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HOME > 遊戯王SS一覧 > 76話 ひとりじゃない

76話 ひとりじゃない 作:コングの施し




ーTURN2(メインフェイズ1)ー

龍剛院 栄咲(ターンプレイヤー)
LP   :8000
手札   :2
モンスター:《ヴァレルエンド・ドラゴン》・《ブースター・ドラゴン》
魔法罠  :
フィールド:《リボルブート・セクター》

龍剛院 嬢  
LP   :8000
手札   :3
モンスター:《破壊剣士の守護絆竜》・《焔聖騎士−ローラン》・《妖醒龍ラルバウール》・《魔晶龍ジルドラス》
魔法罠  :《星遺物の守護竜》
フィールド:



嬢「これが……《ヴァレルエンド》……!!」

ほっそりと二人を照らしていた三日月は、その巨体によって隠された。夜は終わらない。ここにいるものが1人になるまで。対外的繋がりを拒んだ果ての閉ざされた未来。それを葬るために生み出され、その矛盾の中心で叫ぶ一匹の龍は、彼女の翼を撃ち抜かんと牙を向ける。

栄咲「手札の《アウトバースト・ドラゴン》の効果を発動。
手札からこのカードを特殊召喚し、自身以外の自分フィールドのモンスターを全て破壊する。」

嬢「_______!?」

栄咲の手札より現れる鋼鉄の竜の姿。それは火花を撒き散らし、栄咲のフィールドを火の海に変えていく。呼び出したリンク5のモンスターをもろともしないその行動に、嬢は呆気に取られた。

栄咲「くく………ははは。」

その笑みと同時に巻き起こる炎の嵐。それは《ブースター・ドラゴン》を巻き込んで拡大していく。その中心で佇む《ヴァレルエンド・ドラゴン》の姿。湧き上がる炎に翳り浅緑の瞳だけが淡く輝いていた。


《アウトバースト・ドラゴン》(攻)
☆8 闇属性・ドラゴン族/効果
ATK:2100/DEF:2800

《ヴァレット・リチャージャー》(攻)
☆4 闇属性・ドラゴン族/効果
ATK:300(0)/DEF:2400(2100)


吹き荒れる赤い嵐が止んだ。そこにいたドラゴンたちの姿に、嬢の顔色が青ざめる。想像がついていなかったといえば、それは嘘になる。しかし……

嬢「なんで……破壊するんじゃ_______

効果破壊への耐性と破壊時の効果を噛み合わせることで、フィールドへの被害を最小限に抑えながら、モンスターの頭数を増やす。その行為にメリットがあれば即切り捨てる。それが、目の前にいるこの男なのだ。

栄咲「《ヴァレルエンド》は戦闘・効果では破壊されず、モンスター効果の対象にならない。さらに《ブースター》の破壊時の効果を使わせてもらった。」

嬢(自身のモンスター全部を巻き込む破壊効果を躊躇なく使えるのは、このため……!!
じゃあ《ヴァレルエンド》を突破するには……!!)

栄咲「耐性を見せたところで………さあ《ヴァレルエンド》、《破壊剣士の守護絆竜》を撃ち抜け。
モンスター1体を対象としてその効果を無効にし、墓地から《ヴァレット》モンスター1体を特殊召喚する。
______アンチエネミー・エクスキューション。」

その声と同時に、栄咲の背後に聳える3つ首の巨竜の顎門に光が収束していく。放たれた幾百もの弾の雨は《破壊剣士の守護絆竜》へと降り注ぎ、着弾した一発一発の弾丸は、身を引きちぎらんとする《ヴァレット・トレーサー》の姿を模り命を吹き込んだ。


《ヴァレット・トレーサー》(攻)
☆4 闇属性・ドラゴン族/チューナー/効果
ATK:1900(1600)/DEF:1300(1000)


嬢(突破、どころじゃない……!!
いや、それに今の効果、優先権がこちらに渡らなかった………チェーンができないんだ!!)

かつて存在したとされる《ヴァレット》《ヴァレル》の使い手であるデュエリスト。その男ですら使用の形跡が不明であり、存在自体が霧の中であった《ヴァレルエンド・ドラゴン》。その効果は放たれた弾丸を避けることができないのと同じように、チェーンができない。必殺の効果が、必ず命中するという最強格のリンクモンスターである。そしてその力は、牙は、爪は、咆哮は、バトルフェイズにこそその力を示す。

栄咲「バトルだ。
《魔晶龍ジルドラス》、《焔聖騎士−ローラン》、そして《破壊剣士の守護絆竜》の3体を、灰すら残すさずに撃ち貫け。
_____天泣のヴァレルストリーム………!!」

