55話　最強の兵器　作：名無しのゴーレム

『到着だ』
「はぁ、はぁ……ここが、管理塔なの……？」



マッハと別れ、シークとともに走ること数十分。空高くそびえ立つ建築物の目前に来ていた。



「……随分高いのね」
『制御室は管理塔20階にある。エレベーターは使えないから、徒歩で昇ることになる』
「20階って……いいわ、やってやろうじゃないの」
『内部では俺が先導する。内部構造は把握しているが、気を抜くな』
「分かってるわよ。ほら、さっさと行きましょう」
『了解した。それでは、これより管理塔突入を開始する』









「じゅう、なな……ふぅ、どうして、階段と階段がこんなに離れてるのよ……」
『防衛する側から見ればその方が都合がいいからだ。そもそも、この建物は階段で上ることを考慮していない』
「機械化するにも程があるっての……でも、もうすぐ制御室よね？」
『そうだ。ただし、19階には無力化できない防衛機械が存在している。昨日も言った通りの段取りで突破するぞ』
「段取りって、あなたが囮になっている間に私が階段まで辿り着くってことでしょ。……本当に大丈夫なの？」
『問題ない。敵のセンサー機能を誤認させるから、お前に攻撃が及ぶことはない』
「そういうことじゃなくて、あなた自身のことよ。どんな機械が相手なのか分からないけど……あなたも、無事に戻ってくるのよ」
『……努力しよう。もうすぐ階段だ。19階に入る直前で待機して、俺が合図したら防衛機械の脇を駆け抜けろ。そのまま階段を上がればすぐ制御室だ』
「ええ……」



段取りを確認しながら階段を駆け上がる。そして、ここが19階……



「……何よ、あれ……！？」
『管理塔の守護者、そしてインダスト最強の機械兵器……ニューロだ』



19階の廊下、その大部分を占拠する巨大なドラム缶型の機械。あんなのを、シーク1人で……？



「最強って……まさか、負けるつもりなの！？」
『必敗ではない。最強というのは防衛機械としての話だ。そして俺も進化を続けている。勝算は……ある』
「……その言葉、信じるわよ」
『……カモフラージュ機能、起動。無線での接続を開始する』



シークの腹部から新たに出現した機械が音を立てる。ここまで来る中でも様々に変形していたけど……一体、どんな『調整』を行えばあんなことに？



『カモフラージュ成功。準備は整った、行け』
「……それじゃ、お互い死なないように頑張りましょう」



意を決し、ニューロの真横を走り抜ける……どうやら、本当に誤認させられているようだ。



























『19階からプリンセスの反応消失。無事に辿り着いたか』



あとはプリンセスがクイーンを止めれば、作戦は成功する。俺の役目はその時までニューロをこの場に引き留めること。



『ピピピ、外敵の存在を確認。これより排除する』
『発見次第排除とは、防衛兵器とは思えないほど攻撃的な思考ルーチンだな。しかし、その方が俺も対策が立てやすい』



デュエルを挑んでくるのなら、こちらはそれを受ければいい。あとは、全力を以て立ち向かうのみ。















『『デュエル！！』』






シーク　LP8000　手札5
ニューロ　LP8000　手札5



『先攻は俺だ。『機密兵器10カルミネート』を召喚。カルミネートの効果発動、手札の『機密兵器04シーラー』を除外して、デッキから機密兵器1体を手札に加える。手札の『機密兵器09ドミント』の効果発動。除外されているシーラーを墓地に戻し、自身を特殊召喚。さらに1枚ドローする。レベル4のカルミネートとシーラーでオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚。現れよ、『機密兵器βフォートレス』』
『ランク4、エクシーズ召喚の反応を検知……データに蓄積』
『フォートレスの効果発動。オーバーレイユニットを1つ取り除き墓地の機密カードを2枚まで除外、そして自身の攻撃力を枚数×500アップする。俺はカルミネートとシーラーを除外』


