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HOME > 遊戯王SS一覧 > 49話 エンタメデュエル

49話 エンタメデュエル 作:コングの施し

決闘王杯県予選を終え、ついに始まるアカデミア合宿。しかし多すぎる参加者を濾しとるふるいは、アカデミア本校までのスターチップ争奪戦であった。その最中、遊大が出会ったのは日暮振士と名乗る少年。しかし彼らの間でデュエルをする間もなく、全国出場権利を持ったデュエリスト、奥海兄妹がデュエルを彼らに挑む。分断された2人によって始まる2組のシングルデュエルの行方は…。





『お楽しみは、これからだ!』



テレビの奥、2色の眼の竜が咆哮し、そのモンスターにまたがる青年がフィールドを縦横無尽に駆け回る。あらゆる予測を、予想を超え、力強く、楽しげに、自分も相手も楽しませるそのデュエル。プレイヤーも、対戦相手も、そしてギャラリーすら巻き込み、笑顔の輪が広がっていく。


少年の目には、その光景が今までの何よりも輝かしいものに映った。


画面越しでも自分の魂に響くような、鳴り止まぬ歓声と大迫力のデュエル。画面の少年よりもずっと幼い少年は、じっとりと手に汗と共に1枚のカードを握った。

『振士〜!ご飯できたよ〜!!』

聞き覚えのある優しい声。しかしその刺激を前にその声は意を介することがない。無邪気なその瞳はテレビを掴んで離さない。そして自分の中で沸々と湧き上がる熱情。



自分も加わりたい。この笑顔の輪に。


もっと見たい。こんなに輝いているデュエルを。


人を楽しませるエンタメデュエルを。




その瞬間、子供がスター選手に憧れるようなその感情は、形を大きく変えた。
「こうありたい。」という憧憬ではない。「こうあって欲しい。」という願望が、彼の中で芽を出し、根を張る。


デュエルというものに対する価値観を根底から塗り替えるほどに。


純粋な「勝利」というものの価値すら歪めてしまうほどに。



「ぼくも見たい…。みんなの、エンタメデュエル…!」




9:47

『奥海 波実 2勝0敗 ☆:5 
私立甘橋中学校 2年 
決闘王杯・シズオカ県予選 ベスト4』

VS

『日暮 振士 1勝1敗 ☆:3
参浜市立参浜第一中学校 1年
決闘王杯・チバ県予選 ベスト64』



上空に出現した巨大な振り子。日暮の頭上を軸として揺れ続けるそれは、揺れ走った道筋を光の線として描き、一定の速度で空に踊り続けている。振り子は弧を描き、道筋は輝いてフィールドを真っ白に照らしている。

日暮「ぼくは、スケール3の《解放のアリアドネ》とスケール5の《レスキューラット》でペンデュラムスケールをセッティング。これでレベル4のモンスターを同時に召喚可能…!」


《解放のアリアドネ》 スケール:◆3◇

《レスキューラット》 スケール:◆5◇


眼前に出現した巨大な振り子のソリッドヴィジョンを前にして、染み出していた嫌な予感。それは予想外の様相を持って襲い来ようとしていた。


TURN:4 (メインフェイズ)
日暮 振士(ターンプレイヤー)
LP:4175
手札:3
モンスター:
魔法罠:
ペンデュラム:◆5《レスキューラット》 《解放のアリアドネ》3◇
フィールドゾーン:

奥海 波実
LP:8000
手札:4
モンスター:《バージェストマ・オパビニア》(セット) 《バージェストマ・アノマロカリス》(セット) 《バージェストマ・マーレラ》(セット) 
魔法罠:セット×2
フィールドゾーン:


波実「ペンデュラム…!県レベルでその召喚法を…!」

日暮「揺らげ、魂の振り子…!今こそ描き出せ…天の虹彩!
ペンデュラム召喚!!」

ゴウンゴウンと揺れ動く振り子。その外縁の両端に2体のモンスターが描かれると、空を割いて巨大な穴が出現する。
流星のように降り注ぐ2つの光は地を貫き、一挙にその下僕達が彼の元へと降り立つ。

