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31話 開幕!決闘王杯! 作:コングの施し
夕暮れが校舎と紅く染める。遊大たちは屋上でのデュエルを終えると、各々が部室へと戻っていった。先日の光妖中との練習試合だけではない、全ての練習・調整が最終段階へと入ろうとしていた。
だん!とましろが部室の机に両手をおく。全員分用意されたレジュメを前に、遊大たちは険しい表情で席に腰かけた。
ましろ「今から『全国決闘王杯』およびその作戦についてのミーティングを開催する!」
部室のカレンダーには6月10日の枠に二重丸が描かれており、さらにその上に「各自デッキ・プレイング課題を仕上げる!」と描かれている。全国津々浦々の決闘者が死力を尽くし己が全ての実力をぶつけんとする場、『全国決闘王杯・市予選』は、いよいよ2日後というところまで迫っていた。
ましろ「まずお前らの知る通り、この決闘王杯は市・地区予選~県予選~そして全国大会の三部に分かれて催される。他の運動や文化競技と比較しても所謂『地方予選』なるものがない。その代わりに県予選から全国に進めるのは一県からベスト4までと決まっている。だから相対的に県予選がめちゃくちゃ厳しい。」
その言葉を聞いて龍平が厳かな表情でうつむく。同時に「地方大会という全国への中継地が少ない分、調整期間が少ない…ってのも懸念点か。」という声を漏らす。
ましろ「正解。県大会は7月1~2日。そして全国はその月末の7月29~30日だ。全国に進んだ場合は4×47=188人分のデッキを研究しなくちゃならない。各大会ごとに初日の朝までにデッキシート提出なのが幸いだな。」
嬢はそんな龍平を見て、思わず「すごいね…。もう県とか全国まで考えてるなんて…。」と呟いた。龍平はそんな嬢を横目で見るが、すぐに同じようにして視線を落とした。さらに龍平は小さく手を上げる。
龍平「先生。市予選の突破人数は?」
ましろ「20人だ。ベスト16は確定で、ベスト32の敗退者のうちから敗者復活戦で4人が県大会出場可能になる。つまり敗者復活のランダムトーナメントで2回勝てば県大会出場だ。」
遊大もつづいて口を開く。
遊大「150人超える出場者からベスト20…。えーっと何回勝ちゃあいいんだ…?」
あたふたした手つきで両手の指を折っていく。律歌はそんな遊大をみてくすっと笑い、遊大に耳打ちする。遊大は計算できなかったことなのか、それとも律歌が急接近したことなのか、ボッと顔を赤らめてしまった。
遊大「…うぁ、トーナメント次第で最低3回、あとは1回戦出場か2回戦出場かで決まってくる…らしいです。4回戦勝利で県大会出場確定ってことっすよね。」
足を組んでどっかりとした態度の阿原がましろのほうへと言葉を投げかける。
阿原「トーナメント表、持ってきてんだろ?先生。たしかトーナメント発表は2日前以降だもんな。」
その言葉を聞くとましろは右手のレジュメをぱらぱらと揺らす。それを生徒たちに渡す前に、彼女はつづけて口を開いた。
ましろ「渡す前に、だ。お前ら、『プロデュエリスト』、そして『資格持ち』ってものを知っているか?」
龍平の肩がピクっと動く。残った2人の1年の遊大と嬢はきょとんと首を傾げた。
ましろ「国内のトップで常に戦い続けその順位や限定大会戦績で争い、それ自体を生業にできるほどの強さを持った『プロデュエリスト』。決闘者なら誰もが憧れる存在…。そして『プロ昇格戦』に挑む資格を持った『資格持ちデュエリスト』…。」
遊大たちはその説明の意味自体は理解していたが、この決闘王杯の直前に説明する意図に対して疑問を抱いていた。