嬢「______え

そんな嬢を置いて、3つの首から放たれた弾丸は、嬢と仲間たちのモンスターを瞬く間もなく貫いた。あまりに一瞬の出来ごとに、驚愕の隙すら与えない。炎を携えた剣士の刃も、魔晶を纏いし竜の牙も、守護と絆を謳う伴竜の羽根の1枚すら、フィールドには残らない。吹き荒れる炎の嵐と削れゆくLPだけが、倒れかける彼女を見つめている。


(ATK:3500)《ヴァレルエンド・ドラゴン》
(ATK: 400)《破壊剣士の守護絆竜》

(LP :4900)龍剛院 嬢


嬢「はぁ……はぁ……けほっ!!…みんな………!!」

攻撃力3500の3回攻撃。まともに攻撃を喰らえばゲームは終わっていた。そして本能で発動しなかった《破壊剣士の揺籃》の墓地効果。仮に発動すれば《破壊剣士の守護絆竜》の破壊を防ぐことはできたとはいえ、まだ《ヴァレット・リチャージャー》と《ヴァレット・トレーサー》、さらに《アウトバースト・ドラゴン》の攻撃が残っている。戦闘破壊されない攻撃力400に集中砲火を喰らえば、それこそ敗着である。守りきれなかった1体のモンスターが締め付ける胸の痛みを、眼前の龍達は待ってはくれない。

栄咲「《ヴァレット・リチャージャー》の攻撃。
《ラルバウール》……そいつは厄介だからな。破壊するのは最後だ。
______撃ち抜け。」

銅色の弾丸を模る龍は、龍平が託した一匹のドラゴンを正確無比に、そして慈悲などなく超高速の突撃で貫いて見せた。そしてこの瞬間に、嬢のフィールドから全てのモンスターが消える。彼女の眼前に構えるは、まだ攻撃を残した2体のドラゴン。護れる存在がいなくなった一人の少女に、鋼鉄の竜が襲いかかる。

栄咲「《ヴァレット・トレーサー》、そして《アウトバースト》の直接攻撃。」

嬢(防ぐカードが______


(ATK:1900+2100)《ヴァレット・トレーサー》《アウトバースト・ドラゴン》

(LP : 900)龍剛院 嬢


嬢「……がぁ……っ!!……はあ……はあっ…!!」

2体の直接攻撃による計ダメージは4000。まるで悲鳴のようにツギハギのディスクは電子音を鳴らし、そのLPはついに1000を切る。あと一回でも攻撃を喰らえばその時点でゲームエンド。その状況でまだ立ち上がろうとする嬢を、栄咲の眼は逃しはしなかった。

栄咲「_____メインフェイズ2。
俺は、レベル4の《ヴァレット・リチャージャー》に、レベル4の《ヴァレット・トレーサー》をチューニング………!!!」

嬢はその言葉に、汗が噴き出る。幾度となく行われていたリンク召喚、その中で見落としてしまっていたのだ。《ヴァレット》と《ヴァレル》が司るのはリンクだけではない。かつて嬢が、《ドラグニティ》が主戦術としていたその召喚法、白い攻殻を纏った猛き竜が、嬢の前に立ちはだかる。

嬢(………まだ………くる……終わらない……いや違う、終わらせる気なんだ……!!)

栄咲「雄々しき龍よ。
その獰猛なる牙を今、銃弾に変え撃ち抜け。……シンクロ召喚!!
________レベル8《ヴァレルロード・S・ドラゴン》…!!!」


《ヴァレット・トレーサー》と《ヴァレット・リチャージャー》。2体のモンスターが霧散した光の粒は一本の道を作り、8つの星が織りなす門から、その龍は降り立った。シンクロ召喚を司る《ヴァレル》モンスター。白銀の鎧に緑色の光が流れ、リボルバーのチャンバーを模ったその胸部に、《ブースター・ドラゴン》のカードが吸い込まれていく。

栄咲「S召喚した時、墓地のドラゴン族リンクモンスター1体を装備し、そのリンクマーカーの数だけヴァレルカウンターを置く。さらにその攻撃力は、装備したリンクモンスターの元々の攻撃力の半分、アップする。」


《ヴァレルロード・S・ドラゴン》(攻)
☆8 闇属性・ドラゴン族/シンクロ/効果
ATK:3950(3000)/DEF:2500[カウンター:2]


嬢(装備したのは《ブースター・ドラゴン》……強い、強すぎるくらい……!!)

