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HOME > 遊戯王SS一覧 > 34話 目覚める龍血 その②

34話 目覚める龍血 その② 作:コングの施し

全国決闘王杯・市内予選2回戦。遊大たちと同じ東雲中・決闘部一年『龍剛院 嬢』。彼女の対戦相手は、昨年ベスト4で市内予選を通過している《無限起動》デッキの使い手、3年の『機野大矢』だった。後攻1ターン目の猛攻によりモンスターは全滅。そして彼女が駆る《ドラグニティ》デッキでは突破が困難な《無限起動要塞メガトンゲイル》のリンク召喚により彼女は追い込まれる。
しかしそんな猛攻を耐え抜き彼女は『良かった。このターン生き延びれて…』と言葉を漏らした。




嬢「私のターン…!」


少女の中で感情が入り乱れる。自分の中の『当たり前』。本気を出さないというその当たり前を皆に知られたくない、そして、それに相反して本気で戦いたいと思ってしまっている自分に戦慄した。本気で戦えば自分の家族を危険に晒すかもしれない。身を亡ぼすかもしれない。本気を隠していたことに後ろ指を指されるかもしれない。でも、本気で戦っている皆がまぶしくて、自分もそんな彼らと戦ってイチバンを取ってみたい。本気で戦いたいという熱望する自分、それを恐怖する自分が、ぐちゃぐちゃに混ざり合うのを感じていた。

しかし、その場に誰も自分を注視するものはいない。目を瞑り、「本気で戦って、頂点に行きたい」という自分に嘘をつかないように、そしてそんな自分の許しを請うように、ゆっくりと、デッキトップのカードへと手をかけた。

嬢「ドロー…!」

TURN:3
龍剛院 嬢 (ターンプレイヤー)
LP:2200
手札:2→3
モンスター:
魔法・罠:
フィールドゾーン:

機野大矢
LP:8000
手札:1
モンスター:《無限起動要塞メガトンゲイル》(攻) 《無限起動アースシェイカー》(攻) 《無限起動リヴァーストーム》(攻)
魔法・罠:
フィールドゾーン:

嬢は静かに口を開く。小さく「ごめんなさい」と、ささやいた。

機野の身体に恐怖が走る。その小さなささやきと同時に、おどろおどろしいほどの殺気が彼女を包み込むのを感じた。血に塗られた凶器のような、冷徹に獲物を狙う狩人のような、目の前に立つ少女が得体のしれない怪物にすら思えた。

機野「これが…1年!?」

嬢「私は手札から魔法カード《ドラグニティ・グロー》を発動しますっ!」

フィールドを旋風が包み込む。風は緋色の炎を纏い、その中にうっすらと龍の影が映りこむ。

嬢「デッキから《ドラグニティアームズ–レヴァテイン》を手札に加えて、通常召喚ですっ!《ドラグニティ–セナート》!」

《ドラグニティ–セナート》
☆4 風・鳥獣族/効果
1800/600

嬢の背後より微風が流れる。緩やかに羽をはためかせるその鳥獣は、フィールドに降り立つとその錫杖を天高く掲げた。

機野「これは…、新しいドラグニティが装備されてるのか!?」

呼応するように天が唸る。上空より、藍色の剣が地面へと突き刺さり、それを勢いよく引き抜いた。

嬢「セナートの効果!手札の《ドラグニティアームズ–レヴァテイン》を墓地に送り、デッキから《ドラグニティ-クーゼ》を装備しますっ!」

機野「だが、モンスターを装備カードとして利用したところで、オレ様のモンスターたちを倒せるわけじゃない!」

セナートの手元の剣が鼓動を始める。波打つそれは不気味なほどにフィールドに響き渡る。

嬢「私が装備カードを使うのは、武器としてドラゴンたちを利用するためじゃありません…!」

機野はそのセリフに、1ターン目での展開を思い出していた。


『私は《ドラグニティ–ドゥクス》に装備された《ドラグニティ–ファランクス》の効果を発動ですっ!現れて!チューナーモンスター、《ドラグニティ–ファランクス》!」


機野はハッとする。慌てて嬢の魔法罠ゾーンを確認するが、先刻装備されたはずの《ドラグニティ-クーゼ》のカードはそこにはなかった。さらに視線をモンスターゾーンに移すが、そこにもカードは見当たらない。

