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HOME > 遊戯王SS一覧 > 43話 燃ゆる轍 その②

43話 燃ゆる轍 その② 作:コングの施し

全国決闘王杯市内予選から数日、東雲中体育祭後の各部主催のレクリエーションが幕を開ける。ポイントバトルと称したバトルロワイヤルが繰り広げられる中、決闘王杯での遊大の行動に憤りを隠せない阿原は、彼とのデュエルを持ちかける。幕を開けた決闘、先攻での有益なエースを持たない《スクラップ》デッキから現れたのは、《トポロジック・ボマー・ドラゴン》の姿だった。



先行では盤面の干渉手段がない阿原の《スクラップ》デッキより、突如出現した《トポロジック・ボマー・ドラゴン》。
真偽は定かではないが、都市伝説に名を刻んでいるサイバーテロ組織「ハノイの騎士」を代表するそのモンスターの顕現に、外野はざわつき始める。

『あれが《トポロジック・ボマー・ドラゴン》…?』

『初めて見たよな…でけぇ』

『ちょっと不謹慎じゃない?怖いよね。』

その威圧感に晒されているのは、遊大も同じである。
目の前に対峙しているだけで、全身に冷たい棘が刺さったようにじんわりと畏怖が走っていく。息を大きく吐き出し、頬をパチンと叩いて、体を駆ける恐怖を立ち向かう勇気に変える。

遊大「…おっけー、もう同じ失敗はしない!狩らせてもらうぜ、阿原さん!」

阿原「オレはカードを2枚セット!これでターン終了だ!」

TURN:2
樋本 遊大(ターンプレイヤー)
LP:8000
手札:5→6
モンスター:
魔法罠:
フィールドゾーン:

阿原 克也
LP:8000
手札:1
モンスター:《トポロジック・ボマー・ドラゴン》(攻)
魔法罠:セット×2
フィールドゾーン:

遊大「おれのターン!」

6枚の手札を見つめる。そして構築する。勝利までの道筋。
しかし対峙するのは数々のデュエリストを苦しめたモンスター。『新しい力』だけでも、『これまでの足跡』だけでも勝てはしない。

この状況で求められるのは、それら2つの合わせ技。手札に散らばった過去と現在のピースを繋ぎ合わせ、勝利という結論を導く。

遊大「行くぞ!魔法カード《篝火》!
デッキから炎族モンスター1体を手札に加える!《炎天獣ーキャンドル》を手札に!」

阿原(《篝火》…!炎族版の《増援》か。今までに見たことないモンスターだが、何が来る?)

遊大「さらにドロー以外で手札に加わった《炎天獣ーキャンドル》の効果を発動!手札から自身を特殊召喚する!来てくれ《キャンドル》!」

小さな炎がぼうっと灯る。パチパチっと散る火の粉が遊大の手に宿り、それは小さな獣を象り蠢き出した。まるで種火のようだったそのモンスターは、高く遠吠えすると激しく燃え奮いフィールドに現れた。

《炎天獣ーキャンドル》(守)
☆4 炎属性・炎族/チューナー/効果
ATK:1700/DEF:0

阿原(手札に加わった時に特殊召喚可能なチューナー…普通に強えモンスターだな。)

遊大「さらに《重起士道ーゴルドナイト》を通常召喚!」

大地がばっくりと裂け、重機を鎧として纏った戦士が重い金属音を立てながら出現する。

《重起士道ーゴルドナイト》(攻)
☆4 地属性・戦士族/デュアル/効果
ATK:1500/DEF:500

阿原(これでレベル4が2体…。だけじゃねえよな、チューナーもいる。
多分EXデッキを触ってくるな。…使うか?)