たった900のLPを引きずって、そのモンスターたちを相手取らなければならない。裏の世界を牛耳り、あらゆる犯罪組織が形を顰めるその時代に、未だ衰えることなく力を振い続ける龍血組の長。その力がここまで強大だとは。震える足は、今にも逃げ出してしまいたいと彼女に訴えかける。

栄咲「カードを1枚セットし、エンドフェイズへと移行。
このエンドフェイズ時、破壊された《シェルヴァレット》の効果を発動し、デッキから《エクスプロードヴァレット・ドラゴン》を特殊召喚する。
…………こいつが弾ければ、デュエルは終わる。お前の……未来も。」


《エクスプロードヴァレット・ドラゴン》(守)
☆7 闇属性・ドラゴン族/効果
ATK:2300(2000)/DEF:2300(2000)


ダメ押しと言わんばかりに、今にも弾け飛びそうな弾丸の竜が出現する。その一手で、この戦いの終わりが近いと理解した。勝つにしろ負けるにしろ、次のターンで決着はつく。逃げよと叫ぶ足を思い切り拳で打ちつけ、嬢はその顔を上げた。

嬢「……エンドフェイズに発動する効果なら、私だってありますっ…!!
墓地に送られた《焔聖騎士−ローラン》の効果を発動!!その効果により、デッキから炎属性・戦士族の《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》を手札に加えますっ!!」

栄咲「《ヴァレルロード・S・ドラゴン》の効果を発動。
ヴァレルカウンターを1つ取り除き、相手の魔法・罠・モンスター効果の発動を無効にする。他者の繋がりなど……撃ち貫け。」


《ヴァレルロード・S・ドラゴン》[カウンター:1]


その牙は銃弾となり、嬢の墓地に眠る《焔聖騎士−ローラン》のカードを無惨に撃ち抜いた。色褪せ、宙を舞うカードを横目に、嬢の頬を一筋の汗が垂れた。その効果が明らかになることで、より鮮明に浮かび上がる現状。眼前に構える竜たちの凶悪さに、どくどくと警鐘を鳴らす心臓を掴まれた。

嬢(……そんな効果が……!!)

嬢のLPは900。そして《シェルヴァット・ドラゴン》の効果で呼び出された《エクスプロードヴァレット・ドラゴン》がリンクモンスターの効果対象となった時、お互いに2000LPのダメージを受け、嬢は敗北する。その銃口の役割を果たす《ヴァレルエンド・ドラゴン》は戦闘・効果で破壊できず、モンスター効果の対象にならない。仮にそこに食い込ませる効果を持ったカードがあったとして、《ヴァレルロード・S・ドラゴン》が残り1つのヴァレルカウンターを取り除けば、あらゆる効果の発動が止まる。敗北を回避するための一手すら容易く摘まれてしまうこの状況、まさしく絶体絶命であった。

嬢「______行きます……私の……ターンっ!!!」



ーTURN3ー

龍剛院 嬢 (ターンプレイヤー) 
LP   :900
手札   :3→4
モンスター:
魔法罠  :《星遺物の守護竜》
フィールド:

龍剛院 栄咲
LP   :8000
手札   :0
モンスター:《ヴァレルエンド・ドラゴン》・《ヴァレルロード・S・ドラゴン》・《アウトバースト・ドラゴン》・《エクスプロードヴァレット・ドラゴン》
魔法罠  :《ブースター・ドラゴン》セット×1
フィールド:《リボルブート・セクター》



嬢は、噛み締めるようにデッキの上からカードを引き抜く。そこあった3枚では絶対に勝つことなどできなかった。しかし可能性はゼロではないと訴えるように、仲間が託したデッキは、カードは応えてくれていた。まだ、終わっていない。

嬢「お父さん………あなたの決意、受け取りました。
ここからは勝負ですよ……あなたの決意と、私の決断の勝負ですっ!!!」

栄咲「………勝負、か。」

勝負。勝利と敗北のどちらかに転ぶかわからぬが故のその言葉。その言葉が意味するのは、まだ白にも黒にもついていないこの状況。諦めないという意思は、誰よりも友に教え込まれた。逃げるという選択は、前に進む意思で断ち切って来た。そういう真っ直ぐな戦友たちを、彼女は知っている。背中を押されるように、この夜に終わりを告げる最後の1ターンが、最後の勝負が、幕を開けた。

栄咲「______いくぞ、」

その声と同時に、《ヴァレルエンド・ドラゴン》の胸元のチャンバーが重たく回転する。顎門に集まる光、そしてその胸に装填される《エクスプロードヴァレット・ドラゴン》の姿。

栄咲「《ヴァレルエンド》の効果を、《エクスプロードヴァレット》を対象として発動。
_______アンチエネミーエクスキューション……!!」

ガシャン…!!と胸元に装填された《エクスプロードヴァレット・ドラゴン》が、凄まじい熱を帯びて真っ赤に染め上がる。嬢はこの効果にチェーンすることはできない。しかしそれは《ヴァレルエンド・ドラゴン》に対する直接的なチェーンのみ。つまりこの隙を逃すことは、嬢の敗北を意味する。

栄咲「そしてチェーン②………《エクスプロードヴァレット》……!!
__________焼き焦がせ、爆ぜろ、砕け散ってしまえ!!!」

嬢「チェーン③、速攻魔法《禁じられた聖衣》を発動っ!!
《エクスプロードヴァレット》を対象とし、対象モンスターの効果での破壊をこのターンの間、無効にしますっ!!」

