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40話 龍の瞳に映るのは その② 作:コングの施し
ついに決勝を迎えた全国決闘王杯市内予選。その優勝の座を賭けて戦うのは、東雲中の『大石龍平』と『龍剛院嬢』の2人。本気と本気の衝突。《ドラグニティナイトーアラドヴァル》を《聖刻》のXモンスター達から守り切り、わずかに優勢を勝ち取った嬢。そしてそれを確実にするべく、勝負を決めるカード《重力崩壊》を発動し、龍平を窮地へと追い込む。
〜
父親、大石竜也は、プロデュエリストだった。寡黙だけど優しくて、母にも姉にも厳しくは当たらないし、家のことも黙ってやるような人間だった。彼がプラチナ3に昇級するまでは。
プラチナ3級、これまでのゴールド帯以下とはうって変わって、文字通り「鬼の棲家」。負けが込んだ父は、自分たち家族にきつく当たるようになった。母に手を上げてしまうほどに。
「ふざけるな!母さんを殴るなんて!」
「…否定したいか。」
彼の声はナイフのように鋭くて、鈍器のように重たくて、自分の胸にじっとりと刺さり、沈んでいく。でも、萎縮させたいのが父親の狙いのような気がして、いつまでも言われるがままやられるがままになっているのが嫌だった。同時に、「強くなってから否定しろ。」と暗に言った彼に、その言葉を吐き捨てた。
そして、同じ言葉が今、堪えきれずに口から溢れていた。
「やってやるよ。真正面からな…!」
逆境。皮肉にも竜也の存在を恨みながらも、その反骨心で自分を磨き、この決勝に立っている。
そして、それとはまた違った意味での逆境。目の前にいる嬢、彼女に父親ほどの強い感情はないし、きっと彼女が自分に抱いている思いも、それほど大きなものではないのだろう。純粋にデュエルを楽しもうとする。それゆえに、勝ちに来ている。
しかし、負けを認めるのは違う。確実に。
地面が崩れようと、星が砕けようと、勝てる試合を諦める選択は絶対にできない。
嬢「今…やってやるよ、って言ったの…?」
そうだ。
逆境が常に自分を1つ上へと押し上げてくれる。そう思わずして、どうして戦ってこれるのか。バネにしろ。負けるな。動かなかった自分の顔に笑みを浮かべる。
TURN:4 (メインフェイズ1)
大石 龍平 (ターンプレイヤー)
LP:3800
手札:4
モンスター:
魔法罠:
フィールドゾーン:
龍剛院 嬢
LP:8000
手札:0
モンスター:《ドラグニティナイト–アラドヴァル》(攻) 《ドラグニティ–ギザーム》(攻)
魔法罠:《重力崩壊》(発動中)
フィールドゾーン:《竜の渓谷》
嬢が発動したカードは《重力崩壊》。
自らのシンクロモンスターを生贄とすることで、ターン中の相手の召喚・特殊召喚を無効にし、それをターン中一切封じる効果を持ったカード。彼女は残った龍平のLPと自分の場のモンスター、そして《竜の渓谷》による後続の確保と《ドラグニティナイトーアラドヴァル》によるモンスター効果への保険のために、《ドラグニティナイトーアスカロン》をコストとしてそのカードを発動した。
《輝光竜セイファート》を通常召喚し、そこに《重力崩壊》をぶつけられた龍平は、もうこのターンにモンスターを展開することが許されない。さらに通常召喚権を使っているため、壁となるモンスターをセットすることすらできない。
残ったLPは3800、そして嬢のフィールドのモンスターの合計攻撃力は4200。
敗着の一手。会場の誰もが、それを信じて疑わなかった。
ましろ「…決まった!」
レイン「《重力崩壊》…。このターンの召喚と特殊召喚ができなくなった…」
キャンデ「盤面ゼロ、通常召喚権も使ってるって…さすがにこりゃ無理だ!」
そう、たった一人、当事者であり、今そこに立っている龍平本人を除いては。龍平は思い出す。「絶対に諦めない熱意」を宿した1人の決闘者のことを。
龍平「まだ諦めねえよ。アイツだってそうだろ…!」
嬢にも伝わった。今はいないけれど、同じ執念を宿したその男の存在が。
嬢「そうだよね…!どんと来い!だよ!」
〜
律歌「もう、落ち込み方も下手っぴ?」
雨降る公園のベンチ、ずぶ濡れの彼がこちらに顔を向ける。
遊大「…律歌さん。」
雨粒なのか涙なのか、顔はぐちゃぐちゃに濡れていた。しかしその赤く腫れたまぶたを見て、その両方であることを察する。
ボロボロでぐしゃぐしゃの彼に、自分が湿っぽくなるという選択が消えた。今、彼に必要なのは仲間と傘を差してくれる人だから。
律歌「まったくもぅー!」
律歌はずかずかと彼のもとに寄り、濡れたベンチを気にすることなく彼の横に座った。じんわりと、おしりに冷たい水が染みるのを感じる。
右手に携えてる傘を左肩にかけて、2人がなんとか入るようにする。空いた右手でバッグを漁って、中からタオルを引っ張り出し、勢いよく遊大の頭を乱す。
遊大「ちょ…!」
咄嗟にその声が出た遊大、しかしその声が震えるのが、律歌にははっきりとわかった。
遊大「律歌さん…。すいません…おれ、どうしたら…。」
きっと言いたいことがたくさんあるのだろう。彼なりに落ち込んで、自分がここに来るまで考えて、その結果として色々な言葉が溢れてしまっている。その結果滲んだ、一つの謝罪。
実際、遊大は何を言えばいいのかわからなかった。敗者復活戦のこと、みっともない試合をしたこと、抜け出したこと、デュエルから逃げようとしていたこと。溢れだすそれらと、決心がつかない自分がいる。
律歌はゆっくりと口を開く。「みんな待ってるよ。」と。しかしそれだけではいけない。期待というものがプレッシャーになってしまいそうで、付け足した。
律歌「私は遊大がやりたいようにすればいいと思う。」
遊大「…え、」
律歌「デュエルが苦痛になったら、きっと逃げてもいいんだと思う。でも…」
そこまで言いかけて、濡れた遊大のこめかみに人差し指をそっと押し当てた。
律歌「デュエルするならね、なんで自分がデュエルしてきたのか、ううん、なんでデュエルしているのか一回考えて欲しいんだ。」
その言葉に、龍平の言葉が重なる。『お前、なんでデュエルやってきたんだよ?』と、会場を飛び出した時の彼の言葉。
遊大「理由…。」
律歌「難しく考えることないよ。でもね、戦ってきたことにはそれなりの理由があると思う。だから、その理由に嘘をつかないように、一回考えてみて欲しいの。」
そう言うと、高台から見える灯台の灯りがぽっ、とともった。「あっ灯台!」と口ずさむ。
遊大「理由…。おれは龍平とか輝久みたいに立派な理由を持ってるわけじゃないです。自分でもわかんないくらいに小さくて…その大きさが勝負に関わってしまうなら、いっそのこと…!」
律歌「もぅー!難しく考えるなって言ったじゃん!」
そう言って、たった今ともったその灯台に指をさす。
律歌「遊大、灯台みたいだね。いや、蝋燭…?」
遊大「はい…?」
律歌「きっと自分が燃えようと、明るくなればなるほど、遠くにあるキラキラしたものが見えちゃうんだ。でも灯台の下も蝋燭の下も、暗くて見えないけど確かに大切なものはそこにあって…えーっと」
突然口に出した例えが自分でもあってるのかわからなくて言語化に少し悩む。
律歌「眩しい人にやられることないよ。遊大も一生懸命光ってれば、それは眩しいことだから。時には地面を見たって、自分の原点みたいなものに目を向けたっていいんだよ。」
遊大「おれの…原点…?」
律歌「そう。『なんでデュエルしてるのか』ってやつだよ。」
なんでデュエルをしているのか。
自分がデュエルをしているときに1番に感じているもの。理由となり得るほどに大きなその感情。
それを思い出した時、やっと目を向けることができた。「純粋な楽しさ」というものに。
下を向いていた遊大の視線がゆっくりと彼女の目に重なる。その目が潤んで、また小さな雫がほろろ、と頬を伝う。
遊大「おれ゛…デュエル゛が楽じぐって、だから゛、楽しいことで勝ちたかっだ…です゛!」
声を震わせながら喉から出たその声を聞いて、律歌はやさしく微笑みかけた。こめかみに当てた指をゆっくりと彼の頬にすべらせ、溢れ出たその雫をそっと拭う。
律歌「よかった。」
頬にある彼女の手、たしかにそこにある温かい手。いくら泣いても溢れてきてしまうから諦めて、震える声のまま口に出した。
遊大「…あ゛りがどう゛、ございまず…。」
〜
龍平の瞳に映る5枚のカード。それらを組み合わせて、モンスターを召喚できないこのターンを生き延び、かつ勝利しなくてはならない。そこに弱気な感情は一切ない。熱く、しかし冷静に、諦めない。絶対に諦めない遊大の姿を知っているから。
龍平(まずはリソース源を叩く…!)
