34話　鉄壁の守護騎士　作：名無しのゴーレム

「「デュエル！！」」











パール　LP8000　手札5
ユージ　LP8000　手札5



「先攻はもらう。俺のターン、手札からフィールド魔法『パールディン・パレス』発動。そしてパレスの効果発動。手札の『パールディン・ペネトレイター』を捨てて、自分フィールドにパールトークンを特殊召喚する」



手札をコストに、低ステータスのトークンを……？



「そしてモンスターを1体セットして、ターンエンド」



パール　LP8000　手札2　モンスターゾーン　パールトークン、伏せモンスター　フィールド魔法　パールディン・パレス
ユージ　LP8000　手札5



「僕のターン、ドロー」



パールさんのフィールドにはトークンとセットモンスター、そしてフィールド魔法のみ。罠は伏せられていないから、攻めやすいといえば攻めやすいんだけど……



「『白き地の姫君カトレア』を召喚。カトレアの効果発動、手札から『白き地の猟犬オニノメ』を特殊召喚。そして自分フィールドに白き地のモンスターが存在することで、手札から『白き地の召使いロッカ』を特殊召喚」
「モンスターを並べたか……さあ、ここからどうする？」
「……レベル3のカトレアとロッカでオーバーレイネットワークを構築！ 白き地に産まれし幼き女神よ、氷雪を操り聖域を侵す敵を凍結せよ！ エクシーズ召喚、『白き地の女神クランポネ』！ バトル、オニノメでパールトークンを攻撃！」
「手札の『パールディン・プレート』の効果発動。自分の水属性通常モンスターが攻撃対象となったとき、このカードを捨てることで攻撃を無効化し、バトルフェイズを終える」



狙いはこれだったのか……なら！



「クランポネの効果発動！ オーバーレイユニットを1つ取り除いて、プレートの効果を無効化する！ これでバトルは続行されます！」
「…………」
「続けてクランポネで伏せモンスターを攻撃！」



ライフこそ削れなかったものの、相手のモンスターは全滅させられた。手札も少なくなっているこの状況は、間違いなく僕が有利だ。



「僕はこれでターンエンド」
「なら、戦闘で破壊された『パールディン・パイレーツ』の効果発動。自分フィールドにパールトークンを特殊召喚する」
「なっ……！？」



トークンが、フィールドに残ってしまった……！



パール　LP8000　手札1　モンスターゾーン　パールトークン　フィールド魔法　パールディン・パレス
ユージ　LP8000　手札3　モンスターゾーン　白き地の女神クランポネ、白き地の猟犬オニノメ



「俺のターン、ドロー。パールトークンをリリースして、『パールディン・ポセイドン』をアドバンス召喚。バトル、ポセイドンでクランポネを攻撃」



ユージ　LP8000→7500



「くうっ……」
「……カードを1枚セットして、ターンエンド」



パール　LP8000　手札0　モンスターゾーン　パールディン・ポセイドン　フィールド魔法　パールディン・パレス　魔法・罠ゾーン　伏せカード1枚
ユージ　LP7500　手札3　モンスターゾーン　白き地の猟犬オニノメ



パールさんのフィールドには攻撃力2400の上級モンスターこそ居るが、それでも守りは薄い。伏せカードが気になるが、両方を攻略してしまえば手札のないパールさんは打つ手がなくなる。そしてポセイドンだけなら、今の手札でも十分対処できる。



「僕のターン、ドロー。オニノメの効果発動。ポセイドンの攻撃力・守備力を500下げます」



パールディン・ポセイドン　攻撃力2400→1900



「そして『白き地の守人タイガ』を召喚。自身の効果で守備表示に変更します。オニノメを守備表示に変更して、ターンエンドです」



パール　LP8000　手札0　モンスターゾーン　パールディン・ポセイドン　フィールド魔法　パールディン・パレス　魔法・罠ゾーン　伏せカード1枚
ユージ　LP7500　手札3　モンスターゾーン　白き地の守人タイガ（表側守備表示）、白き地の猟犬オニノメ（表側守備表示）



