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HOME > 遊戯王SS一覧 > 47話 可能性、繋いで その②

47話 可能性、繋いで その② 作:コングの施し

決闘王杯県予選を終え、ついに始まるアカデミア合宿。しかし多すぎる参加者を濾しとるふるいは、アカデミア本校までのスターチップ争奪戦であった。幕を開けた4時間の激闘。遊大はグンマ県2位の実力を持つ蜂谷加奈子から勝負を挑まれる。削られゆくLP、そして彼女のエースの《 B・F-降魔弓のハマ》を突破しようとした時、彼女の《シンクロ・ゾーン》のカードが鼓動を始めた。



TURN:3
樋本 遊大(ターンプレイヤー)
LP:2600
手札:1
モンスター:《炎魔刃フレイムタン》(攻) 《ブラック・ブルドラゴ》(攻) 
魔法罠:《切り裂かれし闇》 《デュアル・アブレーション》
フィールドゾーン:《化合電界》

蜂谷 加奈子
LP:8000
手札:0
モンスター:《B・F-降魔弓のハマ》(攻) 《B・F-必中のピン》(攻) 《B・F-毒針のニードル》(攻) 《B・F-連撃のツインボウ》(攻)
魔法罠:《シンクロ・ゾーン》
フィールドゾーン:


翠緑色の陣が音を立てて砕け散る。宙に舞い上がり、星となったモンスターたちはさらに巨大な影を映し出す。

蜂谷のフィールドより、《シンクロ・ゾーン》、チューナー扱いの《B・F-降魔弓のハマ》、《B・F-連撃のツインボウ》、《B・F-必中のピン》の4枚のカードが墓地に送られ、EXデッキの収納がガチャリと開く。

蜂谷「結集せし絆の力にて、傲岸たる巨悪の壁を射貫け!シンクロ召喚!現れろ、レベル12!《B・F-決戦のビッグ・バリスタ》!!」

《B・F-決戦のビッグ・バリスタ》(攻)
☆12 風属性・昆虫族/シンクロ/効果
ATK:3000/DEF:800

幾重にも携えられた巨翔と、銀色に輝く毒針をまっすぐに遊大の方へ向けるそのモンスター。まさしく蜂起した者どもの要塞、決戦の火蓋を切るべくして現れた、蜂谷の切り札。

遊大「レベル12のシンクロって、おれのターンだぞ…!?」

その姿を現した巨蜂の要塞。蜂谷が腕を上げると、デュエルディスクに眠る《B・F》たち、蜂のモンスターのカードがその要塞の矢筒となる腹部へと終結していく。

蜂谷「《決戦のビッグ・バリスタ》の効果を発動!墓地から《B・F》を全て除外し、その数×500、相手モンスターの攻撃力を下げる!」

4本の毒針が弦に収まり、鈍い音を立てながら遊大のフィールドへと狙いが定まる。ぎっちりと引かれた4体の《B・F》の力は、今にも遊大を貫かんとしている。

遊大「除外された《B・F》は4体…!やばい!」

蜂谷「撃ち抜けッ!!!」

ガチン…!!
弓のジョイントが外れ、蜂起した蜂の矢が一斉に放たれる。まっすぐに遊大のもとへ降り注ぐそれは、文字通りフィールドを蜂の巣のごとく貫いた。

激しい衝突音と羽音。フィールドを突き刺し、毒で犯していくその矢によって、遊大のモンスターたちは力をなくし横たわるしかなくなった。

《ブラック・ブルドラゴ》(ATK:3000→1000)
《炎魔刃フレイムタン》(ATK:400→0)

荒れ地となったフィールド、《B・F-降魔弓のハマ》を破壊し、さらに次のターンへと繋ぐという狙いが、《ブラック・ブルドラゴ》の攻撃力の減衰とともに叶わぬものとなった。
いや、《B・F-降魔弓のハマ》を残す、破壊するという選択の余地なく、蜂谷の《B・F-決戦のビッグ・バリスタ》は、このデュエルを終わらせる決定力を持っているモンスターであった。

蜂谷「先に言っておくよ?
《決戦のビッグ・バリスタ》には貫通効果、そして破壊されたときに除外状態の《B・F》を3体帰還させる効果がある。
つまりコイツを破壊しても残しても、結局このデュエルは詰んでいるよ。」

蜂谷は得意げに腕を組む。そのはず、蜂谷の状況は圧倒的に有利だった。《B・F-決戦のビッグ・バリスタ》で《炎魔刃フレイムタン》を攻撃し破壊すればゲームエンド。
さらに《決戦のビッグ・バリスタ》が破壊されたとしても、《B・F-降魔弓のハマ》、《B・F-霊弓のアズサ》、その他《B・F》モンスターを展開し、攻撃・効果でのダメージでゲームは終わる。