「俺は手札から《土地ころがし》を発動。」
そう言ってソリッドヴィジョンに映し出された1枚のカード。誰も見たことのないカードに、嬢も会場も困惑を隠せない。
龍平「このカードは、相手のフィールドゾーンのカード1枚を除外し、それを俺のフィールドに張り替える。さらに自分の墓地にフィールド魔法が存在する場合、そのコントロールを相手に移す。」
嬢「!!!…ってことは…」
ましろ「《竜の渓谷》を奪うつもりか!?」
キャンデ「は!?」
阿原「モンスターのコントロールを奪取するカードは知ってる…だが!」
輝久「フィールド魔法を奪うって…前代未聞すぎるな。」
ツァン「でもこれで、次のターンに追加のドラグニティを展開される可能性は激減するハズ…!」
レイン「…それだけじゃ…ない。」
どよめく観客席。しかしレインの予測は外れてはいなかった。フィールドが塗り変わり、龍平の盤面が暁色に染まる。そしてその様をみて嬢が小さく呟く。
嬢「そのデッキに《竜の渓谷》…まさか…」
龍平「そのまさかだ。俺は手札から《限界竜シュヴァルツシルト》を墓地に送り、フィールド魔法《竜の渓谷》の効果を発動!」
奪い取ったフィールド魔法《竜の渓谷》。その効果を使えるのは、何もドラグニティの使い手である嬢だけではない。2つある効果のうちの、嬢が使用していない方の効果。
《竜の渓谷》フィールド魔法
1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に手札を1枚捨てる事で以下の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●自分のデッキからレベル4以下の「ドラグニティ」と名のついたモンスター1体を手札に加える。
●自分のデッキからドラゴン族モンスター1体を墓地へ送る。
嬢「デッキからドラゴン族を墓地に送る効果だね…!」
龍平「俺はドラゴン族を墓地に送る効果を選択し、デッキから《アークブレイブドラゴン》を墓地に送る。」
《竜の渓谷》のカードが輝きを放ち、デッキから1枚のカードが墓地へと流される。
龍平「《アークブレイブドラゴン》は、墓地に送られた次のターンのスタンバイフェイズに、墓地のレベル7・8のドラゴン族を特殊召喚する効果がある。さらに俺はカードを1枚セット。
俺はこれでターンエンド…!」
嬢「これは…」
嬢の中で思考が駆け回る。このターンの召喚・特殊召喚を一切封じている以上、ターン中に壁モンスターを用意することは当然不可能。そして《竜の渓谷》を奪われたことで発生した2つの障壁。1つはデッキから任意の《ドラグニティ》を用意できなくなったこと。そしてもう1つは《アークブレイブドラゴン》の存在。墓地で発動する効果ゆえに《ドラグニティナイトーアラドヴァル》で無効にすることはできる。しかしそこで目に入るのが1枚のセットカード…。
つまりこのターンにドローすればいいカードは…。
ましろ「…《サイクロン》のようなバック除去だ。」
キャンデ「えあ?」
阿原「ああ。《アークブレイブドラゴン》の効果はどっちにしろ《アラドヴァル》で止まる。そしてセットカードが1枚あって、それを使わなければLPが持たないっていう状況だしな。」
輝久「なるほど…。《竜の渓谷》を奪えているとはいえ、やっぱり露骨に《重力崩壊》が効いているね。」
レイン「非公開情報も…ほぼない。」
そう、嬢の手札はこのドローで1枚。そして龍平に残された1枚の手札も公開情報である《いたずら風のフィードラン》のみ。つまり、否応なくデッキトップのカードが勝敗をわかつ、いわゆる『トップ合戦』にもつれていた。
嬢「お願い…!私のターン、ドロー!」
TURN:5 (ドローフェイズ)
龍剛院 嬢 (ターンプレイヤー)
LP:8000
手札:0→1
モンスター:《ドラグニティナイト–アラドヴァル》(攻) 《ドラグニティ–ギザーム》(攻)
魔法罠:
フィールドゾーン:
大石 龍平
LP:3800
手札:1
モンスター:
魔法罠:セット×1
フィールドゾーン:《竜の渓谷》
デッキの1番上のカード、それを握る手に汗が滲む。そしてそれを勢いよく引き抜いた。横目でゆっくりと、そのカードを確認する。
嬢「…!」
何を引いたのか、龍平はその真相を確かめる間もなく、次の手を打つ。
龍平「スタンバイフェイズ時、俺は墓地の《アークブレイブドラゴン》の効果を発動。《竜核の呪霊者》を対象として、それを特殊召喚する。」
ここで壁モンスターの展開。しかし、ドローしたそのカードを知った嬢に迷いはない。その隙を、逃さない。
嬢「《ドラグニティナイト–アラドヴァル》の効果発動ですっ!コストで墓地の《ドラグニティ》モンスターを除外し、モンスター効果を無効にして除外します!!ブレイジング・バニッシュ!」
銀翼の龍騎の炎の槍は、迷わずにそのカードを貫いた。そして龍平は同時に気づく。壁モンスターの展開を許さないこと、それはすなわちセットカードへの対処が可能になったということ。このターンでLPを刈り取る手立てが整っているということ。
龍平「止めた…。ってことは引いたか…!」
技巧の衝突の果てのドッグファイト。本気で戦ってもなおそこまで持ち込めたこのデュエルの終焉を前に、嬢の顔には笑顔が点っていた。
嬢「恨みっこなしだからね…!
魔法カード《ハーピィの羽根箒》を発動!相手の魔法・罠カードを全て破壊する!」
その宣言と同時に突風が巻き起こる。
誰もが知るそのカードを前に、龍平のセットカード、そして《竜の渓谷》のカードは全て叩き割られた。セットされたカードは《聖なるバリアーミラーフォースー》。嬢の英断と、勝利の女神の微笑みによって、そのカードを突破することが叶った。
この時点で龍平のLPは3800。そして嬢のモンスター《ドラグニティナイト–アラドヴァル》と《ドラグニティ–ギザーム》の合計攻撃力は4200。そして龍平の1枚の手札も公開情報。誰がどう見ても、龍平の詰みであった。激戦の果ての結末としてはあまりに運任せ。しかし同時に、時の運すら実力に含めたくなるほどにそのデュエルが白熱していたことは誰の目にも明らかだった。
会場がどよめく。それは嬢にも、龍平にも差し伸べられた賞賛であった。
龍平にもう手はない。デッキの上に手を置くサイン、すなわちサレンダーのサインのためか、俯いてデュエルディスクにその手を伸ばす。
「…ない。」
小さな声がどよめく会場の中にポツリと響く。
嬢「…え?」
嬢のその困惑に、会場のどよめきが一気に静まりかえる。誰しも嬢の勝利を確信しているからこそ、その勝利者たる彼女の戸惑いに、不審感が染み渡る。
龍平「まだ終わってない…!!!」
そう叫んだ龍平の背後、フィールドに宝玉が突き刺さり、それが氷塊のごとく弾ける。
『グォアアアアアアアアアア!!!』
煌めく宝玉を纏った黒竜。龍平と同じく「まだ終わってない」と叫ぶように、雄々しく叫ぶ。
彼が伸ばした先はデッキではない。誰もが意識外に追いやっていた龍平の墓地で、その竜はこの瞬間をじっと待っていた。
嬢「これって…《魔晶龍ジルドラス》!?」
龍平「忘れんなよ…!
魔法罠を破壊すればコイツが出てくる!
《ジルドラス》が除外されるのは『フィールドを離れる場合』のみ!さっきのターン、こいつは《聖刻龍王ーアトゥムス》のX素材になっている!」
一瞬静まり返った会場も、その咆哮と同時に歓声を取り戻す。彼が言うように誰もがその存在を忘れていた。しかしたった1人覚えていた龍平本人が、「デュエルの終幕」を拒絶した。
《魔晶龍ジルドラス》(守)
☆6 闇・ドラゴン族/効果
2200/1200
阿原「…まじか!!」
ましろ「完全に意識外だった…!あたし達も嬢も!」
輝久「これでこのターンのキルはできない!」
嬢「…だけじゃ、ないよね!」
宝玉の龍が大地に腕をかざすと、塵となったカードが煌めく宝石を纏ってその形を取り戻してゆく。そしてそれは、ゆっくりと龍平の手に宿る。
龍平「俺は、除外状態の《竜皇神話》をフィールドに再度セット!」
嬢はあっけに取られていた。完全に意識の外側からの一手を喰らい、このターンでの決着が不可能になっていること。そして次のターンの布石を残されたこと。眼前の龍の底のなさに、畏怖が染み渡る。
嬢「…私は、《ギザーム》を守備表示に変更!」
冷静さを欠いていることは暗に理解していた。だからこそ現状を受け止め、このターンでのLPを削ることを諦め《ドラグニティーギザーム》のカードを守備表示に変更する。
嬢「バトルですっ!
