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HOME > 遊戯王SS一覧 > 42話 燃ゆる轍 その①

42話 燃ゆる轍 その① 作:コングの施し

全国決闘王杯市内予選から数日、東雲中体育祭後の各部主催のレクリエーションが幕を開ける。ポイントバトルと称したバトルロワイヤル。新たな力を手にした遊大、そして他の部員たちも、それぞれの想いを胸に新たな戦いへと臨む。
鳴り響くチャイム。雪崩れ込む決闘者達。デュエル部総員、彼らを迎え討つ。





時は少し遡り、体育祭当日の朝。
放課後に時間が取れないので、デュエル部のレクリエーションたるポイントバトルのミーティングで、ましろが生徒らを集めた時のこと。

誰よりも先に、集合場所の部室に立つ遊大の姿があった。生徒たちとましろが集まるや否や、彼は深々と頭を垂れ、叫ぶように言った。

遊大「先日は、ほんとにご迷惑をおかけしました!!!!」

部室棟全体に響き渡るほどに大きく、こだまでもするんじゃないかと嬢が目を丸くした。

遊大「おれ、ガキでした…!
相手の努力を勝手に疑って、吹っ飛ばされて、飛び出して、律歌さんに、皆さんに、迷惑かけて!ほんとにすいませんでした!!」

突然の謝罪に静まり返った一同の中で、ましろがゆっくりと口を開いた。

ましろ「…確かに、あの行動は軽率すぎたな。ちゃんと反省するべきだ。」

遊大「…はい。」

律歌「…そこに関しては賛成かな。も〜、雨の中さがすの大変だったんだよ?」

諭すように、やんわりと律歌が続いて、目配せするようにましろを見つめる。

ましろ「だが…また頑張るからここに来たんだろう?」

その言葉に、遊大が潤んだ目をあげる。そこには自分を見つめるみんなの姿があった。困ったような笑顔の嬢、暖かく見つめる律歌、やれやれと腕を組む龍平。

遊大「…はい!」

嬢「また頑張ろうね。遊大くん。」

龍平「別に…弱い奴は置いてくしな。」

遊大「…ありがとうございます…!!」

顔を上げた遊大。皆に歩み寄ろうとしたとき、その声が彼の足を止めた。


「待てや。」


部室のドアに寄りかかり、ずっと腕を組んでいた阿原。背中を離し、遊大の目の前までツカツカと寄る。その目は真っ直ぐに遊大を睨みつけている。

阿原「飛び出してその上、敗者復活蹴っただあ?
あんま舐めてんじゃねえぞ。てめェは自分の可能性を潰した上に周りに迷惑もかけたんだ。わかってんのか?」

そのまま、遊大の胸ぐらをがっちりと掴み、自分の顔の方にグッと体を寄せる。その様に危険を察知したのか、龍平が無言で阿原の腕を掴む。刺さる部員とましろの視線。「チッ…」と小さく舌を打ち、その手をぱっと離した。

遊大「…わかって…なかったんですよ!
でもおれだってもう、置いてかれるつもりはないです…!!」

2人の視線が空で衝突し、煌々と火花を散らす。
律歌が大きくため息をついた。片目を閉じて、睨み合う二匹の雄を呆れたように見つめる。立てた2本の指で、ちょいちょい、と2人を指した。