遊大は、眼前の巨蜂の要塞を前に手を震わせていた。アカデミア合宿のためのスターチップ争奪戦、その初戦での敗北が、そのモンスターにたじろぎ、恐怖していた。

遊大(手が震えてる…これがグンマ県2位、堂々の全国出場者の実力かよ…!)
「やばい…よな、これ…!!」

どうする?どうすればいい?響く耳鳴りと狭まった視野、そして震える手で盤面を整理する。しかし考えども考えども「状況は最悪」以上の結果を脳は弾き出せない。

必死に思考を回す。最期を拒絶する人間の脳が走馬灯を見せるように、絶望的状況の脳裏に走ったのは、戦友の声だった。





龍平「《化合獣》もサマになってきたな。」

昼休みの教室。午後の乾いた風が窓から入り込む。遊大の机の上に並べられたカードたち、そして開かれたノートには、そのモンスターの名前と効果が簡潔に記されている。矢印で結ばれたモンスターの名前は関係図のようになっていて、遊大は笑みを浮かべながらペンを走らせている。

遊大「やっぱり展開力が伸びたのが大きいぜ!その代わりに展開やプレイングも複雑で、まだ粗削りなんだけどな!」

龍平「その辺はやっぱり慣れと研究で押さえておくしかないよな。俺もデッキを強化するたびに思うよ。」

窓際に寄りかかる龍平は、腰にかかったデッキケースから数枚のカードを引っ張り出して続ける。

龍平「《No.46 神影龍ドラッグルーオン》、それに《聖刻神龍-エネアード》、この辺りか。除去とか展開とかの効果をもった高打点が揃ってると、やっぱりリーサルがぐっと近づく。」

遊大「えと、リーサルって…つまりそのターンで1キルできるかって話だっけ?」

龍平「ああ。そういうのがいると、ゲームの詰ませが突然可能になったりする。
市内予選の嬢との試合がその最たるだったよ。」

遊大はぶっくりと頬を膨らませる。決闘王杯市内予選の決勝。ノートをぱらぱらとめくり、嬢と龍平の試合の展開と詳細をできる限り記したページを開く。

遊大「おれ見てないんだってば…。損してるよなほんと…!」

しかし、嬢と龍平の2人が東雲中の同級生であるがゆえに、そのページに書かれた展開と情報は全て的を得ている。実際に見ていないにも関わらず、その激闘の様子は誰よりも深く理解していた。

決勝で鎬を削った2人への尊敬と小さな憧れ、そして置いて行かれぬようにと燃やし続けた対抗心からの研究の証、そのページの大量のメモとマーカーがその理解への回答だった。

遊大「…確かに、情報だけでもあの試合は凄いフィニッシュだったってわかるよ。大量の除去と《重力崩壊》を喰らってなお、攻めのタイミングはたった1ターンでLP8000を削り切っている。
《ドラグニティナイト-アラドヴァル》のコストをフィールド魔法を奪って枯渇させ、最後は《アラドヴァル》自身のコントロールすら奪取して勝つなんて、おれじゃ考えつかないよ。」

龍平「相手がドラゴン族だったからな。《No.46 神影龍ドラッグルーオン》と《竜皇神話》、さらに《土地ころがし》が刺さった、と言えばそれまでだが、下準備と耐久で選択をミスっていれば、あの試合は間違いなく負けていた。」

遊大「リーサルへの道筋は自分と相手のデッキの理解度が深くないとダメってことか?」

龍平「ああ。相手の手の内と自分のやれることがわかっていなければ勝利は遠のくし、逆に、どんな時でも勝利の可能性は血眼になって探すべきだと、俺は思う。」

遊大「…どんな時でも、なあ。
強いのはわかるけど、まだ全部のカードを使いこなせるほど、おれはデッキを理解できてないのかも…。」

また頬を膨らませ、手の中にある数枚のカードを見つめる。黒と蒼の枠のカードたち。新しくデッキを強化することは決して初めてではないが、大きすぎる上がり幅からかまだ持て余してしまっていたのかもしれない。

龍平「そいつらだって、勝利への可能性を確実に含んだカードだろ。勝利には貪欲でいいと思うぞ。」





蜂谷「なんだいボーっとして?感心しないな。」

ハッとした。思考が数秒前よりも冴えている。視界が鮮明でより広く、音も良く聞こえる。眼前にそびえる巨蜂の要塞。先ほどまで漠然とした恐怖の象徴だったそれが、今ではなぜ恐れていたのかはっきりとわかる。

