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HOME > 遊戯王SS一覧 > 32話 ガムシャラ

32話 ガムシャラ 作:コングの施し

ついに開幕した決闘王杯市内予選。遊大の一回戦の相手は、光妖中のキャンデであった。初夏の太陽に照らされ、決闘者たちの全国への戦いのロードが開かれる。

キャンデ「おれが先行みたいだな。じゃあ飛ばしていくぜ!」

キャンデのデッキは『素早い』を利用した獣族のデッキ。レベル2のサイクルとX召喚を使って粘り強く戦う特徴を持った彼には似合わない言葉だった。
しかし、遊大もパシッと拳と手のひらを合わせて微笑む。彼の闘志もまた、この会場の誰にも劣るものではない。

TURN:1

キャンデ (ターンプレイヤー)
手札:5
LP:8000
モンスター:
魔法罠:
フィールドゾーン:

キャンデ「おれは魔法カード《魔獣の懐柔》を発動!このカードはおれのフィールドにモンスターが存在しない場合のみ発動できるカード。このターン中おれは獣族モンスターしか特殊召喚できないが、デッキからレベル2以下の獣族モンスターを3体まで特殊召喚できる!さあアニマルデッキの爆発展開いくぜ〜!!」

熊の着ぐるみのキャンデが放った一枚のカード。そのカードを中心に紫色に光る穴が空を貫く。渦巻くその内より、幾つもの笑い声が鳴り響き、フィールドを覆うほどまで拡張したかと思えば、3体の獣が中から勢いよく飛び出してきた。

遊大「魔法カード1枚でモンスター3体!なんちゅうカードだ!」

キャンデ「デッキから特殊召喚!《素早いモモンガ》!《素早いムササビ》!《森の聖獣 ヴァレリフォーン》!」

《素早いモモンガ》(守)
☆2 地・獣族/効果
1000/100

《素早いムササビ》(守)
☆2 地・獣族/効果
800/100

《森の聖獣 ヴァレリフォーン》(守)
☆2 地・獣族/効果
400/900

3体の獣は鳴き声をあげながらキャンデのフィールドを跳ね回る。

遊大「同じレベルのモンスターが3体…!嫌な感じ!」

キャンデ「ささ、まだまだいくぜ~!おれは《素早いモモンガ》と《素早いムササビ》でオーバーレイ!2体の獣族レベル2モンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

2対の獣は光の渦に呑まれ、その中心から巨大な茶釜が姿を現す。

遊大「茶釜…?ってエっ!?」

茶釜の蓋が大量の煙と葉っぱに押し出されて勢いよく吹き飛ぶ。遊大もとっさのことに腕を前へと構え、顔を守る動作を取る。ぶくぶくとあふれる煙がするどく引き裂かれる。内からおぼろげにその武者は姿を現した。

キャンデ「エクシーズ召喚!混沌と混迷の世を斬り裂く知恵者よ。世界を化かせ、《No.64 古狸三太夫》!」

《No.64 古狸三太夫》(攻)
★2 地・獣族/エクシーズ/効果
1000/1000

遊大「鎧姿の…狸?か?」

赤と金色の甲冑をまとった狸のモンスター。キャンデと同じほどの背丈でそこまで迫力があるわけではないが、その手にはしっかりと白銀の刃の薙刀を携えている。

キャンデ「フン、攻撃力1000だからって甘く見ないほうがいいぜ~!こいつは1ターンに一度、フィールドの一番攻撃力の高いモンスターと同じ攻撃力を持つ《影武者狸トークン》を特殊召喚できる。さらにそのトークンがいる限り、本体の三太夫は戦闘・効果で破壊されねえんだ!」

遊大「ご丁寧に!だがフィールドの一番打点の高いモンスターは三太夫だろ!一体打点1000が増えたところで!」

キャンデはその言葉を待っていたように着ぐるみの奥から笑い声をあげる。

キャンデ「にひい!こっからが本番だぜ〜!おれは魔法カード《烏合無象》を発動!フィールドの獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスターを墓地に送り、そのモンスターと種族・属性が同じモンスターをEXデッキから特殊召喚する!おれは地属性・獣族の《森の聖獣 ヴァレリフォーン》を墓地に送り、これを発動!」

