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HOME > 遊戯王SS一覧 > SideFortune:警備隊セキュリィ

SideFortune:警備隊セキュリィ 作:名無しのゴーレム







「ムドー隊長、巡回ご苦労様です!」
「ああ、そっちもご苦労。何か異常はあったか?」
「いえ、特にありません!」
「そうか。ふぅ……」



市内のパトロールを終え、屯所で部下からの報告を受けるついでに足を休める。フォーチュンシティの広さに対して、警備隊の人員は致命的に不足している。発足から間もないとはいえ、補充も考えるべきか……



「しかし隊長、副隊長は?」
「心配するな。連れて来てある」
「え……」



困惑する部下の前に、紐でふん縛った『それ』を放り投げる。



「なっ!?」
「むーっ!! むーっ!!」
「案の定仕事をサボっていたから、こうして連れ帰ってきた。反省させるためにも、しばらくはこのままにしておけ」
「は、はい……」
「こいつの分まで巡回に行ってくる。引き続き留守番は任せた」
「了解です!」









屯所から出て、本日2度目のパトロールへ向かう。確か、あいつの担当箇所は……



「……フォーチュンモール、か」









フォーチュンシティの権力構造はかなり複雑だ。俺たち警備隊『セキュリィ』は形式上それらに関わることなく治安維持活動を出来るが、ここのオーナーはかなりの曲者。加えてここには奴らが居る。出来るなら関わり合いになりたくはないが……



「おっ、セキュリィの奴じゃねえか」
「……クソっ」



話しかけてきたのは1人の少年。彼はフォーチュンモールのオーナー直属の何でも屋『ハンディ』の一員だ。まさか、足を踏み入れてすぐに見つかってしまうとは。



「あ、何か言ったか?」
「何でもない。用がないならもう行くぞ」
「いやいや、待てってば。お前こそ、こんなところで何をしてるんだ?」
「……巡回警備中だ。このところ、なにかと物騒だからな」
「それはそうだけどさぁ……わざわざ隊長がパトロールか?」
「人手が足りてないんだ、仕方ないだろう」



分かっていることとは言え、こいつに指摘されると癪だ。



「お前こそ何をしている」
「俺か? 今日は依頼もないから、そこら辺をぶらぶらしてるだけだが」
「……そうか。暇で羨ましいものだ」
「喧嘩売ってるのか? 買うぞ?」
「悪いが、俺は喧嘩を取り締まる側だ。安い挑発には乗らない」
「挑発したのはお前だろうが!?」



何に苛立っているのか分からない……やはり、ガキの相手は苦手だ。



「もういいだろう。俺は暇じゃないんだ、巡回に戻るぞ」
「へっ、とっとと行きやがれ。そして二度と来るんじゃねえ」
「……ああ、俺もそうしたいところだ」



半ば追い出されるような形で、俺はその場をあとにした。待てと言ったり行けと言ったり、忙しい奴だ……









「さて、こんなところか」



以前のフォーチュンモール爆破事件から、モール内部も巡回ルートに含めるようになったが……流石にこのタイミングで騒ぎを起こす馬鹿はいないか。



「しかし……」



中央ホールでは小規模ながら歌劇団が公演を行っている。復興も未だ完全ではないというのに……暴力には屈しないというアピールの一環なのだろうか。それ自体は構わないが、ロクな対策も無しに実施するのは無用心が過ぎると言わざるを得ない。フォーチュンモールのオーナーは、一体何を考えている……?



「……考えても仕方ない。次へ向かうか」



引っ掛かることはあるが、いつまでもここに留まっている訳にもいかない。フォーチュンモールを後にし、次の現場へ向かう。












「……ここも異常なし、と。これで全部か」



あとは屯所に戻って隊員たちの報告をまとめれば……



「……?」



僅かな雑音……意識を集中させると、遠くから喧騒が聞こえてくる。ここから距離はありそうだが、見過ごす訳にもいかない。



「はぁ……行くか」



本来ならば俺がするはずのなかった仕事……心底やりたくはないが、これも治安維持のためだ。重い腰を上げ、声がする方へ赴く。


















「これで、トドメだぁぁ!!」
「ぐっ、うわぁぁぁ!!」
「……よし、これで5連勝っ!! 次、このヴァロー様に向かってくる奴はいねぇかぁ!?」
「「「うおおぉぉぉ!!」」」









「これは……酷いな」



喧騒は収まらないどころか更に増している。その現場である広場……そこでは、群衆に取り囲まれる中で男たちがデュエルを行っていた。見たところ、腕自慢か何かだろうか……?