日暮「出番だよ…!《スピリチューアル・ウィスパー》!
そしてEXデッキから蘇れ…《竜剣士マスターP》!」


《スピリチューアル・ウィスパー》(守)
☆4 風属性・鳥獣族/効果
ATK:200/DEF:2000

《竜剣士マスターP》(攻)
☆4 光属性・ドラゴン族/ペンデュラム/通常
ATK:1950/DEF:0 
スケール:◆3◇


降り注ぐ光のうちより、2つの新しい命が芽生える。金色の鎧を纏った竜の瞳の剣士、そして柔らかく飛翔する蒼色の翼。

波実「す…ご…。」

今まで目にしたことのない、聞いたことしかないレベルの召喚法。「ペンデュラム召喚」。それを目の当たりにして、呆然と口を開いていた。しかし、呆気に取られる彼女を、その瞬間を逃すことなく、日暮の牙はじんわりと喉元に迫る。

日暮「ぼくはP召喚に成功した《スピリチューアル・ウィスパー》の効果を発動。
デッキから儀式魔法《高等儀式術》を手札に加えるよ。」


ごうっ…!


青い炎が巻き上がる。燃え上がる蒼炎がフィールドを照らし、巨大な竜の影が映し出される。

日暮「さあ、もっと輝いてみせてよ…!
ぼくは《高等儀式術》の効果により、デッキからレベル7の通常モンスター、《オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン》を墓地に送り、儀式召喚!」

炎が吹き荒れ、降り注ぐ蒼炎の矢が大地を貫く。ひび割れ、引き裂かれた地は隆起を始め、同時に地からそのモンスターが姿を見せる。

日暮「ニ色の眼の竜よ…。今、大地より解き放たれ、理結ぶ引力を目覚めさせよ…!
《オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン》!」

弾ける大地と舞う土煙。そしてその奥に全貌を露わにした《オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン》。岩を彷彿とさせるような堅牢な鱗。そして二色に輝ける瞳。巨木のような足は大地を貫き、要塞とも呼べるような重圧を誇っている。


《オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン》(攻)
☆7 地属性・ドラゴン族/儀式/効果
ATK:2800/DEF:2500


そして真価を発揮する、その能力。
竜の2色の瞳が、流星のように儚く輝く。そして同時に、フィールドを包み込んだ、彼女が経験したこともないような、「重さ」。

波実「重っ…!!」

膝をついた、というよりもさらに激しく、速く、重く、体が地面に「落ちた」。
立っていられない。カードを持つことすら許されないほどに、今上にいるこの地面が自分の体を引っ張っていく。

日暮「…これが《オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン》の効果だよ。
儀式召喚に成功したとき、相手の魔法・罠カードを全て手札に戻す。
…ディプレッション・フォース。」

全身が、映し出されたカードまでもがその重力に押しつぶされ、地に打ち付けられる。カードを発動するためにデュエルディスクに触ろうとすることすら許されないほどの、その重さ。

ここしかない。日暮の展開を待ち受けるために構えた罠カードたち。その布陣が今、眼前に聳える大地の竜によって、それを駆る1人の決闘者によって、崩れつつある。

波実「罠カード《次元障壁》を…発動!!」

重さに耐え、ガクガクと震える手でそのボタンを押した。

波実「…宣言は儀式モンスター!思い通りに…させるか!!!」


バチン…!


重力は鳴り止まない。鈍い音を立て、変化しない状況が、彼女の目に飛び込んでくる。視界にあるリバースカードのソリッドヴィジョン。表を上げようとしたセットカードたち。確かに表に翻ろうとした瞬間に、鳴り止まぬ重力によって再び大地に叩きつけられた。

日暮「…《オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン》の効果に対して、あらゆる効果は発動できない。
…喰らってもらうよ。」

セットされた2枚のカードはフィールドにめり込み、そのままひび割れ砕けて波実の手札に戻っていく。

波実「そん…な!」

構えた布陣が、日暮を迎え討つその盤面は、日暮の「ペンデュラム召喚」、そして高度な「儀式召喚」によって、壊滅寸前であった。
青ざめ、大地に膝をつく彼女を、日暮は逃しはしない。

日暮「ぼくは…《竜剣士マスターP》と《スピリチューアル・ウィスパー》で、オーバーレイ。」

新たな召喚法によって展開された2体のモンスターたち。それらは異なる色の光を放ち、螺旋を描いて絡み合う。

渦巻く光が、打ちひしがれる彼女の顔を眩く照らす。

日暮「…エクシーズ召喚。大地照らす翡翠の近衛!《ダイガスタ・エメラル》!」

渦巻く光は彼のいう通り翡翠色に染まり、その光をギラギラと反射しながらそのモンスターは音を立てて大地に降り立つ。重厚な鎧は着地と同時に土埃をあげ、波実は顰めながら舞いくる土煙に顔を覆った。