新緑を背負った獣は墓地へと吸い込まれる。同時にキャンデの背後から巨大な影が姿を現す。影は遊大すら飲み込み、目を見開いてそれを見上げる。
緑色の毛皮に真っ赤なパンチグローブを携え、その二つの眼でまっすぐに遊大をにらみつける。

キャンデ「EXデッキから特殊召喚!《マスター・オブ・OZ》!!」

《マスター・オブ・OZ》(攻)
☆9 地・獣族/融合
4200/3700

遊大「デッッッッカ...!攻撃力4200って…。魔法カード一枚で出てきていいパワーじゃねえ!」

見上げる遊大は息を呑む。しかし唖然としている暇はない。先刻の「攻撃力の一番高いモンスター」がすげ変わったことに気づくと、そのコンボの強力さに思わず笑みをこぼしていた。

遊大「つーか、これで三太夫の効果使ってくるってことだよな…。」

キャンデはいつも通りのオーバーリアクションで万歳のポーズをとる。

キャンデ「ご名答!《No.64 古狸三太夫》の効果発動!オーバーレイユニットを一つ使い、攻撃力が一番高いモンスターと同じ攻撃力の《影武者狸トークン》を特殊召喚!」

甲冑姿の狸は素早く拳で印を結ぶ。瞬く間にフィールドを葉っぱを巻き込んだ旋風が包み込む。その嵐の中より、色が薄みがかったもう一匹の《マスター・オブ・OZ》が拳を突き出した。

《影武者狸トークン》(攻)
☆1 地・獣族/通常
4200/0

遊大はその光景を前に、まずは状況把握のためにデュエルディスクの画面を確認する。今ある手札で、返しのターンにどう突破するかを練ろうとしていた。

遊大(攻撃力4200が二体…。さらに頼みの攻撃力1000も戦闘・効果で破壊はできねえ。だが救いなのは打点1000の三太夫が攻撃表示なこと。そして…)

人差し指で墓地の《烏合無象》の効果を確認する。

(攻撃できないことと、エンド時に自壊するデメリット効果!さすがにノーリスクでEXのモンスターが呼べるはずはねえ!)

冷静に、取り乱さぬように盤面の情報を処理する遊大を、キャンデがその熊の着ぐるみの腕でびしっと指す。

キャンデ「ふふん。お前、《烏合無象》のデメリット効果に目ェつけてるだろ!読めてるぜ~!速攻魔法《ピアニッシモ》を《マスター・オブ・OZ》を対象に発動!」

《マスター・オブ・OZ》の攻撃力がみるみる下がっていく。しかしドーム状の光がモンスター中心に展開され、OZ自身も拳を前に構えて防御の形を見せた。

遊大「《ピアニッシモ》…。モンスターの打点がエンドフェイズまで100に下がる代わりに、ターン中の戦闘・効果での破壊を防ぐカードか!」

キャンデ「ふんふん。正解!おれはカードを二枚伏せて、ターンエンドするぜ~!そしてエンドフェイズ!《烏合無象》のデメリットの破壊は《ピアニッシモ》で無効!さらに攻撃力は4200に戻る!」

キャンデ (エンドフェイズ)
手札:0
LP:8000
モンスター:《No.64 古狸三太夫》(攻) 《マスター・オブ・OZ》(攻) 《影武者狸トークン》(攻)
魔法罠:セット×2
フィールドゾーン:


遊大「はは、なかなか厄介なことしてくれるじゃねえか!俺のターン!」

TURN:2
遊大 (ターンプレイヤー)
手札:5→6
LP:8000
モンスター:
魔法罠:
フィールドゾーン:


改めて、遊大は冷静に盤面を見つめる。そしてキャンデの発言の違和感。自分がキャンデの二つのミスとデメリットを注視していたとき、キャンデが看破したのは《烏合無象》のデメリットに気づいたことのみだった。攻撃表示、攻撃力1000のモンスターの異質さに、稚拙なミスで収めていいのかという疑念が胸の内で渦巻くのを感じた。
そして何よりも、2枚のリバースカード。三太夫への攻撃を誘っているのか、それともミスなのか。それを確かめる術を必死に頭の中で漁っていた。