《アラドヴァル》で、《魔晶龍ジルドラス》を攻撃!イグニッション・ユナイト!」
豪炎の槍が宝玉の龍を貫く。本来であれば、龍平のLPを狩っていたその1撃。躱してくれたその龍に微笑みかけて、龍平は《ジルドラス》のカードを除外する。
龍平「ありがとな…!」
嬢の頬に汗が一筋流れる。優勢なのは自分であることは理解していた。しかし、デュエルが始まる時にも見えたその感情。
嬢(やっぱりチャレンジャーは私だった…!)
「ターエンド…ですっ!」
龍平の目に光がもどる。このターンが山場であったこと、そしてそれを首の皮1枚ではあるものの潜り抜けたこと。しかし、油断はしない。その龍の瞳に映るのは『勝利』の2文字。
龍平「俺のターン、ドロー!」
TURN:6 (ドローフェイズ)
大石 龍平
LP:3800
手札:1→2
モンスター:
魔法罠:セット×1(《竜皇神話》)
フィールドゾーン:
龍剛院 嬢
LP:8000
手札:0
モンスター:《ドラグニティナイト–アラドヴァル》(攻) 《ドラグニティ–ギザーム》(守)
魔法罠:
フィールドゾーン:
龍平「俺は、墓地の《輝光龍セイファート》の効果を発動!墓地のレベル8の闇・光属性のドラゴン族モンスターを手札に加える。」
龍平は、次々と捲られるカードの内から、《限界竜シュヴァルツシルト》のカードを掴む。しかし、嬢はその瞬間を見逃さない。龍平に残された《アラドヴァル》の対処策は《竜皇神話》のみ。しかしそれは、龍平のフィールドにモンスターがいる場合にしか使えない。
彼女は振り絞って俯瞰した自分の思考を元に、そのカードの発動を宣言した。
嬢「そうはさせないよ!《アラドヴァル》の効果を…」
と叫びかけたとき、重い電子音が嬢のデュエルディスクから鳴り響く。
嬢「えっ!?」
『発動条件を満たしていません。』
その様に、龍平がゆっくりと口を開く。
龍平「…墓地にもう《ドラグニティ》はいない。さっき《アークブレイブドラゴン》の効果を無効にするために除外した《アスカロン》で最後だ。」
その瞬間、血の気がさーっと引くのを嬢は感じた。しまった。気づかなかった。嫌な方向に、全ての可能性が繋がる。
嬢(全部この時のために…!?)
思えば止められるとわかっていたにも関わらず発動した《アークブレイブドラゴン》の効果。《竜の渓谷》という手札・墓地に半永久的に《ドラグニティ》を送り続けるカードを奪ったこと。そして《アスカロン》の除外に合わせて発動した《天球の聖刻印》の効果。一手一手、それら全てが、この1ターンのモンスター効果のための布石となっていた。
嬢「除去じゃない。墓地リソースを枯らして《アラドヴァル》を攻略する 、って…!」
阿原「怪物か!?」
ツァン「盤面への理解度が半端じゃない!」
キャンデ「俺らはおろか、嬢すら把握してない所を攻めてきやがる…!」
龍平「手札に加えた《限界竜シュバルツシルト》は、相手フィールドに攻撃力2000以上のモンスターが存在するとき、特殊召喚できる。来い!」
《限界竜シュヴァルツシルト》(守)
☆8 闇・ドラゴン族/効果
2000/0
焦茶色の鱗を纏った龍がうねりながらフィールドに降り立つ。そして次に発動したそのカード。戦況が大きく傾いていた。
龍平「さらに手札から《復活の福音》を発動。墓地のレベル8のドラゴン族を特殊召喚する。来い!《竜核の呪霊者》!」
《竜核の呪霊者》(守)
☆8 闇・ドラゴン族/チューナー
2300/3000
一瞬の隙、一手の隙を突かれたその刹那、気づけばレベル8が2体揃っていた。しかし彼女は同時に思い出す。それは2ターン目のこと。
彼は《アラドヴァル》の除去を躱された時点で、レベル8が2体揃っているにも関わらず《天球の聖刻印》をリンク召喚していた。それはすなわち、あの状況で《アラドヴァル》を除去する手段がなかったことを意味している上、盤面の状況自体は大きく変化していない。
「大丈夫」と、自分に言い聞かせていた。
しかし龍は、その瞳に捉えた『勝利』を逃しはしない。
龍平「俺は、《限界竜シュヴァルツシルト》と《竜核の呪霊者》をオーバーレイ!」
2つの光は、うねるように渦へと吸い込まれていく。
何が来る。何が待ち受ける。畏れながらも、その先に胸を高鳴らせる自分がいることに、嬢はようやく気づいた。
龍平「雷鳴よ、轟け! 稲光よ、煌け! 顕現せよ!!」
その声と共に、光の渦が弾ける。眩い輝きの中から、その影を見せた巨大な竜。かつて龍平が使用した『あるカード』と対を成す存在。
龍平「エクシーズ召喚!《No.46 神影龍ドラッグルーオン》!!」
白い鱗が光を反射し、フィールド全体が金色の輝きに包まれる。
嬢が思わず「綺麗…。」と零した。
《No.46 神影龍ドラッグルーオン》(攻)
★8 光・ドラゴン族/エクシーズ/効果
3000/3000
ドラゴン族レベル8モンスター×2
(1):1ターンに1度、自分フィールドに他のモンスターが存在しない場合、
このカードのX素材を1つ取り除き、以下の効果から1つを選択して発動できる。
●手札からドラゴン族モンスター1体を特殊召喚する。
●相手フィールドのドラゴン族モンスター1体を対象として発動できる。
そのドラゴン族モンスターのコントロールを得る。
●相手ターン終了時まで、相手フィールドのドラゴン族モンスターは効果を発動できない。
龍平「俺はオーバーレイユニットを1つ取り除き、《ドラッグルーオン》の効果を発動!
