26話　救世を拒む復讐の剣　作：名無しのゴーレム

『『デュエル！！』』












メシア　LP8000　手札5
？？？　LP8000　手札5



『先攻は私がいただきます。『誠実の救世者タリス』を召喚。タリスの効果発動、コイントスを行います』



メシアさんの宣言と同時に、虚空から出現した1枚のコインが宙を舞う。



『……表です。よってあなたに1500のダメージを与えます！』


？？？　LP8000→6500


『っ……随分、運任せな戦術ね』
『そうかもしれませんね。カードを1枚セットして、ターン終了です』



メシア　LP8000　手札3 モンスターゾーン　誠実の救世者タリス　魔法・罠ゾーン　伏せカード1枚
？？？　LP6500　手札5



『私のターン、ドロー。フィールド魔法、『惨劇の廃都ラメール』を発動。そして『復讐姫ハルカディア』を召喚』



フィールド魔法の発動にモンスターの召喚。ただそれだけの行動であったが、僕たちは驚きを隠せないでいた。



「あのフィールド魔法、プリンセスさんが使っていたものと似ている……」
「フィールド魔法だけじゃない……モンスターも、私のデッキに入っているカードとそっくり……っ」



容姿だけでなく使うカードも似ている……しかし、そのどちらも全く同じというわけでもない。やはり、誰かがプリンセスさんに化けたとは考えにくいか……



（でも、それなら本当に何者なんだ……？）



疑問は尽きないまま、デュエルは進んでいく。



『ハルカディアの効果発動。このカードに復讐カウンターを2つ置く』
『させません！ リバースカードオープン。カウンター罠、『救世の讃美歌』！ ライフを800払うことでハルカディアの効果を無効化、そして除外します。さらにこのターン、あなたはモンスター効果を使用できません！』


メシア　LP8000→7200


『っ……カードを1枚セットしてターンエンド』



メシア　LP7200　手札3 モンスターゾーン　誠実の救世者タリス
？？？　LP6500　手札3 フィールド魔法　惨劇の廃都ラメール　魔法・罠ゾーン　伏せカード1枚



ターンが1往復し、今のところはメシアさんがペースを握っている。しかも相手のフィールドはがら空き、ここでダイレクトアタックを決めれば大ダメージを与えられるだろう。



『私のターン、ドロー。『金管の救世者シエラ』を召喚。そして効果発動、コイントスを行います』



再び宙を舞うコイン。地に落ちたコインが示していたのは……表。



『よってデッキからレベル4以下の救世者1体を手札に加えます。レベル4のシエラ、タリスでオーバーレイネットワークを構築。雄々しき機械騎士よ、光の剣で邪悪を断て！ エクシーズ召喚、『闘魂の救世者ダイブレード』！』
『エクシーズ召喚……』
『ダイブレードの効果発動。自身のオーバーレイユニットを1つ取り除き、デッキから救世と名の付く魔法・罠カード1枚を手札に加えます。バトル、ダイブレードでダイレクトアタック！』
『リバースカードオープン。永続罠『闇次元の解放』発動。除外されているハルカディアを守備表示で特殊召喚。ハルカディアの効果発動。自身に復讐カウンターを2つ置く』


復讐姫ハルカディア　カウンター0→2


『……バトル続行。ダイブレードでハルカディアを攻撃！』



ダイレクトアタックは防がれてしまったが、依然フィールドはメシアさんが支配している。このまま行けば……



『戦闘破壊されたハルカディアの効果発動。自身が破壊された場合、このカードに置かれていた復讐カウンターの数だけカードをドローする』
『ハルカディアのカウンターは2つ、ということは……！』
『ハルカディアの効果で2枚ドロー。さらにラメールの効果発動。自分の復讐姫モンスターが破壊された時、デッキからそのモンスター以下の攻撃力を持つ復讐姫を手札に加え、このカードに復讐カウンターを1つ置く』


惨劇の廃都ラメール　カウンター0→1


『くっ……』
『ありがとうメシア。あなたの攻撃のおかげで、私は3枚もの手札を手に入れたわ』



先程まで優勢だったはずのメシアさんが、たった一度の攻撃から一転して劣勢に陥ってしまった。



『……カードを1枚セットします。私はこれでターン終了』



メシア　LP7200　手札3 モンスターゾーン　闘魂の救世者ダイブレード　魔法・罠ゾーン　伏せカード1枚
？？？　LP6500　手札6 フィールド魔法　惨劇の廃都ラメール