恐怖があるからこそ、油断はない。その上で冷静に、そのモンスターを討ち取る道標を、勝利への可能性を繋いでいく。

遊大「…おっけー!
ちょっと視野が狭かったな!こっからだ!!」

遊大は顔を上げた。蜂谷の予想とは反して、その顔には笑みが、瞳には揺らぐ炎が灯っていた。

記憶の中で、すでに龍平が答えを教えてくれていた。このターンに、このデュエルに自分に求められているのは次のターンではない。


このターンに、確実に倒し切るという可能性。


遊大「おれは、《炎魔刃フレイムタン》と《ブラック・ブルドラゴ》をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!」

2枚のカードは赤く火焔を纏って鏃となる。燃ゆる矢じりはサーキットに吸い込まれ、また新たな命を生み出す。

遊大「リンク2!《剛炎の騎士》!!」

《剛炎の騎士》(攻)
LINK-2 炎属性・戦士族/リンク/効果
ATK:1300(→1800)[←・↙]

蜂谷「ってことは…諦めてなかったのか。」

遊大「そりゃな。諦めるほどこの状況は悪くない!」

蜂谷「攻撃力の下がったモンスターを素材にしてのリンク召喚…戦術としては合理的だが、それじゃウチの《決戦のビック・バリスタ》は越えられない!」

遊大「別に、これだけじゃない!
おれは《化合電界》の効果を適応し、このカードを通常召喚!」

遊大に残された1枚の手札、覚悟を決め、そのカードを盤面に叩きつける。同時に青い波が押し寄せ、水の中より格子状の光が淡くフィールドを照らす。

遊大「来い!全てを受け流す守護の伴竜!《進化合獣ヒュードラゴン》!」

青い波は徐々に個体としての身体を定め始める。H2Oの文字を象った光が胎動を始め、やがて4ツ首の竜へと姿を変えた。

《進化合獣ヒュードラゴン》(攻)
☆8 水属性・ドラゴン族/デュアル/効果
ATK:200/DEF:2800

蜂谷「それが最後の手札か。サレンダーしない、ってことはまだやるってことだよね?」

遊大「しつこいぜ!おれは《切り裂かれし闇》の効果により、デッキから1枚ドロー!」

諦めない遊大を前にして、蜂谷も同じく思考を巡らせる。
たしかに、このターンで《B・F-決戦のビッグ・バリスタ》を討ち取ることは可能なのかもしれない。しかしそうであったとしても、破壊時に3体の《B・F》が遊大のLPを刈り取る。

《B・F-降魔弓のハマ》は相手が戦闘ダメージを受けなくなったバトル終了時に墓地の《B・F》×300のダメージを与える効果を持っている。墓地に《B・F》がいない今では発動できない他、そのダメージも300~600に留まる。

しかしそこで役に立つのが《B・F-霊弓のアズサ》。《B・F》が効果ダメージを与えたとき、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える効果がある。つまり、《B・F-降魔弓のハマ》の効果と《B・F-霊弓のアズサ》の効果が発動できた時点で勝利。

さらに《B・F-決戦のビッグ・バリスタ》の破壊時に呼び出せる《B・F》は3体。1匹の《B・F》の自爆特攻で《B・F-降魔弓のハマ》の効果発動条件を満たせばそれだけでゲームが終わる。

蜂谷は未だ、自分の勝利を確信したままだった。遊大に恐れなど抱かず勝利を信じ続ける彼女と、蜂谷を恐れながらもその勝利の可能性を詰めていく遊大との思考の間には、油断と慢心という点において差があった。

それゆえに、知らぬ場所から足を掬われる。

遊大「手札を捨て、永続罠《デュアル・アブレーション》の効果を発動!
デッキからデュアルモンスター1体を再度召喚扱いで特殊召喚する!」

蜂谷「…!」
(引いたカードじゃない。1枚ドローしたことに意味があった!)