「俺のターン、ドロー。……バトル、ポセイドンでオニノメを攻撃」
「タイガの効果発動！ 1ターンに1度、白き地のモンスターの攻撃を無効にする！」



オニノメの効果は永続する。この攻撃を凌げば、返しのターンでもう一度弱体化させて、ポセイドンを倒すことができる。



「……カードを1枚セットして、ターンエンドだ」



パール　LP8000　手札0　モンスターゾーン　パールディン・ポセイドン　フィールド魔法　パールディン・パレス　魔法・罠ゾーン　伏せカード2枚
ユージ　LP7500　手札3　モンスターゾーン　白き地の守人タイガ（表側守備表示）、白き地の猟犬オニノメ（表側守備表示）



「僕のターン、ドロー。オニノメの効果発動、ポセイドンの攻撃力・守備力を500下げます」



パールディン・ポセイドン　攻撃力1900→1400



これでオニノメの攻撃力がポセイドンを上回った……！



「オニノメとタイガを攻撃表示に変更、バトル！ オニノメでポセイドンを攻撃！」



パール　LP8000→7800



「この瞬間、リバースカードオープン。通常罠、『パールディン・パニッシュ』。自分のパールディンモンスターが戦闘・効果で破壊された時、フィールドのカードを2枚まで選び破壊する。俺が破壊するのはオニノメとタイガだ！」
「！？」



まさか、このタイミングで罠カードを……！？



「っ、墓地のロッカの効果発動！ このカードを除外して、タイガの破壊を無効にします！」
「ほう……これを凌ぐか」
「続けてタイガでダイレクトアタック！」



パール　LP7800→6600



「カードを1枚セットして、ターンエンドです」
「ポセイドンの効果発動、パールトークンを特殊召喚する」



パール　LP6600　手札0　モンスターゾーン　パールトークン　フィールド魔法　パールディン・パレス　魔法・罠ゾーン　伏せカード1枚
ユージ　LP7500　手札3　モンスターゾーン　白き地の守人タイガ　魔法・罠ゾーン　伏せカード1枚



「俺のターン、ドロー。パールトークンをリリースして『パールディン・プロフェッサー』をアドバンス召喚。プロフェッサーの効果発動、墓地のペネトレイターを特殊召喚する」



レベル6のモンスターが、2体も……！



「バトル、プロフェッサーでタイガを攻撃」
「タイガの効果発動、攻撃を無効にします！」
「だが、それも1度きり。続けてペネトレイターでタイガを攻撃」



ユージ　LP7500→6150



「くっ……！」
「バトル終了。レベル6のプロフェッサーとペネトレイターの2体でオーバーレイネットワークを構築。眩き水面より現出せよ、清廉なる女教皇！ エクシーズ召喚、『ピンクパールディン・プリーステス』！」
「ランク6の、エクシーズモンスター……」
「プリーステスは破壊される時、代わりに自身のオーバーレイユニットを取り除くことができる。そしてこの効果を適用したターンの終了時、パールトークンを特殊召喚する……俺はこれでターンエンド。さあ、今度はどうする？」



パール　LP6600　手札0　モンスターゾーン　ピンクパールディン・プリーステス　フィールド魔法　パールディン・パレス　魔法・罠ゾーン　伏せカード1枚
ユージ　LP6150　手札3　魔法・罠ゾーン　伏せカード1枚



パールさんのフィールドにはランク6のエクシーズモンスター。その効果は守備に特化したもので、突破にはどうしても時間がかかる……しかし、どうにもならないわけではない。



「…………」






……このデュエル中、パールさんはほぼずっと防戦一方だ。なんなんだ、この違和感は……






「どうした、お前のターンだぞ」
「は、はい。手札からフィールド魔法、『白銀の洞窟クレアケイブ』発動。さらにリバースカードオープン、通常罠『祭壇への祈祷』発動！ 墓地のオニノメを特殊召喚します。クレアケイブが存在することで、オニノメの攻撃力は200アップします」



白き地の猟犬オニノメ　攻撃力1600→1800



「そしてオニノメの効果発動、プリーステスの攻撃力・守備力を500下げます」



パールディン・プリーステス　攻撃力2600→2100



「ターンエンドです」



パール　LP6600　手札0　モンスターゾーン　ピンクパールディン・プリーステス　フィールド魔法　パールディン・パレス　魔法・罠ゾーン　伏せカード1枚
ユージ　LP6150　手札3　モンスターゾーン　白き地の猟犬オニノメ　フィールド魔法　白銀の洞窟クレアケイブ