機野「何!?一体装備カードはどこへ…!!」

困惑を隠せない機野の姿を、翡翠色の閃光が照らす。すでに錫杖を携えた鳥獣と、藍色の剣の龍は墓地へと送られ、新たな姿に昇華せんとしていた。

嬢「龍と共に、《ドラグニティ》のみんなが、力を合わせて戦うためですっ!!
装備状態の《ドラグニティ-クーゼ》を特殊召喚!行くよ!みんな!!
レベル4のセナートに、チューナーモンスターのクーゼをレベル4扱いでチューニング!」

《ドラグニティ-クーゼ》
☆2(4) 風・ドラゴン族/チューナー/効果
1000/200

生み出された4重の光輪を、呼応して鳥獣が生み出した4つの星が駆け抜ける。降り注ぐ光を突き破るようにして、その竜騎士は姿を現す。

嬢「天蓋貫く修羅の星!幾万もの仲間の力携え、烈風を巻き起こせ!
シンクロ召喚!《ドラグニティナイト–バルーチャ》!」

浅緑色の鱗の龍に、白銀の翼を携える鳥獣の騎士が跨る。竜巻を起こしながらその竜騎士は姿を現した。

《ドラグニティナイト–バルーチャ》(攻)
☆8 風・ドラゴン族/シンクロ/効果
2000/1200

嬢「《ドラグニティナイト–バルーチャ》のシンクロ召喚成功時、効果発動ですっ!墓地に存在する3枚の仲間の力を、装備カードとして自身に装備しますっ!さらに、攻撃力をその数×300ポイント、アップです!」

巻き起こった風の中で、3枚のカードが吹かれている。《ドラグニティ-ファランクス》、《ドラグニティ-クーゼ》、《ドラグニティアームズ–レヴァテイン》。光り輝いたそのカードたちは三本の槍へと姿を変え、フィールドに突き刺さった。

《ドラグニティナイト–バルーチャ》
(2000→)2900/1200

機野はその竜騎士を睨みつける。しかしその口角はじんわりと上がり始めていた。

自分のフィールドに存在する《無限起動要塞メガトンゲイル》、Xモンスター以外のモンスター効果を受けず、戦闘でも破壊できないそのモンスターを突破される気配がなかった。

嬢の手札は1枚。シンクロ召喚したそのモンスターさえも、ただのこけおどしのようにすら思えていた。

機野「ふ、ふはッ!やっぱりだ!いくら装備カードを装備したところで、オレ様のメガトンゲイルは…!」

叫びかけた機野の声を嬢が一蹴する。

嬢「私の展開は、まだ終わっていません!ファランクス、クーゼ!もう一回力を貸して!!」

地面に突き立てられた槍、そのうちの2本が鼓動を始める。瞬く間にそれらは竜へと姿を変えた。

《ドラグニティ-ファランクス》
☆2 風・ドラゴン族/チューナー/効果
800/1000

《ドラグニティ-クーゼ》
☆2(4) 風・ドラゴン族/チューナー/効果
1000/200

嬢「さらに私は、墓地の《ドラグニティ・グロー》を除外して、その効果を発動ですっ!バルーチャに装備されている《ドラグニティアームズ–レヴァテイン》を特殊召喚です!」

一本残った巨大な槍。緋色に輝くそれは巻き起こる風の中で回転を始める。槍として折りたたまれた翼、鱗、牙が顕になり、ついに龍の姿となってフィールドに降り立った。

《ドラグニティアームズ–レヴァテイン》
☆8 風・ドラゴン族/効果
2600/1200

シンクロ召喚された《ドラグニティナイト–バルーチャ》を中心に3体の龍が呼び出される。

フィールドに目を向ける機野はあることに気づき、血の気が引くのを感じた。

機野「レベル8とレベル2が2体ずつ…!!」

その言葉に嬢の口角が上がっていることに、機野は気がついた。じんわりとしたニヤケ面ではなく、まるで旅をする仲間たちと一緒に戦っているような、邪気を孕んでいない、忌憚の無い笑顔。