「…………」



被害者もいなければ事件性もない。放って帰っても騒動が起こることはまずないだろうが……周辺住民の生活を妨げる騒音と無許可での公道占拠。問題がある以上、見つけてしまったからには取り締まらざるを得ない。意を決し、群衆の中をかき分けていく……



「……コホン。盛り上がっているところ悪いが、ここまでの集まりなら事前に届け出をしてもらいたいな」
「ん? なんだよお前は」
「俺は警備隊隊長のムドーだ。この騒ぎは一体なんだ?」
「なにって……見ての通りだ。俺に勝てば賞金をやるって言ったら、思ったよりも盛り上がっちまってな」
「……金銭を賭けたデュエルも、フォーチュンシティ内では禁止されている。分かったらさっさと解散させろ」
「全く、細かい奴だなぁ。警備隊ってのは事件を解決するのが仕事だろ? この場に嫌な思いをしてる人間なんていないんだから、口出しされる筋合いはないだろ?」
「そういう問題ではない。規則というのは、人々が安心して生活していくためのものなんだ。それを軽んじるようになってしまえば、たちまち秩序は失われてしまう。つまり、今がどうかという話ではなく……」
「ああもう分かった、分かったよ!! 面倒くさい奴だな……」



規則自体はフォーチュンシティの創立当初に作られたものだが、違反に対して明確に処罰を行うようになったのはセキュリィが設立されてからだ。そのため、こんな風に考える連中も少なくはない……それでも、俺たちのすることは変わらない。



「分かったなら、早急にこの集まりを解散するように……」
「俺をどうにかしたいんなら、力ずくで言うことを聞かせてみろよ」
「…………なんだと?」
「規則を守れ、なんざ誰でも言える。だが俺は自分より弱い奴に指図されるつもりはない。従わせたいってなら、テメェの力を見せてみな」



こいつ……確か、ヴァローと言ったか。この状況は厄介だ。セキュリィの隊長として私闘に応じる訳にはいかないが、断れば俺の言うことに耳を貸すこともないだろう。それよりも、俺たちを取り囲む群衆に悪いイメージを植え付けられることの方がまずい。



「……いいだろう。ただし、俺が勝てばお前は公務執行妨害で逮捕させてもらうぞ」
「へぇ、面白いじゃねえか。さっそく始めようぜ」















「「デュエル!!」」









ヴァロー LP4000 手札5
ムドー LP4000 手札5



「4000ルールで始めるが、文句はないな?」
「……ああ」



4000ルールというのは、フォーチュンシティの一部で用いられているもの。文字通り初期ライフを4000にするというだけのルールだが、従来のデュエルと比べ受けるダメージが少ないことから安全であるというメリットが存在している。こいつの場合は連戦のために1戦ごとの時間を抑えたいというのもあるだろうが……手早く済ませたいのはこちらも同じだ。



「じゃあ先攻は貰うぜ! 俺のターン! 自分フィールドにモンスターが存在しないことにより、手札から『英霊勇士テセウス』を特殊召喚! さらにチューナーモンスター、『英霊勇士クリシュナ』を召喚!」



瞬く間に2体のモンスター展開。しかも1体はチューナー……来るか。



「俺はレベル5のテセウスにレベル3のクリシュナをチューニング! シンクロ召喚、『英霊勇士アルケイデス』!!」
「シンクロ召喚……だが、先攻1ターン目は攻撃できない。攻撃力が高かろうと、次のターンにどうとでも対処できる」
「はっ、言ってろ。カードを1枚セットして、ターンエンド!」



ヴァロー LP4000 手札2 モンスターゾーン 英霊勇士アルケイデス 魔法・罠ゾーン 伏せカード1枚
ムドー LP4000 手札5



「俺のターン、ドロー」



相手のフィールドにはシンクロモンスターと伏せカードが1枚。どちらかにこちらの攻撃を凌ぐ策があるのだろうが……ライフが4000ということもある、ここは慎重に攻めるべきだ。