『私のターン、ドロー。スタンバイフェイズにラメールの効果発動、このカードに復讐カウンターを2つ置く』


惨劇の廃都ラメール　復讐カウンター1→3


『自分フィールドにモンスターが存在しないことにより、手札から『復讐姫リルニカ』を特殊召喚。さらに『復讐姫リリィ』を召喚。レベル3のリルニカにレベル3のリリィをチューニング。業火纏いし闇騎士よ、今こそ敵を焼き尽くせ。シンクロ召喚、『復讐姫アライブ』！』



シンクロモンスター……しかし、その攻撃力はダイブレードよりも僅かに低い。



『アライブの効果発動。自分フィールドのモンスターに復讐カウンターを1つ置く』


復讐姫アライブ　復讐カウンター0→1


『墓地に送られたリルニカの効果発動。アライブに復讐カウンターを2つ置き、その攻撃力を300アップする』


復讐姫アライブ　カウンター1→3
　 　 　　 　　 攻撃力2500→2800


アライブの攻撃力がダイブレードを上回った……！


『アライブの効果発動。自身の復讐カウンターを2つ取り除き、ダイブレードを破壊する』


復讐姫アライブ　カウンター3→1


『リバースカードオープン。速攻魔法『救世の護符』発動！ 自分フィールドの救世者1体の攻撃力・守備力を下げる代わりに戦闘耐性とこのカード以外の効果への耐性を与えます。対象とするのはダイブレード！』


闘魂の救世者ダイブレード　攻撃力2600→600


『……続けて墓地のリリィの効果発動。自身を除外し復讐カウンターを取り除くことで、その個数と同じレベルの復讐姫をデッキから特殊召喚する。私はカウンターを4つ取り除き、『復讐姫ラフェンサ』を特殊召喚。ラフェンサの効果で自身に復讐カウンターを1つ置く』


惨劇の廃都ラメール　カウンター3→0

復讐姫アライブ　カウンター1→0

復讐姫ラフェンサ　カウンター0→1


『そして自分フィールドにラフェンサが存在することにより、手札から『復讐姫コークル』を特殊召喚。コークルの効果発動。フィールドの復讐姫に復讐カウンターを1つ置く』


復讐姫アライブ　カウンター0→1

復讐姫ラフェンサ　カウンター1→2

復讐姫コークル　カウンター0→1


『バトル。アライブ、ラフェンサ、コークルの3体でダイブレードを攻撃』


メシア　LP7200→5000→3700→3300


『うぅっ……きゃあぁぁ！！』


攻撃力の下がったダイブレードへの容赦ない連続攻撃、その衝撃がメシアさんを襲う。大ダメージと共に大きく吹き飛ばされてしまった。



『もう終わりかしら？』
『はぁっ、はぁ……まだ、です……！』
『そう来ないとね。潰しがいが有って助かるわ……バトル終了。レベル4のラフェンサ、コークルの2体でオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚、『復讐姫レイチェル』。レイチェルの効果発動。このカードのオーバーレイユニットを1つ取り除き、デッキの上から5枚をめくり、その中から復讐姫カード1枚を手札に加える。カードを1枚セットしてターンエンド』
『ターンが終了したことで、ダイブレードの攻撃力は元に戻ります』


闘魂の救世者ダイブレード　攻撃力600→2600


メシア　LP3300　手札3 モンスターゾーン　闘魂の救世者ダイブレード
？？？　LP6500　手札4 モンスターゾーン　復讐姫アライブ、復讐姫レイチェル（守備表示）　フィールド魔法　惨劇の廃都ラメール　魔法・罠ゾーン　伏せカード1枚



『私のターン、ドロー。ダイブレードの効果発動。オーバーレイユニットを1つ取り除いて、デッキから救世と名の付く魔法・罠カード1枚を手札に加えます。そして『礼弦の救世者アリア』を召喚、そのまま効果発動。コイントスを行います』



宙へ放たれたコイン、三度目は裏を示した。



『裏が出たことにより、デッキから『錬成の救世者オリハルコン・クロック』を特殊召喚します』
『表裏に関わらず、何らかのメリットが伴うということね……それにしたって、不安定な戦術になることは免れないけれど』



多くのギャンブルカードは、成功されば多大なメリットを得る代わりに失敗すればデメリットを負うようになっている。しかしメシアさんの救世者は、どちらになっても何かしらのメリットが得られる……間違いなく強力だが、その上でもなお狙った効果を使えないというリスクは背負うこととなる。