今にも真っ赤に弾け飛びそうなその銃弾を、淡い青のヴェールが包み込む。《エクスプロードヴァレット・ドラゴン》によるお互いへの2000LPのダメージは、リンクモンスターの効果対象となった自身の破壊という処理の後に発生する。その破壊を防げばこの効果によるダメージ、もとい敗北は回避できる。

栄作「ふ………甘い…甘すぎるぞ。
《エクスプロードヴァレット》の効果に直接チェーンして破壊を防げば、この状況を打破できるとでも?」

嬢「………!!」

………否。それは、《ヴァレルロード・S・ドラゴン》がいない場合である。今、ここは、この場所は、この戦場は、その1枚だけで切り拓けるほどの場所ではない。勝利の女神は、たった1枚のカードには微笑むことはない。

栄咲「……チェーン④、《サベージ・ドラゴン》の効果を発動。
自身のヴァレルカウンターを1つ取り除き、《禁じられた聖衣》の発動を無効にする。………ドローの運には見放されなかったようだな……だがこれで______

そう、1枚のカードには。
嬢に残されたカードは、1枚ではない。このターンの初めにデッキから引き込んだ《禁じられた聖衣》とは別に、彼女は手札の非公開情報の中に隠し持っていた。速攻魔法でありながら、あまりに汎用的に使うことが難しく、コンボあるいは《妖醒龍ラルバウール》の手札コストとして抱えていたカード。書いて字の如く嬢の命を救う+1枚のカードとして、太古のカードが叫びを上げる。

嬢「チェーン……⑤…!!
速攻魔法《非常食》を、発動中の《禁じられた聖衣》と《星遺物の守護竜》をコストとして墓地に送り、発動ですっ!!」

そこに映し出される《非常食》のカードに、栄咲は呆気に取られていた。言わずと知れたLPの回復手段であり、何よりも彼を驚愕させたのは、そのカードを前のターンにセットしなかったこと。予測できようもない状況でありながら、どんな用途を想定したのか手札に残り続けていたそのカードが今、彼女の命を繋ぎ止めるキーカードになっている。

栄咲(______《非常食》……!?
舐めた真似を……なんで手札から飛んできやがる、そんなカードが!!)

腹の奥が煮え立つのを感じる。しかしだからこそ、勝つための思考回路を頭の中に繋げる。《エクスプロードヴァレット・ドラゴン》によるダメージは2000。そして《非常食》による回復量も2000。この効果が通っても、このデュエルの勝利には直結しない。そうなれば取る行動は1つだった。栄咲は、用済みのカードをただ燃やす男ではない。利用できるものは利用する、それが今にも命の尽きるモンスターであれ、数瞬前には勝負を預けていた鍵のカードであれ。

栄咲「チェーン⑥……《ラピッド・トリガー》……!!!
フィールドの《エクスプロードヴァレット》と《アウトバースト》を破壊し、その2体を素材として、融合召喚を行う!!」

最後にオープンされたのは、前のターンに《デュアルウィール・ドラゴン》の効果によって手札に加えられた、《ラピッド・トリガー》のカード。速攻魔法かつ融合素材を破壊することで融合召喚を行うカード。赤と青の雷撃が2体のモンスターを包み、混じり合っていく。その奥から瞳を光らせるは憤怒の化身。

嬢「速攻魔法で融合……!!」

栄咲「影の世界に散らばる寂然たる二つの憤怒。……今、禍根を越え1つとなれ!!
______融合召喚、《ヴァレルロード・F・ドラゴン》……!!」


《ヴァレルロード・F・ドラゴン》(攻)
☆8 闇属性・ドラゴン族/融合/効果
ATK:3000/DEF:2500


混じり合った赤と青の雷光は、紫電へとその輝きを変化させる。空気が震えるほどに熱く、早く、そして眩く、憤怒の名を冠する龍はフィールドへと降り立った。そして処理されゆくチェーンの中に、3体の《ヴァレル》モンスターが嬢を睨みつける。


(LP :2900)龍剛院 嬢


嬢(この土壇場で融合の《ヴァレルロード》を呼ぶなんて……でも……!!)

栄咲(この状況で…奥の手の奥の手まで使わせられるとは……だが……!!)


『『底が見えてきた!!!』』


睨みを効かせる二人の中に浮かぶ1つの事実。それは親子だからなのか、裏の社会で生きてきたからなのか、はたまたデュエリストだからなのか、わからなかった。しかしお互い持てる実力の120%を発揮した果てに、1つ1つの判断が勝敗に直結する、限界のバトルのさらに向こう、その佳境へと突入していた。

嬢(お父さんの手札はゼロ……。
そして《ヴァレルエンド》も、《サベージ・ドラゴン》も、もう効果を使い切った。でもそれはこのターンの間だけ。ターンを返せば《ヴァレルエンド》の効果は復活するし、このターンで突破しようにも《フュリアス・ドラゴン》を躱さなきゃいけない。
______って、考えても答えは一個しかないか。攻略の絶対条件は、《ヴァレルエンド》の突破……!!)