阿原がセットしている1枚のカード、《リビングデッドの呼び声》。
墓地からモンスター1体を蘇生するというシンプルな効果だが、それが真価を発揮するのは1ターン目リンク召喚した《トポロジック・ボマー・ドラゴン》とのコンボ。

『フルオーバーラップ』。《トポロジック・ボマー・ドラゴン》が持つ効果の1つにして最大の武器。
自身のリンク先にモンスターが特殊召喚された時、文字通り爆発するかの如く勢いでお互いのメインモンスターゾーンを焼き尽くす。相手の方へ向くリンクマーカーが1つ、自身へは3つである以上、相手目線では一か所のモンスターゾーンを除けば回避でき、かつ自分は誘発させることが容易な効果になっている。

阿原は思考を巡らせる。
ここで発動すればEXデッキへの干渉はできなくなる。しかしその状況で残った遊大の手札は4枚。後続のリソースとしては決して少なくない。さらに、仮に破壊耐性や妨害持ちが召喚されなかった場合、最終盤面手前で『フルオーバーラップ』を発動すれば相手の負荷はさらに膨れ上がることになる。

《リビングデッドの呼び声》を発動しようとしたその手が、止まる。

遊大「…発動、しないんスね!」

阿原「…!?」

2体のモンスターが星となり、それぞれが一直線の閃光と光の輪を描き出す。貫いた一閃、その奥より影を落とす黒い竜の影。

遊大「おれは《重起士道ーゴルドナイト》に《炎天獣ーキャンドル》をチューニング!
破壊を司る黒鉄の龍!憤怒の炎で仇なう者どもを焼き焦がせ!シンクロ召喚!!」

光を引き裂くようにしてフィールドに舞い降りる黒牙の竜。遊大が手にしたシンクロモンスターの1体。

遊大「《ブラック・ブルドラゴ》!!」

《ブラック・ブルドラゴ》(攻)
☆8 炎属性・ドラゴン族/シンクロ/効果
ATK:3000/DEF:2600

阿原「…チッ!」

遊大「そいつは厄介すぎる…だが、攻撃力3000とバックがあるこの状況…お前の独壇場だ!《ブルドラゴ》!!」
(2枚のセットカードの内、1枚は確実に《戦線復帰》とか《リビングデッドの呼び声》みたいな蘇生札だよな…!その1枚のバック除去を外したとして、最低でも相討ちには持ち込む!!)

遊大は、《トポロジック・ボマー・ドラゴン》の『フルオーバーラップ』と『蘇生罠』の存在をすでに見抜いていた。
阿原がなんの備えやコンボもなしに《トポロジック・ボマー・ドラゴン》のようなカードを使うことはないという信頼。そして攻撃力3000同士の最低でも相討ちに持ち込めるこの状況で、《ブラック・ブルドラゴ》を阿原への圧力として利用する戦術にたどり着いた。

同時に、阿原も遊大の狙いに察しがついた。
《トポロジック・ボマー・ドラゴン》はレジェンドカード。阿原自身がそれを持っていることは知らずとも、その効果であれば遊大が知っていてもおかしくはない。阿原のセットカードは《リビングデッドの呼び声》と《革命の御旗》。

《ブラック・ブルドラゴ》は手札コストと引き換えに魔法罠を破壊する効果、そして破壊された時に墓地のデュアルを後続として展開する効果がある。しかもそのデュアルモンスターは再度召喚された扱いのため、即座に効果を発動できる。

阿原の選択肢は4つ。
(1)《ブラック・ブルドラゴ》が効果を発動する前に、《リビングデッドの呼び声》を発動し、『フルオーバーラップ』をトリガーさせる。
(2)《ブラック・ブルドラゴ》が自身の能力で《リビングデッドの呼び声》を対象とした場合、チェーンしてそれを発動し、『フルオーバーラップ』を誘発させる。しかし2枚あるセットカードの内、遊大が《リビングデッドの呼び声》を対象とする確率は50%。
(3)《リビングデッドの呼び声》の破壊を許した場合、バトルに入ってくることは明白。その際は《革命の御旗》を発動し、その効果でSモンスターを含むモンスターが戦闘を行うとき、問答無用に相手のモンスターを破壊する。こちらも《革命の御旗》が破られる可能性は50%。
(4)そして最悪のパターン。《ブラック・ブルドラゴ》が《革命の御旗》を対象とした場合、(3)の選択肢と同じくバトルに入ってくる。《ブラック・ブルドラゴ》と《トポロジック・ボマー・ドラゴン》が相討ちできてしまう以上、《リビングデッドの呼び声》で『フルオーバーラップ』を発動せざるを得ない。