律歌「まあまあ鳩が豆鉄砲喰らったような顔をしないで。」
ましろ「そう、その『資格持ち』になれる権限は、この全国決闘王杯を含む公式戦の優秀戦績者にのみ配られる。具体的にいえば、中学の部・全国大会のベスト16だな。そこを勝ち取った者は、プロ昇格戦に臨むための適正試験を受ける権利を得る。そしてその先にプロ昇格戦が待ってるって感じだ。」
その言葉に、遊大と譲に電撃が走ったような衝撃が襲い掛かる。遊大はごくりと唾を飲みこみ、ゆっくりと唇を開いた。
遊大「…ってことは。」
嬢「私たちでもがんばればプロへの道が開けるってこと…!?」
ましろ「そうだな。厳密に言うと『開いてしまう』んだ。」
律歌が気怠げに頬杖をつく。逆の頬をぷくっと膨らませてつぶやいた。
律歌「プロへの道が開いてしまう。誰もがどの大会よりも本気で私たちを潰しに来るんだよね。遊大、嬢、龍平君。今日までだんだん練習がハードになってたでしょ?負けないために、勝つために私たちも全力で戦わなきゃいけないんだよ。」
ましろ「この前の大会が前哨戦であれば、明後日に待っているこの市予選は『本番』の始まりだ。だからこの前みたいに『負けてもいい』なんて言うつもりはない。ここまで全力でお前らが自分のデュエルを磨き続けてきたことはわかる。だからそれをぶつけて来い!」
ましろは似合わない上がった口角で遊大たちを見つめる。生徒たちは鼓舞しようとしてるましろの意思をくみ取ったのか、各々がニッと笑って見せた。
遊大「どんと来いってヤツですよ!」
遊大が腕をぐっと上にあげ高々と叫ぶ。その様子を見てましろも安堵の息を漏らす。続いて龍平も口を開いた。
龍平「オレは頂点まで行くだけです。そのために戦ってるんですから。」
嬢「私も頑張ります!二人に負けてられないですから!」
律歌と阿原は燃え上がる3人の後輩を見て、お互いに顔を見合わせる。
阿原「俺だって負けねえからな。」
律歌「勝てるの~?でも、私も一年ズには負けられないな。」
闘志を燃やす生徒たちを横目に、ましろはそれぞれの手元にトーナメント表を渡す。遊大もそれを受け取り、しっかりと自分が戦う相手を確認した。そして戦う相手を見て、さらに目を輝かせた。
『斬隠輝久』、前回大会で激闘を繰り広げた彼とは順当に勝ち進めばベスト16決定戦で対峙する。県大会への出場をかけた相手がそのライバルであるという事実に、胸をたぎらせていた。
ましろ「お前ら、トーナメント表は確認したな!」
その一括に、一同はましろのほうへと顔を上げる。
ましろ「大会は明後日だ!気合い入れろよ!勝ってこい!!」
「はい!」と、5人分の大きな声が部室棟に響き渡った。
~
来る6月10日。遊大たちは電車に揺られ、アオメ市民会館決闘場訪れていた。生徒たちは自分の学校の制服をきちっと身に着け、誰しもが真剣な面持ちでデュエルフィールドへと向かっていた。さんさんとした太陽が、決闘場の窓から煌々と差し込む。強くあろうとする全てのデュエリストの思いがこの大会で交差する。
「これより、全国決闘王杯・中学生の部・アオメ市予選一回戦を開始します!」
通りの良い市長の声が決闘場に響き渡り、デュエルフィールドの全てのデュエリストが一斉にデュエルディスクを構えた。
全国へと伸びる決闘というレースのスタートライン、兵たちのがその一歩を踏み出す。遊大もまた、彼の描く戦いのロードの行き先を決めうるその戦いを始めんとしていた。
遊大「まさか一回戦で当たるとはなあ!キャンデさん!」
遊大が構える視線の先、そこには巨大な熊の着ぐるみに藤紫色のブレザーをぎちぎちに着込んだキャンデが佇んでいる。
キャンデ「はんっ、お得意さんだからって容赦しねえからな~!?」