栄咲(嬢の手札は残り2枚、そして内1枚は《覇王門無限》。
たとえ後1枚がスケールだったとしても、P召喚できるのはEXデッキの《ダークヴルム》のみ。となれば警戒すべきは唯一未知の《星遺物−『星杯』》の墓地効果……だがターンが回った時点で《ヴァレルエンド》が残っていれば負けることはない。
______死守するのは《ヴァレルエンド》、そのためなら《フュアリス・ドラゴン》は……!!)

お互いに衝突する思考。その中心に佇んでいるのは、最強のリンクモンスターである《ヴァレルエンド・ドラゴン》であった。対象への耐性から除去以外の突破が困難であり、戦闘・効果でも破壊できない。たとえ相手のカードを除外・手札に戻す効果を持つ《ブラック・コア》や《強制脱出装置》などの魔法・罠カードを使えたとして、残った1枚の手札は公開情報でありレベル7の《覇王門無限》。モンスターの展開に付随した《ヴァレルエンド・ドラゴン》の突破を求められるこの状況で、彼女が打つ一手は………

嬢「私は、スケール1の《終焉龍 カオス・エンペラー》と、スケール13の《覇王門無限》で、ペンデュラムスケールをセッティング…!!
______これでレベル2〜12のモンスターが、同時に召喚可能!!」


◆ P E N D U L U M ◇


(スケール:◆ 1 ◇)《終焉龍 カオス・エンペラー》
(スケール:◆12◇)《覇王門無限》


上空に出現するのは、∞の輪を模したモンスターと龍平が使用した《終焉龍 カオス・エンペラー》によって織りなされる、巨大なペンデュラム。揺れ動く振り子の道標は円を描き、嬢の力となってモンスターを呼び出す。

栄咲(手札ゼロでペンデュラム……予想はできていたが、本当にやる気か……!!)

嬢「揺らげ、絆のペンデュラム!!
天空に描け、みんなが紡いだアークっ!!ペンデュラム召喚っ!!
______EXデッキから現れよ、《覇王眷竜ダークヴルム》!!」


《覇王眷竜ダークヴルム》(守)
☆4 闇属性・ドラゴン族/ペンデュラム/効果
ATK:1800/DEF:1200[◆5◇]


黒い翼の竜が天の門から降り立った。そしてその効果は、1ターン目にも使用している。黒い咆哮は嬢のデッキを揺らし、1枚のカードを抜き出させた。

嬢「P召喚時に、《ダークヴルム》の効果を発動!!
………デッキから《覇王門零》を手札に!!」

栄咲は、《ヴァレルロード・F・ドラゴン》による破壊効果を残している。しかし、その効果を使うタイミングは《ヴァレルエンド・ドラゴン》を突破しうるモンスターを呼び出すタイミングであることなど、2人とも理解していた。慎重に、確実に、プレイングを、効果の発動を見極める。1つのミスが、未来を決定する。

栄咲「………来い。」

嬢「______行きます。」


(LP :1900)龍剛院 嬢

擦り減っていくLP。しかしそれは嬢を追い詰めるものではない。それは嬢の攻勢の一手。代償となったそのLPと引き換えに、スケールにセットされた龍が吠え奮う。

嬢「1000LP払い、《終焉龍 カオス・エンペラー》のP効果を発動!!
除外状態のドラゴン族《破壊剣士の伴竜》を対象をとし、スケールのこのカードを破壊することで、対象のカードを手札に加えますっ!!」

嬢の除外されているカードから、1ターン目にプレイされ《破壊剣の追憶》の効果で除外された《破壊剣士の伴竜》のカードが彼女の手札に加わる。この時、栄咲は《ヴァレルロード・F・ドラゴン》の効果を使うことはできた。しかし事実として、龍平の手から託された《終焉龍 カオス・エンペラー》、その稀有な特殊召喚条件が、彼にトリガーを引かせなかった。

栄咲(EXデッキからもルールによる特殊召喚が可能なモンスター……。ここで破壊してもどちらにせよ湧いてくるのは変わらない。
_____見極めろ…《フュリアス》の効果を……!!)

嬢「《破壊剣士の伴竜》を通常召喚し……現れて、絆を繋ぐサーキット!!」

栄咲「______!!」

《破壊剣士の伴竜》と《覇王眷竜ダークヴルム》、揃った2体のモンスターは炎を纏った鏃となり、サーキットへと吸い込まれていく。

嬢「(いくよ、遊大くん!!)
召喚条件は、名称の異なるモンスター2体!!……リンク召喚っ!!
_____リンク2、《剛炎の剣士》っ!!」


《剛炎の剣士》(攻)
L2 炎属性・戦士族/リンク/効果
ATK:1800(1300)[←・↙︎]


両手に宿った燃ゆる剣。2体の竜からその身を転生させ出現したのは、剛き炎を纏った剣士であった。そして栄咲の目を引いたのは、そのモンスターをリンク召喚した位置、それがメインモンスターゾーンであることだった。

栄咲(そこは……EXモンスターゾーンの《ヴァレルエンド》のリンク先……!!
______そうか、それが狙いか……!!)