青い波と対になるように、赤い光が発散した様々な色彩を吸収し交じり合い、鬼神とも呼べるような、巨大な獣の身体を形成していく。まるで合成された異形の怪物。

遊大「来てくれ!
燃ゆる魂震わす混沌の首!《進化合獣ダイオーキシン》!!」

《進化合獣ダイオーキシン》(攻)
☆闇 闇属性・悪魔族/デュアル/効果
ATK:2800/DEF:200

遊大「《進化合獣ダイオーキシン》の効果を発動!
墓地からデュアルを除外し、フィールドのカードを1枚破壊する!おれは《エヴォルテクター エヴェック》を除外!」

蜂谷は身構える。しかし《B・F-決戦のビッグ・バリスタ》を破壊されたとしても、このターンでの敗北はないし、さらに次のターンで決め切れる可能性の方が高い。

そんな彼女の思考が、無意識に体を動かした。

まだ対象を指定していない《進化合獣ダイオーキシン》の効果を受け、《B・F-決戦のビッグ・バリスタ》のカードに手を伸ばす。

遊大「ちげえよ!そいつじゃない!!」

蜂谷「…!!」

《進化合獣ダイオーキシン》の放った赤黒い火球。燃え盛るそれは真っ直ぐに《B・F毒針のニードル》へと飛んでいく。

蜂谷「《決戦のビック・バリスタ》じゃないだと!?」

蜂谷は呆気に取られた。LPはわずか、絶対に倒さねばならないのは貫通持ちの高打点モンスターのはず。しかし、ここで《B・F-決戦のビッグ・バリスタ》を除去しない、ということはつまり…

蜂谷(あるのか!?《決戦のビック・バリスタ》を倒す方法が…!!)

遊大「おれも最初はどうやって次のターンまで命を繋ぐか…なんてことに囚われてたんだ。でもな!」

遊大は大きく手を掲げる。そして出現する光の渦。吸い込まれていく2体のモンスターたち。

蜂谷「これは!!」

遊大「あったんだよ。繋がったんだ。このターンで決めれるって可能性が!!
おれは、《進化合獣ダイオーキシン》と《進化合獣ヒュードラゴン》の、2体のデュアルモンスターでオーバーレイネットワークを構築!!」

渦巻く光は熱と冷気を帯びて弾ける。その奥に胎動する新たな遊大のモンスター。進化を遂げた化合獣、その力が混じり、繋がり生まれる化合の魔獣。

遊大「燃ゆる魂と凍てつく意志繋ぎ合わせ、今、弾けろ!!エクシーズ召喚!!
ランク8《超化合獣メタン・ハイド》!!」

《超化合獣メタン・ハイド》(攻)
★8 炎属性・獣戦士族/エクシーズ/効果
ATK:3000/DEF:3000

混沌たる光が弾け、けたたましい咆哮が響き渡る。青い翼と赤い牙を携え、そのモンスターが姿を現した。

《決戦のビック・バリスタ》とも渡り合うであろうその巨体と、染み渡る殺気が蜂谷の表情を歪める。

蜂谷「本気か。こんなの隠してたの…!」

遊大「《超化合獣メタン・ハイド》の効果を発動!X召喚に成功した時、墓地からデュアルモンスター1体を特殊召喚する!」

《超化合獣メタン・ハイド》から放たれた青白い結晶。砕け散ったそれは大地に降り注ぎ、やがて青く燃え盛る。そして炎はやがて揺らぎだし、徐々に赤く、その色を変えてゆく。

コツ…コツ…
揺らぐ炎のうちより影を見せる不死鳥の騎士。遊大の魂のカードにして、そのデッキの切り札。

遊大「やっぱお前がいないと始まらないな!
不死鳥の翼宿し戦士よ。その剣で闇を切り裂き、色褪せた世界を赤く塗り上げろ!
《フェニックス・ギア・フリード》!!」

《フェニックス・ギア・フリード》(攻)
☆8 炎属性・戦士族/デュアル/効果
ATK:2800/DEF:2200

蜂谷「そいつ…さっきの《化合獣カーボン・クラブ》の効果で墓地に送っていたのか!」

《決戦のビック・バリスタ》による効果が発動し、フィールドが蜂の巣となった直後に遊大が呼び出した新たなリンクモンスター、《剛炎の騎士》が、燃ゆる剣を天高く掲げる。

遊大「《剛炎の騎士》がフィールドに存在する限り、戦士族モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。《フェニックス・ギア・フリード》は戦士族だ!」