律歌「もぅ〜、こうなると思った。じゃ、そこデュエル決定で。」

ましろ「…ブレイキングダウン?」

やんわりとした声色で放たれたその一言とツッコミによって、部内に張った琴線が一気に緩むのを一同が感じ取った。一触即発の事態を免れ、龍平も嬢も胸を撫で下ろす。

阿原「はぁ。レクは別に部員同士で闘ったっていいんだろ?」

間を悪くしたように遊大に背を見せて、また部室の扉の方に歩き出す。

阿原「…掴んで悪かったな。放課後首洗って待ってろ。」

そう残すと、扉をバタッと閉めて部室から消えた。
閉じられた扉を見つめる一同。それぞれ思うことはあるだろうが、その中で一番に口を開いたのは龍平だった。

龍平「…不器用ですね。」

嬢も律歌もましろも、まるで「お前が言うな。」と言いたげに龍平を見つめる。同時にこの状況のオチとなった彼に感謝する女子一同であった。





律歌「《アークロード・パラディオン》で、ダイレクトアタック!」

金色の騎士が放つ一撃。対戦相手の生徒のデュエルディスクが電子音とともに敗北を告げる。

「つ、強いですね…!」

この日のために参加者のデュエルディスクに導入されたポイントバトル用のアプリケーション。液晶に映る文字とアナウンスが現在のポイントを示す仕組みになっている。

『デュエル勝利のボーナスとして、1ポイント加算されます。ただいまの合計ポイントは10ポイントです。』

律歌「10連勝か〜。ふふん。パラディオンは回転率が良くていい感じだね。他のみんなは…。」


校舎2階、黒々しい鱗に身を包み、凍てつくような冷気を発する龍と共にばたばたと生徒や教職員たちを薙ぎ倒すましろの姿があった。

ましろ「…舐められたもんですねえ、黒川先生。伊達にあたしもデュエル部顧問やってないんですよ!《ヴェルズ・オピオン》で《ゾンビーノ》を攻撃!」

黒龍の口から放たれた吹雪が、ツギハギのゾンビの少年の身体を真白く染めていく。冷気の余波が短髪のガタイのいい男のLPを狩り取り、慈悲なくデュエルディクスが敗北を告げる。

「いやはや…!顧問ならばいけるかと…これでも昔は強かったんだけどなあ?」

『デュエル勝利のボーナスとして、1ポイント加算されます。ただいまの合計ポイントは6ポイントです。』

ましろ(まだ一回も負けてないが…6連勝か。ロックデッキなだけあってテンポが悪いな…と、お?)

ましろの視界から、パタリとデュエリストが消えた。開始から40分。ましろの場所だけではない。「顧問には」「県大会出場者には」どうやったって勝てないという認識が参加者の中で広まり始め、各々の元から挑戦者が蜘蛛の子を散らしたように退散していった。

そしてその2つの条件にどちらも当てはまらない男が1人。

部室棟屋上、遊大の元に、退散していたデュエリストたちが集結しつつあった。「県大会に出場していない唯一の部員」以外の情報は、彼らは持ち合わせていない。すなわち「雑魚狩り」。自分たちでも勝てるのではないか、勝って10ポイント貰いに行こう、その程度の認識の挑戦者たちが遊大の元に集合する。

遊大「来たな!ゾロゾロ!」

「お前、県大会に行ってないんだろ?勝たせてもらうぜ!樋本遊大!」

次々に降りかかる火の粉。しかし、ことごとく許しはしない。

遊大「《始祖竜ワイアーム》で、《A・O・J コズミッククローザー》を攻撃!プライマル・ブレイズ!はい次ぃ!」

これまで培った経験、そして手にしたカードたちを駆使して次々に生徒たちを蹴散らしていく。挑戦者の群れも、勢いを失ったかと思われたその時に、反対方向から生徒たちを払い除け、その男は遊大の前に立ち塞がった。

阿原克也。《スクラップ》デッキの使い手にして東雲中デュエル部2年。全国決闘王杯の一件で牙を研いだその張本人。

まさかのデュエル部同士の対峙を目の当たりにして、これまで挑戦者だった生徒たちは「踏み入る隙がない」ということを察し、気づけば既にギャラリーに回っていた。

阿原「…ったく、有象無象がいくら束になったって無理だろうがよ。」

その一言で、一気に周囲が静まりかえる。阿原は遊大の目を見てはっきりと言った。

阿原「…許さねえよ。だが、置いていかれねえように戻ってきたんだろ。
だったら証明してみせろよ。こいつらに、オレに、それを見せてみやがれ!」

遊大は心臓をグッと掴まれたような気がした。
その真っ直ぐすぎる視線、そしてストレートでに飛んでくるド直球のその言葉。この人はいつだってそうだ。熱い言葉で自分を助走込みでぶん殴ってくる。自分はなんて恵まれているんだ。
胸に飛び込んできた言葉を噛み締めるように受け止め、大きく答えた。