『心配は不要ですよ……オリハルコン・クロックの効果、コイントスを行います』



今度のコイントスは……表だ。



『よってフィールドのアリア、オリハルコン・クロックの2体をリリースすることで融合召喚を行います。光の剣聖よ、闇を祓え！ 融合召喚、『剣聖の救世者ボルガラッド』！』
『エクシーズの次は融合……そのモンスターで、私のモンスターを倒せるのかしら？』
『もちろん！ ボルガラッドの効果発動。このカードの融合召喚に成功した場合、相手モンスター1体を墓地に送ってその攻撃力・守備力の高い方の半分の数値、あなたにダメージを与えます！ 私はアライブを墓地に送ります！』
『甘いわね。リバースカードオープン。通常罠『ブレイクスルー・スキル』。効果でボルガラッドの効果を無効化する』
『それならっ……バトル、ボルガラッドでレイチェルを攻撃！』
『なら破壊されたレイチェルの効果発動、カードを1枚ドローする』
『続けて手札から速攻魔法、『救世の聖火』発動！ ボルガラッドをリリースし、アライブを破壊します！』
『っ、ラメールの効果発動。デッキからアライブの攻撃力以下の復讐姫を手札に加え、このカードに復讐カウンターを1つ置く』


惨劇の廃都ラメール　カウンター0→1


『聖火の効果でカードを1枚ドロー。これであなたのフィールドにモンスターは居ません……ダイブレードでダイレクトアタック！』


？？？　LP6500→3900


『くっ……さすがに、一筋縄ではいかないわね』
『カードを1枚セットしてターン終了です。この世界の平穏を守るため、あなたに負けるわけにはいきません！』



メシア　LP3300　手札3 モンスターゾーン　闘魂の救世者ダイブレード　魔法・罠ゾーン　伏せカード1枚
？？？　LP3900　手札5 フィールド魔法　惨劇の廃都ラメール



『私のターン、ドロー。ラメールの効果で自身に復讐カウンターを2つ置く』


惨劇の廃都ラメール　カウンター1→3


『まずは通常魔法『復讐者の烙印』発動。ラメールに復讐カウンターを2つ置き、デッキから復讐姫1体を手札に加える』


惨劇の廃都ラメール　カウンター3→5


『カードを1枚セット。そして通常魔法『手札抹殺』発動。お互いのプレイヤーは手札を全て捨て、その枚数分ドローする』



手札交換……？ いや、それだけのはずがない。となれば、彼女の狙いは……



『墓地の『復讐姫ヴァニラ』の効果発動。このカードを除外し、墓地のハルカディアを特殊召喚。ハルカディアの効果発動。自身に復讐カウンターを2つ置くわ』


復讐姫ハルカディア　カウンター0→2


『そしてリバースカードオープン。通常魔法『悪夢再び』。墓地の『復讐姫サーシャ』、『復讐姫コークル』を手札に加える。サーシャを召喚、効果発動。ハルカディアに乗っている復讐カウンターを1つ取り除くことで、墓地のラフェンサを特殊召喚。ラフェンサの効果で自身に復讐カウンターを置く』


復讐姫ハルカディア　カウンター2→1

復讐姫ラフェンサ　カウンター0→1


『そして手札のコークルを特殊召喚、効果でフィールドの復讐姫に復讐カウンターを置く』


復讐姫サーシャ　カウンター0→1

復讐姫ハルカディア　カウンター1→2

復讐姫ラフェンサ　カウンター1→2

復讐姫コークル　カウンター0→1


『ハルカディアの効果発動。自身の復讐カウンターを1つ取り除き、相手フィールドのカード1枚を破壊する。私が破壊するのは、もちろんダイブレードよ』



まずい、メシアさんのフィールドからモンスターが居なくなった……！！



『……リバースカードオープン。通常罠『救世の継承』。墓地のオリハルコン・クロックと同じ岩石族の救世者モンスターを手札に加えます』
『このタイミングでのサーチ、なら……レベル4のハルカディアとラフェンサに、レベル2のサーシャをチューニング。闇に堕ちし姫皇よ、憎悪を糧として新たな伝説を刻め！ シンクロ召喚、『復讐姫アルトレイヤ』！』
『レベル10の、シンクロモンスター……！！』
『アルトレイヤの効果発動。このカードのシンクロ召喚に成功した時、墓地の復讐姫2体を手札に加える。さらにアルトレイヤのもうひとつの効果発動。自身に復讐カウンターを2つ置く』


復讐姫アルトレイヤ　カウンター0→2


『バトル。アルトレイヤでダイレクトアタック』


相手フィールドのモンスターの攻撃力の合計はメシアさんのライフを超えている。これを受けてしまえば……



『手札の『護法の救世者ゴールド・ゴーレム』の効果発動。このカードを墓地に送ることで、このターン私が受ける全てのダメージを0にします！』
『これも凌ぐのね……でも、いつまで保つかしら。カードを3枚セットしてターンエンド』



メシア　LP3300　手札3
？？？　LP3900　手札3 モンスターゾーン　復讐姫アルトレイヤ、復讐姫コークル　フィールド魔法　惨劇の廃都ラメール　魔法・罠ゾーン　伏せカード3枚