相手のドラゴン族モンスター1体のコントロールを得る!」
その身体に、光の球体が宿り、大きく彷徨する。同時に《アラドヴァル》の体が粒子状になり、そのカードは瞬く間に龍平の手に加えられた。
龍平のもとに降り立ち、嬢に構える《ドラグニティナイト-アラドヴァル》。その圧倒的な存在感に、嬢は身震いするのを自分で感じた。
嬢「…フィールドが自身のみの場合に相手のドラゴン族のコントロールを奪うカード…《アラドヴァル》を奪うことが狙いだったんだね…!!でもそれじゃ…」
「LPは削りきれない。」そう言いかけたとき、はっとする。
《天球の聖刻印》の効果で特殊召喚され、手札に戻った1体のモンスター。それがまだ、龍平の手の中にある。
龍平「…気づいたか。
俺は《いたずら風のフィードラン》を通常召喚し、その効果を発動!」
ひらひらっ、と妖艶な風と共にその小さなドラゴンはフィールドに降り立つ。
《いたずら風のフィードラン》(攻)
☆3 風・ドラゴン族/効果
1700/0
小さな羽根をぱたぱたとはためかせ、風が《アラドヴァル》の体を包む。緩やかだった風はその身に宿ると立っていられないほどの烈風へと昇華する。
龍平「対象モンスターへの貫通効果を付与する。さらにこれで終わりだ…!!」
そう言って、1枚のリバースカードをフィールドに叩きつける。このデュエルの幕開けと、そして幕引きを担うたった1枚の速攻魔法。
龍平「《竜皇神話》!!」
龍平のフィールドに渡った銀翼の龍騎、その身に宿った熱がさらに熱く、強く、龍平の闘志を映し出すようんに燃え上がる。
龍平「ドラゴン族の、貫通効果をもった《ドラグニティナイト-アラドヴァル》の攻撃力を倍にする!」
《ドラグニティナイト-アラドヴァル》ATK:3600→7200
歓声が鳴り響く。雨音すら忘れさせるほどに大きな歓声。負けないように大きく「バトルだ!」と叫んだ。
龍平「《ドラグニティナイト-アラドヴァル》で、《ドラグニティ-ギザーム》に攻撃!イグニッションユナイト!!」
翼の銀色の輝きが、熱を帯びて蜃気楼のように揺らぎ始める。やがて巨大な炎雷となったその身は、いつも以上に強く激しく、フィールドを照らしつける。
瞬間、音すら置き去りにして、その巨槍は嬢のフィールドの《ギザーム》を貫いた。
《ドラグニティナイト-アラドヴァル》ATK:7200
《ドラグニティ-ギザーム》DEF:1600
龍剛院 嬢
LP:8000→2400
攻撃力7200の貫通効果。そして残されたわずかなLPの前に立ち塞がる《No.46 神影龍ドラッグルーオン》。
身を翻す白金の龍を前にした彼女の顔には、笑顔があった。
華麗なデュエルだった。全てが計算され、全てがこの場所に収束しているのではないかと思うほどに。「清々しさ」とすら言えるような、そんな感情が嬢の中でぽっと浮かびあがる。同時に満ちていく自分のデュエルへの思い。
今までの自分では決して触れることができなかったデュエルへの高揚感。初めて見て、触った、本当にドキドキするデュエル。
本気で戦えてよかった。
本気で戦ってくれて、嬉しかった。
その龍が放つ輝かしい一撃でデュエルが終わってしまう前に、今の自分の気持ちを言葉にしようと思った。でも終わってしまいそうで、一番シンプルな言葉を最後に龍平に投げかけた。
嬢「ありがとう。龍平くん。」
龍平「…ああ。
《No.46 神影龍ドラッグルーオン》の攻撃!火炎神激!!」
一閃。龍が放ったその攻撃は、淡い水銀をこぼした遠雷のように、静かに嬢のLPを貫いた。
龍剛院 嬢
LP:2400→0
ピピピピ、電子音がそのデュエルの幕引きを告げる。同時に、湧き上がる歓声。会場の全てが、勝者に、そして敗北者に、2人に賞賛を告げていた。
WINNER:大石 龍平
湧き上がる歓声の中で、静かに握り拳を突き上げる。東雲市内予選優勝の座を勝ち取った、一匹の龍。
その瞳に映るのは、まだ見ぬ相手とのデュエル。そしてその奥に静かに眠る『勝利』の2文字のみ。
続く
〜
父親、大石竜也は、プロデュエリストだった。寡黙だけど優しくて、母にも姉にも厳しくは当たらないし、家のことも黙ってやるような人間だった。彼がプラチナ3に昇級するまでは。
プラチナ3級、これまでのゴールド帯以下とはうって変わって、文字通り「鬼の棲家」。負けが込んだ父は、自分たち家族にきつく当たるようになった。母に手を上げてしまうほどに。
「ふざけるな!母さんを殴るなんて!」
「…否定したいか。」
彼の声はナイフのように鋭くて、鈍器のように重たくて、自分の胸にじっとりと刺さり、沈んでいく。でも、萎縮させたいのが父親の狙いのような気がして、いつまでも言われるがままやられるがままになっているのが嫌だった。同時に、「強くなってから否定しろ。」と暗に言った彼に、その言葉を吐き捨てた。
そして、同じ言葉が今、堪えきれずに口から溢れていた。
「やってやるよ。真正面からな…!」
逆境。皮肉にも竜也の存在を恨みながらも、その反骨心で自分を磨き、この決勝に立っている。
そして、それとはまた違った意味での逆境。目の前にいる嬢、彼女に父親ほどの強い感情はないし、きっと彼女が自分に抱いている思いも、それほど大きなものではないのだろう。純粋にデュエルを楽しもうとする。それゆえに、勝ちに来ている。
しかし、負けを認めるのは違う。確実に。
地面が崩れようと、星が砕けようと、勝てる試合を諦める選択は絶対にできない。
嬢「今…やってやるよ、って言ったの…?」
そうだ。
逆境が常に自分を1つ上へと押し上げてくれる。そう思わずして、どうして戦ってこれるのか。バネにしろ。負けるな。動かなかった自分の顔に笑みを浮かべる。
TURN:4 (メインフェイズ1)
大石 龍平 (ターンプレイヤー)
LP:3800
手札:4
モンスター:
魔法罠:
フィールドゾーン:
龍剛院 嬢
LP:8000
手札:0
モンスター:《ドラグニティナイト–アラドヴァル》(攻) 《ドラグニティ–ギザーム》(攻)
魔法罠:《重力崩壊》(発動中)
フィールドゾーン:《竜の渓谷》
嬢が発動したカードは《重力崩壊》。
自らのシンクロモンスターを生贄とすることで、ターン中の相手の召喚・特殊召喚を無効にし、それをターン中一切封じる効果を持ったカード。彼女は残った龍平のLPと自分の場のモンスター、そして《竜の渓谷》による後続の確保と《ドラグニティナイトーアラドヴァル》によるモンスター効果への保険のために、《ドラグニティナイトーアスカロン》をコストとしてそのカードを発動した。
《輝光竜セイファート》を通常召喚し、そこに《重力崩壊》をぶつけられた龍平は、もうこのターンにモンスターを展開することが許されない。さらに通常召喚権を使っているため、壁となるモンスターをセットすることすらできない。
残ったLPは3800、そして嬢のフィールドのモンスターの合計攻撃力は4200。
敗着の一手。会場の誰もが、それを信じて疑わなかった。
ましろ「…決まった!」
レイン「《重力崩壊》…。このターンの召喚と特殊召喚ができなくなった…」
キャンデ「盤面ゼロ、通常召喚権も使ってるって…さすがにこりゃ無理だ!」
そう、たった一人、当事者であり、今そこに立っている龍平本人を除いては。龍平は思い出す。「絶対に諦めない熱意」を宿した1人の決闘者のことを。
龍平「まだ諦めねえよ。アイツだってそうだろ…!」
嬢にも伝わった。今はいないけれど、同じ執念を宿したその男の存在が。
嬢「そうだよね…!どんと来い!だよ!」
〜
律歌「もう、落ち込み方も下手っぴ?」
雨降る公園のベンチ、ずぶ濡れの彼がこちらに顔を向ける。
遊大「…律歌さん。」
雨粒なのか涙なのか、顔はぐちゃぐちゃに濡れていた。しかしその赤く腫れたまぶたを見て、その両方であることを察する。
ボロボロでぐしゃぐしゃの彼に、自分が湿っぽくなるという選択が消えた。今、彼に必要なのは仲間と傘を差してくれる人だから。
律歌「まったくもぅー!」
律歌はずかずかと彼のもとに寄り、濡れたベンチを気にすることなく彼の横に座った。じんわりと、おしりに冷たい水が染みるのを感じる。
右手に携えてる傘を左肩にかけて、2人がなんとか入るようにする。空いた右手でバッグを漁って、中からタオルを引っ張り出し、勢いよく遊大の頭を乱す。
遊大「ちょ…!」
咄嗟にその声が出た遊大、しかしその声が震えるのが、律歌にははっきりとわかった。
遊大「律歌さん…。すいません…おれ、どうしたら…。」
きっと言いたいことがたくさんあるのだろう。彼なりに落ち込んで、自分がここに来るまで考えて、その結果として色々な言葉が溢れてしまっている。その結果滲んだ、一つの謝罪。
実際、遊大は何を言えばいいのかわからなかった。敗者復活戦のこと、みっともない試合をしたこと、抜け出したこと、デュエルから逃げようとしていたこと。溢れだすそれらと、決心がつかない自分がいる。
律歌はゆっくりと口を開く。「みんな待ってるよ。」と。しかしそれだけではいけない。期待というものがプレッシャーになってしまいそうで、付け足した。
律歌「私は遊大がやりたいようにすればいいと思う。」
遊大「…え、」
律歌「デュエルが苦痛になったら、きっと逃げてもいいんだと思う。でも…」
そこまで言いかけて、濡れた遊大のこめかみに人差し指をそっと押し当てた。
律歌「デュエルするならね、なんで自分がデュエルしてきたのか、ううん、なんでデュエルしているのか一回考えて欲しいんだ。」
その言葉に、龍平の言葉が重なる。『お前、なんでデュエルやってきたんだよ?』と、会場を飛び出した時の彼の言葉。
遊大「理由…。」
律歌「難しく考えることないよ。でもね、戦ってきたことにはそれなりの理由があると思う。だから、その理由に嘘をつかないように、一回考えてみて欲しいの。」
そう言うと、高台から見える灯台の灯りがぽっ、とともった。「あっ灯台!」と口ずさむ。
遊大「理由…。おれは龍平とか輝久みたいに立派な理由を持ってるわけじゃないです。自分でもわかんないくらいに小さくて…その大きさが勝負に関わってしまうなら、いっそのこと…!」
律歌「もぅー!難しく考えるなって言ったじゃん!」
そう言って、たった今ともったその灯台に指をさす。
律歌「遊大、灯台みたいだね。いや、蝋燭…?」
遊大「はい…?」
律歌「きっと自分が燃えようと、明るくなればなるほど、遠くにあるキラキラしたものが見えちゃうんだ。でも灯台の下も蝋燭の下も、暗くて見えないけど確かに大切なものはそこにあって…えーっと」
突然口に出した例えが自分でもあってるのかわからなくて言語化に少し悩む。
律歌「眩しい人にやられることないよ。遊大も一生懸命光ってれば、それは眩しいことだから。時には地面を見たって、自分の原点みたいなものに目を向けたっていいんだよ。」
遊大「おれの…原点…?」
律歌「そう。『なんでデュエルしてるのか』ってやつだよ。」
なんでデュエルをしているのか。
自分がデュエルをしているときに1番に感じているもの。理由となり得るほどに大きなその感情。
それを思い出した時、やっと目を向けることができた。「純粋な楽しさ」というものに。
下を向いていた遊大の視線がゆっくりと彼女の目に重なる。その目が潤んで、また小さな雫がほろろ、と頬を伝う。
遊大「おれ゛…デュエル゛が楽じぐって、だから゛、楽しいことで勝ちたかっだ…です゛!」
声を震わせながら喉から出たその声を聞いて、律歌はやさしく微笑みかけた。こめかみに当てた指をゆっくりと彼の頬にすべらせ、溢れ出たその雫をそっと拭う。
律歌「よかった。」
頬にある彼女の手、たしかにそこにある温かい手。いくら泣いても溢れてきてしまうから諦めて、震える声のまま口に出した。
遊大「…あ゛りがどう゛、ございまず…。」
〜
龍平の瞳に映る5枚のカード。それらを組み合わせて、モンスターを召喚できないこのターンを生き延び、かつ勝利しなくてはならない。そこに弱気な感情は一切ない。熱く、しかし冷静に、諦めない。絶対に諦めない遊大の姿を知っているから。
龍平(まずはリソース源を叩く…!)