嬢「みんな…!私、一緒に戦えて嬉しい!」

嬢は笑顔のまま、呼び出したモンスターに呼びかける。龍たちも呼応して嬢へに視線を向けた。

嬢「よかった。…本気で戦えて!」

機野には異質に映った。モンスターと共に戦うことを楽しむ1人の少女。何もおかしくはない光景のはずなのに、自分のモンスターは突破されないはずなのに、その少女のうちに秘められた狂気のようなものを、そのデュエリストとしての本能がキャッチしてしまった。

嬢「最後の仕上げ、行こう!みんな!」

紅い翼の竜から8つの星が放たれ、同調する2つの星がそれを囲み、黄金に輝く。

さらに、それに呼応するようにレベル8のシンクロモンスター《ドラグニティナイト–バルーチャ》から生み出された8つの星が、2つの光輪の内を駆け抜け、閃光は銀色に輝いた。

嬢「レベル8《ドラグニティアームズ–レヴァテイン》に、レベル2のチューナーモンスター《ドラグニティ–クーゼ》を!!
さらに、レベル8シンクロモンスター《ドラグニティナイト–バルーチャ》に、レベル2チューナー《ドラグニティ–ファランクス》をチューニング!!みんな、力を貸して!!!」

金色と銀色の閃光が、それぞれ嬢の背後に降り注ぐ。同時に凄まじい旋風が巻き起こり、機野は大きく後へと吹き飛ばされた。

機野「なんだ…!この風っ!」

嬢「仲間の意思乗せるはその銀翼!力寄せるのはその神槍!黄昏に輝ける2対の竜騎士よ、今こそ共に!!
ダブルシンクロ!!!《ドラグニティナイト-アスカロン》!!《ドラグニティナイト-アラドヴァル》!!」

《ドラグニティナイト-アスカロン》(攻)
☆10 風・ドラゴン族/シンクロ/効果
3300/3200

《ドラグニティナイト-アラドヴァル》(攻)
☆10 風・ドラゴン族/シンクロ/効果
3300/3200

巻き起こった風の内より、2つの咆哮がフィールドを揺らす。金色の鱗に身を包み、黄昏色の輝きを放つ《ドラグニティナイト-アスカロン》。続いて銀翼をはためかせ、うねるようにフィールドに降り立つは《ドラグニティナイト-アラドヴァル》。

メガトンゲイルにも匹敵するであろう2対の龍騎士が、彼女の左右に構える。阿吽の像とも例えられるであろうそれを見て、彼女の顔にも笑顔が灯っていた。

機野「たった1ターンでレベル10シンクロを2体…!!
だが、そいつらはたかが攻撃力3300のSモンスター!メガトンゲイル!!進撃せよ!!」

機野は2体の殺気にたじろぎながらも、メガトンゲイルへと指令を与える。
ゴウンゴウンと鈍い機械音を立てて、嬢のほうへと進撃する。

機野「メガトンゲイルはモンスター効果も受け付けない!!戦闘でも破壊されない!!いくらモンスターを展開したところで…」

そこまで言葉を吐き散らしたとき、激しい衝突音がそれをとがめた。金属がなにかと衝突したような、分厚い鋼がきしむようなその音。同時にメガトンゲイルの進撃がぎこちなく、遅くなっていることに気づいた。

機野「…な!?」

その巨神を前に、嬢は恐れをなしていない。確かに、その手には《ブレイクスルー・スキル》のカードが握られていた。

嬢「そのモンスターの対処はもう済んでいますっ!
《ブレイクスルー・スキル》には、自分のターン中に墓地から除外することで、相手モンスターの効果を無効にする効果がありますっ!」

機野「こ、これは前のターンの…!」

嬢「《無限起動要塞メガトンゲイル》の耐性は、Xモンスター以外のモンスターからに限定されてますっ!このカード1枚で、メガトンゲイルは機能停止するはずですっ!」

黒い巨躯は鈍い機械音を止め、ぴったりと動きを静止してしまった。そしてその奥に金銀の翼をはためかせる2対の龍騎が姿を覗かせた。

嬢「これで、モンスター効果に対する耐性は無効!
行くよ!アスカロン!!
墓地に存在する3体の《ドラグニティ》モンスターを除外し、機野さんの3体の無限起動モンスターを除外します!!カラミティ・ランス!!」