『私のターン、ドロー……手札の『白薔薇の救世者ピュアリー』をペンデュラムスケールにセット。そして通常魔法『無限の可能性』を発動。墓地のアリアとタリスを除外し、シンクロ召喚を行います』



エクシーズ、融合だけでなくシンクロ召喚も……いや、ペンデュラムモンスターも使うということは、メシアさんは4つの召喚法を使えるということなのか。



『数多の想いが集い、ここに運命を変える奇跡を起こす！ シンクロ召喚、『運命の救世者ギア・デスティニー・ドラゴン』！ バトル、デスティニー・ドラゴンでコークルを攻撃！』
『もちろん通さないわ。リバースカードオープン。通常罠『死のデッキ破壊ウイルス』。コークルをリリースし、あなたのフィールド・手札から攻撃力1500以上のモンスターを全て破壊する』
『ペンデュラムゾーンのピュアリーの効果発動！ このカードを破壊することで、このターン私のフィールドに存在する救世者は相手の魔法・罠カードの効果を受けません！』



ウイルスの感染を免れたデスティニー・ドラゴンの一撃は、しかし虚空を貫き礼拝堂に大きな衝撃波を与えるだけとなった。



『でも、手札のモンスターはその限りではないでしょう？』
『そうですね……手札からは1体のモンスターを墓地に送ります』
『……さらにデッキ破壊ウイルスの効果で、あなたはデッキから1500以上のモンスターを3体まで破壊できるわ』
『できる、というなら私は破壊しないことを選びます』
『へぇ……墓地の重要性を知らないはずもないのに、どうしてかしら？』
『どうして、ですか？ ……必要ない、ということもありますが……自分からモンスターを破壊するのは、どうにも気が進みませんので』
『そう。あなたは思った通りの人ね……どうしようも無いくらい甘くて、だから私に負ける』
『もう勝ったつもりとは、さすがに気が早いのでは？ 慢心は敗北の元となりますよ』
『これは慢心なんかじゃないわ……確信よ。あなたは私には勝てない。これからそれをゆっくりと教えてあげる』
『……それは遠慮したいですね。バトル終了。この瞬間、デスティニー・ドラゴンの効果発動。攻撃宣言を行ったこのカードが戦闘で相手モンスターを破壊できず、ダメージも与えられなかった場合、ライフを半分払うことで発動できます』


メシア　LP3300→1650


『一体、何を……』
『デッキをシャッフルし、その後デッキの上から3枚をめくります。そしてその3枚が全て異なる種類のカードであれば、それらを除外することで次のあなたのターンをスキップします！』
『！？』



ターンを、スキップ……！？



『……運任せにも程があるわね。失敗すればライフを半分失っただけ、そして私のフィールドにはデスティニー・ドラゴンの攻撃力を上回るアルトレイヤが居る。命懸けのギャンブルにしては、勝ち目が薄いように見えるけれど』
『いいえ、必ず成功しますよ。私はこの世界の多くの人々から平和の祈りを受けてここに居ます。その想いの力が、必然の奇跡を生み出すのです』
『……いいわ、やってみなさい』



……仮にメシアさんのデッキがモンスター・魔法・罠の3種類を均等に入れていたとしても成功する確率はそう高くない。さらに普通のデッキなら、モンスターの枚数は他2種類の合計と同じか多いくらいのはず……失敗する確率の方が遥かに高いはずなのに、それでもメシアさんは成功すると宣言してみせた。



『まずは1枚目……モンスターカード、『輝翼の救世者プラチナ・フェザー』』



1枚目は順当にモンスターカード。しかし、ここから魔法・罠を引き当てられるのか……？



『2枚目……魔法カード、『サイクロン』』
『ここまでは順調ね……さあ、奇跡とやらを見られるといいけど』
『そして、3枚目……』



このカードが罠カードで無ければ、メシアさんは絶体絶命の窮地に追い込まれる。奇跡が、起きるのか……









『……罠カード、『俺が望む明日』！！』






信じられない……まさか、本当に成功させてしまうなんて。



『これら3枚を除外することで、デスティニー・ドラゴンの効果発動！ 次のあなたのターンを、スキップします！』
『っ……！！』
『どうですか、これが奇跡……いえ、世界中の想いが起こした必然！ この想いに応えるためにも、私は必ずあなたに勝ちます！』
『……世界中の想い？ それに応える？ フフフ、やっぱりあなたは私に勝てないわ……それこそ奇跡が起きたって、ね』



女性はメシアさんの言葉を否定し、意味深に笑みを浮かべる。















『思い知りなさい、善意なんてものより悪意の方が遥かに勝ることを。そして絶望しなさい、あなたが守ろうとしている世界に！！』