《ダイガスタ・エメラル》(攻)
★4 風属性・岩石族/エクシーズ/効果
ATK:1800/DEF:1000


波実「さらにエクシーズまで…!あんたほんとに全国出場者じゃない!?」

地に伏せた体を起こし、膝をつく。丸めた背中で、自分の中に溢れた疑問を投げていた。明らかに戦績とは一致しない実力。その真偽を答えることなく、日暮は照れたように笑みを見せた。

日暮「…はは。そんな大層なものじゃないよ。ぼくなんて…そんなんじゃないよ。」

日暮の視線は、波実から沈み自分の手を見つめていた。握りしめられた手を開き、そのままの動きで、デュエルディスクの液晶に触れる。

日暮「…ぼくは、《ダイガスタ・エメラル》の効果を発動。」

《ダイガスタ・エメラル》を取り囲むオーバーレイユニット。光の円を描くそれは翡翠色の鎧に吸い込まれ、淡く弾ける。

日暮「…ぼくは、皆が輝いているところを見たいんだ。皆を輝かせることができたら、それほど嬉しいことはない。光あるエンタメデュエルの、そして全てのデュエリストの、ただの1人のファンだよ…。」

瞬間、大地に聳え立つ巨大な黒色の結晶。水にインクを垂らしたように、黒く歪むそれが砕け、赤と青、それぞれの色の瞳を宿したもう1体の竜が、目覚めた。

日暮「…現れろ。
雄々しくも儚い二色の眼…《オッドアイズ・アーク・ペンデュラム・ドラゴン》!」


《オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン》(攻)
☆7 闇属性・ドラゴン族/ペンデュラム/通常
ATK:2700/DEF:2000 
スケール:◆8◇


本来色を持つはずであったかのように、彩をなくしたように燻んだ黒い鱗を纏った竜。しかし、未だ雄々しくも美しい色彩を失うことのない二色の眼をそこに携え、竜は吠え奮う。

波実「くっ…そんなこと言う割には、徹底してるじゃん…!」

砂埃と土でボロボロになった服を払い、たてた膝に手をついて波実は立ち上がる。絶望的な状況には変わりはない。しかしその目には、「まだ諦めない」という闘志が確かにあった。

波実(ペンデュラムからの儀式…さらに生贄をデッキから徴収…ってだけでもびっくりなのに、そこからエクシーズまでしてくるかね!
でもまだ…こっちにはこのカードが…!)

手の中にある、1枚のカードを見つめる。
全国レベルでも通用するほどの力を秘めた1枚のカード。バトルフェイズ終了時、自分のフィールドにカードが無ければ、手札から発動できる数少ない罠。全国出場までの道のりの中で、幾度となく自分の命を繋いできた、いわば波実の《切り札》の1枚。

日暮「…じゃあ行くよ。バトル…!」

じっとりと、カードを握る手に汗が滲んでいくのがわかる。それは自分に向かってくるドラゴンたちから醸されている殺気なのか、切り札を握る緊張なのか、それともこの逆境を覆せる可能性ゆえの高揚なのか、自分でもわかっていなかった。

波実(《拮抗勝負》…!)

その効果は、お互いのフィールドのカードの枚数を同じにするというもの。《拮抗勝負》1枚で完結する以上、それはすなわち1枚の除き、相手の盤面を一掃することに他ならない。

日暮「ぼくは、《オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン》で、セット状態の《バージェストマ・アノマロカリス》を攻撃。
…震撃のクエイクバースト!」

岩肌のような重厚な鎧の竜が、青白い光を大地に放つ。カッターのようにフィールドを割きながら、その光の剣はセットされた《バージェストマ・アノマロカリス》の元まで及ぶ。

《オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン》(ATK:2800)
《バージェストマ・アノマロカリス》(DEF:0)

バリーン…!