「……永続魔法『凶星、魔竜星』を発動。凶星の効果発動。自分フィールドにモンスターが存在しないとき、デッキから魔星竜モンスター1体を手札に加える。続けて『死竜騎ミアズマ』を召喚。ミアズマの効果発動、デッキから死竜騎モンスター1体を手札に加える」
「死竜騎と魔星竜……2種類のモンスターを使い分けるってところか」



正確な分析……伊達に勝ち続けている訳ではないということか。



「このカードはフィールドのアンデット族モンスター1体をリリースすることで手札から特殊召喚できる。俺はミアズマをリリース。来い、『魔星竜ヴォーレフ』。ヴォーレフの効果発動。手札の死竜騎モンスター1体を捨てることで、相手モンスター1体を破壊する。俺が破壊するのは、ヒルデブラント!」



この効果が通れば相手フィールドは空、ヴォーレフでダイレクトアタックを決められる。万が一通らなくても……



「リバースカードオープン! 通常罠、『アームズ・コール』発動! デッキから装備魔法を手札に加え、そのまま自分フィールドのモンスターに装備する。俺は『英霊武具-ディヴィニティ・ソウルアーマー 』を手札に加え、アルケイデスに装備! ディヴィニティ・ソウルアーマーを装備したモンスターは戦闘・効果で破壊されない!」
「なるほど、そう来たか……バトルだ。ヴォーレフでアルケイデスを攻撃!」
「攻撃力2000のヴォーレフで、2500のアルケイデスを……!?」



不審に思うのは当然だろう。それでも、この攻撃を止める手段は存在しない。



「ヴォーレフは戦闘・効果で破壊されず、その戦闘で俺に発生するダメージは代わりに相手が受ける」
「なっ……!?」


ヴァロー LP4000→3500


「小癪な真似を……」
「バトル終了。カードを1枚セットして、ターンエンド」
「ならこのタイミングで、アルケイデスの効果発動。自身に装備されているディヴィニティ・ソウルアーマーとお前の伏せカードを破壊し、その後デッキから装備魔法を手札に加える」



ヴァロー LP3500 手札3 モンスターゾーン 英霊勇士アルケイデス
ムドー LP4000 手札3 モンスターゾーン 魔星竜ヴォーレフ 魔法・罠ゾーン 凶星、魔竜星



「俺のターン、ドロー!」



攻撃力で勝り破壊効果を持つアルケイデスも、ヴォーレフの前では無意味だ。相手のデッキは装備魔法が中心とみて間違いない……その性質上、効果による除去手段はそう多くないはずだ。



「……ちっ、面倒なモンスターだぜ。通常魔法『アームズ・ホール』発動。デッキの一番上のカードを墓地に送り、デッキから装備魔法を手札に加える。装備魔法『英霊武具-スプリット・ハート』をアルケイデスに装備。墓地のクリシュナの効果発動。フィールドのスプリット・ハートを墓地に送ることで自身を特殊召喚。装備魔法『ライトイレイザー』をクリシュナに装備! さらに装備魔法『英霊武具-パワー・バングル』をアルケイデスに装備。パワー・バングルを装備したモンスターの攻撃力はフィールドに表側表示で存在する魔法・罠カード1枚につき600アップする!」


英霊勇士アルケイデス 攻撃力2500→3700


「バトル、クリシュナでヴォーレフを攻撃!」
「……自滅覚悟の攻撃か」


ヴァロー LP3500→2300


「ライトイレイザーの効果発動。戦闘を行った相手モンスターを除外する!」
「!?」



まさか、こうも容易く破られるとは……!!