遊大「…ありがとうございます!やります!おれ!」

阿原「ああ!?気持ち悪りぃなァ!許さねえっつったろうが!」

そのやりとりから、2人とも自然に颯爽とデッキを構える。そして鳴り響くその言葉。漢の戦いゴングたるその掛け声。

「「デュエル!!」」

足元から広がるソリッドヴィジョンで、周囲の景色が移ろいでゆく。構える2人、その先行をもぎ取ったのは…

阿原「オレの先攻ッ!」

TURN:1
阿原 克也(ターンプレイヤー)
LP:8000
手札:5
モンスター:
魔法罠:
フィールドゾーン:

樋本 遊大
LP:8000
手札:5
モンスター:
魔法罠:
フィールドゾーン:

阿原「オレは手札から《スクラップ・ラプター》を通常召喚し、効果を発動ッ!」

廃材でつぎはぎの恐竜がそのカードから現れる。鉄を擦ったような甲高い咆哮と共に、そのガラクタの身体が熱を帯びて弾けた。

《スクラップ・ラプター》(攻)
☆4 地属性・恐竜族/チューナー/効果
ATK:1400/DEF:1000

阿原「《スクラップ》の通常召喚権を増やし、さらにデッキから《スクラップ・キマイラ》を手札に加える。」

デッキが素早くかき乱され、その1枚のカードが飛び出す。遊大も幾度となく目にしてきたそのカード。しかし《スクラップ・ラプター》という初動を手にしたのは決闘王杯市内予選の直前。改めてその強力さに戦慄する。

遊大(サーチに通常召喚権の増量…やっぱり1枚初動として完結してる!)

阿原「続けていくぜ!
増えた召喚権を使い《スクラップ・キマイラ》を通常召喚!さらにその効果により、破壊した《ラプター》を墓地から特殊召喚だァッ!」

《スクラップ・キマイラ》(攻)
☆4 地属性・獣族/効果
ATK:1700/DEF:500

《スクラップ・ラプター》(守)
☆4 地属性・恐竜族/チューナー/効果
ATK:1400/DEF:1000

現れた2匹の廃材の獣、すの姿は閃光の鏃となり、空へと交差しながら舞い上がってゆく。

遊大「えッ…!」

天へと昇るその姿は、明らかに遊大の予測から逸脱していた。彼が予測していたのは『シンクロ召喚』。これまでの阿原のデュエルは《スクラップ・ドラゴン》を中心としたものであった。しかし思い返せば、それは先攻では適したモンスターではない。そして、ここに臨むまでに手にしている『情報』から鑑みたその召喚法は…。

遊大「…シンクロじゃねえ…リンクモンスターか!!」

阿原「《スクラップ・キマイラ》と《スクラップ・ラプター》をリンクマーカーにセットォ!!サーキットコンバイン!来い!厄災呼ぶ廃材の翼竜!
リンク2!《スクラップ・ワイバーン》!」

ギチギチと音を立て、いびつな身体を震わせてゆっくりと翼を広げる。遊大が初めて目にする阿原のリンクモンスター。一瞬一瞬、阿原の一手一手に、先輩ながら成長した彼の姿が映り込み、なんともいえないプレッシャーが身体を包む。

《スクラップ・ワイバーン》(攻)
LINK-2 地属性・ドラゴン族/リンク/効果
ATK:1700(←・↓)