「俺のターン、ドロー。バトル、プリーステスで……」
「オニノメの効果発動！ プリーステスの攻撃力・守備力を500下げます！」



パールディン・プリーステス　攻撃力2100→1600



「何だと？ ……その効果、相手ターンでも使えるのか」
「はい。フィールド魔法がある時だけですけどね……」
「なるほど、そういうことか。なら……このままターンエンドだ」



攻撃は行わない、か。牽制のため早めに発動しておいたが、このまま戦闘を続けて効果を発動、トークンを出すこともあり得た。僕としては、攻め手が足りない現状でトークンを増やされるのは厄介だったが……やはり、パールさんのデュエルは防御一辺倒だ。一体どうして、攻める姿勢を見せようともしないんだ……？



パール　LP6600　手札1　モンスターゾーン　ピンクパールディン・プリーステス　フィールド魔法　パールディン・パレス　魔法・罠ゾーン　伏せカード1枚
ユージ　LP6150　手札3　モンスターゾーン　白き地の猟犬オニノメ　フィールド魔法　白銀の洞窟クレアケイブ



「……僕のターン、ドロー。『白き地のくノ一カペラ』を召喚。カペラの効果発動、墓地のカトレアを手札に加えます。オニノメの効果発動、プリーステスを弱体化させます」



パールディン・プリーステス　攻撃力2100→1600



「……そして速攻魔法、『氷花繚乱』発動。僕のフィールドに存在する白き地のモンスターの数まで、相手フィールドの魔法・罠カードを破壊してその枚数×200のダメージを与えます。僕のフィールドにはオニノメとカペラの2体、よってパレスとセットカードを破壊！」
「リバースカードオープン。速攻魔法『スケープ・ゴート』。俺のフィールドに4体の羊トークンを特殊召喚する」



スケープ・ゴート……トークンを大量に生み出すカードだけれど、トークンをアドバンス召喚のリリースに用いるパールさんのデッキとは相性が悪いはず。なのに何故……？



「……それでも、2枚のカードを破壊したことで400のダメージが発生します」



パール　LP6600→6200



「この瞬間、破壊されたパレスの効果発動。フィールドの効果モンスター以外のモンスターを全て破壊し、その数だけドローする。俺が破壊したのは4体の羊トークン、よって4枚ドローだ」
「4枚、ドロー！？」



……まさか、このコンボのためにスケープ・ゴートを……？ 何にせよ、この状況はマズイ。プリーステスを倒しきれない以上、次のターンに増えた手札で反撃が来る……！



「……バトル。オニノメでプリーステスを攻撃！」



パール　LP6200→6000



「プリーステスの効果発動。自身のオーバーレイユニットを1つ取り除き、破壊を無効にする」
「っ、これでターンエンドです……」
「ならプリーステスの効果で、パールトークンを特殊召喚する」



パール　LP6000　手札5　モンスターゾーン　パールディン・プリーステス、パールトークン
ユージ　LP6150　手札3　モンスターゾーン　白き地の猟犬オニノメ、白き地のくノ一カペラ　フィールド魔法　白銀の洞窟クレアケイブ



「俺のターン、ドロー。プリーステスとパールトークンをリリースして、『パールディン・プリンス』をアドバンス召喚。アドバンス召喚したプリンスは、通常の攻撃に加えてリリースした通常モンスターの数だけ攻撃回数が増える」



プリンスのアドバンス召喚の際リリースした通常モンスターはトークンが1体、つまり2回攻撃が可能ということか。



「バトル、プリンスでオニノメを攻撃」
「オニノメの効果発動！ プリンスの攻撃力・守備力を500下げる！」



パールディン・プリンス　攻撃力2500→2000



「それでも、プリンスの方が攻撃力は上だ！」



ユージ　LP6150→5950



「カペラの効果発動！ 白き地のモンスターが破壊される場合、代わりにこのカードをリリースする！」
「……攻撃力の低いモンスターをリリースすることで、ダメージを減らすのが狙いか。ならプリンスで、再びオニノメを攻撃！」



ユージ　LP5950→5750



「ううっ……」
「カードを1枚セットして、ターンエンドだ……どうした、これでおしまいか？」



パール　LP6000　手札4　モンスターゾーン　パールディン・プリンス　魔法・罠ゾーン　伏せカード1枚
ユージ　LP5750　手札3　フィールド魔法　白銀の洞窟クレアケイブ