ソリッドヴィジョンで映し出されたカードが砕け、自分のフィールドが1枚、減る。そして一段、速くなる鼓動。発動したい。早く。うずく右手に力がこもり、ふるふると疼き出す。

日暮「続けてぼくは、《オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン》で、セットされた《バージェストマ・オパビニア》を攻撃。
螺旋のアクロマティックバースト!」

彩のない、白い光が空中で何度も屈折し、濃淡をつけながら螺旋状に渦巻いていく。大地を削るその光はそこにあったはずの《バージェストマ・オパビニア》のカードを音もなく貫いた。

《オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン》(ATK:2700)
《バージェストマ・オパビニア》(DEF:2400)

どくん…。

鼓動が早くなる。手に握る《拮抗勝負》のカード。相手の構える《ダイガスタ・エメラル》、そして自分の場にモンスターとしてセットされた《バージェストマ・マーレラ》。

すでにその存在は公開情報。と言うよりも、自分のモンスターを裏側守備表示にしたのは日暮の《皆既日蝕の書》のカード。自分で破壊するために裏守備にしたカードである以上、それを攻撃しない理由がない。

はやる鼓動で頭がクラクラする。手に握るその1枚を叩きつけんとしたその時、日暮がゆっくりと口を開いた。


日暮「ぼくは、バトルフェイズを終了するよ。」


波実「…は?」


空いた口が塞がらなかった。なぜ攻撃しない?ドローを3枚もさせて、その上でモンスターを処理しきらずにバトルを終了するなど、前代未聞であった。

波実(なんで…!?)

このデュエル。通常モンスターを通常召喚し、それが破られるということに始まった日暮の戦い。そしてペンデュラム、儀式、エクシーズ、そして更なるエースモンスターの展開。

日暮「カードを1枚セット…。手札も使い切っちゃったな。
これでぼくはターンエンドだよ。」


TURN:5
奥海 波実 (ターンプレイヤー)
LP:8000
手札:6→7
モンスター:《バージェストマ・マーレラ》(セット) 
魔法罠:
フィールドゾーン:

日暮 振士
LP:4175
手札:0
モンスター:《オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン》(攻) 《オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン》(攻) 《ダイガスタ・エメラル》(攻)
魔法罠:セット×1
ペンデュラム:◆5《レスキューラット》 《解放のアリアドネ》3◇
フィールドゾーン:


ここまでで彼女の中での日暮は、「全国レベルのデュエリスト」としてアップデートされてきた。間違いなく、これまで自分が相手取ったデュエリストの中でも上澄みの強者と認めていた。

波実「あたしのターン…ドローっ!」

しかしこれは違う。今まで感じ取ったことのない異質。最適解を導き出さんとしていた今までの決闘者たちとは一線を画している、異様な一手。もし、「攻撃を止める」というこの一手が、この選択が、自分の手の内を読んでのことであったとしたなら。もし、手の内の《拮抗勝負》を読み切ってのことであったのなら。

「さあ、見せてみてよ。
…エンタメデュエル。輝かしいキミのデュエルを…!」


パリン…!


何かが、波実の手の中で砕けた。
確実に「敗着」と言えるような、そんな喪失感が自分を包み、暗い淵の底へと沈んでいく。次のカードに手を伸ばし、それを握った瞬間に起きた何か。何が起こったか、波実には理解できていなかった。

波実(え…?)

自分は今、デュエルをしていた。《拮抗勝負》の発動機会を逃し、盤面を返すことができずに迎えたターンのドローフェイズ。

そのドローをした瞬間に、確実に失ってはいけない何かが、崩れた。膝から行き場を失った力が逃げ、視界が地面に落ちる。かろうじて両手をついた時、地を見つめて、ようやく気がついた。

波実「…手札…が、…ない…?」

なぜ地面に両手をつけていられるのか、そこにあるはずの、勝利のための6枚のカード。確かに自分が持っていた、7枚の手札。7枚の、可能性。それが、今自分の視界の中に無い。

鳴り響く耳鳴りと、警鐘を鳴らす心臓の鼓動。その奥に、呟いた日暮の声が聞こえた。

日暮「ぼくが発動したのは《闇のデッキ破壊ウイルス》。
…攻撃力2500以上の闇属性モンスターをコストとして発動し、手札・フィールドの魔法か罠カードを全て破壊する効果…。」