遊大「これが噂に聞いた《スクラップ・ワイバーン》…!」

思わず口にしていたその言葉、見逃すことなく自分を睨みつける阿原の視線に気づき、ハッと口元を押さえる。

阿原「…噂だァ?」

阿原が抱く疑念は間違っていない。彼が《スクラップ・ワイバーン》を使用したのはvsツァン ディレのベスト8決定戦。ベスト16決定で棄権扱いとなり、会場を抜けた遊大が知るはずもない。

遊大「…あー、えっとッスね…!」

視線が刺さり、苦笑いと共に顔を背ける。それは熱を出して学校を休んだ日のこと。





『…決闘王杯で起きたことを教えて欲しい?なんでまた僕に?』

電話口で聞こえる爽やかな話し声。熱に体を蝕まれながらも、自分が置いていかれてはならないという意志を抱いた遊大は、その夕刻に光妖中の斬隠輝久の元へと連絡をかけていた。

手に握られた『新しい力』たち。しかしそれだけはダメだ。それだけでは勝てない。確実に置いていかれる。常にアップデートされる情報を掴まなければ絶対にこの先の戦いでは通用しない。

遊大「…頼む!おれ、もう置いてかれるのは嫌なんだ…!!」

電話口で輝久が大きくため息を吐くのがわかる。自分への失望。至極当然のことであった。

『まったく、僕も安く見られたモンだよね。』

沈んだ彼の声がずっしりと胸にのしかかる。相手の努力を甘く見て、吹っ飛ばされて逃げ出して、その果てに懇願などされれば失望を通り越して呆れ果ててしまうだろう。

遊大「…おれ、お前の努力を甘く見て、それで負けて、こんなことまで頼み込むなんて申し訳ないし、情けないとも思ってる…!でも!!!」

そこで遊大の声が止まる。息をいっぱいに吸って、肺から空気を限界まで絞り出すように吐く。

遊大「…もう1番好きなデュエルで負けたくねえんだ!!」

しばしの沈黙が流れる。少しして、呆れたようなトーンの輝久の声が響いた。

『…まったく、次はないよ。でもこれで貸し借りはナシ。お互いに純粋にライバル同士だ。』

遊大「…ってことは…!」

輝久は今一度大きくため息をつく。続けて『こちらとしてもキミには助けられた借りがあったからね。』とつぶやく。

遊大はなんだか熱いものが込み上げてきて、震える喉をぐっと押さえた。何度目だ、自分はなんて恵まれているんだ。自分に手を差し伸べてくれる人たち、その人への思いが込み上げて、絶対に手放してはならない存在がはっきりと見えた気がした。

遊大「…ありがとう…輝久!!」

震えた声で、泣きそうになっていることを輝久が悟ったのか笑い声が聞こえた。

『はははっ、なんだよ泣いてるのか?
僕も待ってるなんて言ってしまったからね。ここはキミに手を貸そう。』

そうして、輝久の声が突然に真面目な声色に引き戻される。慌てて鼻をかみながら、続ける彼の声に耳を傾けた。

『…それでは本題だよ。何が知りたい?』

今までにないほどに深刻そうな声の響き。それが今から告げられる情報の重要さを物語っていた。遊大はごくりと息を飲み込む。

遊大「…おれがいなかった、ベスト16以降のことだ…!
何が起きたのか、おれが知らないことはなんなのか、まずそれを知らなくちゃいけない。」

『ベスト16以降で起きた変化…か。
そうだね、じゃあまずは君のところの阿原克也くんの話をしよう。』





遊大「かくかくしかじかで…」

そのことを阿原に話す遊大。当然、彼がリンク召喚した《スクラップ・ワイバーン》の存在も看破している。

阿原「ははっ!てめェも必死だったワケだ!なら効果くらい知ってるよな!
カードを1枚セットし、《ワイバーン》の効果発動!」

そう。効果は知っている。しかし今は先攻1ターン目、知っている上で…

遊大(どうすることもできない…!)