それが意味するのは、嬢に使用する権利のある左EXモンスターゾーンが空いているということ。わざわざメインモンスターゾーンにそのモンスターを呼び出したということは、その意図は。

嬢「墓地から、闇属性の《破戒蛮竜−バスター・ドラゴン》と、光属性の《破壊剣士の守護絆竜》の2体を……除外!!
今の私たちには、光属性と闇属性、それぞれの1体を除外することでEXデッキから特殊召喚できるモンスターがいますっ!!」

戒律に背く蛮竜と、絆を守護る剣の竜、2体のモンスターが放つ魂の黒と白の光が混じり合い、色すら忘れ鳴き爆ぜた。散り散りになった輝きは巨翼を広げる龍の姿を象り、まさしく混沌と終焉を体現したような叫びとともに、そのドラゴンはフィールドへと降り立つ。

嬢「………EXモンスターゾーンに特殊召喚!!
______いきますっ、《終焉龍 カオス・エンペラー》……!!」


《終焉龍 カオス・エンペラー》(攻)
☆8 闇・ドラゴン族/ペンデュラム/効果
ATK:3000/DEF:2500


降臨した《終焉》の名を持つ龍。大顎に赤い焔が集約され、その身を翻す。ディスクからLPの減少を告げる電子音が鳴り響き、フィールドに緊張が走っていく。それが齎すのは決断か、決意か、終焉か。いずれにせよこのモンスターの存在が、勝敗の天秤を揺らしていた。


(LP : 950)龍剛院 嬢


嬢「LPを半分払い、《終焉龍 カオス・エンペラー》の効果発動!!
私のメインモンスターゾーンのモンスターを全て墓地へ送り、この効果で墓地に送ったモンスターの数だけ、相手のモンスターを選んで墓地送りにしますっ!!………そして、この効果は______

栄咲「対象を取らず、破壊でもない。だから《ヴァレルエンド》を倒せる。____そうだろう。
だがそれは……嬢、お前のメインモンスターゾーンに墓地へ送れるカードが存在する時だけだ!!
________《フュリアス・ドラゴン》、貫け!!」

今にも弾け飛びそうな炎。終焉を告げるカウントダウンを撃ち破るのは《ヴァレルロード・F・ドラゴン》。その身は紫電を纏った弾丸となり、嬢のメインモンスターゾーンに構える《剛炎の剣士》へと真っ直ぐに翼を広げ突っ込んでいく。

嬢(______!!
メインモンスターゾーンの《剛炎の剣士》を狙ってきた……!!)

栄咲が狙っていたのは《終焉龍カオス・エンペラー》の効果が宣言され、かつ嬢のLPが半減したタイミングであった。栄咲のフィールドに存在するのは攻撃力3500の《ヴァレルエンド・ドラゴン》と3950の《ヴァレルロード・S・ドラゴン》。効果が不発になることで攻守の要である《ヴァレルエンド・ドラゴン》を守り、仮に《星遺物−『星杯』》の効果で何か壁となるモンスターを用意できたとして、LPが半減している状態では戦闘では《終焉龍カオス・エンペラー》を《ヴァレルロード・S・ドラゴン》で攻撃した時点で勝負がつく。砕け散り、その鎧に風穴の空いた《剛炎の剣士》の姿。崩れ去るその姿を見て、勝利を確信したのは………

栄咲「………勝負は付いた。
これで、《ヴァレルエンド》を突破する手段は潰れた。いや突破できたとして、だ。もうそのLPでは攻撃一回すら受けることは______

嬢「………そうですね。勝負は、付きました……!!
《剛炎の剣士》が破壊されたことで、《剛炎の剣士》自身と、墓地の《妖醒龍ラルバウール》の効果を……発動っ!!」

栄咲「______!!」

栄咲は忘れていた、嬢の墓地で眠る《妖醒龍ラルバウール》のカードを。前のターンに《レベル・レジストウォール》の効果で特殊召喚され、そのターン中は破壊時の効果を対策できていたモンスター。しかし《終焉龍 カオスエンペラー》という、EXデッキとPゾーン、そしてメイン・EXモンスターゾーンへと介入するカードによって、その意識が彼女の墓地から逸れてしまっていた。