「俺は手札から《土地ころがし》を発動。」
そう言ってソリッドヴィジョンに映し出された1枚のカード。誰も見たことのないカードに、嬢も会場も困惑を隠せない。
龍平「このカードは、相手のフィールドゾーンのカード1枚を除外し、それを俺のフィールドに張り替える。さらに自分の墓地にフィールド魔法が存在する場合、そのコントロールを相手に移す。」
嬢「!!!…ってことは…」
ましろ「《竜の渓谷》を奪うつもりか!?」
キャンデ「は!?」
阿原「モンスターのコントロールを奪取するカードは知ってる…だが!」
輝久「フィールド魔法を奪うって…前代未聞すぎるな。」
ツァン「でもこれで、次のターンに追加のドラグニティを展開される可能性は激減するハズ…!」
レイン「…それだけじゃ…ない。」
どよめく観客席。しかしレインの予測は外れてはいなかった。フィールドが塗り変わり、龍平の盤面が暁色に染まる。そしてその様をみて嬢が小さく呟く。
嬢「そのデッキに《竜の渓谷》…まさか…」
龍平「そのまさかだ。俺は手札から《限界竜シュヴァルツシルト》を墓地に送り、フィールド魔法《竜の渓谷》の効果を発動!」
奪い取ったフィールド魔法《竜の渓谷》。その効果を使えるのは、何もドラグニティの使い手である嬢だけではない。2つある効果のうちの、嬢が使用していない方の効果。
《竜の渓谷》フィールド魔法
1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に手札を1枚捨てる事で以下の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●自分のデッキからレベル4以下の「ドラグニティ」と名のついたモンスター1体を手札に加える。
●自分のデッキからドラゴン族モンスター1体を墓地へ送る。
嬢「デッキからドラゴン族を墓地に送る効果だね…!」
龍平「俺はドラゴン族を墓地に送る効果を選択し、デッキから《アークブレイブドラゴン》を墓地に送る。」
《竜の渓谷》のカードが輝きを放ち、デッキから1枚のカードが墓地へと流される。
龍平「《アークブレイブドラゴン》は、墓地に送られた次のターンのスタンバイフェイズに、墓地のレベル7・8のドラゴン族を特殊召喚する効果がある。さらに俺はカードを1枚セット。
俺はこれでターンエンド…!」
嬢「これは…」
嬢の中で思考が駆け回る。このターンの召喚・特殊召喚を一切封じている以上、ターン中に壁モンスターを用意することは当然不可能。そして《竜の渓谷》を奪われたことで発生した2つの障壁。1つはデッキから任意の《ドラグニティ》を用意できなくなったこと。そしてもう1つは《アークブレイブドラゴン》の存在。墓地で発動する効果ゆえに《ドラグニティナイトーアラドヴァル》で無効にすることはできる。しかしそこで目に入るのが1枚のセットカード…。
つまりこのターンにドローすればいいカードは…。
ましろ「…《サイクロン》のようなバック除去だ。」
キャンデ「えあ?」
阿原「ああ。《アークブレイブドラゴン》の効果はどっちにしろ《アラドヴァル》で止まる。そしてセットカードが1枚あって、それを使わなければLPが持たないっていう状況だしな。」
輝久「なるほど…。《竜の渓谷》を奪えているとはいえ、やっぱり露骨に《重力崩壊》が効いているね。」
レイン「非公開情報も…ほぼない。」
そう、嬢の手札はこのドローで1枚。そして龍平に残された1枚の手札も公開情報である《いたずら風のフィードラン》のみ。つまり、否応なくデッキトップのカードが勝敗をわかつ、いわゆる『トップ合戦』にもつれていた。
嬢「お願い…!私のターン、ドロー!」
TURN:5 (ドローフェイズ)
龍剛院 嬢 (ターンプレイヤー)
LP:8000
手札:0→1
モンスター:《ドラグニティナイト–アラドヴァル》(攻) 《ドラグニティ–ギザーム》(攻)
魔法罠:
フィールドゾーン:
大石 龍平
LP:3800
手札:1
モンスター:
魔法罠:セット×1
フィールドゾーン:《竜の渓谷》
デッキの1番上のカード、それを握る手に汗が滲む。そしてそれを勢いよく引き抜いた。横目でゆっくりと、そのカードを確認する。
嬢「…!」
何を引いたのか、龍平はその真相を確かめる間もなく、次の手を打つ。
龍平「スタンバイフェイズ時、俺は墓地の《アークブレイブドラゴン》の効果を発動。《竜核の呪霊者》を対象として、それを特殊召喚する。」
ここで壁モンスターの展開。しかし、ドローしたそのカードを知った嬢に迷いはない。その隙を、逃さない。
嬢「《ドラグニティナイト–アラドヴァル》の効果発動ですっ!コストで墓地の《ドラグニティ》モンスターを除外し、モンスター効果を無効にして除外します!!ブレイジング・バニッシュ!」
銀翼の龍騎の炎の槍は、迷わずにそのカードを貫いた。そして龍平は同時に気づく。壁モンスターの展開を許さないこと、それはすなわちセットカードへの対処が可能になったということ。このターンでLPを刈り取る手立てが整っているということ。
龍平「止めた…。ってことは引いたか…!」
技巧の衝突の果てのドッグファイト。本気で戦ってもなおそこまで持ち込めたこのデュエルの終焉を前に、嬢の顔には笑顔が点っていた。
嬢「恨みっこなしだからね…!
魔法カード《ハーピィの羽根箒》を発動!相手の魔法・罠カードを全て破壊する!」
その宣言と同時に突風が巻き起こる。
誰もが知るそのカードを前に、龍平のセットカード、そして《竜の渓谷》のカードは全て叩き割られた。セットされたカードは《聖なるバリアーミラーフォースー》。嬢の英断と、勝利の女神の微笑みによって、そのカードを突破することが叶った。
この時点で龍平のLPは3800。そして嬢のモンスター《ドラグニティナイト–アラドヴァル》と《ドラグニティ–ギザーム》の合計攻撃力は4200。そして龍平の1枚の手札も公開情報。誰がどう見ても、龍平の詰みであった。激戦の果ての結末としてはあまりに運任せ。しかし同時に、時の運すら実力に含めたくなるほどにそのデュエルが白熱していたことは誰の目にも明らかだった。
会場がどよめく。それは嬢にも、龍平にも差し伸べられた賞賛であった。
龍平にもう手はない。デッキの上に手を置くサイン、すなわちサレンダーのサインのためか、俯いてデュエルディスクにその手を伸ばす。
「…ない。」
小さな声がどよめく会場の中にポツリと響く。
嬢「…え?」
嬢のその困惑に、会場のどよめきが一気に静まりかえる。誰しも嬢の勝利を確信しているからこそ、その勝利者たる彼女の戸惑いに、不審感が染み渡る。
龍平「まだ終わってない…!!!」
そう叫んだ龍平の背後、フィールドに宝玉が突き刺さり、それが氷塊のごとく弾ける。
『グォアアアアアアアアアア!!!』
煌めく宝玉を纏った黒竜。龍平と同じく「まだ終わってない」と叫ぶように、雄々しく叫ぶ。
彼が伸ばした先はデッキではない。誰もが意識外に追いやっていた龍平の墓地で、その竜はこの瞬間をじっと待っていた。
嬢「これって…《魔晶龍ジルドラス》!?」
龍平「忘れんなよ…!