機密兵器βフォートレス　攻撃力800→1800


『カードを1枚セットしてターンエンド』



シーク　LP8000　手札3　モンスターゾーン　機密兵器βフォートレス（表側守備表示）　魔法・罠ゾーン　伏せカード1枚
ニューロ　LP8000　手札5



『私のターン、ドロー。手札から通常魔法『ニューロサイドの鋼』発動。デッキの上から2枚を裏側表示で除外して、デッキからニューロサイドモンスター1体を手札に加える。手札から『ニューロサイドの指揮官』を召喚。指揮官の効果発動、デッキの上から4枚を裏側表示で除外して、デッキから『ニューロサイドの改造者』を特殊召喚。レベル4の指揮官を、レベル4の改造者でチューニング。シンクロ召喚、『ニューロサイドの吸血皇』。吸血皇の効果発動、デッキの上から4枚を除外して、相手フィールドのモンスター1体を除外し、その攻撃力分だけライフを回復する』


ニューロ　LP8000→8800


『吸血皇が存在する限り、カードが1枚除外される度にライフを200回復する。5枚除外されたことで、1000回復』


ニューロ　LP8800→9800


『バトルフェイズに移行。吸血皇でダイレクトアタック』
『リバースカードオープン。永続罠『機密技術―バリア』。手札の機密カード1枚を捨てて、このターン俺に発生する全ての戦闘ダメージを0にする』
『バトルフェイズ終了。カードを1枚セットしてターンエンド』



シーク　LP8000　手札2　魔法・罠ゾーン　機密技術―バリア
ニューロ　LP9800　手札4　モンスターゾーン　ニューロサイドの吸血皇　魔法・罠ゾーン　伏せカード1枚



ここまでの展開から推測するに、相手は『デッキを裏側表示で除外する』ことをコストとするカードを多用する。要求される枚数も多いことから、長期戦に持ち込めばデッキ切れに持ち込むことも可能だろう。それらを考慮して、次の作戦は……



『俺のターン、ドロー。スタンバイフェイズにカルミネート、シーラーの効果発動。機密兵器カードの効果で除外されたこの2体を特殊召喚する』
『レベル4モンスター2体……リバースカードオープン。永続罠『ニューロサイドの思考』。デッキの上から1枚を裏側表示で除外することで、モンスター1体のレベルを1つ操作できる。カルミネートのレベルを3に変更』


機密兵器10カルミネート　レベル4→3


ニューロ　LP9800→10000


『エクシーズ召喚に対する妨害か……なら、通常魔法『機密技術―フュージョン』発動。フィールドのカルミネート、シーラーの2体を素材として融合。融合召喚、『機密兵器ζフューズ』。フューズの効果発動。1ターンに2度まで、墓地の機密カード1枚を除外することで相手モンスター1体の攻撃力・守備力を1000ダウンさせる。墓地のカルミネートとシーラーを除外し、吸血皇の攻撃力を2000下げる』


ニューロサイドの吸血皇　攻撃力2600→1600→600


ニューロ　LP10000→10400


『バトル、フューズで吸血皇を攻撃』


ニューロ　LP10400→8800


『フューズの効果発動。このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した場合、デッキから機密兵器モンスター1体を手札に加える。バトル終了。手札から『機密兵器06ブリンガー』を召喚。ブリンガーの効果発動、自身を除外することでデッキから機密カード1枚を手札に加える。ターンエンドだ』



シーク　LP8000　手札3　モンスターゾーン　機密兵器ζフューズ　魔法・罠ゾーン　機密技術―バリア
ニューロ　LP8800　手札4　魔法・罠ゾーン　ニューロサイドの思考



『私のターン、ドロー。墓地の指揮官の効果発動。デッキの上から4枚を裏側表示で除外することで自身を特殊召喚。永続魔法『ニューロサイドの製造工場』発動。製造工場の効果発動。手札1枚を裏側表示で除外することで、デッキからニューロサイドモンスターを手札に加える。裏側表示で除外されている『ニューロサイドの疫病王』の効果発動。自身と裏側表示で除外されている同名のカードを表側表示にすることで、自身を特殊召喚する』



