその戦士が、今度は追い詰められた龍平の前に立ちはだかる。

剣城「…フフ!最高のデュエル…さあ、行こうか!!大石龍平!!」

ターンが切り替わる。先ほどと違って、龍平の手札はゼロ。そして墓地からの展開の要であった《螺旋竜バルジ》すら機能停止に陥っている。

加えてモンスター効果を無効にする能力を持った《剣闘獣ドミティアノス》。ただの攻撃力3500に収まることのない絶対的なエースモンスターが今、龍平の前に構えている。


絶対的な劣勢。しかし、この龍は、大石龍平は…


「俺のターン…!!」


TURN:5
大石 龍平(ターンプレイヤー)
LP   :5200
手札   :0→1
モンスター:
魔法罠  :《聖遺物の守護竜》《オーバーレイ・ネットワーク》
フィールド:

剣城 闘次
LP   :6900
手札   :0
モンスター:《スレイブパンサー》《剣闘獣ドミティアノス》
魔法罠  :
フィールド:



大波に埋もれた、わずかな勝利の可能性を、捨ててはいない。



龍平「…頼むぞ。
…俺は《貪欲な壺》を発動!!」


バシィーン!!


フィールドに出現する巨大な壺。不気味な笑顔を模したその壺の中に、5枚のカードが突っ込まれる。

剣城「…ここで壺…脱帽だ!!!」

龍平「俺は墓地に存在する《神龍の聖刻印》、《ドラゴラド》、《天球の聖刻印》、《竜魔人クィーンドラグーン》、そして《聖刻神龍ーエネアード》をデッキに戻し、カードを2枚ドローッ…!!」

デッキトップの2枚のカードを握る手に力が籠る。カードを離してしまうのではないかと思えるほどに、手汗のこもった指。しかし絶対に離さない。それが勝利のために必要な最後の2枚であることは、誰よりも龍平自身が理解している。

勢いよくその2枚を引き抜き、瞑った目をゆっくりと開く。

龍平「…行くぞ!!!」

2枚のカードを握り締め、大きく息を吐く。覚悟を決めたその様を見て、剣城は一歩たじろいだ。

それは恐怖ではない。ただこの絶対的な敗着を覆さんとするその男の意思、覚悟、そしてそれを可能にするのではないかという信頼。

剣城「…恋してしまいそうだ!!…来い、大石龍平!!!」

龍平「相手フィールドに攻撃力2000以上のモンスターが存在する時、このカードを特殊召喚できる。
手札から特殊召喚!《限界竜シュバルツシルト》!!」

赤黒い鱗をくねらせ、蛇のように長く巨大な竜がフィールドに降り立つ。


《限界竜シュバルツシルト》(守)
☆8 闇属性・ドラゴン族/効果
ATK:2000/DEF:0


剣城(今のモンスター…チェーンブロックを作っていないな?つくづく豪運…大石龍平!!)

龍平「さらに、発動中の《オーバーレイ・ネットワーク》の効果を発動。
《シュバルツシルト》を対象とし、レベルが同じとなるモンスターを効果を無効にして手札・墓地から特殊召喚する!
墓地から守備表示で特殊召喚…《巨神竜フェルグラント》!!」


《巨神竜フェルグラント》(守)
☆8 光属性・ドラゴン族/効果
ATK:2800/DEF:2800


手札1枚から、一度もモンスター効果を発動することなく最上級のレベル8を2体呼び出した龍平。その底のなさに改めて剣城は戦慄していた。しかし同時に勝ち得た一つの確信。

剣城(レベル8が2体。しかし《剣闘獣ドミティアノス》を倒すにはモンスター効果を発動するしかないはず。)

そう。彼にはすでにわかっていた。同じく《剣闘獣ドミティアノス》を盤面に構えた3ターン目、龍平は3500以上の攻撃力で《ドミティアノス》を突破するのではなく、《聖刻神龍ーエネアード》の効果で状況を打破した。

しかしそれは《ドミティアノス》のモンスター効果を無効にして破壊する能力を《エネアード》の効果以前に使ってしまっていたからであって、今は状況が違う。

剣城(…つまり、ここから来るXモンスターの効果発動に、《剣闘獣ドミティアノス》の効果をぶつければ…!!)