遊大(キャンデさん、なかなか気の抜けない性格だからな…。性格そのものが化かし狸というか、前だって事故ったふりして攻撃誘導したしな…。)

そんなことをぐるぐるぐるぐる考えているうちに、キャンデの声が静寂を打ち破る。

キャンデ「リバースカードオープン!永続罠《召喚制限-猛突するモンスター》!特殊召喚されたモンスターはすべて攻撃表示になり、ターン中攻撃可能なモンスターは必ず攻撃しなければならない!」

2枚の伏せカードのうち、1枚が姿を見せる。そのカードを見た刹那、遊大に電流が走った。すべてが頭の中で一直線に繋がる。確信。自分の思考が間違っていなかったことへの驚きと、このターンで勝負がつくことへの確信。



観客席から、2回戦より出場の律歌と顧問のましろが遊大のデュエルを見つめる。

律歌「《召喚制限-猛突するモンスター》かあ。キャンデ、さすがに露骨じゃない?」

はあっと律歌はため息をつく。暑さに茹だっているようで、ワイシャツ姿に団扇をぱたぱたさせて2人に視線を向ける。

ましろ「さすがに気づいてるか。一見攻撃力4200を攻撃させることが狙いに見えるし、そこで攻撃表示の古狸三太夫という抜け道をふつうは見つけるだろう。破壊こそできないがダメージは与えられるし、次のターンまでなら生き残らせることも可能。しかしそれがアイツの罠だな。もう1枚の伏せカード、100%ダメージ反応系だ。」

律歌は隣の空席にべったりとあおむけに横たわる。バックからペットボトルをおもむろに取り出し、おでこの上にちょん、と置いて見せた。

律歌「まったく。うちの遊大を舐めすぎです。もう十分すごく強いですもん!これぐらい読めますよ、遊大は。」


遊大は自ら立てた予測に笑みを浮かべる。

遊大「よっしゃ!ちょっと乱暴しちゃうからなー!」

そういうと遊大は肩をグルングルンと回し、もう片手の手札のカードに目を向ける。

その姿をみて、またオーバーリアクションに手を口元に近づけ、くすくすと笑うジェスチャーを取る着ぐるみが1人。キャンデである。

キャンデ(ふふ…。おそらく血の気の多いあいつのことだ。攻撃力4200の《影武者狸トークン》が破壊できないとなれば確実に古狸三太夫を攻撃しに来る…。おれ自身は《召喚制限-猛突するモンスター》を堂々と発動することで、「まだ気づいていないミス」に見せかける芝居は完璧にできている!伏せてあるこのカードなら…!)

遊大もそんなキャンデに目をむけ凄む。

遊大「なーにこそこそしてんだよ!4200のモンスターを出してんだ!堂々としやがれい!
俺は手札から永続魔法《金剛真力》を発動!このカードは相手のフィールドにのみモンスターが存在する時、レベル4以下のデュアルの特殊召喚を可能にする!来い!《重起士道–ゴルドナイト》!」

地面がばっくりと割れ、重機のパーツを装甲として遇らった戦士が姿を現す。

《重起士道–ゴルドナイト》(攻)
☆4 地・戦士族/デュアル/効果
1500/500

その瞬間に、《召喚制限-猛突するモンスター》のカードが煌々と輝く。重機の戦士の目は赤く染まり、血気にあふれた表情になる。

キャンデ「一応言っておくが、《召喚制限-猛突するモンスター》の効果で特殊召喚されたモンスターは全員攻撃表示になる!バトルフェイズになったら全員で攻撃してもらうからな〜?」

その言葉でも遊大は一切動じない。依然として微笑みを浮かべたまま、次のカードを勢いよくプレーする。

遊大「わかってらあよ!俺は《チューンド・マジシャン》を通常召喚!」

フィールドに一本の錫杖が突き刺さる。それを中心として風が巻き起こり、カツカツとブーツの足音を立てながらそのモンスターは姿を現した。

《チューンド・マジシャン》(攻)
☆4 風・魔法使い族/デュアル/効果
1800/1600

キャンデ「レベル4が2体!だがお前の《No.59 背反の料理人》や《No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング》じゃあ攻撃力4200は越えられないだろ!」
(いいぞ、そのまま妥協した攻撃力で殴ってきてみろ!)