金色の光に照らされ、烈風がフィールドを包み込む。嬢のデュエルディスクから《ドラグニティ–ドゥクス》《ドラグニティ–セナート》《ドラグニティ–ファランクス》の3枚のカードが巻き上げられ、アスカロンの龍騎の手へと集約する。それは3本の光り輝く槍となり、連ねる3体の《無限起動》モンスターを貫いた。

機野のフィールドから瞬く間にカードが消える。切り札だったはずのメガトンゲイルも、取り巻くXモンスターたちも倒されてしまった機野は眉を顰める。襲いくる2対の龍騎を前に構えた。

嬢「バトルですっ!!
《ドラグニティナイト-アスカロン》で、ダイレクトアタック!グリッター・ヴォイド!!」

アスカロンの全身が黄昏色に染まる。凄まじい熱を帯びたそれは、両翼で巻き起こされた風と一つになり、全身が雷に包まれた槍となった。龍を模した雷槍。流星の如く放たれた一撃が、機野のLPを貫く。

嬢「続いて《ドラグニティナイト-アラドヴァル》の攻撃ですっ!!イグニッション・ユナイト!!」

翼の銀色の輝きが、熱を帯びて蜃気楼のように揺らぎ始める。龍に跨る鳥獣の騎士が天へと飛び上がると、銀翼の龍も身をひるがえし、大きく旋回を始める。やがて炎を纏ったその巨体はフィールドを照らす炎槍となり、騎士の手によって放たれた。

機野「うぁあああああああああああぁああッ!!!
LP:8000→4700→1400

2回に及ぶ攻撃力3300の猛攻をその身に受けた機野は、眉を顰めて膝をつく。無名の1年生のデュエルに、自分の磨き上げた3年間がたった1ターンでほぼ壊滅レベルまで追い込まれている事実。否応なく込み上げる屈辱。

機野「くそっ!オレ様がこんなところでッ!」

嬢はメイン2に入り、カードを勢いよくセットする。

嬢「本気ですっ!私も!カードを1枚伏せて、ターンエンドですっ!」

機野は地についた膝をなんとか立ち上げる。3年間戦ってきたからまだ戦える。眼前の少女に恐れがないわけではない。それは自覚していたが、彼の中にあったそんな矜持が、まだ戦える、恐れる前に目の前の敵を倒せと叫んでいた。

機野「こんなところで、負けるわけには行かんのだッ!!
オレ様のターン、ドローッ!」

TURN:4

機野大矢 (ターンプレイヤー)
LP:1400
手札:1→2
モンスター:
魔法・罠:
フィールドゾーン:

龍剛院 嬢
LP:2200
手札:0
モンスター:《ドラグニティナイト-アスカロン》(攻) 《ドラグニティナイト-アラドヴァル》(攻)
魔法・罠:セット
フィールドゾーン:

渾身の力を込めて引き抜いたカード、そこにあったのは《リミッター解除》の文字。そして残された手札は初動となりえる《無限起動ハーヴェスター》。

《リミッター解除》(手札)
このカード発動時に、自分フィールド上に表側表示で存在する全ての機械族モンスターの攻撃力を倍にする。この効果を受けたモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。

《無限起動ハーヴェスター》(手札)
☆2 地・機械族/効果
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「無限起動ハーヴェスター」以外の「無限起動」モンスター1体を手札に加える。
(2):このカード以外の自分フィールドの機械族モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターとこのカードは、ターン終了時までその2体の元々のレベルを合計したレベルになる。
0/2100

機野は、相手が得体の知れない怪物に見えると同時に、そのドローで自分が英雄になれるという確信を手にした。

機野「オレ様は通常召喚ッ!《無限起動ハーヴェスター》!その効果でデッキから《無限起動》モンスターを…!」

そこまで言いかけた瞬間、天より炎を纏った槍がハーヴェスターのカードを貫いたことに気づいた。ゾワっと寒気が走る。

嬢「《ドラグニティナイト-アラドヴァル》の効果ですっ!ハーヴェスターの効果は使わせません!!墓地から《ドラグニティ–クーゼ》を除外し、モンスター効果を無効にして、除外します!!ブレイジング・バニッシュ!」