裏側除外から展開することも可能……単なるコストではないということか。



『疫病王の効果発動。このカードの特殊召喚時、デッキの上から4枚を裏側表示で除外することで相手モンスター1体のコントロールを奪う。私はフューズを選択する。指揮官の効果発動、デッキの上から4枚を裏側表示で除外することでデッキから『ニューロサイドの精神体』を特殊召喚。レベル4の指揮官をレベル1の精神体でチューニング。シンクロ召喚、『ニューロサイドの創造者』。創造者の攻撃力は除外されているカードの枚数×100となる』


ニューロサイドの創造者　攻撃力0→2600


『創造者の効果発動。互いの手札1枚を、次の相手エンドフェイズまで裏側表示で除外する』


ニューロサイドの創造者　攻撃力2600→2800


『バトルフェイズに移行。創造者でダイレクトアタック』
『バリアの効果発動。手札の機密カード1枚を捨てて、戦闘ダメージを0にする』
『バトルフェイズ終了、ターンエンド』



シーク　LP8000　手札1　魔法・罠ゾーン　機密技術―バリア
ニューロ　LP8800　手札2　モンスターゾーン　ニューロサイドの創造者、ニューロサイドの疫病王、機密兵器ζフューズ　魔法・罠ゾーン　ニューロサイドの製造工場、ニューロサイドの思考



『俺のターン、ドロー』



相手のフィールドには攻撃力2000オーバーのモンスターが3体。こちらのモンスターが奪われたのも痛いが……どうやら、こちらの除外されているカードも利用されるようだ。そうなれば除外を活用する俺のデッキはやや不利。ということは、長期戦に持ち込むのも厳しいか……



『スタンバイフェイズ。カルミネート、シーラー、ブリンガーを特殊召喚。レベルアップ4のカルミネートとシーラーでオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚。現れよ、『機密兵器αデストロイ』。デストロイの効果発動。オーバーレイユニットを1つ取り除き、エクストラデッキから特殊召喚されたモンスター1体をこのカードに装備する。俺はカルミネートを取り除き、フューズを装備する。デストロイの攻撃力は、この効果で装備したモンスターのレベル・ランク×200アップする』


機密兵器αデストロイ　攻撃力2000→3200


『もう1度デストロイの効果発動。シーラーを取り除き、創造者を装備する』


機密兵器αデストロイ　攻撃力3200→4200


『攻撃力4000オーバーのモンスターを確認。対象の脅威レベルを更新』



デストロイの効果に呼応して、ニューロの駆動音が一回り大きくなる。より耐久力、破壊力を上げたということか。



『『機密兵器08チューン』を召喚。チューンの効果発動、墓地のカルミネートを特殊召喚』
『チューナーモンスターの召喚を確認……『ニューロサイドの思考』の効果発動。デッキの上から1枚を裏側表示で除外し、チューンのレベルを1に変更』


機密兵器08チューン　レベル2→1


『シンクロ召喚を封じられたか……バトル。デストロイで疫病王を攻撃』


ニューロ　LP8800→6600


『装甲損傷……被害軽微。製造工場を墓地に送り、疫病王の破壊を無効にする』
『連続攻撃とはいかないか。バトル終了。レベル4のブリンガーとカルミネートでオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚。現れよ、『機密兵器δバミューダ』。これでターンエンドだ』
『創造者の効果で除外されていた手札は、このタイミングで元に戻される』



シーク　LP8000　手札2　モンスターゾーン　機密兵器αデストロイ（フューズ、創造者装備）、機密兵器δバミューダ、機密兵器08チューン　魔法・罠ゾーン　機密技術―バリア、機密兵器ζフューズ、ニューロサイドの創造者
ニューロ　LP6600　手札2　モンスターゾーン　ニューロサイドの疫病王　魔法・罠ゾーン　ニューロサイドの思考



『私のターン、ドロー。『ニューロサイドの汚染者』を召喚。墓地の精神体の効果発動。デッキの上から4枚を裏側表示で除外して、このカードを特殊召喚。思考の効果発動。デッキの上から1枚を裏側表示で除外して、疫病王のレベルを7に変更』


ニューロサイドの疫病王　レベル8→7


『レベル7の疫病王にレベル2の汚染者とレベル1の精神体でダブルチューニング。シンクロ召喚、『ニューロサイドの巨大戦車』。バトルフェイズに移行。巨大戦車でバミューダを攻撃。この瞬間、巨大戦車の効果発動。このカードの攻撃宣言時、デッキの上から4枚を裏側表示で除外することで、相手は5つの効果から2つを選び適用しなければならない』