遊大は揺るがない。ただがむしゃらに次のカードをプレーする。不敵な笑みを浮かべたまま。

遊大「へっ!ならいいぜ!望み通りXモンスターはやめてやる!俺は装備魔法《スーペルヴィス》を《チューンド・マジシャン》に装備し、いくぞ!」

重機の騎士と風の魔術師が並び立つ。
風を纏った魔術師は杖を天高くかざすと、その身から翡翠色の閃光が4つ生み出される。空へと飛び上がったそれは4つの円を描き、中心を穿つ一筋の閃光が重機の騎士を貫いた。

明らかにエクシーズ召喚ではないソリッドヴィジョンで映し出されたその光景に、キャンデはあたふたと驚きを隠せない。

キャンデ「こ、これ!もうモノにしたのかよ!!」

遊大「《スーペルヴィス》により再度召喚された《チューンド・マジシャン》は、チューナーとして扱う!
俺は、レベル4の《重起士道–ゴルドナイト》に、レベル4の《チューンド・マジシャン》をチューニング!
破壊を司る黒鉄の龍!憤怒の炎で仇なう者どもを焼き焦がせ!シンクロ召喚!!
《ブラック・ブルドラゴ》!」

大地に降り注ぐ閃光は、次第にその巨竜の姿をあらわにしていく。黒く光るその鱗、紅く染まった眼。怒りの表れとも言えるほどに激しく走る雷と橙色の火花をその身から散らしながら、フィールドを前に大きく咆哮する。

《ブラック・ブルドラゴ》(攻)
☆8 炎・ドラゴン族/シンクロ/効果
3000/2600

遊大の墓地から《スーペルヴィス》のカードが光を放つ。再びフィールドに風が巻き起こると、《チューンド・マジシャン》が姿を現した。

遊大「《スーペルヴィス》の効果!フィールドから墓地に送られた時、墓地から通常モンスター1体を特殊召喚できる!通常モンスター扱いの《チューンド・マジシャン》を蘇生!」

キャンデ「シンクロ召喚…!ツァンとの修行で実戦レベルまで仕上げてきやがったな!?だがOZと影武者狸トークンは超えられない!」

そう言うとキャンデはデュエルディスクを見つめ、ぎくっと肩を揺らす。わざとらしく「しまった!三太夫が攻撃表示!」と漏らす。

遊大の表情は変わらない。真っ直ぐにキャンデを見つめ、次なるエフェクトの発動を宣言する。

遊大「あんたの作戦は看破してる!俺は、《ブラック・ブルドラゴ》の効果を発動!手札からデュアルモンスターの《フェニックス・ギア・フリード》を墓地に送り、魔法・罠カードを1枚破壊する!伏せカードを破壊!」

黒鉄の龍の拳に炎が宿る。地面へとそれを突き立てると、キャンデのフィールドに伏せられたカードが大地からの炎柱によって突き破られる。焼け焦げたそれは《冥府の合わせ鏡》。ダメージによって効果を発動する罠カードであった。
遊大はすかさず破壊したカードの効果を確認する。

《冥府の合わせ鏡》(通常罠)
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):相手の攻撃・効果で自分がダメージを受けた時に発動できる。受けたダメージの種類によって以下の効果を適用する。
●戦闘:その数値以下の攻撃力を持つモンスター1体を自分の墓地から特殊召喚し、そのダメージステップ終了後にバトルフェイズを終了する。
●効果:その数値の倍のダメージを相手に与える。

効果を見て、笑みが溢れた。ダメージ反応系のカード。これでキャンデの場は全て看破できた。

遊大「へ!やっぱりダメージ反応系だったな!流石に三太夫の攻撃表示は露骨すぎだぜ!」

キャンデはわかりやすくがっくりと肩を落とす。やれやれ、と言った感じで手を広げる。

キャンデ「ちぇ〜、せっかく目先のダメージに突っ込んでくると思ったんだがなあ。」

しかしキャンデにさして問題があるような、そういった焦りは感じられない。影武者狸トークンを破壊できなければ次のターンでの大ダメージは確実。そんな余裕があったからこそ、次の遊大の発言に耳を疑わずにはいられなかった。