「これで厄介なモンスターはいなくなった。アルケイデスでダイレクトアタック!」


ムドー LP4000→300


「……っ!!」
「バトル終了。アルケイデスの効果発動。パワー・バングルと凶星を破壊! 」
「破壊された凶星の効果発動。自身をデッキに戻し、除外されているヴォーレフを墓地に戻す」
「さらにデッキから装備魔法を手札に加える。装備魔法『英霊武具-ブレイブ・エンブレム』をアルケイデスに装備。ブレイブ・エンブレムの効果発動、俺のライフを装備モンスターのレベル×200回復する」


ヴァロー LP2300→3900


「俺はこれでターンエンドだ」



ヴァロー LP3900 手札2 モンスターゾーン 英霊勇士アルケイデス 魔法・罠ゾーン 英霊武具-ブレイブ・エンブレム(アルケイデス装備)
ムドー LP300 手札3



「俺のターン、ドロー。通常魔法『トレード・イン』発動。手札のレベル8モンスターを捨てて、デッキから2枚ドローする」
「手札交換か……この窮地を突破できるカードは引けたか?」
「…………」



この手札……ライフが僅かとなってしまった今、長期戦に持ち込まれてはまずい。なら、ここは……



「速攻魔法『死竜騎の呼び出し』発動。墓地の『死竜騎リリーサ』を特殊召喚する。リリーサは魔星竜をアドバンス召喚するとき、1体で2体分として扱う」
「っ、アルケイデスの効果発動! ブレイブ・エンブレムとリリーサを破壊する! さらにデッキから装備魔法を手札に加える!」



最上級モンスターの展開を防ぐためにはここでアルケイデスの効果を使うしかない……ここまでは計画通りだ。



「通常魔法『悪夢再び』発動。墓地のリリーサとヴォーレフを手札に加える。自分フィールドにモンスターが存在しないことにより、手札から『死竜騎リリーサ』を特殊召喚。リリーサをリリースし、『魔星竜レクス』をアドバンス召喚。さらに通常魔法『復活の福音』発動。墓地のレベル7・8ドラゴン族モンスターを特殊召喚する。蘇れ、『魔星竜グレンデル』」
「最上級モンスターを、ポンポン出しやがって……!!」
「バトル。レクスでアルケイデスを攻撃」


ヴァロー LP3900→3400


「くっ……破壊されたアルケイデスの効果発動。墓地の装備魔法をデッキに戻すことで、俺のライフをその枚数×500回復する。ディヴィニティ・ソウルアーマー、スプリット・ハート、ライトイレイザー、パワー・バングル、そしてブレイブ・エンブレムの5枚をデッキに戻して2500回復だ!」


ヴァロー LP3400→5900


「レクスの効果発動。自身が戦闘で相手モンスターを破壊したとき、手札の魔星竜カード1枚を捨てることで追加攻撃が可能となる。俺はさっき手札に戻したヴォーレフを捨てる」
「追加……攻撃だとぉっ!?」
「レクスでダイレクトアタック!」
「ぐっ、あぁぁぁぁ!!!」


ヴァロー LP5900→2900


「……これで終わりだ。グレンデルでダイレクトアタック!」
「何を言ってやがる。グレンデルの攻撃力は2800、この攻撃を受けようが……」
「グレンデルの効果発動。墓地の死竜騎を除外することで、自身の攻撃力を800アップする!」


魔星竜グレンデル 攻撃力2800→3600


「嘘、だろ……!!?」









ヴァロー LP2900→0


















ヴァローを大きく吹き飛ばし、デュエルは終了となった。かなりの接戦であったが、勝利は勝利。セキュリィの面目も保たれただろう。



「俺の勝ちだ。約束通り、屯所まで来てもらうぞ」
「……分かったよ。ほら、どこへなりとも連れて行け」
「……はぁ」



負けを認めたのか、抵抗もせず手錠をかけられるヴァロー。最初からこうしていれば、こちらも手間をかけずに済んだものを……思わずため息を溢しながらも、前言の通りに連行していく。



















徒歩で巡回していた以上、現場から屯所までの連行も同様に移動する必要がある。改めてセキュリィ専用の車両を手配する必要性を実感する。



「……お前、警備隊の隊長って言ったか」
「それがどうした」
「いや……確かにお前は強かった。だが、それでもあんたが警備隊の頂点だってんなら……俺たちの敵じゃねえ」
「『俺たち』……?」