魔法罠を破壊すればコイツが出てくる!
《ジルドラス》が除外されるのは『フィールドを離れる場合』のみ!さっきのターン、こいつは《聖刻龍王ーアトゥムス》のX素材になっている!」
一瞬静まり返った会場も、その咆哮と同時に歓声を取り戻す。彼が言うように誰もがその存在を忘れていた。しかしたった1人覚えていた龍平本人が、「デュエルの終幕」を拒絶した。
《魔晶龍ジルドラス》(守)
☆6 闇・ドラゴン族/効果
2200/1200
阿原「…まじか!!」
ましろ「完全に意識外だった…!あたし達も嬢も!」
輝久「これでこのターンのキルはできない!」
嬢「…だけじゃ、ないよね!」
宝玉の龍が大地に腕をかざすと、塵となったカードが煌めく宝石を纏ってその形を取り戻してゆく。そしてそれは、ゆっくりと龍平の手に宿る。
龍平「俺は、除外状態の《竜皇神話》をフィールドに再度セット!」
嬢はあっけに取られていた。完全に意識の外側からの一手を喰らい、このターンでの決着が不可能になっていること。そして次のターンの布石を残されたこと。眼前の龍の底のなさに、畏怖が染み渡る。
嬢「…私は、《ギザーム》を守備表示に変更!」
冷静さを欠いていることは暗に理解していた。だからこそ現状を受け止め、このターンでのLPを削ることを諦め《ドラグニティーギザーム》のカードを守備表示に変更する。
嬢「バトルですっ!
《アラドヴァル》で、《魔晶龍ジルドラス》を攻撃!イグニッション・ユナイト!」
豪炎の槍が宝玉の龍を貫く。本来であれば、龍平のLPを狩っていたその1撃。躱してくれたその龍に微笑みかけて、龍平は《ジルドラス》のカードを除外する。
龍平「ありがとな…!」
嬢の頬に汗が一筋流れる。優勢なのは自分であることは理解していた。しかし、デュエルが始まる時にも見えたその感情。
嬢(やっぱりチャレンジャーは私だった…!)
「ターエンド…ですっ!」
龍平の目に光がもどる。このターンが山場であったこと、そしてそれを首の皮1枚ではあるものの潜り抜けたこと。しかし、油断はしない。その龍の瞳に映るのは『勝利』の2文字。
龍平「俺のターン、ドロー!」
TURN:6 (ドローフェイズ)
大石 龍平
LP:3800
手札:1→2
モンスター:
魔法罠:セット×1(《竜皇神話》)
フィールドゾーン:
龍剛院 嬢
LP:8000
手札:0
モンスター:《ドラグニティナイト–アラドヴァル》(攻) 《ドラグニティ–ギザーム》(守)
魔法罠:
フィールドゾーン:
龍平「俺は、墓地の《輝光龍セイファート》の効果を発動!墓地のレベル8の闇・光属性のドラゴン族モンスターを手札に加える。」
龍平は、次々と捲られるカードの内から、《限界竜シュヴァルツシルト》のカードを掴む。しかし、嬢はその瞬間を見逃さない。龍平に残された《アラドヴァル》の対処策は《竜皇神話》のみ。しかしそれは、龍平のフィールドにモンスターがいる場合にしか使えない。
彼女は振り絞って俯瞰した自分の思考を元に、そのカードの発動を宣言した。
嬢「そうはさせないよ!《アラドヴァル》の効果を…」
と叫びかけたとき、重い電子音が嬢のデュエルディスクから鳴り響く。
嬢「えっ!?」
『発動条件を満たしていません。』
その様に、龍平がゆっくりと口を開く。
龍平「…墓地にもう《ドラグニティ》はいない。さっき《アークブレイブドラゴン》の効果を無効にするために除外した《アスカロン》で最後だ。」
その瞬間、血の気がさーっと引くのを嬢は感じた。しまった。気づかなかった。嫌な方向に、全ての可能性が繋がる。
嬢(全部この時のために…!?)
思えば止められるとわかっていたにも関わらず発動した《アークブレイブドラゴン》の効果。《竜の渓谷》という手札・墓地に半永久的に《ドラグニティ》を送り続けるカードを奪ったこと。そして《アスカロン》の除外に合わせて発動した《天球の聖刻印》の効果。一手一手、それら全てが、この1ターンのモンスター効果のための布石となっていた。
嬢「除去じゃない。墓地リソースを枯らして《アラドヴァル》を攻略する 、って…!」
阿原「怪物か!?」
ツァン「盤面への理解度が半端じゃない!」
キャンデ「俺らはおろか、嬢すら把握してない所を攻めてきやがる…!」
龍平「手札に加えた《限界竜シュバルツシルト》は、相手フィールドに攻撃力2000以上のモンスターが存在するとき、特殊召喚できる。来い!」
《限界竜シュヴァルツシルト》(守)
☆8 闇・ドラゴン族/効果
2000/0
焦茶色の鱗を纏った龍がうねりながらフィールドに降り立つ。そして次に発動したそのカード。戦況が大きく傾いていた。
龍平「さらに手札から《復活の福音》を発動。墓地のレベル8のドラゴン族を特殊召喚する。来い!《竜核の呪霊者》!」
《竜核の呪霊者》(守)
☆8 闇・ドラゴン族/チューナー
2300/3000
一瞬の隙、一手の隙を突かれたその刹那、気づけばレベル8が2体揃っていた。しかし彼女は同時に思い出す。それは2ターン目のこと。
彼は《アラドヴァル》の除去を躱された時点で、レベル8が2体揃っているにも関わらず《天球の聖刻印》をリンク召喚していた。それはすなわち、あの状況で《アラドヴァル》を除去する手段がなかったことを意味している上、盤面の状況自体は大きく変化していない。
「大丈夫」と、自分に言い聞かせていた。
しかし龍は、その瞳に捉えた『勝利』を逃しはしない。
龍平「俺は、《限界竜シュヴァルツシルト》と《竜核の呪霊者》をオーバーレイ!」
2つの光は、うねるように渦へと吸い込まれていく。
何が来る。何が待ち受ける。畏れながらも、その先に胸を高鳴らせる自分がいることに、嬢はようやく気づいた。
龍平「雷鳴よ、轟け! 稲光よ、煌け! 顕現せよ!!」
その声と共に、光の渦が弾ける。眩い輝きの中から、その影を見せた巨大な竜。かつて龍平が使用した『あるカード』と対を成す存在。
龍平「エクシーズ召喚!《No.46 神影龍ドラッグルーオン》!!」
白い鱗が光を反射し、フィールド全体が金色の輝きに包まれる。
嬢が思わず「綺麗…。」と零した。
《No.46 神影龍ドラッグルーオン》(攻)
★8 光・ドラゴン族/エクシーズ/効果
3000/3000
ドラゴン族レベル8モンスター×2
(1):1ターンに1度、自分フィールドに他のモンスターが存在しない場合、
このカードのX素材を1つ取り除き、以下の効果から1つを選択して発動できる。
●手札からドラゴン族モンスター1体を特殊召喚する。
●相手フィールドのドラゴン族モンスター1体を対象として発動できる。
そのドラゴン族モンスターのコントロールを得る。
●相手ターン終了時まで、相手フィールドのドラゴン族モンスターは効果を発動できない。
龍平「俺はオーバーレイユニットを1つ取り除き、《ドラッグルーオン》の効果を発動!