龍平「俺は、レベル8の《限界竜シュバルツシルト》と《巨神竜フェルグラント》をオーバーレイ…ッ!!」

2対の竜が、光の渦へと呑まれていく。その閃光は螺旋を描き、そして今一度胎動を始める、太陽の神龍。

龍平「刻み込まれた神の印、太陽の輝きを持って今解き放たれる。エクシーズ召喚ッ!!!」

螺旋は弾け、緋色の光が、フィールドの全てを突き刺していく。巨大な竜の球体は、刻みこまれたその印を導として展開を始め、今再び、そのモンスターはフィールドへと舞い戻る。

龍平「…ランク8《聖刻神龍ーエネアード》!!」


《聖刻神龍-エネアード》(攻)
★8 光属性・ドラゴン族/エクシーズ/効果
ATK:3000/DEF:2400



グオオオオオオオオオ!!!


太陽のように輝きを放つその龍は、龍平の勝利への渇望と共鳴するように咆哮する。轟くフィールド、揺らぐ大地。

《剣闘獣ドミティアノス》、そして《聖刻神龍ーエネアード》。2人のエースモンスターが、再び睨みを効かせ対峙する。

龍平「…俺は《聖刻神龍ーエネアード》のオーバーレイユニットを取り除き、その効果を発動!
効果によりリリースしたモンスターの数だけ、フィールドのモンスターを破壊するッ!!」

その巨翼をさらに赫く、強く輝かせ、フィールドに熱線が降り注がんとする。ジリジリと焼ける大地。勝敗を決す一撃。

しかし、その刹那。

剣城「…やはり、ここだ!!
オレは《剣闘獣ドミティアノス》の効果を発動!モンスター効果を発動した時、その発動を無効にし、破壊するッ!!」

《剣闘獣ドミティアノス》が、その三又槍を地面に勢いよく突き刺す。大地が裂け、噴き上がる大水。群れをなし、巨体を駆り、押し寄せる巨大な波。


どばしゃーーーーん!!!


赫い光が、紺碧の渦に巻かれていく。轟音と走る衝撃。裂けた大地の奥の奥、碧い波の中で、《聖刻神龍ーエネアード》の赫い光が、熱く輝いていたその瞳に炎が、今、途絶えた。


パシャパシャ…と、雨のように大波の残滓がフィールドに降り注ぐ。そこに立つ2人の決闘者。流るる沈黙を突いたのは、剣城の声であった。

剣城「…キミはさっきのターン、《剣闘獣ドミティアノス》を倒すために《聖刻神龍ーエネアード》の効果を発動した。
…それは打点では突破できないということだ。…M・HERO そーだ・ロウ?」

龍平「…そうだな。
だからアンタはここで《剣闘獣ドミティアノス》の効果を使った。いや、使うしかなかった。」

龍平は顔を上げる。そのまっすぐな瞳。奥に闘志を宿したその目に、剣城の胸がざわつく。

剣城「…カレー…いやナンだと?」

龍平「《聖刻神龍ーエネアード》の発動コストはオーバーレイユニットを取り除くことのみ。もし、効果が通っていたとしたら、俺は《エネアード》自身をリリースしていた…!」

手札に握られたたった1枚のカード。その存在が今、明らかになろうとしていた。

剣城「まさか…!!!」

龍平「だがアンタは破壊したな…《聖刻神龍ーエネアード》を!
速攻魔法《エクシーズ・ダブル・バック》を発動ッ!!!」

ソリッドヴィジョンで映し出されるそのカード。2体のXモンスターが記されたそのカードが光を発し、龍平の墓地から2枚のカードが浮かび上がる。

龍平「《エクシーズ・ダブル・バック》は、Xモンスターが破壊されたターン、俺のフィールドにモンスターが存在しない時のみ発動できるカード!
破壊されたそのモンスターと、その攻撃力以下のモンスターを墓地より特殊召喚する!!
三度、現れろッ!!」