嬢「モンスターが破壊されたことで《ラルバウール》自身は特殊召喚でき、さらに《剛炎の剣士》が破壊された時、墓地の戦士族モンスター1体を特殊召喚しますっ!!」

この状況を狙っていたのか、それとも偶然の一致か。
敗北を、閉ざされた未来を拒絶する戦友の意志が、前のターンに破壊されたはずのその2体が、再び姿を表す。

嬢「もう一回だけ……力を貸して!!
《焔聖騎士−ローラン》、《妖醒龍ラルバウール》っ!!」


《焔聖騎士−ローラン》(守)
☆1 炎属性・戦士族/効果
ATK:500/DEF:500

《妖醒龍ラルバウール》(守)
☆1 闇属性・ドラゴン族/効果
ATK:0/DEF:0


戦友のモンスター達。ここにいる彼らには意味がある。彼女を護るためだけではない。飛び発とうとする彼女の背中を、そのモンスター達は押す。ゆっくりと、たとえ攻撃力が低くとも、確実に、それは翼となる。

嬢「《ラルバウール》の効果を、《ローラン》を対象として、発動!!
手札から《覇王門零》を墓地に送り、属性・種族が同じ、炎属性・戦士族の《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》を手札に加えますっ!!!」

栄咲「《ゴッド……フェニックス……!!」

そして呼び出された2体のモンスターは、赤い鏃となって空のサーキットへと収束していく。遊大と龍平のモンスター、それが導くのは、律歌から託された未来回路。

嬢「最後の、………リンク召喚!!
召喚条件は、効果モンスター2体以上!!サーキットコンバイン!!
______リンク2《ピットナイト・アーリィ》っ!!」


《ピットナイト・アーリィ》(攻)
L2 炎属性・サイバース族/リンク/効果
ATK:1500[↗︎・→]


赤い鎧を身に纏い、浅緑の雷光がエンジン音と共に降り注ぐ。リンク先のモンスターの効果発動に誘発する効果を持ったそのモンスター。それが降臨したのは、《ヴァレルエンド・ドラゴン》のリンク先。メインモンスターゾーンに呼び出された彼女のリンクモンスターによって席は空いた。舞台は、整った。

嬢「墓地から《星遺物−『星杯』》を除外し、その効果を発動です!!
………デッキから速攻魔法《星遺物の胎導》を手札に加え…発動っ!!」

嬢の墓地から浮かび上がった蒼色の杯。砕け散ったそれは光の粒子となり、その色は青から赤へ、寒色から熱を帯びた緋色へと、輝き方を変えていく。栄咲は悟っていた。《妖醒龍ラルバウール》の効果で手札に加わった《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》、そして《星遺物の胎導》のカードとの関係性を。嬢はずっと、この状況を狙っていたのだ。喉元に刺せるカードだから、自分たちの価値を証明できるカードだから、それを誇示せんとする。胸に灯った炎が消え、ゆっくりと息を吐いた。

栄咲「《星遺物の胎導》……。
それが、それがお前が他者との関係の中で胎り、導いた……答えか。」

嬢「そうです。
お父さん、さっきの私の話に、真剣に向き合ってくれて、ありがとう……今度は、私の番だよ。」

舞い上がった光の粒子は花火のように夜空で煌々と輝く。夜空で爆ぜる光の粒は、1人の少女と、その父親の表情を、その瞳を、はっきりと染めた。

栄咲「……」

赤い光の中に染まった父親の顔は、初めて、自分の目をしっかりと捉えていた。
自分と向き合ってくれている父親の目に、胸の奥がジンジンと熱くなる。陽の当たる世界に繋がりを見出せなかった。だからこそ、影の世界であっても絶対に切れることはない血の繋がりを自分に求めた。自分の言えることは言った、だから今度は、自分の番なんだ。

嬢「………《星遺物の胎導》の効果で、手札からレベル9のモンスター1体を特殊召喚しますっ!!
______現れよ、《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》ッ!!!」

赤く爆ぜた光は翼となる。2人の決断と決意は、血を断つ刃でも、血で人を威し縛る弾丸でもない。陽の光を蓄え、影を裂くための赫く染まった剣となり、フィールドへと突き刺さった。それを握るのは《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》。戦友から託されたそのカードが、2人を導く最後のピースとなる。


《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》(攻)
☆9 炎属性・戦士族/効果
ATK:3000/DEF:2200


嬢「私だけでは、受け止められなかったかもしれない。
でもひとりじゃないんです。このカードたちと一緒に、受け止めさせてください。
……お父さん。」

栄咲「……嬢。
……そうか……そうだな、俺は……………

愛を知らなかった。愛することができなかった。だから、血の繋がりにそれを求めた。
その愛が、自分の唯一抱える嬢という愛が、そこに繋がる自分との血さえ途切れてしまうことを恐れていたんだ。今までそんなこと、直視したことがなかった。しかし眼前へと迫る真っ赤に染まった剣が、陰っていたその言葉すら陽の元に引き摺り出そうとしている。言葉が、喉元を通ることなど絶対になかったそんな言葉が、線香花火のように零れ落ちる。