相手のドラゴン族モンスター1体のコントロールを得る!」
その身体に、光の球体が宿り、大きく彷徨する。同時に《アラドヴァル》の体が粒子状になり、そのカードは瞬く間に龍平の手に加えられた。
龍平のもとに降り立ち、嬢に構える《ドラグニティナイト-アラドヴァル》。その圧倒的な存在感に、嬢は身震いするのを自分で感じた。
嬢「…フィールドが自身のみの場合に相手のドラゴン族のコントロールを奪うカード…《アラドヴァル》を奪うことが狙いだったんだね…!!でもそれじゃ…」
「LPは削りきれない。」そう言いかけたとき、はっとする。
《天球の聖刻印》の効果で特殊召喚され、手札に戻った1体のモンスター。それがまだ、龍平の手の中にある。
龍平「…気づいたか。
俺は《いたずら風のフィードラン》を通常召喚し、その効果を発動!」
ひらひらっ、と妖艶な風と共にその小さなドラゴンはフィールドに降り立つ。
《いたずら風のフィードラン》(攻)
☆3 風・ドラゴン族/効果
1700/0
小さな羽根をぱたぱたとはためかせ、風が《アラドヴァル》の体を包む。緩やかだった風はその身に宿ると立っていられないほどの烈風へと昇華する。
龍平「対象モンスターへの貫通効果を付与する。さらにこれで終わりだ…!!」
そう言って、1枚のリバースカードをフィールドに叩きつける。このデュエルの幕開けと、そして幕引きを担うたった1枚の速攻魔法。
龍平「《竜皇神話》!!」
龍平のフィールドに渡った銀翼の龍騎、その身に宿った熱がさらに熱く、強く、龍平の闘志を映し出すようんに燃え上がる。
龍平「ドラゴン族の、貫通効果をもった《ドラグニティナイト-アラドヴァル》の攻撃力を倍にする!」
《ドラグニティナイト-アラドヴァル》ATK:3600→7200
歓声が鳴り響く。雨音すら忘れさせるほどに大きな歓声。負けないように大きく「バトルだ!」と叫んだ。
龍平「《ドラグニティナイト-アラドヴァル》で、《ドラグニティ-ギザーム》に攻撃!イグニッションユナイト!!」
翼の銀色の輝きが、熱を帯びて蜃気楼のように揺らぎ始める。やがて巨大な炎雷となったその身は、いつも以上に強く激しく、フィールドを照らしつける。
瞬間、音すら置き去りにして、その巨槍は嬢のフィールドの《ギザーム》を貫いた。
《ドラグニティナイト-アラドヴァル》ATK:7200
《ドラグニティ-ギザーム》DEF:1600
龍剛院 嬢
LP:8000→2400
攻撃力7200の貫通効果。そして残されたわずかなLPの前に立ち塞がる《No.46 神影龍ドラッグルーオン》。
身を翻す白金の龍を前にした彼女の顔には、笑顔があった。
華麗なデュエルだった。全てが計算され、全てがこの場所に収束しているのではないかと思うほどに。「清々しさ」とすら言えるような、そんな感情が嬢の中でぽっと浮かびあがる。同時に満ちていく自分のデュエルへの思い。
今までの自分では決して触れることができなかったデュエルへの高揚感。初めて見て、触った、本当にドキドキするデュエル。
本気で戦えてよかった。
本気で戦ってくれて、嬉しかった。
その龍が放つ輝かしい一撃でデュエルが終わってしまう前に、今の自分の気持ちを言葉にしようと思った。でも終わってしまいそうで、一番シンプルな言葉を最後に龍平に投げかけた。
嬢「ありがとう。龍平くん。」
龍平「…ああ。
《No.46 神影龍ドラッグルーオン》の攻撃!火炎神激!!」
一閃。龍が放ったその攻撃は、淡い水銀をこぼした遠雷のように、静かに嬢のLPを貫いた。
龍剛院 嬢
LP:2400→0
ピピピピ、電子音がそのデュエルの幕引きを告げる。同時に、湧き上がる歓声。会場の全てが、勝者に、そして敗北者に、2人に賞賛を告げていた。
WINNER:大石 龍平
湧き上がる歓声の中で、静かに握り拳を突き上げる。東雲市内予選優勝の座を勝ち取った、一匹の龍。
その瞳に映るのは、まだ見ぬ相手とのデュエル。そしてその奥に静かに眠る『勝利』の2文字のみ。
続く
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イイネ | タイトル | 閲覧数 | コメ数 | 投稿日 | 操作 | |
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76 | 0話 プロローグ | 1021 | 1 | 2020-10-25 | - | |
64 | 1話 転入生 | 817 | 0 | 2020-10-25 | - | |
80 | 2話 巨竜の使い手 | 832 | 0 | 2020-10-31 | - | |
78 | 登場人物紹介 〜東雲中編〜 | 882 | 0 | 2020-11-04 | - | |
110 | 3話 黒き刺客たち | 932 | 3 | 2020-11-14 | - | |
90 | 4話 暗く冷たく | 728 | 0 | 2020-11-23 | - | |
78 | 5話 己の意思で | 715 | 0 | 2020-12-24 | - | |
85 | 6話 廃材の竜/炎の戦士たち | 731 | 0 | 2020-12-30 | - | |
65 | 7話 スタート地点 | 692 | 0 | 2021-01-15 | - | |
79 | 8話 タッグデュエル-その0- | 699 | 0 | 2021-01-21 | - | |
71 | タッグデュエル・チームデュエルについて | 633 | 0 | 2021-02-07 | - | |
74 | 9話 タッグデュエルー①ー 竜呼相打つ | 590 | 0 | 2021-02-09 | - | |
75 | 10話 タッグデュエル-②- 重撃 | 661 | 0 | 2021-02-09 | - | |
62 | 11話 託す者 | 612 | 0 | 2021-03-15 | - | |
73 | 12話 紫色の猛者 | 752 | 2 | 2021-04-10 | - | |
71 | 13話 死の領域を突破せよ! | 674 | 0 | 2021-04-13 | - | |
74 | 14話 協奏のデュエル | 664 | 0 | 2021-05-01 | - | |
89 | 15話 刹那の決闘 | 657 | 0 | 2021-05-29 | - | |
103 | 16話 リベリオス・ソウル | 654 | 0 | 2021-06-08 | - | |
77 | 17話 リトル・ファイター | 568 | 0 | 2021-07-22 | - | |
75 | 18話 強者への道、煌めいて | 526 | 0 | 2021-10-30 | - | |
75 | 19話 黒い霧 | 749 | 0 | 2022-01-02 | - | |
62 | 20話 大丈夫! | 514 | 0 | 2022-03-08 | - | |
93 | 21話 魂を繋ぐ龍 | 658 | 0 | 2022-04-03 | - | |
81 | 22話 原初の雄叫び その① | 607 | 2 | 2022-05-02 | - | |
65 | 23話 原初の雄叫び その② | 599 | 2 | 2022-05-04 | - | |
50 | 24話 焼け野原 その① | 437 | 2 | 2022-11-10 | - | |
50 | 25話 焼け野原 その② | 497 | 0 | 2022-11-11 | - | |
42 | 26話 蒼の衝突 その① | 419 | 0 | 2023-02-28 | - | |
43 | 27話 蒼の衝突 その② | 395 | 0 | 2023-03-24 | - | |
49 | 28話 憧れゆえの | 537 | 2 | 2023-04-15 | - | |
41 | 29話 黒い暴虐 | 297 | 0 | 2023-07-20 | - | |
62 | 30話 決闘の導火線 | 501 | 2 | 2023-07-30 | - | |
36 | 登場人物紹介 〜光妖中編〜 | 363 | 0 | 2023-08-03 | - | |
35 | 31話 開幕!決闘王杯! | 274 | 0 | 2023-08-12 | - | |
36 | 32話 ガムシャラ | 418 | 2 | 2023-08-25 | - | |
28 | 33話 目覚める龍血 その① | 286 | 2 | 2023-09-02 | - | |
36 | 34話 目覚める龍血 その② | 313 | 2 | 2023-09-06 | - | |
58 | 35話 雨中の戎 その① | 431 | 4 | 2023-09-19 | - | |
26 | 36話 雨中の戎 その② | 261 | 2 | 2023-09-23 | - | |
30 | 37話 チャレンジャー | 389 | 2 | 2023-09-30 | - | |
52 | 38話 心に傘を | 394 | 2 | 2023-10-07 | - | |
28 | 39話 龍の瞳に映るのは その① | 349 | 3 | 2023-10-22 | - | |
32 | 40話 龍の瞳に映るのは その② | 324 | 2 | 2023-10-26 | - | |
46 | 41話 花と薄暮 | 399 | 2 | 2023-10-30 | - | |
34 | 42話 燃ゆる轍 その① | 368 | 2 | 2023-11-07 | - | |