……やっぱり、どう考えてもパールさんの戦術はおかしい。あれだけの手札があって、僕のモンスターを全滅させるだけで終わるはずがない。つまり、彼は攻める気がないのだ……でも、その理由だけが分からない。



『ユージ、もう一度思い出しなさい。どうしてあなたが戦っているのかを』
「どうして、戦っているか……？」



それは、パールさんに僕の意思を伝えるため……意思って、何の？






「…………まさか、そういうことなのか……？」






……でも、それならこの違和感にも説明がつく。試してみるしか、ないか……！！



「僕のターン、ドロー。手札の『白き地の魔女スミレ』の効果発動。手札の魔法カード1枚を捨てて、このカードを特殊召喚。そしてスミレの効果発動、デッキからレベル3の白き地のモンスター1体を手札に加える。そして今手札に加えた『白き地の祈祷師ビオラ』を召喚。効果発動、デッキから白き地のと名の付く儀式モンスター1体を手札に加えます。そしてスミレのさらなる効果発動！ 墓地の魔法カードを除外して、デッキから儀式魔法1枚を手札に加えます」



これで、準備は整った……！



「レベル3のビオラとスミレでオーバーレイネットワークを構築！白き地に産まれし幼き女神よ、烈火の如く聖域を侵す敵を焼き尽くせ！ エクシーズ召喚、『白き地の女神ペルサンテ』！さらに儀式魔法『イヴェールの奇跡―守護女神の加護』発動！ 自分フィールドに女神が存在する場合、デッキから白き地のモンスターをリリースして、儀式召喚を行います。集いし願いが、平和への祈りを紡ぎ出す！ 儀式召喚、『白き地の戦巫女ミユキ』！」
「エクシーズ召喚と儀式召喚を、同時に行うか……」
「ミユキの効果発動！ 自分の墓地から白き地のモンスターを特殊召喚する！」
「リバースカードオープン。カウンター罠、『パールディン・プレッシャー』。効果を無効にし、破壊する。そしてその後、自分フィールドのパールディンモンスターを破壊する。俺はプリンスを破壊する」



……これでパールさんのフィールドはがら空き。ペルサンテの効果でクランポネを蘇生すれば、連続ダイレクトアタックで大ダメージが狙える……



「……パールさん。どうして、このタイミングでカウンター罠を使ったんですか……？」
「……何が言いたい」
「あなたは、このデッキがアルムのものだと知っているはず。それならカウンター罠を使う正しいタイミングも分かっていたはずです。それだけじゃない、あなたのデュエルはまるで……勝つ気が感じられない」
「ほう……だが、それがどうした？ 俺が勝とうとしていないならば、お前が俺に勝てばいいだけの話だろう」
「……いいえ、それじゃ駄目なんです。何故なら、このデュエルは最初から勝ち負けを争うものではないから」
「…………」






……そう。最初から、パールさんは『デュエルで自分に勝て』なんて一言も言っていない。彼がこのデュエルに求めていたもの、それは……






『デュエルで、俺にお前を信じさせてみろ。アルムと共にあるというなら、デュエルでそれを示して見せろ』






「……このデュエルで、あなたに僕の言うことを信じさせる。つまり、アルムと共に戦っていることを信じてもらうことが、僕の目的だった。そしてそれは、デュエルに勝つことでは達成できない」
「…………」



さっきから、パールさんは何も話そうとしない。あくまで、僕を試しているのか……



「……昨晩、僕はアルムと話しました。その中で、彼女が戦いを望まないことを知ったんです……そんなアルムを信頼しているあなたは、戦い以外の方法で僕を試した……だからあなたは、デュエルをしている風に見せかけながらも僕の出方を窺い続けた。本当にアルムと共にあるなら、力で相手を認めさせようなんてするはずがない……そういうことですよね？」
「…………」
「だから、僕はこれ以上戦わない。このデュエルは終わりです……これが、僕の答えです」
「…………なるほどな。どうやらお前は、俺が思っていたよりも遥かに馬鹿だったらしい」



ようやくパールさんが口を開くが、その意向ははっきりとしない……この答えで、本当に良かったのか？






「…………いいだろう、お前を信用してやる」






デュエルディスクを降ろし、デュエル中断の意思を示すパールさん。当然僕もそれに合わせ、デュエルは終了されたのだった。