つまり、いずれにせよ阿原は《ブラック・ブルドラゴ》を破壊するしかない。
この状況で、阿原は「あくまで相手の選択肢を狭めるべき」と判断した。一度《ブラック・ブルドラゴ》による魔法罠の破壊を許せば、どの選択をしたとしても《革命の御旗》が破壊される確率は五分となる。

阿原(こいつ、『フルオーバーラップ』とオレの蘇生罠を承知で選択を迫ってきやがったな!つまり、ソイツは破壊されてOKなんだろ?)
「…だったらやってやるよォ!!
《リビングデッドの呼び声》を発動!《トポロジック・ボマー・ドラゴン》のリンク先に、《スクラップ・ラプター》を特殊召喚!そして…フルオーバーラップ!!!」

阿原が取った選択肢。(1)の《ブラック・ブルドラゴ》の効果発動前に『フルオーバーラップ』を誘発させる作戦にシフトした。

遊大「使って来るか…!
でもやっぱ《ブラック・ブルドラゴ》の存在は裏目ってことっスよね!!」

《トポロジック・ボマー・ドラゴン》のリンク先に《スクラップ・ラプター》が出現した瞬間、その翼にあたる部分が、身体の節々から漏れだす光と同様に浅葱色に輝く。強く、激しく、弾けるように放たれたその閃光は、無数の槍状になってお互いのフィールドに降り注いだ。

爆発するかのごとき勢いで無差別に放出された光の柱たちは、《ブラック・ブルドラゴ》と《スクラップ・ラプター》の姿をいとも容易く貫いた。お互いのフィールドに、その衝撃が走る。

遊大「すまねえな《ブルドラゴ》…!
だが、お前の力は無駄にしない!破壊された《ブラック・ブルドラゴ》に効果を発動!墓地の《重起士道-ゴルドナイト》を再度召喚扱いで特殊召喚する!」

阿原「オレは、自分のモンスターが破壊されたことで、永続罠《革命の御旗》を発動!デッキから《自由解放》を手札に加えさせてもらうッ!」

遊大「…!!」

『フルオーバーラップ』がトリガーとなった2つのチェーン、一つは《ブラック・ブルドラゴ》、そしてもう一つは《革命の御旗》。2つの効果が重なった時、潜めていた遊大のもう一つの狙いが、頭の中で繋がった。手札の中で眠っていた1枚のカード。戦況を大きく変えるそのカードが、自らの戦術の最後の1ピースとなるのを感じた。

遊大「チェーン3で、速攻魔法《サモンチェーン》を発動!!」

《サモンチェーン》…通常召喚権を3つまで増やす速攻魔法。
しかし遊大は、チェーン3以降にしか発動できないそのカードを《スーペルヴィス》や《月鏡の盾》などのコストとなった際に効果を発動する魔法カード、そして《No.59 背反の料理人》を始めとするフリーチェーンのカードと組み合わせる前提ではあるが、召喚権を増やすというデュアルに必要な効果ゆえに自らのデッキに採用していた。

遊大「このターンの通常召喚を、3度まで行える!」

遊大の背後の空間がばっくりと裂ける。2つ出現した裂け目、その奥に見えるのは闇のみであった。
同時に阿原は戦慄した。遊大の対応力が明らかに以前より上がっている。たった一つのミスが、さらに巨大な脅威となって影を落とすのを感じる。

阿原「…やるじゃねえか…!!
オレは《革命の御旗》の効果を解決し、《自由解放》を手札にッ!」

そして同時にフラッシュバックする、遊大の「置いて行かれたくない」という言葉。その意思が、湧き上がる闘志が、切磋琢磨する相手としての遊大をさらに大きく映し出す。

遊大「チェーン1の《ブラック・ブルドラゴ》の効果を処理!《重起士道-ゴルドナイト》を特殊召喚し、さらに効果を発動!デッキから、《デュアルモンスター》のテキストが記された魔法罠を手札に加える!」