《スクラップ・ワイバーン》の効果は主に2つ。墓地の《スクラップ》を蘇生し、自分のカードを1枚破壊する効果。そして2つ目の「《スクラップ》モンスターの破壊時」に発動する、デッキから新たな《スクラップ》を特殊召喚し、フィールドのカードを1枚選んで破壊する効果。

遊大(①が墓地蘇生+破壊がトリガーとなって、②のデッキからのリクルートが誘発…!
フィールドに自分のカードしか存在しない以上は1枚のコストは確定だが、その破壊するカードも自分で選べる以上は一概にデメリットとは言えない…!)

阿原「墓地から《スクラップ・キマイラ》を蘇生して破壊!
さらに②の効果でデッキから《スクラップ・ゴーレム》を特殊召喚し、今セットした《スキル・サクセサー》を破壊だァ!」

次々に自分のカードを破壊し、それを糧に新しいモンスターを呼び出す阿原。その展開未だは止まらない。

阿原「特殊召喚した《スクラップ・ゴーレム》の効果を発動!
墓地から三度、《スクラップ・ラプター》を特殊召喚ッ!」

《スクラップ・ゴーレム》(守)
☆5 地属性・岩石族/効果
ATK:2300/DEF:1400

《スクラップ・ラプター》(守)
☆4 地属性・恐竜族/チューナー/効果
ATK:1400/DEF:1000

巨大な廃材を積み上げたような巨人の腹部、洗濯機のハッチのような部分から新たにモンスターが出現する。

そしてこの状況で、阿原のフィールドにはチューナーと非チューナーが1体ずつ、そしてリンク2のモンスターが1体。遊大が耳にしていたのは《スクラップ・ワイバーン》のことだけではない。

遊大「合計レベル9…《スクラップ・ツイン・ドラゴン》か…!」

警戒していたのは新たなエースの《スクラップ・ツイン・ドラゴン》であった。しかしその思考の奥底にわずかな歪みがあったことは否めない。その効果は相手ターンで使えるものではない。それ故、輝久から得た情報にもなかった『あるカード』の存在が重たく、強く彼を縛り付けることとなる。

阿原「はン、バカが油断しやがって。オレがそんな甘え手を指す訳がねェだろうが!
オレは、リンク2の《ワイバーン》と《ゴーレム》、そして《ラプター》をリンクマーカーにセット!!」

遊大「…は!?」

驚きを隠すことができない。さらなるリンク召喚など、輝久の情報には含まれていなかった。つまりそれは、大会後に彼が生み出した完全なオリジナル。

思えば《スクラップ》のシンクロはどれも後攻の相手の盤面に干渉するものばかり。当然であった。成長した彼が先攻における盤面の終着点を用意しないはずが無い。

遊大の脳裏に、輝久との一戦、その『決めつけ』が蘇る。

遊大(…何やってんだおれは!
当たり前だ!この人が先攻で盤面に影響力のないモンスターを展開しないはずがない!)

阿原「覇道を照らす未来回路!召喚条件は効果モンスター2体以上!リンク召喚!現れろォ!」

4対の光の矢が天へと吸い込まれてゆく。弾けるその閃光のうちから、翠緑色の輝きを放つ巨大な影が、鬱蒼と視界を覆ってゆく。

遊大の目にも覚えがあった。しかしそれはテレビのドキュメンタリーや教科書の中のもの。逆にそれが、「画面の奥でしか見たことがないほどの強大な存在」であることに気づいたとき、対峙する自らの掌にじっとりと汗が滲んでいくのを感じた。

遊大「…まじかよ。」

阿原「リンク4!《トポロジック・ボマー・ドラゴン》!!」

《トポロジック・ボマー・ドラゴン》(攻)
LINK-4 闇属性・サイバース族/リンク/効果
ATK:3000(↙・↑・↓・↘)