栄咲「寂しかった……だけなのかもな。」

嬢「《ゴッドフェニックス》の攻撃宣言時、《ピットナイト・アーリィ》と、同時に効果を発動!!
攻撃対象となった《ヴァレルロード・S・ドラゴン》の効果を無効にし、攻撃力をゼロにしますっ!!……さらに《ゴッドフェニックス》の効果!!」

『寂しかった。』そんな言葉が口を出る同時に、緑色の雷光が《ヴァレルロード・S・ドラゴン》の体を貫いた。そして剣を構える《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》、その翼が翻り、《ヴァレルエンド・ドラゴン》と《ヴァレルロード・S・ドラゴン》へと流星の如く迫っていく。

嬢「……効果処理で《ヴァレルエンド》を選び、攻撃力500アップの装備カードとして《ゴッドフェニックス》に……装備っ!!」

栄咲「………誰も真に愛することなどできなかった。だから、血の繋がりに愛を求めた。
そこに絶対的な信頼が、理解が、納得が、情が……全てあると信じて、この裏の世界にお前を縛ろうとした。
言い訳にしかならいことはわかっている……でも________

上段から振り落とされる大剣。炎を纏った刃は《ヴァレルエンド・ドラゴン》の3本の首を斬り落とした。力を失った龍はその身を炎へと変え霧散し、その火は《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》の刃と鎧へ緋色に焼き付いていく。輝きを増す鎧は断頭した龍の姿を鏡のように映し出し、燃え上がる翼はその身を《ヴァレルロード・S・ドラゴン》の元へと導く。

栄咲「………愛していたんだ………お前と花奈を……自分にできたかけがえのない繋がりを……愛していた。」


(ATK:3500)《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》
(ATK:   0)《ヴァレルロード・S・ドラゴン》

(LP :4500)龍剛院 栄咲


振り落とされた刃は、白銀の攻殻を纏った《ヴァレルロード・S・ドラゴン》の胸元へと突き上げられた。熱を帯びた刀身はその身を貫き、火花が飛沫のように溢れ出す。チリチリと焼けるように目の奥が熱くて、瞼を開けているのが辛いほどだった。その目を見ているのが苦しいほどだった。だって、こんなにも熱いものが込み上げて来てしまいそうなのに、今はその人の目をずっと見ていたいと思えるから。一回でも目瞬きをしたら消えてしまいそうで、緋色を映す涙がこぼれて落ちてしまいそうだから。

栄咲「………花奈が、お前の母さんが命を落とした時から、ずっと考えていた。
この世界で生きる運命を背負ってしまうことの残酷さ。そして愛を求めておきながらお前に目を合わせることもできない、俺のような人間が、この先ずっと生きなければならないのか、そんな連鎖が正しいのか………と。
………嬢、……お前は…寂しくないのか?」


(ATK:1500)《ピットナイト・アーリィ》

(LP :3000)龍剛院 栄咲


嬢「……ありがとう。寂しくないよ。
だって私は、こんなにも愛されているから。母さんにも、お父さんも愛してくれていた。陽の元でだって、律歌さんと阿原さんが、ましろ先生が、遊大くんが………龍平くんが!!
みんなが、愛してくれてるんだよ……だから、」

嬢は一枚のカードを掴み取る。それは友に託されたカード。影の終わりと愛の始まりを告げる一匹の龍。燃ゆる翼を蓄えて、閉ざされた未来を抜け出す最後の攻撃が、宣言される。

嬢「私も…愛してる。陽のあたる場所で、待ってるよ……お父さん!!
______《終焉龍 カオス・エンペラー》で、ダイレクトアタックっ!!!」

迫り来る最後の攻撃に乗せられた、嬢からの愛。
その言葉で初めて、この選択をして良かったと、栄咲は心から思えた。この戦いが終われば、この長い夜も明ける。残っているのは自分の罪の清算だけではない。今は違うんだ。陽の当たる表の世界で、自分を待ってくれる、愛してくれる人がいる。左腕に装着したディスク、そのボタンを静かに押下し、目を閉じた。

栄咲『_______聞けェ!!!!』

瞬きをしないように努めた瞳はついに落ちる。閉じられた瞼からは淡い雫が溢れていた。
《終焉》の名を冠する竜が赫く染まった夜に雄々しく咆哮する。翻されたその身と、顎の門から放たれる混沌の炎。友より授かった1枚のモンスターが、陽と影、その2つの世界で揺れ動く1つの親子の戦いに、対話に、デュエルに、終止符を撃つ。

栄咲『龍血組組長、龍剛院 栄咲が命じる……!!』


(ATK:3000)《終焉龍 カオス・エンペラー》

(LP :   0)龍剛院 栄咲



『_______今、この刻をもって龍血組およびその直系、傍系にあたる組織・傘下企業……あらゆる団体の活動を停止……解散とするッ!!!』



WINNER:龍剛院 嬢



続く
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