地に降り立ったその戦士は、鎧を鈍い金属音と共に変形させ、文字通り重機の姿へと変えてゆく。

《重起士道-ゴルドナイト》(攻)
☆4 地属性・(戦士族→)機械族族/デュアル/効果
ATK:(1500→)2000/DEF:500

阿原の妨害を躱し切った遊大。
そしてついに垣間見える新たな力。《トポロジック・ボマー・ドラゴン》の脅威をはね除け、遊大の逆転が始まろうとしていた。

遊大「おれは、《二量合成》を手札に加え、それを発動!!」

阿原「…ンだ!?」

阿原はおろか、その場にいる遊大以外の全ての人間が知らないそのカード。
黄昏に包まれたフィールドが、焔と稲妻、そして水流が混沌と流れるフィールドへと移り変わってゆく。

遊大「魔法カード《二量合成》…デッキからフィールド魔法《化合電界》手札に加える!
さあ!逆転させてもらうぜ!阿原さん!!」

その刹那、阿原は感じた。新しいカードと共に純粋にデュエルを楽しもうとする1人の少年の思いを。
今までの手の応用、燃ゆる轍を見つめなおした彼の戦術によって《トポロジック・ボマー・ドラゴン》の脅威を、恐怖を乗り越えた1人の決闘者。そして新たに垣間見えた力をその瞳で掴みたいという熱情が、彼の胸を高鳴らせる。

阿原「…来いよ!」

遊大「言われなくても!おれは《サモンチェーン》の効果で増えた2つ目の通常召喚権を使用し、《化合獣カーボン・クラブ》を通常召喚!」

六角の格子を描く光、ぱきぱきと音を立てて分離していくその一つが、『C』の文字を描く。次第にそれは膨れ上がり、鋏の姿を象った一匹のモンスターへと姿を変えた。

《化合獣カーボン・クラブ》(攻)
☆2 炎属性・水族/デュアル/効果
ATK:700/DEF:1400

阿原「カーボン…クラブ…だァ?」

遊大「科学は苦手か?
3つ目の召喚権を使用し、再度召喚!そしてその効果を発動!!」

両腕にある2つの鋏から、新たに格子状の光がぼんやりと現れる。その1つは遊大の手に、そしてもう1つは遊大の墓地に、まるで淡く炎をこぼしたように温かく宿る。

遊大「《化合獣カーボン・クラブ》は、1ターンに1度だけ、デッキからデュアルモンスターを2体選び、そのうち1枚を手札に、もう1枚を墓地に送る!
おれはデッキから《フェニックス・ギア・フリード》を墓地に送り、さらに《進化合獣ダイオーキシン》を手札に加える!」

遊大が新たに手にした《化合獣》の力。それが彼にとって画期的な、そしてこれから必要不可欠になるであろうものなのは、その1体の効果を聞いた阿原にも理解できた。

阿原「それぞれ手札と墓地だと!?
だがもう《サモンチェーン》の3度の召喚権は使い切ったはずだろ!」

遊大「いいや!《化合電界》の効果を発動だ!」

フィールドを流れる色鮮やかな光の波が、まるで生物が脈打つように蠢きだす。それはすなわち新たな《化合獣》の胎動。遊大はその中で、無邪気に遊ぶ童のような、弾けるような笑みを浮かべていた。

遊大「《化合電界》は、1ターンに1度、デュアルモンスターを追加で召喚できる!」

どくんどくん、脈打つ光の流れが早くなっていく。
収束、発散を繰り返すそれは、やがて巨大な獣の姿を象り、遊大のもとに、その戦場に降り立つ。

遊大「さらにこの時、アドバンス召喚のためのリリースをスキップできる!来てくれ!
燃ゆる魂震わす混沌の首!《進化合獣ダイオーキシン》!!」

発散した様々な色の光が交じり合い、鬼神とも呼べるような、巨大な獣の身体を形成していく。まるで合成された異形の怪物。それがかの《フェニックス・ギア・フリード》と並ぶほどの力をもつデュアルモンスターであることを、阿原は肌で感じ取った。