遊大「バトルだ!俺は《ブラック・ブルドラゴ》で《マスター・オブ・OZ》に攻撃!!プライマル・ボルケーノ!!」

キャンデ「馬鹿な!?OZの攻撃力は4200だぞ!?」

《ブラック・ブルドラゴ》3000/2600
《マスター・オブ・OZ》4200/3700

遊大の宣言と同時に、黒鉄の龍の両腕に焔が宿り、周囲を緋色の風と雷が出現する。瞬く間にその腕を地面に打ち付けると、火山の如く勢いで地面から豪炎が吹き荒れる。

マスターオブOZは炎に身を焦ながらも、その拳を持ってずんずん黒鉄の龍へと歩み寄る。ついに目鼻の先まで辿り着くと、渾身の一撃を胴体へと打ち込んだ。

両者の攻撃が重なり合い、凄まじい勢いの衝撃が会場を包み込む。鳴り響く爆撃音に負けじと遊大が叫ぶ。負けがわかっている攻撃、そんな不利な駆け引きを一挙に覆す1枚。キャンデには聞き覚えがあった、いつの日か斬隠輝久との決着を決める一手となったその1枚。

遊大「速攻魔法!!《Ai打ち》!」

キャンデ「ここで《Ai打ち》か!!」

遊大「《Ai打ち》は、戦闘するお互いのモンスターの攻撃力を、そのダメージ計算時のみ同じ値にするカード!文字通り、これで2体は相打ちになる!さらにこの戦闘でモンスターが破壊されたプレイヤーは、その元々の攻撃力分のダメージを受ける!」

炎の嵐がフィールドを包み込む。みるみる膨らんだそれは、キャンデと遊大の2人を包み込んだ。

キャンデ LP:8000→3800
遊大 LP:8000→5000

キャンデ「はぁ、はぁ、自分のSモンスターを巻き込むなんて!それに《Ai打ち》を《ブラック・ブルドラゴ》に使ったのはミスだ!どう考えたって、攻撃力の低いモンスターに使った方が…!」

言いかけたところで、キャンデは炎を突き破る一体のモンスターに目を剥くこととなった。金色の装甲を輝かせ、鈍い金属音と共に重機が炎を巻きながら突っ込んでくる。

遊大「《ブラック・ブルドラゴ》が破壊された時、墓地からデュアルモンスターを再度召喚した状態で特殊召喚する!突っ込め!《重起士道–ゴルドナイト》!!」

《重起士道–ゴルドナイト》(攻)
☆4 地・機械族/デュアル/効果
(1500→)2000/500 (再度召喚後)

キャンデ「攻撃力が2000に上がってやがる!」

遊大「ゴルドナイトは再度召喚後、機械族になり攻撃力が500アップする!さらに特殊召喚成功時にデッキから《デュアルモンスター》の記載がある魔法罠を手札に加える!俺は《デュアル・スパーク》を手札に!」

キャンデ「あえてブルドラゴを戦闘破壊させたのはこのためか…!なんちゅう捨て身な戦法だよ!」

遊大「捨て身じゃねえよ!勝つために!ガムシャラに!もっと激しく燃え上がれ!
《重起士道–ゴルドナイト》で《No.64 古狸三太夫》に攻撃!ゴルドオーバーレブ!」

《重起士道–ゴルドナイト》2000/500
《No.64 古狸三太夫》1000/1000

鈍い衝突音と共に薙刀と金色の刃が衝突する。甲冑の狸の薙刀が悲鳴をあげ、あっけなく折れてしまうが、あと一撃が直撃する直前でキャンデの後ろへと退いた。

キャンデ LP:3800→2800

キャンデ「ぐあ…!ダメージは痛いが、古狸三太夫はトークンがいる限り戦闘・効果では破壊されないぜ!先に対処すべきは影武者狸トークンだったなあ?トークンさえいれば次のターンまた4200打点が量産できる!」