含みを持たせた言葉……その直後、この男が言いたいことを理解した。



「お前……傭兵ギルドの人間か」
「ご明察。最近発足した警備隊ってのがどれほどやるのか気になって喧嘩を吹っ掛けてみたが……まあ、さっきみたいな街のいざこざを解決するには十分役立ちそうだな」
「つまり、それ以上の事件を解決するには力不足だと?」
「あくまで俺の見立てだが。この街は他の場所とは事情が違う……外から厄介ごとが持ち込まれなくとも、いくらでも争いの火種があるんだからな」
「…………」



ヴァローの言う通り……明確にトップが存在し、権力構造がはっきりしている街ならそう易々と大事件が起きたりしない。だが、この街にはそれがない。勢力圏拡大を目論む大規模勢力に、その寝首を搔こうとする小規模勢力。どんな要因からでも『大戦争』に発展しかねない、非常に不安定な状態だ。



「だが、俺たちのやることは変わらない。この街に生きる人々を守る……それが、セキュリィの使命だ」
「ふーん……ま、期待せずに見守ってやるよ。善良な一市民としてな」
「こうして手錠をかけられているような人間を善良とは言わん……着いたぞ」
「おっ、ここがお前たちの本拠地か……思ったよりも小さいな」
「話は取り調べの際にたっぷりと聞いてやる。ほら、とっとと入れ」



屯所へ着く頃には、すっかり日も沈んでしまっていた。こいつを引き渡したら、あとは夜勤担当の部下に任せるとするか……






























ガラガラ……



「おう、いらっしゃい!!」
「大将いつものを頼む」
「おっ、ムドーの兄ちゃんか。待ってな、すぐに出来上がるからよ!」
「ああ……ふぅ」



カウンター席に座り、料理が来るのを待つ……久しぶりに顔を出したが、特に問題なく経営できているようだ。



「…………」



……結局、あの男はすぐに釈放された。そもそも大した罪ではないから妥当な処分ではあるのだが、問題はそれまでの過程だった。フォーチュンシティにおいて、傭兵ギルドが持つ力は絶大だ。その一員がどんな罪を犯そうと、圧力をかけられてしまえばセキュリィになす術はない。あらゆる悪から市民を守る盾にならなければいけないのに、こんなザマで務まるのか……?



「…………はぁ」
「どうした、セキュリィ隊長ともあろう者がこんなところで」
「お前は……確か、ハンディの」



いつの間にか、隣の席に見覚えのある女性が……というか、どうしてこんなところに?



「ペイジだ。チャームがお前に会ったと言っていたが……まさか、こんなところで会うとはな」
「それはこちらのセリフだ。わざわざフォーチュンモールから離れた店に来る理由が分からない」
「……あそこで酒を飲もうとすると高くつくんだ。それに、洒落た雰囲気がどうにも苦手でな」
「……そうか」



それっきり、お互いに話すこともなく時間が流れる……しばらく経った後、それぞれの注文した品が目の前に置かれた。



「へいお待ち。味わってくれよ!」



俺が注文したのは特製のトッピング全部載せラーメン。大量の具が麺を覆い隠し、小さな山と化している。そして隣のペイジは……



「……なんだお前、ラーメン屋に来てラーメンを食べないのか」
「言っただろう、酒を飲みに来たと。私はゆっくりさせてもらうさ……というか、お前こそなんだそれは。麺はどこに行った?」
「1日中街を歩き続けたんだ、これくらいは食べる。特に今日は、サボった部下の代わりに2人分の業務をさせられたからな」
「サボったって……警備隊は大丈夫なのか?」
「大丈夫なわけあるか。徹底的に教育するか首を切って新しい隊員を雇うかを悩んでいるところだ」
「なるほど、リーダーは大変だな」
「お前こそ、あんな連中を従えるのは至難の業だろうに」
「従える?」
「……お前がハンディのリーダーだろう? 以前見たときは他の奴らを率いていたように見えたが」
「悪いが、それは見当違いだ。私たちのリーダーはチャームだからな」
「チャーム……だと!?」



あのガキが、リーダー!?



「……まあ、驚くのも無理はない。あいつがそれらしいことをしたことなんてほとんどない」
「それは……大丈夫なのか?」
「大丈夫なはずないだろう」



……なんだろう、こいつには凄まじい親近感を覚える。もしかして、俺たちは似た者同士ということなのだろうか……?