そして遂に、会場中のデュエリストが声を揃えて同じ言葉を叫ぶ。それは、決闘者たちが全てを賭けて戦うことへの宣誓。頂点へと進み続ける者たちの魂の叫び。
「デュエル!!」
熱気に包まれた空気、初夏の雲一つない蒼天、照りつける太陽。まるで燃え盛る魂の象徴とも言えるような全てが、全国決闘王杯の開幕を告げていた。
続く
だん!とましろが部室の机に両手をおく。全員分用意されたレジュメを前に、遊大たちは険しい表情で席に腰かけた。
ましろ「今から『全国決闘王杯』およびその作戦についてのミーティングを開催する!」
部室のカレンダーには6月10日の枠に二重丸が描かれており、さらにその上に「各自デッキ・プレイング課題を仕上げる!」と描かれている。全国津々浦々の決闘者が死力を尽くし己が全ての実力をぶつけんとする場、『全国決闘王杯・市予選』は、いよいよ2日後というところまで迫っていた。
ましろ「まずお前らの知る通り、この決闘王杯は市・地区予選~県予選~そして全国大会の三部に分かれて催される。他の運動や文化競技と比較しても所謂『地方予選』なるものがない。その代わりに県予選から全国に進めるのは一県からベスト4までと決まっている。だから相対的に県予選がめちゃくちゃ厳しい。」
その言葉を聞いて龍平が厳かな表情でうつむく。同時に「地方大会という全国への中継地が少ない分、調整期間が少ない…ってのも懸念点か。」という声を漏らす。
ましろ「正解。県大会は7月1~2日。そして全国はその月末の7月29~30日だ。全国に進んだ場合は4×47=188人分のデッキを研究しなくちゃならない。各大会ごとに初日の朝までにデッキシート提出なのが幸いだな。」
嬢はそんな龍平を見て、思わず「すごいね…。もう県とか全国まで考えてるなんて…。」と呟いた。龍平はそんな嬢を横目で見るが、すぐに同じようにして視線を落とした。さらに龍平は小さく手を上げる。
龍平「先生。市予選の突破人数は?」
ましろ「20人だ。ベスト16は確定で、ベスト32の敗退者のうちから敗者復活戦で4人が県大会出場可能になる。つまり敗者復活のランダムトーナメントで2回勝てば県大会出場だ。」
遊大もつづいて口を開く。
遊大「150人超える出場者からベスト20…。えーっと何回勝ちゃあいいんだ…?」
あたふたした手つきで両手の指を折っていく。律歌はそんな遊大をみてくすっと笑い、遊大に耳打ちする。遊大は計算できなかったことなのか、それとも律歌が急接近したことなのか、ボッと顔を赤らめてしまった。
遊大「…うぁ、トーナメント次第で最低3回、あとは1回戦出場か2回戦出場かで決まってくる…らしいです。4回戦勝利で県大会出場確定ってことっすよね。」
足を組んでどっかりとした態度の阿原がましろのほうへと言葉を投げかける。
阿原「トーナメント表、持ってきてんだろ?先生。たしかトーナメント発表は2日前以降だもんな。」
その言葉を聞くとましろは右手のレジュメをぱらぱらと揺らす。それを生徒たちに渡す前に、彼女はつづけて口を開いた。
ましろ「渡す前に、だ。お前ら、『プロデュエリスト』、そして『資格持ち』ってものを知っているか?」
龍平の肩がピクっと動く。残った2人の1年の遊大と嬢はきょとんと首を傾げた。
ましろ「国内のトップで常に戦い続けその順位や限定大会戦績で争い、それ自体を生業にできるほどの強さを持った『プロデュエリスト』。決闘者なら誰もが憧れる存在…。そして『プロ昇格戦』に挑む資格を持った『資格持ちデュエリスト』…。」
遊大たちはその説明の意味自体は理解していたが、この決闘王杯の直前に説明する意図に対して疑問を抱いていた。