遊大「それはこのターンでお前のライフが残ってればの話だろ!速攻魔法《武装再生》と《デュアル・スパーク》を発動!」

2枚のカードがフィールドに現れる。

遊大「《武装再生》の効果で、墓地の《スーペルヴィス》をゴルドナイトに再度装備!さらに、そのゴルドナイトをリリースすることで、《影武者狸トークン》を破壊し、デッキからカードを1枚ドロー!」

金色の重機からまばゆい雷が放たれる。黒い煙をあげ火花を散らすそれは、色褪せた獣の巨影へと突っ込んでいき、ついに激突した。爆音と共に2体のモンスターが弾ける。

キャンデ「わざわざ再装備してリリースだと、一体なんのために!」

遊大「《スーペルヴィス》がフィールドから墓地に送られた時、墓地から通常モンスターを1体特殊召喚できる!」

フィールドに焔の波が舞い上がる。ブラックブルドラゴの持つそれよりももっと緋色に近い、見る者の情熱を掻き立てるような、闘志の象徴のように燃え上がるその炎。

キャンデ「スーペルヴィス…!蘇生効果にターン1回制限がついてないのか!それにこの炎は!!!」

遊大「不死鳥の翼宿し戦士よ。その剣で闇を切り裂き、色褪せた世界を赤く塗り上げろ!《フェニックス・ギア・フリード》!!!」

炎の波をその剣で裂き、紅と白の鎧に身を包んだ戦士が姿を表す。

フェニックス・ギア・フリード(攻)
☆8 炎・戦士族/デュアル/効果
2800/2200

キャンデ「ははっ!なるほどなあ!!!」

ブラック・ブルドラゴの効果で墓地に送られたその戦士。キャンデにはその降臨は全くもって予想外であった。捨て身かと思われたその先にあったのは練り上げられたワンターンキルのルート。思わず笑みが溢れていた。

遊大「捨て身じゃねえって言ったろーが!!もっと激しく!《チューンド・マジシャン》で《No.64 古狸三太夫》を攻撃!次こそ破壊させてもらうぜ!!」

《チューンド・マジシャン》1800/1600
《No.64 古狸三太夫》1000/1000

魔術師が杖をかざすと、烈風が古狸三太夫を切り刻む。その風はそのままキャンデのLPにも傷を加えた。

キャンデ LP:2800→2000

遊大「これでモンスターはいなくなった!キャンデ先輩!いいデュエルだったぜ!
《フェニックス・ギア・フリード》でダイレクトアタック!ゴッドブレイズクローズ!!」

キャンデを守る壁はいない。やれやれといった感じで、ちょこんと腰を落とし、目の前に迫り来る炎の剣をその身に受ける。甲高い電子音がキャンデの敗北、そして遊大の勝利を告げた。

キャンデ「いいデュエルねえ。強くなってるじゃんかよ。頑張れや!2回戦!!」

ソリッドヴィジョンが消える。遊大もニカっと笑顔を作り、Vサインを作ってみせた。

遊大「もっちろん!!まだまだ負けないもんねえ!」

決闘王杯市内予選一回戦。遊大は新しいS召喚でその勝利をもぎ取った。次なる相手が、彼を待ち構える。

続く
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ランペル
ツァンディレの時には、その正体までは明かされなかった新たなSブラック・ブルドラゴが大会にてお披露目!
キャンデの仕掛けた罠を見抜き、その上を行く戦術。ブルドラゴの効果を最大限活用しながらのフィニッシュはフェニックス・ギア・フリード…。今までの経験全てが確実に彼を仕上げていっていますね。見知った相手で特性をある程度把握していたのも、彼からすると戦いやすかった部分があるかもしれませんね。予選もまだまだ一回戦を突破したばかり。
まだ見ぬ強敵の控える大会…今後のデュエルも気になる所です! (2023-08-28 15:22)
コングの施し
ランペルさん、閲覧&コメントありがとうございます!細いところまで見ていただいてすごく嬉しいです!!
決闘王杯編に入り、他のデュエリストの強くなったところも書いていくので、是非お楽しみに!! (2023-08-28 18:34)

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