ざわ、と胸が鳴る。たった1枚のカードで、7枚の手札が全て消滅した。驚きと恐怖で震える体は自分の意の外で力を抜いていく。

波実「…7枚…ハンデス…?」

膝をついた自分の元へ、日暮はゆっくりと歩み寄り、やがて静かにかがみ、混沌としたその瞳で、自分を見つめた。


日暮「まだ…、もっと見せてよ。最高のデュエルを…見せてよ。」


日暮の、プラスとマイナスをぐちゃぐちゃに宿したようなその眼は、終わりのない暗い洞窟のようだった。絵の具を混ぜた時、最終的に行き着くのが黒であるかのように真黒く、しかしテレビを見る少年の瞳のようでもあったその眼差しは、どこまでも純粋に、混沌に、輝く闇そのものであった。


波実(ああ、そっか…。)


身勝手だ。
そして同時に、それを否応なく押し通せる、問答無用で我儘を突き通せるほどの強さを持った者だと、そう理解した。

彼の主張が、考えが、世界のデュエリストとは大きく乖離していたこと、そしてその真意を探ろうと、奮戦することすら、自分には叶わなかった。
力を無くした手は、ひとりでにデッキの上へと向かう。



波実「…負けました。」



WINNER:日暮振士



ピピピ…
無機質な電子音が、波実の敗北を告げた。
日暮は俯き、その瞳の輝きを消した。まるで日が落ち暗い夜が空を覆うように。小さく「輝いていたのに。」と呟いて背を向けた。


波実「読んでいたの…《拮抗勝負》を?」


歩み出した日暮は足をぴたりと止める。振り返った彼の氷柱のような視線が痛くて、冷たくて、心臓に突き刺さったそれが背筋すら凍て付かせてしまうと思い、胸をグッと押さえた。



日暮「…ぼくなんかの予想を上回ってこその、そして強く輝いてこそのエンタメデュエルでしょう?」




続く
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ランペル
これはこれは…某希望厨を彷彿とさせるキャラが出てまいりましたねぇ…(大好き。

P召喚に儀式を絡めるというなかなかに見ない構築。というかスピリチューアル・ウィスパーの存在を初めて知りました…w
P召喚から、儀式召喚。そして、高等儀式術により墓地へと送ったアークペンデュラムもエメラルで蘇生する流れは実に綺麗でエンタメ感が強く感じられます。
伏せをバウンスされてしまった波実の一縷の望みは《拮抗勝負》。普通であれば、勝ちを目指す為にするごく自然な相手モンスターの一掃。モンスターを残しては次のターンで、後続を呼ぶ起点になるのは言わずもがな。
しかし、彼は違ったんですね…。エンドの後巻き返すべく引き込んだ手札は、残された手札共々全てが無に帰す。

彼が見たかったのは、圧倒的なエンターテインメント。エンタメデュエルに魅せられた彼が目指すのはあくまで観客。舞台に出演する有名な彼ら彼女らなら、所詮は一般人である自分が組み上げた盤面など、予想も出来ないような奇策でいとも簡単に、そして対戦している自分すらも巻き込んだデュエルに仕上げてくれるはずだと…。
きっと主人公補正とかがあれば、全ハンデスからも巻き返せるような何かを引き込めていたかもしれませんが、それをデュエルする対戦相手全てに求めるというのは酷な話ですな…。

レディエンの演出をこうまで真っすぐに受け止めるキャラが出てくるのはとても面白いです。一部で煽りとも評されてしまったエンタメデュエルは、どんな強敵であろうとも必ず笑顔で盤面を捲るという絶対強者に映る事もある訳ですな。
エンタメデュエルとこのキャラメイクを結びつけることへの純粋な尊敬でございます。滅茶苦茶刺さりましたw

演出の向こう側でデュエルしている遊大達のデュエル、そして日暮の今後の動向も気になってくる所です! (2024-01-10 20:26)
コングの施し
ランペルさんコメントありがとうございます!

名だたる決闘者のショーが少年の目に宿したのは純粋な『憧れ』ではなかったのですね…。あくまで自分をエンタメデュエルの歯車として、対戦相手にその完成を求める姿勢でデュエルに臨むキャラになっております。そして続く遊大たちのデュエルの行方は?他の東雲中の仲間たちは?

次いつもコメントいただいていてとても励みになっております!これからもゆっくりにはなりますが更新してまいりますので、次回以降もお楽しみに! (2024-01-26 15:31)

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