律歌「まあまあ鳩が豆鉄砲喰らったような顔をしないで。」
ましろ「そう、その『資格持ち』になれる権限は、この全国決闘王杯を含む公式戦の優秀戦績者にのみ配られる。具体的にいえば、中学の部・全国大会のベスト16だな。そこを勝ち取った者は、プロ昇格戦に臨むための適正試験を受ける権利を得る。そしてその先にプロ昇格戦が待ってるって感じだ。」
その言葉に、遊大と譲に電撃が走ったような衝撃が襲い掛かる。遊大はごくりと唾を飲みこみ、ゆっくりと唇を開いた。
遊大「…ってことは。」
嬢「私たちでもがんばればプロへの道が開けるってこと…!?」
ましろ「そうだな。厳密に言うと『開いてしまう』んだ。」
律歌が気怠げに頬杖をつく。逆の頬をぷくっと膨らませてつぶやいた。
律歌「プロへの道が開いてしまう。誰もがどの大会よりも本気で私たちを潰しに来るんだよね。遊大、嬢、龍平君。今日までだんだん練習がハードになってたでしょ?負けないために、勝つために私たちも全力で戦わなきゃいけないんだよ。」
ましろ「この前の大会が前哨戦であれば、明後日に待っているこの市予選は『本番』の始まりだ。だからこの前みたいに『負けてもいい』なんて言うつもりはない。ここまで全力でお前らが自分のデュエルを磨き続けてきたことはわかる。だからそれをぶつけて来い!」
ましろは似合わない上がった口角で遊大たちを見つめる。生徒たちは鼓舞しようとしてるましろの意思をくみ取ったのか、各々がニッと笑って見せた。
遊大「どんと来いってヤツですよ!」
遊大が腕をぐっと上にあげ高々と叫ぶ。その様子を見てましろも安堵の息を漏らす。続いて龍平も口を開いた。
龍平「オレは頂点まで行くだけです。そのために戦ってるんですから。」
嬢「私も頑張ります!二人に負けてられないですから!」
律歌と阿原は燃え上がる3人の後輩を見て、お互いに顔を見合わせる。
阿原「俺だって負けねえからな。」
律歌「勝てるの~?でも、私も一年ズには負けられないな。」
闘志を燃やす生徒たちを横目に、ましろはそれぞれの手元にトーナメント表を渡す。遊大もそれを受け取り、しっかりと自分が戦う相手を確認した。そして戦う相手を見て、さらに目を輝かせた。
『斬隠輝久』、前回大会で激闘を繰り広げた彼とは順当に勝ち進めばベスト16決定戦で対峙する。県大会への出場をかけた相手がそのライバルであるという事実に、胸をたぎらせていた。
ましろ「お前ら、トーナメント表は確認したな!」
その一括に、一同はましろのほうへと顔を上げる。
ましろ「大会は明後日だ!気合い入れろよ!勝ってこい!!」
「はい!」と、5人分の大きな声が部室棟に響き渡った。
~
来る6月10日。遊大たちは電車に揺られ、アオメ市民会館決闘場訪れていた。生徒たちは自分の学校の制服をきちっと身に着け、誰しもが真剣な面持ちでデュエルフィールドへと向かっていた。さんさんとした太陽が、決闘場の窓から煌々と差し込む。強くあろうとする全てのデュエリストの思いがこの大会で交差する。
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通りの良い市長の声が決闘場に響き渡り、デュエルフィールドの全てのデュエリストが一斉にデュエルディスクを構えた。
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そして遂に、会場中のデュエリストが声を揃えて同じ言葉を叫ぶ。それは、決闘者たちが全てを賭けて戦うことへの宣誓。頂点へと進み続ける者たちの魂の叫び。
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