《剛炎の騎士》ATK:1300→1800
《フェニックス・ギア・フリード》ATK:2800→3300

2人の戦士を、紅色のオーラが包み込む。その瞳はより鋭く、その剣はより熱を込めて蜃気楼すら纏い、ゆっくりと蜂谷へと構える。

蜂谷はずっさと後退りをする。

なぜだ。

《B・F決戦のビック・バリスタ》はまだ除去されておらず、さらに破壊されれば3体のモンスターが呼び出せるというのに。

なぜここまで自信を持って、誇りを持って、真っ直ぐな目でその剣を自分の心臓に向けられるのか。

蜂谷「…わかってるのか!《決戦のビック・バリスタ》を破壊すればキミは負けるんだぞ!!」

遊大「わかってらあよ《化合電界》の効果を適応し、《フェニックス・ギア・フリード》を再度召喚!!」

白銀の鎧に包まれた不死鳥の騎士、その体がより強く、より鮮やかに輝きを放つ。そして呼応するように、化合の獣の翼が真っ赤にゆらめく。

同時に放たれる、身を焦がすほどの熱波。フィールドを駆け抜け、蜂谷のデッキを、体を、モンスターを凄まじい勢いで突き刺す爆炎。

蜂谷「…これは!?」

遊大「デュアルモンスターの召喚に成功した場合、《超化合獣メタン・ハイド》の効果を発動!
オーバーレイユニットを1つ取り除き、相手の手札・フィールドのカード1枚を墓地に送ることを、強制する!!完全燃焼!!!」

燃えゆく波に焦がされ、巨蜂の要塞が音を立てて熱に溶けてゆく。絶対の信頼をおいていたエースモンスターが、蜂起の要が、全国へと続く決闘のロードが、なすすべなく崩れゆく。

蜂谷「セットカードとモンスターを先に片付けたのは、このためか…!!くっそ…!!!!」

熱波と同時に、蜂谷の体もおおきく吹き飛ばされる。目を開けたそこにいるのは3体の遊大のモンスターたち。勝利を確信していた状況から、盤面も、手札も、すべて刈り取られた。

遊大「この3体の合計攻撃力は8100……詰みだ。蜂谷さん。」

蜂谷「そうか…。」

蜂谷は思う。愚かだった。確かに県ベスト16以上のリストから漏れたデュエリストを狙う戦略は、この状況では間違っていなかったかもしれない。

しかし、いつまでも勝利への確信を捨てきれなかった。裏付けのない確信は盲信と変わらない。それを捨てきれなかった。そんな自分の…


蜂谷「…負けだよ。ウチの負けだ。」


蜂谷はゆっくりとデッキに手を置く。そして同時に鳴り響く電子音。
蜂谷の液晶から1つの星が消え、同時に遊大の星が1つ増える。

遊大「ありがとう蜂谷さん。こっからも頑張ろうな。」

遊大が手を差し伸べると、蜂谷は笑いながら立ち上がった。「まったく、カッコつかなかったじゃないか。」と小さく呟くと、その手は握らず、ハイタッチするようにして前へと歩き出す。


蜂谷「アカデミアで会おう。樋本遊大クン。」


WINNER:樋本遊大

『樋本 遊大 アオメ市立東雲中学校1年 決闘王杯・アオメ市予選ベスト32 
スターチップ争奪戦 1勝0敗 ☆:4』

『蜂谷 加奈子 私立蟻原中学校3年 決闘王杯・グンマ県予選2位
スターチップ争奪戦 0勝1敗 ☆:2』

可能性紡いだ一戦目、彼らの次なる相手は…。
アカデミア合宿をかけたスターチップ争奪戦は続く。
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ランペル
決着…!

シンクロ・ゾーンにより決戦兵器であるビッグ・バリスタを繰り出した蜂谷に対し遊大は次のターンまで生き残れる術がないかを探るが万事休す…。
脳裏に過った龍平との会話から活路を見出した遊大が狙ったのはこのターンでの勝利。確かに、相手にターンを渡したら負けるって場面は結構ありますからねぇ。ここで考えるべきは、どうやって相手のターンを凌ぐのかではなく、本当にこのターン相手を倒せないのかというリーサルの心得。
破壊してしまうと、除外からB・Fを帰還されてしまう事で、まずは周りのカードを消し去り化合獣の切り札であるメタン・ハイドの相手に強制する墓地送り効果を駆使!ビッグ・バリスタを破壊を介さずに除去することに成功した遊大がそのままゲームエンドまで持ち込みましたね。

まだまだ始まったばかりのスターチップ争奪戦。
この調子で遊大は星を獲得していけるのか!?他の部員のみんなの動向は?
ここからも引き続き気になってくる所です。執筆を楽しみにしておりますます! (2023-12-09 23:05)
コングの施し
ランペルさん、コメント&閲覧ありがとうございます!

この、次のターン負けないことを考えてる時に、実はリーサルがあるってやつ、ちょっとありがちだと思うのは私だけなのかな。そんな思いで書かせていただきました。そして確実に成長している彼のデッキや除去方法にも目を向けていただいていて、嬉しい限りです!

これからもまったりとではありますが更新していきますので、次回以降もお楽しみに! (2023-12-28 03:05)

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5 62話 反逆の剣 30 0 2024-04-26 -

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