この世界の生物とは思えないほどに重たい咆哮がフィールドを激しく揺らす。光が溶けると、一つの命ながら無機質な冷徹さを醸すその全身が姿を見せた。

磨きのかかった銅色の巨体をくねらせ、体の節々から緑色の輝きが漏れ出している。虚か真か、どちらにせよ言わずと知れたサイバーテロ組織「ハノイの騎士」を代表する1枚のカード。伝説に名を残した数々の決闘者を苦しめたそのモンスターが、遊大をまっすぐに睨みつける。

威圧感が体を駆け抜ける。同時に相手をすればただでは済まないという直感が全身に危機を知らせているのが伝わってきた。

遊大「コイツ…レジェンドの1枚だろ!」

阿原「レプリカとはいえ、コイツを使うのはちと胸糞悪りぃけどな。必死だぜ…オレもな!!」

遊大は思う。そして認めた。わずかとはいえ、目の前の1人の決闘者を甘く見ていたこと。目の前の《トポロジック・ボマー・ドラゴン》に恐怖していること。

同時に感じ取った。

今の状況を、自分の思考を俯瞰できていること。
故にもう油断はしない。熱く、しかし冷静に計算高く、敗北への恐怖を勝利に進む原動力へと変換し、このモンスターを、阿原克也という決闘者を討ち取る。

大きく息を吸い込んで吐き出す。大丈夫。これほど強大なモンスターを相手にしても、自分は戦える。頬をパチンと鳴らし、まっすぐに彼とそのモンスターを見つめた。

遊大「…おっけー、もう同じ失敗はしない!狩らせてもらうぜ、阿原さん!」

続く
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ランペル
復活…ですな!
部のみんなの前で改めて自らの過ち、迷惑をかけてしまったことを謝罪する遊大。顧問のましろより反省するように促されるが、それと同時にみんなが改めて遊大が帰って来ることを喜んでいるようにも思えます。
しかし、ただ一人阿原は彼へとつかみかかりを怒りを露わに。

決着をレクのデュエルにへと持ち越し、みんなに追いつこうと力をつけた遊大と阿原とのデュエルが幕を開ける。
シンクロではなくリンクモンスターを展開する阿原を前に口を滑らす遊大。なるほど、輝久へ恥を承知で自分が居なくなった後のデュエルの詳細を聞いていたんですね。侮り負け、泣きを見た相手へと頼み込むその様こそが、彼のみんなに置いて行かれたくないという意思の表れに思えますね。好きなデュエルで負けたくない。彼の再確した己の目標。その為に彼はただ突き進むのみ!

デュエルでは先行展開において相手へと干渉するのが難しいスクラップデッキより繰り出されたまさかのトポロジックボマーのカード。その存在はこの世界線においても存在するハノイの騎士の扱う1枚…。
レプリカとは言えそのカードを使う阿原はギャラリーから野次が飛んできてもおかしくありませんねぇ…。面と向かっては彼に睨まれるのを避けるかもですが、悪評が広がりかねません。
この新たな力を手にするのは、それだけ阿原がデュエルに真っすぐで必死だという証拠。

トポロジックという役どころを阿原が扱うのは何とも絶妙な采配ですねぇ。レプリカでも性能は、ほぼ同等であろうトポロジックを前にどんなデュエルを繰り広げるのか…。
次回以降に立ち直った遊大がどんなデュエルを繰り広げるのかが実に気になります! (2023-11-08 00:16)
コングの施し
ランペルさん、コメント&閲覧ありがとうございます!

遊大、新たな力と共に復活でございます!詳細は次回で明かすとして、優しいデュエル部員の中で唯一彼に憤りを覚えている阿原とのマッチアップは、じつはずっと描きたかったんですよね。こういう叩きあって強くなるみたいな関係をうまく表現できるようにしたいです。

あとはトポロジックに関してですよね…。一応レジェンドカードという立ち位置にはしていますが、こういうアニメ漫画関連のカードの扱いに関しても、イメージや設定を崩さないようにほどほどに掘り下げていきたい所存です!

新章も近いので、次回以降もお楽しみに!
(2023-11-09 01:40)

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