空に舞う2枚のカードをキャッチし、それをディスクでキャッチする。そして同時に上がる2種類の竜の声。

何もなかった龍平の背後より、そのモンスターたちが復活を果たす。


「現世に輝ける竜の化身!《巨神竜フェルグラント》!!」


《巨神竜フェルグラント》(攻)
☆8 光属性・ドラゴン族/効果
ATK:2800/DEF:2800


「神の力刻まれし太陽の龍!《聖刻神龍ーエネアード》!!」


《聖刻神龍-エネアード》(攻)
★8 光属性・ドラゴン族/エクシーズ/効果
ATK:3000/DEF:2400


剣城「…お出まし…オレ、マシ…じゃないな!?」

《巨神竜フェルグラント》、その翼より、真白い光が幾千も重なり《剣闘獣ドミティアノス》の体を貫いた。

《巨神竜フェルグラント》(ATK:2800→3800)

龍平「ディヴァイン・レイ!!」

パリン…!と儚く砕けるそのカード。天に舞う《剣闘獣ドミティアノス》のカードをパシっとキャッチし、除外ゾーンへと移す。

剣城「…やはり…キミは最高だ!」

龍平「アンタも強かったよ…だがこれで終わりだ!バトル!!」

巨神竜がその身を翻し、その牙に光が凝縮され、目を開けていられないほどの真白い稲光となる。

龍平「《巨神竜フェルグラント》で、《スレイブパンサー》を攻撃ッ!龍皇招雷!!」


《巨神竜フェルグラント》(ATK:3800)
《スレイブパンサー》(ATK:800)

剣城闘次 LP:6900→3100


剣城「うああああぉおおお!!!?」

水銀をこぼしたような稲光は、音すら置き去りにして、《スレイブパンサー》と剣城のLPを引き裂いた。そして再び咆哮するその竜。

龍平「《巨神竜フェルグラント》が戦闘で相手モンスターを破壊したことで、墓地からレベル7の《アークブレイブ・ドラゴン》を特殊召喚する!!」

背後へと大きく吹っ飛ばされ、LPも3100まで追い込まれた剣城の元に、その最後を決めんとする龍が舞い込んだ。


《アークブレイブ・ドラゴン》(攻)
☆7 光属性・ドラゴン族/効果
ATK:2400/DEF:2000


残った4つの龍の瞳が、剣城を睨みつける。倒れ込んだ剣城は立ち上がり、その両手を大きく広げた。抱擁を待つように、喉を鳴らして大きく叫ぶ。

剣城「…フフ。これだからデュエルはやめられない…!
さァ倒せ!!…キミの勝利を…Show Meィーーーッ!!」

龍平「これで終わりだ!!《アークブレイブ・ドラゴン》、《聖刻神龍ーエネアード》で、ダイレクトアタック!!聖天震撃ッ!!」

2体の龍の体がそれぞれ赤と白に発光し、閃光はお互いに絡み合いながら、一本の巨大な流星を描きながら、剣城の元へと降り注いだ。

埋もれるような光の中、満足げな剣城の、そのデュエルディスクが…


《アークブレイブ・ドラゴン》《聖刻神龍ーエネアード》(ATK:2400+3000)

剣城闘次 LP:3100→700→0


今、敗北を告げる電子音を告げた。ディスクに浮かんでた8つのスターチップ、その1つが消え、龍平のディスクに9つ目の星が映し出される。


WINNER:大石龍平


アオメ市立東雲中学校決闘部エース、大石龍平。そして南アルプス市立葦馬中学校決闘部、同じくエース剣城闘次の決闘。その勝敗が決した瞬間であった。

倒れ込んだ剣城が剣城が発した第一声。

剣城「今度は負けん。合宿も…怠けんぞ?」

龍平「…だから寒いって。」

争奪戦開始から約2時間。未だ未踏の対決を終えた2人。少しずつ、人の足音が増えつつあるその交差点に、2人の声が響いていた。


『大石 龍平 6勝0敗 ☆:9
アオメ市立東雲中学校:1年
決闘王杯・チバ県予選:優勝』

『剣城 闘次 5勝1敗 ☆:7
南野アルプス市立葦馬中学校:2年
決闘王杯・ヤマナシ県予選:優勝』


続く
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