30 | 43話 燃ゆる轍 その② | 276 | 1 | 2023-11-09 | - | |
30 | 44話 襷 | 268 | 1 | 2023-11-14 | - | |
25 | 45話 星を賭けた戦い | 362 | 3 | 2023-11-17 | - | |
29 | 46話 可能性、繋いで その① | 317 | 2 | 2023-11-28 | - | |
37 | 47話 可能性、繋いで その② | 304 | 2 | 2023-12-07 | - | |
30 | 48話 揺れろ。魂の… | 249 | 2 | 2023-12-28 | - | |
29 | 49話 エンタメデュエル | 272 | 2 | 2024-01-07 | - | |
38 | 50話 乗り越えろ! | 316 | 3 | 2024-01-26 | - | |
61 | 51話 Show Me!! | 324 | 0 | 2024-02-01 | - | |
31 | 52話 モノクロの虹彩 | 374 | 1 | 2024-02-08 | - | |
34 | 53話 激昂 | 272 | 2 | 2024-02-22 | - | |
28 | 54話 火の暮れる場所 その① | 228 | 0 | 2024-03-02 | - | |
53 | 55話 火の暮れる場所 その② | 341 | 2 | 2024-03-07 | - | |
31 | 56話 赫灼の剣皇 | 339 | 2 | 2024-03-11 | - | |
45 | 57話 金の卵たち | 246 | 2 | 2024-03-18 | - | |
32 | 合宿参加者リスト 〜生徒編〜 | 219 | 0 | 2024-03-20 | - | |
44 | 58話 一生向き合うカード | 318 | 2 | 2024-03-24 | - | |
32 | 合宿参加者リスト〜特別講師編〜 | 271 | 0 | 2024-03-31 | - | |
40 | 59話 強くならなきゃ | 303 | 2 | 2024-04-03 | - | |
33 | 60話 竜を駆るもの | 174 | 0 | 2024-04-20 | - | |
55 | 61話 竜を狩るもの | 310 | 2 | 2024-04-22 | - | |
38 | 62話 反逆の剣 | 202 | 2 | 2024-04-26 | - | |
35 | 63話 血の鎖 | 276 | 1 | 2024-05-01 | - | |
48 | 64話 気高き瞳 | 344 | 2 | 2024-06-02 | - | |
25 | 65話 使命、確信、脈動 | 315 | 2 | 2024-06-16 | - | |
33 | 66話 夜帷 | 225 | 0 | 2024-07-14 | - | |
30 | 67話 闇に舞い降りた天才 | 259 | 2 | 2024-07-18 | - | |
28 | 68話 陽は何処で輝く | 216 | 2 | 2024-07-30 | - | |
27 | 69話 血みどろの歯車 | 263 | 2 | 2024-08-16 | - | |
25 | 70話 災禍 その① | 220 | 2 | 2024-08-28 | - | |
29 | 71話 災禍 その② | 229 | 2 | 2024-09-01 | - | |
24 | 72話 親と子 | 153 | 2 | 2024-09-09 | - | |
27 | 73話 血断の刃 | 149 | 2 | 2024-10-10 | - | |
30 | 74話 血威の弾丸 | 184 | 2 | 2024-10-17 | - | |
24 | 75話 炉心 | 125 | 0 | 2024-11-01 | - | |
23 | 76話 ひとりじゃない | 141 | 2 | 2024-11-03 | - | |
22 | 77話 春風が運ぶもの | 131 | 2 | 2024-11-06 | - | |
14 | 78話 天道虫 その① | 110 | 2 | 2024-11-19 | - | |
7 | 79話 天道虫 その② | 53 | 0 | 2024-11-21 | - |
更新情報 - NEW -
- 2024/11/23 新商品 TERMINAL WORLD 2 カードリスト追加。
- 11/24 13:09 評価 5点 《久遠の魔術師ミラ》「単体での力のパワーがない《未熟な密偵》感…
- 11/24 13:00 評価 8点 《惑星探査車》「《テラ・フォーミング》をモチーフしたモンスター…
- 11/24 12:44 掲示板 オリカコンテスト投票所
- 11/24 12:20 評価 2点 《ドリアード》「イラスト以外にあまり特徴がないバニラの魔法使い…
- 11/24 12:07 評価 3点 《アクア・マドール》「レベルが違うものの水・魔法使い族のバニラ…
- 11/24 12:02 評価 5点 《ジェムナイト・ジルコニア》「《岩石族》を素材に要求する《ジェ…
- 11/24 12:00 評価 2点 《女剣士カナン》「高価かつ女性イラストが描かれたカード。 こう…
- 11/24 11:53 評価 6点 《終焉のカウントダウン》「残存効果という止めづらい効果で特殊勝…
- 11/24 11:42 評価 9点 《ジェムナイトマスター・ダイヤ》「テーマのモンスター*3で出せる…
- 11/24 11:38 評価 6点 《混沌帝龍 -終焉の使者-》「全ハンデスが可能なカード。 似た…
- 11/24 11:18 評価 9点 《ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ》「《ジェムナイトマ…
- 11/24 10:46 掲示板 オリカコンテスト投票所
- 11/24 09:38 評価 2点 《ドングリス》「検索してはいけない言葉では無くドングリ+リスの…
- 11/24 08:28 評価 7点 《未来への思い》「《星に願いを》との併用前提。一匹高レベルを入…
- 11/24 08:05 評価 7点 《星に願いを》「このカード、どうも《未来への思い》との併用を狙…
- 11/24 07:53 SS 第26話:無謀で楽観的な思考
- 11/24 07:27 評価 5点 《星に願いを》「ゼアル時代にわんさか出てきたレベル変動魔法の中…
- 11/24 07:13 評価 10点 《CNo.62 超銀河眼の光子龍皇》「最高のフィニッシャーカー…
- 11/24 06:37 デッキ 裂け目の上でソリティアする里ヴァルモニカ
- 11/24 03:22 評価 2点 《燃えさかる大地》「可愛い効果しやがって...(バーン)やっちゃ…
Amazonのアソシエイトとして、管理人は適格販売により収入を得ています。
自分の周りの人たちが、使命や目指すべきものを明確にしデュエルをしていく中、自分がデュエルをしている理由を見つけられず苦悩していた遊大。律歌に支えられ、遊大のデュエル、楽しいことで勝つデュエルを彼女に泣きながら打ち明ける。純粋すぎる楽しむという理由が、周りの輝くデュエリスト達の影響で見えなくなってしまっていたんですねぇ。律歌の言うように、本人はその自覚がないと思いますが、決勝を行っている二人も紛れもなく彼の明るさ、彼が輝いたことで、大きな輝きを持ち始めたんですから。
そんな決勝戦。重力崩壊という劣勢時に打たれようものならほぼ詰みの罠カードを喰らった龍平ですが、フィールド魔法を奪い、次のターンへの布石へとつなげる。《土地ころがし》とは何とも面白いカードを…いつぞやの《無千ジャミング》もそうでしたが、こういった珍しいカードをデッキと組み合わせるのが龍平はとてもうまくプレイングの高さが伺えますね。
セットカードと共に妨害を超えるべく迎え撃ちますが、無慈悲なる引き込み羽箒により、奮戦空しく敗北かと思えた矢先のジルドラス!龍平以外の誰もが諦めても、彼自身は諦めない。次の自分ターンまでライフを繋ぎとめ、手札、フィールド、墓地、除外それらの全てを網羅しデュエルそのものを掌握する。そんな彼の戦略を前に、アラドヴァルの妨害墓地コストが枯渇してしまう。狙われていたコストの枯渇という龍平のデュエルへの把握能力がすごいですね…(感嘆。
結果として優勝は龍平が掴み取りましたが、嬢の秘められた力は確かな物でしたね。遊大も改めてデュエルの目的を思い出せたことですし、今後はみんながより高め合っての新たな強敵達とのデュエルが繰り広げられそうですね! (2023-10-29 21:25)
ついに決闘王杯市予選が龍平の優勝という形で決着しました。「うまいデュエル」をする人として描きたくて、それを汲み取っていただけているようですごく嬉しいです…!書いてよかった!それに前の《無線ジャミング》も覚えていただけてるとは!ノーレア系のカードって、使いこなせれば玄人感が出るのでこういうデュエルでは意外と映えるのかもしれないですね。
遊大のことも思ってもらってるようでよかったです!未熟だった彼と、先輩として彼を支える律歌の姿。この2人の関係性もじわじわ描いてきたいですね。律歌の心の内は!そして遊大の再起は!何より県以降の決闘王杯の行方は!書ける部分はたくさんあるので、これからも乞うご期待です!
読んでいただけてるのはほんとにモチベーションにつながります!いつもありがとうございます! (2023-10-30 03:32)