《進化合獣ダイオーキシン》(攻)
☆闇 闇属性・悪魔族/デュアル/効果
ATK:2800/DEF:200

阿原「これが…《化合獣》!!
新しいデュアルのデッキ…お前の新たなエースか!」

そう。遊大が従える新たなカードたち。幼い過去の自分がそのテキストの難解さゆえに使用を怠った、そして未来に残した、過去と現在の力。

遊大「墓地の《二量合成》の効果を発動!再度召喚されたデュアルモンスターと自分の他のモンスター1体を対象として、その攻撃力をそっくりそのまま吸収させる!」

《化合獣カーボン・クラブ》の身体から『C』を捩った格子がすっぽりと抜けてゆく。身体から抜け出した光は、《進化合獣ダイオーキシン》の元へと吸い込まれ、熱を帯びたその身体が酸化した鉄のように赤く、煌々と輝きをもたらした。

《化合獣カーボン・クラブ》(ATK:700→0)
《進化合獣ダイオーキシン》(ATK:2800→3500)

遊大「さらに《化合電界》の3つ目の効果!
再度召喚された《デュアル》を相手のエンドフェイズまで除外し、相手のカードを破壊する!
攻撃力がゼロとなった《化合獣カーボン・クラブ》を除外して《トポロジック・ボマー・ドラゴン》を破壊させてもらうぜ!」

役目を終えたそのモンスターは色とりどりの波の中へと呑まれていく。そして同時に影となってその中に沈むのは銅色の身体を持つ竜。身体の節々から放たれていた緑色の光は、ちかちかと点滅したのちにフィールドを流れる波の奥へと消えていった。

阿原「《トポロジック・ボマー・ドラゴン》…!
全部、この《化合獣》の展開を通すためだってか!」

遊大「《化合獣》で攻めに入るには、今までのモンスターたちで《トポロジック・ボマー・ドラゴン》のコンボの手数を減らすしか無かったんスよ!
そして、これで終わりですッ!!」

そう言って遊大が手札から見せた最後の1枚のカード。そこに刻まれた《ファイヤー・バック》の文字。遊大が輝久との一戦で使用したその効果は…

阿原「最後の1枚の手札をコストに墓地から炎属性モンスターを蘇生…。チッ、ここまでだな…!」

遊大「不死鳥の翼宿し戦士よ。その剣で闇を切り裂き、色褪せた世界を赤く塗り上げろ!
《フェニックス・ギア・フリード》!!」

フィールドを流れる光が、一斉に紅色に染まる。噴火する火山のように弾けるそれは1人の戦士の影を描き出した。

《フェニックス・ギア・フリード》(攻)
☆8 炎属性・戦士族/デュアル/効果
ATK:2800/DEF:2200

それはいつでも遊大とともに戦ってきた不死鳥の戦士。新しい仲間と共に戦うのは遊大自身だけではない。彼のエースたるそのモンスターもまた新しい力と共に立ち上がる。

遊大「さぁ、行くぜみんな!バトルだ!!」

阿原のLPは8000、そして遊大のモンスターの合計攻撃力は8300。しかし彼は降参はしない。腕を大きく広げて叫ぶ。

阿原「来い!!!」

遊大「《重起士道-ゴルドナイト》で、ダイレクトアタック!ゴルドオーバーレヴ!!」

火花を散らしながら、巨大な重機が突っ込んでくる。ショベル状の腕を大きく振り上げ、その1撃が下される。

《重起士道-ゴルドナイト》(ATK:2000)
阿原 克也 LP:8000→6000

思い返せば、遊大と戦い続けてから一度たりとも遊大を甘く見たことなどなかった。常にその目に、怨敵、いや恩敵として映っている。律歌も、拳斗も、龍平も、嬢も、そして遊大も、背中を追いかけ続けて、いつか追い抜く。チャレンジャーとして。