ソリッドヴィジョンによって映し出された《無限起動ハーヴェスター》のカードが炎に焼かれ、ボロボロと崩れ去る。機野も同じように崩れるかと思われた刹那、墓地の1枚のカードが彼に希望を見せる。諦めない。3年間の矜持を残すために。

機野「オレ様はさっきのターンに《機械複製術》で特殊召喚した、《無限起動トレンチャー》の効果を、墓地から発動ッ!自分の墓地に存在するレベル5以下の《無限起動》を特殊召喚する!再起動しろ!《無限起動キャンサークレーン》!!」

大地を刃が轟音と共に引き裂く。長いショベルアームを持ったその重機は、再びフィールドに出現した。

《無限起動キャンサークレーン》
☆5 地・機械族/効果
2100/500

嬢「まだ動く…。ってことは、まだやるんですね。望むところですっ…!」

機野「キャンサークレーンの効果!!墓地から《無限起動ロックアンカー》を除外し、2枚目の《超接地展開》を手札に加え、これを発動!!」

機野の目に映る彼女は、怪物だった。1年で自分をここまで追い込んだデュエリスト。しかし、まだそこには『自分がチャレンジャー』であるという思考は無く、あくまで『摘める芽を今のうちに摘む』という思考しかなかった。

機野「キャンサークレーンをリンクマーカーにセット!
リンク召喚!!リンク1!《無限起動ゴライアス》!」

長手のショベルを持つ重機は青い装甲の機兵の召喚の糧となった。ズドン、という衝撃と共に、そのモンスターが姿を現す。

《無限起動ゴライアス》
L1 地・機械族/リンク/効果
1000/↘︎

機野「ハァ、ハァ…。オレ様はまだ諦めない!墓地の《無限起動リヴァーストーム》の効果を発動!!ゴライアスをリリースして、墓地から特殊召喚!!」

青い装甲の重機は瞬く間に割れた大地へと引き摺り込まれた。ぐるぐると回るキャタピラによって飲み込まれ、赤い装甲を輝かせ、水を振り撒く重機が再び起動する。

《無限起動リヴァーストーム》(守)
☆5 地・機械族/エクシーズ/効果
2500/500 ORU×0

機野「ま、まだまだ、まだ終わらない!《超接地展開》の効果!!オレ様のフィールドの《無限起動》Xモンスターをランクアップさせ、2つランクの高い機械族エクシーズモンスターにエクシーズチェンジするっ!」

ソリッドヴィジョンによって映し出された《超接地展開》のカードが煌々と輝く。リヴァーストームは橙色の輝きを放ちながら弧を描き、ぐるぐると回りながら光の渦へと飲み込まれていく。

嬢「これは…!さっきのターンはできなかったエクシーズチェンジ!」

機野「そうだッ!そしてオレ様はこのカードで決めるッ!
大地を砕く鋼鉄の巨腕!歯向かう全てを抉りとれ!エクシーズチェンジ!
ランク7!《無限起動コロッサルマウンテン》!」

地面が弾け、鈍い機械音がフィールドに鳴り響く。土煙の中から巨大なシャベルが振り下ろされた。

《無限起動コロッサルマウンテン》(攻)
☆7 地・機械族/エクシーズ/効果
2100/3100 ORU×1

機野は呼び出したコロッサルマウンテンを背に、得意げに腕を大きく広げた。

機野「ハァ、ハァ、見たかオレ様のエクシーズチェンジ!さらに効果発動!ORUを一つ取り除き、攻撃力を1000ポイントアップ!!」

《無限起動コロッサルマウンテン》
2100→3100/3100

橙色の光弾がその操縦席のもとに吸い込まれる。みるみる攻撃力を上げたその巨体は、アラドヴァルの方へと突っ込んできた。

機野「バトルだァ!《無限起動コロッサルマウンテン》で、《ドラグニティナイト-アラドヴァル》に攻撃ィ!グラン・土・レイク!!!」

重機は真っ直ぐに進撃してくる。嬢はゆっくりと息を吐き、高鳴る鼓動を落ち着かせた。ずっと胸の中で鳴り止まない、身体中を駆け巡る龍の血。
本気で戦うデュエルはここまでドキドキして、楽しくて、自分を充してくれるものなんだと。