俺が効果を選ぶ、だと？



『1つ目、相手はライフを2000失う。2つ目、相手は自身のフィールドからカードを1枚選び裏側表示で除外する。3つ目、相手は自身の手札1枚をランダムに1枚選び裏側表示で除外する。4つ目、相手は次のドローフェイズをスキップする。5つ目、相手は次のターン終了時に敗北する。さあ、選択せよ』



……5つ目の強制敗北効果は絶対に選べない。となれば、俺のライフとフィールド、手札から最善策は……



『俺が選ぶのは1つ目と2つ目だ。フィールドからチューンを裏側表示で除外する』
『そして、2000のライフを失う。砲撃開始』



戦車から放たれた2発の砲弾。1発はチューンへ、そしてもう1発は……



『！！？』


シーク　LP8000→6000


こちらへと撃たれた砲弾。それは弾道を視認する時間もなく、次の瞬間には左脚部分が跡形もなく消し飛んだ。



『っ……体勢固定機能、起動！！』



複数のワイヤーを壁に向けて射出することで、何とか元の姿勢を維持する。これが最強の機械兵器……デュエルの勝敗に関係なく敵対者を消滅させるなら、疑いようもなく最強の防衛設備と言えるだろう。



『バミューダの効果発動。相手モンスターの攻撃宣言時、オーバーレイユニットを取り除くことでその攻撃を無効化、そして攻撃モンスターを除外する』
『バトルフェイズ終了。カードを1枚セットして、ターンエンド』



シーク　LP6000　手札2　モンスターゾーン　機密兵器αデストロイ（フューズ、創造者装備）、機密兵器δバミューダ　魔法・罠ゾーン　機密技術―バリア、機密兵器ζフューズ、ニューロサイドの創造者
ニューロ　LP6600　手札2　魔法・罠ゾーン　ニューロサイドの思考、伏せカード1枚



『俺のターン、ドロー。『機密兵器05クラッシュ』を召喚。バトル。デストロイで……』
『リバースカードオープン。永続罠『闇次元の解放』。除外されている巨大戦車を特殊召喚する』
『……バトル続行、デストロイで巨大戦車を攻撃』


ニューロ　LP6600→5400


『装甲損傷……被害軽微。巨大戦車は破壊される代わりに、デッキの上から4枚を裏側表示で除外できる』
『……バトル終了。ターン、エンド』



シーク　LP6000　手札2　モンスターゾーン　機密兵器αデストロイ（フューズ、創造者装備）、機密兵器δバミューダ、機密兵器05クラッシュ　魔法・罠ゾーン　機密技術―バリア、機密兵器ζフューズ、ニューロサイドの創造者
ニューロ　LP5400　手札2　モンスターゾーン　ニューロサイドの巨大戦車　魔法・罠ゾーン　ニューロサイドの思考、闇次元の解放



『私のターン、ドロー。通常魔法『精神同調波』発動。自分フィールドにシンクロモンスターが存在するとき、相手フィールドのカード1枚を破壊する。私はバミューダを破壊。バトルフェイズに移行、巨大戦車でクラッシュを攻撃。巨大戦車の効果発動』
『選択は先ほどのターンと同じ……1つ目と2つ目だ。俺はフィールドのクラッシュを裏側表示で除外する』
『砲弾装填、発射』



シーク　LP6000→4000






『ガッ…………』









再び放たれた、回避も防御も不可能の砲弾。



ひがイ、






カショ、









ハ…………


















キャラクター紹介



ニューロ
モチーフ:【ニューロサイド】作者様:夏将軍様
インダスト最強の機械兵器。
搭載兵器の火力や装甲の厚さはもちろんのこと、デュエルで相手に与える身体的ダメージすら限界まで引き上げられている。そのため一般人ではデュエルの勝敗が着く前に命を落とす危険すらある。
現在は管理塔の制御室前に配備され、侵入者を撃退する任務を負っている。



【ニューロサイド】の使用許可を下さった夏将軍様、本当にありがとうございました！