遊大「《進化合獣ダイオーキシン》でダイレクトアタック!フレンジーバーン!」

続く化合の鬼神の攻撃。まるで暴走したケダモノのようにフィールドを炎の弾丸が駆けまわる。緋色の凶弾が、彼のLPを焼き焦がす。

《進化合獣ダイオーキシン》(ATK:3500)
阿原 克也 LP:6000→2500

だからこそ、逃げ出した彼が許せなくて、腹立たしくて、それをぶつけたくなった。
しかし彼が戻ってきて、また戦って高め合えれば、それが一番の望みだということに、うっすら気づき始めた自分がいた。

遊大「これで最後だ!《フェニックス・ギア・フリード》の直接攻撃!ゴッドブレイズクローズ!」

最後の一閃。白銀の鎧に身を包んだ戦士の剣が、炎の波を反射して美しく輝く。大きく振りかぶり、振り落とされたそれは、阿原のLPの残りを切り裂いた。

《フェニックス・ギア・フリード》(ATK:2800)
阿原 克也 LP:2500→0

いつだってそうしてきたように、強いやつを追いかけて、追い抜くために戦い続ければいい。いくら遊大が強くなっていても、喰らいついて勝ってやる。
彼の再起の決闘に、笑みが零れた。

阿原「ブ厚くなって戻って来やがって…!」

WINNER:樋本 遊大

遊大「…対戦ありがとうございましたッ!」

漢の戦い。かっこ悪く言えば泥臭い男児2人の喧嘩が、ここに決着した。
そして、現実に引き戻すかのように鳴り響くチャイム、ざわつく生徒たち、遠くで自分たちを呼ぶ仲間の声。

律歌「おかえり~!!ゆうだーーい!」

柔らかいいつもの声で、校舎屋上から自分を呼ぶ律歌。腕を組んで顔を見せない龍平と、それをつついてからかう嬢。そして「やれやれ」といった表情のましろ。

立ち上がった阿原が肩に手をポン、と乗せた。「戻るぜ。オレ達のデュエル部に。」という言葉と共に、彼らのもとに歩き出す。
暁色の空は、炎を零した篝火のように、2人の背中を緋色に染め上げた。

続く
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ランペル
遂に来ましたデュアルのまとめ役化合獣!
確かに、デュアルのバニラ扱いとか再度召喚とかは幼き頃に見たとて難解すぎて使い方が分かりませんよねぇ…w

良き力トポロジック・ボマーと2枚の伏せカードを構える阿原。それに対して、新たに化合獣などの昔持っていたカード達を加えたデッキで挑む遊大。
トポロジック・ボマーの効果を活用するべく伏せられたリビングデッドと、それらの蘇生カード等を併用していると読んだ遊大が呼び出したブラック・ブルドラゴ。
どちらにしよ破壊せざるを得ない状況を作り出す事で、損失を少しでも抑えるべくリビングデッドを発動する阿原。革命の御旗も同時に発動し重なったチェーン、それを逃さないように重ねられたサモン・チェーン発動とことごとく阿原の手の1枚上を行く遊大。

化合獣とフェニックス・ギアフリードを最終盤面に添え、今までの自分と新たな自分とが混ざり合ったフィニッシュでしたね。
阿原の思う立場はあくまでチャレンジャーだったのですねぇ…。目標とし、追い抜くべく切磋琢磨していたのにその目標が大切なチャンスを不意にしてしまった。その怒りをこのデュエルでぶつけ、そして彼が戻って来てくれたことでまたお互いを高め合うデュエルが出来る事を喜べるまでに。

やはり熱いデュエルが全てを解決するんや!(デュエル脳。
これで、立ち直った遊大を迎え入れ本当の意味でデュエル部の再起ですな!夕暮れの日差しがレクリエーションの終わりが近づくのを知らせてくれてますので、今後のデュエル部の動向が気になる所でございます。 (2023-11-10 11:37)

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