そして同時に確信があった。鳴り止まぬ興奮の奥にある、確かに鍛え抜かれた龍の血。それが教えた一つの確信。


機野がカードをドローした時に立てた予測。そしてハーヴェスターを止められてもなお展開を通し続けた、それによって生まれた確信。



だからこそわかっていた。このデュエルで自分がすべきことは。



機野「覚悟しろォ!ダメージステップ!!」



勝つために、『そのカード』を、ピンポイントに、確実に。



機野「速攻魔法!!!《リミッター解除》だァーーー!!!」




貫く。




「カウンタートラップ!!《ドラグニティ・ヴォイド》!!」


宣言と同時に、慈悲なき炎の槍が放たれる。それは瞬く間に《リミッター解除》と《無限起動コロッサルマウンテン》に風穴を開けた。
あまりに突然の出来事に、呆気に取られた機野は何が起こった理解していなかった。

嬢「カウンター罠《ドラグニティ・ヴォイド》は、私のフィールドに《ドラグニティ》Sモンスターがいる時、魔法罠の発動を無効にして除外し、さらにレベル10の《ドラグニティ》モンスターの攻撃力を除外されているカード×100ポイントアップさせますっ!」

機野はその言葉に、ゆっくりとデュエルディスクを確認する。
攻撃宣言中の《無限起動コロッサルマウンテン》と攻撃対象の《ドラグニティナイト-アラドヴァル》。そして除外されているカード。

機野「15枚…!」

《無限起動コロッサルマウンテン》ATK:3100

《ドラグニティナイト-アラドヴァル》ATK:3300→4800

炎を巻き上げ、風穴を開けながらもコロッサルマウンテンは突っ込んでいく。アラドヴァルの無慈悲な炎の槍が、追い打ちをかけるように次々と重機の機体に叩き込まれていく。降り注く幾千もの槍、ついにコロッサルマウンテン消し炭にしたそれは、残り1400の機野のLPを容赦なく貫いた。

機野大矢 LP:1400→0

WINNER:龍剛院嬢

嬢「…楽しいデュエルでした!ありがとうございました!」

機野はがっくりと膝をつく。市内ベスト4で昨年抜けた自分の戦術が、初めから看破されていた。絶対突破不可能と思われた盤面を乗り越え、回したターンでも確実に自分を倒し切るその一年生のデュエルに、心底震え上がった。

その畏怖は間違いではない。全国決闘王杯・市内予選2回戦にして早くも、市内トップのものに並ぶ者が、ここに現れた。
『本気』の戦いを知った《ドラグニティ》デッキの使い手、決闘者『龍剛院 嬢』に眠っていた龍の血が目覚めた瞬間であった。

続く
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ランペル
本気を出したことがなかった彼女の魅せた本気のデュエル。その実力はベスト4にも選ばれた機野を凌駕しましたねぇ。墓地からの罠に加えて、カウンター罠によるまさしくカウンターが決まっての見事な勝利。
3年で元ベスト4な自分を、1年が楽しく勝利を手にした…。機野視点、デュエル中の気迫もさることながら嬢の見せた本気は確かに恐ろしいものだったでしょうね。
己の意思で押さえつけられていた本気のデュエルを実現した嬢。今後の彼女のデュエルがどうなっていくのかも気になって来るところです! (2023-09-10 02:54)
コングの施し
ランペルさん閲覧&コメントありがとうございます!
嬢はドラグニティの使い手ということでタッグフォースシリーズのゲーム通りキャラパワーはかなり高めに設定したかったんですよね。本気のデュエルを解禁したことでこれから遊大たちにどんな影響を及ぼすのか、待ち受ける強敵たちとどっちが強いのか…。
ゆったり更新していくので次回もお楽しみに! (2023-09-10 19:37)

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27 73話 血断の刃 149 2 2024-10-10 -
30 74話 血威の弾丸 184 2 2024-10-17 -
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14 78話 天道虫 その① 110 2 2024-11-19 -
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