「……さて、俺はもう行く」
「なっ、もう食べきったのか!?」
「職業柄、早食いが基本だからな。大将、会計を」
「あいよ!」



代金をカウンターに置いて席を立つ。十分腹も膨れたし、あとは屯所に戻って……いや、その前に。



「……おい、ペイジ」
「どうした?」
「お前たちのリーダーに言っておけ。この街の平和を守るのは俺たちの役目だ、余計な手出しをするな……と」
「……私も、やりたくてこんなことをしている訳じゃない。それはチャームも同じだ」
「そうなのか?」
「まあ、ハンディはそういう奴の集まりだからな。だが……」
「?」
「……この街を守ろうとしているのはお前たちだけじゃない。それだけは覚えておくといい」



俺たちだけじゃ、ない……か。



「……そう、だな。頭の片隅に入れておくとする。では、先に失礼させてもらう」






ガラガラ……






「さて、帰るか」






ここから屯所まではそう遠くない……この店も以前は別の場所にあったが、厄介事に巻き込まれた結果ここへ引っ越すこととなった。定期的に通っているのも、見回りを兼ねたものだ。俺たちに出来ることは多くないが、それでも守れるものはある……そう実感するために、今夜はここへ来たのかもしれない。









「……明日も、頑張るか」












ともかく、明日こそはあのサボり魔をどうにかしなければ。セキュリィの隊長として、せめて隊員はまとめ上げてみせないと……















キャラクター紹介



ムドー
モチーフ:【魔竜星・死竜騎】 作者様:MTGからの刺客様
フォーチュンシティ警備隊『セキュリィ』の隊長。
冷静沈着で淡々と職務をこなす姿から市民だけでなく部下たちにも恐れられている。
セキュリィの仕事に度々首を突っ込んでくるハンディ、特にチャームとは犬猿の仲。
規則を破った市民を取り締まる一方、権力者の圧力に屈しざるを得ないセキュリィの現状に頭を悩ませている。


ヴァロー
モチーフ:【英霊勇士】 作者様:ギガプラント様
傭兵ギルドに所属する男性。
自らの力を誇示するため、定期的に街中でデュエルを挑んでいる。強者とのデュエルが何よりの好物。
傭兵らしく力こそがすべてという考えを持っており、実力を認めた相手の言うことしか聞かない。



【魔竜星・死竜騎】【英霊勇士】の使用許可を下さったMTGからの刺客様、ギガプラント様、本当にありがとうございます!






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MTGからの刺客
お久しぶりです

カテゴリー製作者より上手く【魔星竜・死竜騎】デッキを扱えてて草生え散らかしました。このデッキ、メカニズムのは単純なのにコンボルートが複雑で使いづらいんですよね(おい製作者)。
こうして見ると流石に型落ち感がありますね…新規カード作るか。

今回のお話でこそヴァローの【英霊勇士】に勝ちましたが、実際にOCGでデュエルすると仮定すると、【魔星竜・死竜騎】は勝算は高く無いでしょう(流石にカード1枚ごとのパワーが違う)。今回はLP4000制と言うのがバーンや連撃を有する魔星竜に上手く働いたのでしょう。このルールだとタルタロスとかヤバそう。

【英霊勇士】は…うむ!装備魔法を使うカテゴリーは色々悪用出来そうでハラハラしますぞ!装備魔法のリクルート、除去能力等、出来る事は多そう。デッキから装備魔法を相手ターンに発動出来るカード《アームズ・コール》はデッキとの相性も良いでしょう。 (2021-02-22 10:54)
名無しのゴーレム
MTGからの刺客さん、コメントありがとうございます。

【魔星竜・死竜騎】は闇属性・守備力0・ドラゴン族(アンデット族)と豊富すぎるサポートを受けられるので、その辺りをフル活用するとすごい動きが出来そうですよね…今回はやや自重気味でしたが、それでも毎ターン最上級モンスターを並べてくるのは強かった。
【英霊勇士】も回れば結構強いんですが、今回は破壊できない壁を立てられたり超火力でボコられたりと、ひたすらに相手(とルール)が悪かった… (2021-02-23 02:25)

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